2004/05/20

幸せの黄色いホーン 80話 ARISAさんのシステム



尾張・春の陣、二日目の会場はARISAさんの家。4550のバーチカルスタックシステム。初日のごさ丸さんの音に打ちのめされた上に、この巨大スピーカーシステムですから、これはもう生きて帰れないのではないかと不安が募ります。ごさ丸さんに連れて行ってもらったARISAさんの家は大きい上にとても素敵です。特に広々としたお庭が素晴らしい。立派な玄関の前の大きな甕の中には蓮と金魚さん。しかし、趣味の良さが感じられるこの家の中にとてつもない怪物がうずくまっているとは、おそらくお釈迦様でも分かるまい、と思います。

吹き抜けのある大きな空間の部屋に通されると、出ましたぁ!という感じの漆黒の巨人が聳え立っています。4台の4550と中央の4520は、まるで新品のように綺麗な外装。もちろんARISAさんが仕上げたもの。そして、このハンサムなシステム、想像していたより遥かに巨大。これはダメになっちゃうかも、ヘナヘナヘナ…です。腰が抜けるどころか床が抜けてしまうのではないかと思ったのですが、この床の踏み応えが猛烈に硬い。自動車が入ってきても大丈夫とのことでした。右側スピーカーの奥にはアンプ室があり、ここに巨大な放送局用のアナログプレーヤーや総重量400kgを超える業務用アンプがずらり。

煮るなり焼くなり好きにして頂戴!という気持ちのまま、奥様お手製のおいしいオレンジタルトを頂きました。2220の会恒例のお茶会だそうです。ARISAさんに、2220にしましょうよ、とにこやかに話しかけられても返す言葉がありません。どうすればいいの?




ARISAさんの世界は独特です。有名な業務用機材、特に著名なミキサーのフェーダーやラインアンプ部を入手してプリアンプの代わりに使用するというもの。フェーダーと言ってもスライドボリューム単体ではなくラインアンプ基板や入出力トランスが付属しているタイプだそうです。これらは単体の基板ですから電源部が必要となります。この電源部は軍用無線のマルチ電源を改造したもの。軍用ですから使用されている抵抗やコンデンサ等の素子のグレードが高いそうです。ともかく、家庭用オーディオの知識などは全く通用しないディープな世界なのです。

さらに、JBLの業務用モノラルアンプによって構築されているマルチアンプによる駆動系の他、ヤマハの業務用アンプとネットワークを組み合わせた駆動系があり、さらに使用されていない業務用の巨大アンプが積み上げられています。その他、何に使うのか分からないような機材もあり、それら機材が目の前にありながら全容の解明は不可能という状況。巨大な箱に収められているFOSTEXの80cmウーファー、FW800も使われずに放置されています。なんということでしょう…




さて、この4550バーチカルスタックシステムですが、骨太の音に押し捲られるのか、それとも音がすっ飛んでくるのかな、というような予想を全く裏切る「王道の音」なのです。荒れたところなど微塵も無い、堂々としたバランス。どっしりとした量感があるのに引き締まっている。サブウーファーとして使用している中央の4520さえもクセなど感じられません。上段の4550は初期型の密閉箱であり130Aと2220Aの組み合わせ、下段の4550はバスレフ箱で2220Aのダブルウーファーです。ごさ丸さんの解説によると130Aと2220Aは音色に微妙な差があるので、これを組み合わせることによって得られる音にその狙いがあるとのことでした。

持参したソロのエレクトリックベースのCDをかけて頂いた時、低音がフゥッと手に触れたような錯覚に陥りギョッとしました。このときも大音量ではなかったのですが、このCDでこの低音の質感、初めてでした。オーディオ的に言えば低音の分解能に優れているというような話になるのだと思いますが、そんな無機的な表現では到底語れません。あまりの薄気味悪さに思わず手を引っ込めてしまうような、そんな実体感なのです。これは4550や2220Aの性能の高さだけではなく、駆動系を含めたシステム全体のバランスが整っているからだと思うのですが、それにしてもどうしてこんな音が・・・

ヨハネスさんが持ち込まれた機材、高価なCDプレーヤーやDAコンバーター、フェーダーやミキサー、それから軍用電源…、ともかく次から次へとつなぎ換え、聴き比べが行われていきます。そして、それらの印象の差について、ごさ丸さん、ARISAさん、ヨハネスさんがどんどんコメントしてゆく。こちらは、それどころではなくARISAさんの音を覚えこもうと必死です。この音のバランスを持ち帰りたい・・・ 確かに機材によってはアナログレコードの音の傾向とCDの音の傾向の違いのような変り方をしているような。でも、その音の変化にコメントするような次元には到底及ばない。ヨハネスさんやARISAさんが気を使ってくれているのが分かるのですが、経験不足故に落伍…

こうして2日連続の衝撃にクラクラしたまま尾張・春の陣は終了。そして、実に多くのことを学ばせてもらいました。音のエネルギー感、質感あるいは実体感といったものの大切さ、肝に銘じます。それから、ごさ丸さんはシステムの機材をなかなか変更しようとしません。一方、ARISAさんは色々な機材を試している。しかし、両者共に共通するのは探究心。一つの機材の能力をとことん引き出そうとするのか、それとも新しい活路を切り開くのか。この情熱に完璧にやられてしまいました。宿泊させて頂いたごさ丸さん、ARISAさん、ヨハネスさん、貴重な体験をさせて頂き、本当にありがとうございました。一日も早くカタログ男を脱却して、薀蓄のみオーディオとオサラバせねば。
(ARISAさん撮影の画像を使わせていただきました。ありがとうございました。)

システムの概要

スピーカーシステム
           JBL 075+ホーンレスの375(その他175)
           JBL 2355+375×2
           JBL 4550+2220A+130A(上段)
               4550+2220A×2
           JBL 4520+2205B×2(サブウーファー)

CDプレーヤー  PHILIPS LHH500
プリアンプ     AMPEX/Quad8
チャンネルデバイダー JBL 5232
           JBL 5234
           JBL 5235
               500Hz、7kHzのクロス、いずれも遮断特性は-12dB/oct
               (サブウーファーのクロスは聞き忘れてしまいました。)
パワーアンプ   JBL 6006×2(HI)
           JBL 6010×2(MID)
           JBL 6010×4(LOW、上下の4550に対して1台ずつ)
           JBL 6021(SUB)
電源        200V電源




2004/05/19

幸せの黄色いホーン 79話 ごさ丸さんのシステム



2007年5月19日と20日、2日間に渡って尾張・春の陣が開催されました。参加者は、ごさ丸さん、ARISAさん、ヨハネスさん、そして部屋の隅っこで吸音材として活躍する?おとがでるだけ。よく晴れた初日の会場は、ごさ丸さんの家。5月の風が気持ちいい、お昼過ぎの静かな住宅地。迎え入れてくれたごさ丸さんは、とても穏やかな方です。かわいらしいお子様と素敵な奥様、親切なお母様。人懐っこくて賢い座敷犬。広々とした2階の和室に通されると、これは眺めの良い部屋。この部屋で昼寝ができれば最高だなぁと思いました。

ごさ丸さんの明仙堂のホームページは、密閉箱やバスレフ箱についての丁寧な解説が掲載されており、自作箱の自動計算ソフトをいつも使わせていただいています。また、音視界という楽しいエッセイのコーナーもあり、特に「シャウト!マイウェイ」と「バードランド」は何度読んでも素晴らしい。そして、この音視界からは、菅原正二さんのジャズ喫茶「ベイシー」の音がごさ丸さんに大きな影響を与えていることが伺えます。




気持ちの良い風が通るこの部屋に鎮座しているのがバーチカルクワッドの超大型自作スピーカーシステム。実効容積500Lの密閉箱。合板ではなく無垢板、徹底的な補強、そして長さ10cmのステンレス製ヘキサゴンボルトを数百本使用して組み上げられています。箱というよりは、まるで木の塊。中央のホーンは、ボーリング場の床に使用されていた堅い板を削り出して自作されたもの。「東急ハンズでシナ合板を切断してもらいましたぁ」というどこかのお調子者とは次元が違います。

午後のゆったりとした時間。自作派同士のせいか、それともごさ丸さんの語り口のせいか、リラックス状態。音を聞かせていただく前にバーチカルクワッドの製作についてお話を伺いました。また、1インチスロート用の自作ホーンなども見せていただきました。そして、この段階ではバーチカルクワッドというよりも、4発ウーファーの音はどんな感じなのだろうかとか、このシステムの雰囲気は和室に似合うなぁとか、そんなことをぼんやり考えていました。




いよいよ音が…って、うわっ、何だ、これはっ! バーチカルクワッドは音なんか出してない。そこから吹っ飛んでくるのは音ではなく演奏者の気合そのもの。こんなことって!

頭の髪の毛が逆立っていきます。今まで髪の毛が逆立つような経験は数えるほどしかないのに。音量は決して大きくないのですがとにかく強烈。全ての雑念を吹き飛ばし、ついでに聴き手さえも置き去りにしてしまうような加速感。しかもこれはF1マシンの全開加速。音楽鑑賞ではなく、ほとんど恐怖体験の世界です。ギラッとしたサックスの閃光が全身を貫き、むき出しのドラムに引っ叩かれる!

呆然。この音、魂が感じられる、生きてる。これはもう巨大なスピーカーシステムというよりは単体の巨大なスピーカーユニット。それほど音が一塊にまとまっているのです。大型システムにありがちな分散したような音ではなく、ともかく徹頭徹尾、凝縮されている。全く無駄な音がない。髪の毛を逆立てたまま理解できたのは、バーチカルクワッドという形式。この中央にあるホーンの尋常ではないエネルギーを中心に、38cmウーファーの名器、2220Aの4発がぴったり追随し、音の塊をぶつけてきます。

このホーンはダブルスロートになっており、2本の2440ドライバーが接続されています。音視界は、このダブルドライバー化の話で中断しています。ごさ丸さんにお話を伺ってみると、もともとこのシステムはバスレフのバーチカルツインだったのですが、ダブルドライバー化したとたん、システム全体のバランスが崩れてしまい、迷いに迷った末、ウーファー部を密閉の4発に変更、このシステムが誕生したそうです。なお、ダブルドライバーだからといって音が濁るなんてことも全く感じられません。このホーンの音はとても澄んでいて美しいのです。

ベイシーの音と比較するとどうなんですか?とごさ丸さんに尋ねてみると、違った所に来ちゃったみたい、というお話。長年に渡る試行錯誤の末、自分の音を出せたというのは本当にうらやましいことです。それにしても、この音、絶対に忘れることができないと思います。
(ごさ丸さん撮影の画像を使わせて頂きました。ありがとうございました。)


システムの概要

スピーカーシステム
           JBL 2402×2(2305+175×2)
           JBL 自作ホーン+2440×2
           JBL 2220A×4
           500L 自作密閉箱

CDプレーヤー  LUX D500
プレーヤー    LINN LP12+SME 3009S2+SURE V15TypeⅢ
プリアンプ     JBL SG520
チャンネルデバイダー JBL 5235×2
               500Hz、8kHzのクロス、いずれも遮断特性は-12dB/oct
パワーアンプ   JBL SA600(HI)
           JBL SE408S(MID)
           JBL SE408S(LOW)
電源        200V電源




2004/05/18

幸せの黄色いホーン 78話 ダースベーダー卿!



刺激音が解決し2192の音がようやくマトモな感じになってきたなぁ、と幸せな気分に浸っていると…とうとう恐れていたことが。2007年2月24日、ダースベーダー卿ことヨハネスさんがいらっしゃいました。何故、ダースベーダー卿なのかというと、ヨハネスさんのブログが「ダークサイドにようこそ」というタイトルだからです。ダークフォース、暗黒面、ベーダー卿、ううっ、逃げ出したい…

しかも、今までオーディオマニアの訪問を受けたことがないのです。記念すべき最初の訪問者としては相手が悪すぎます。6連装の2360Aに30Wが4発、オーディオの枠を遥かに超えたマンハッタンシステム。それを自在にコントロールするダークフォースの使い手。

臨戦態勢、レベル7! その日まで9日間しかありません。まず、お部屋のお掃除から。ほっておいた粗大ゴミの処理依頼。洗面所とトイレの掃除。何故か風呂の掃除も。カーペットを新調。台所のシンクや食器棚の拭き掃除。金魚さんの水換え。スリッパを買いに行かなくちゃ、あれっ、冷蔵庫のキムコも交換しないと…などと連日連夜の大混乱。どんどん家中がきれいになるので妻が喜んでいます。「毎月いらっしゃるとうれしいかも」って、あのねぇ。のんきな妻を横目に、せっせせっせとコマネズミのように働く。おおっ!失くしてしまったと思っていたCDがこんなところから…聴いてみようかしらなんて、そんな暇はございません。

なんとか掃除が間に合った当日、ついにベーダー卿登場! 「コォーッ、コォーッ・・・」極度の緊張のせいか、例の呼吸音が聞こえてくる・・・? この緊張の原因、単に音を聴かれてしまう!ということだけではないのです。マンハッタンシステムの核になっているのはごさ丸氏によりダブルスロートに改造された2360Aに2482ドライバーを2発接続した掟破りの超兵器。その超兵器に2392+2490Hは太刀打ちできるのか、それをベーダー卿自ら偵察しにいらっしゃった、これが真相。金魚さんの水換えどころの騒ぎではないのです。

スピーカー暗黒面には当然ルールなんかありません。従って、ワシントンスピーカー軍縮条約を遵守する必要も無く、保有できる兵器(スピーカーユニット)は無制限。死力を尽くして戦い抜くのか、資力を使い果たして天を仰ぐのか、神のみぞ知るという呆れた状況・・・しかし、ルール無用の世界、こういう世界は是非大切にしたいですよね。今時めずらしいもの。




とりあえず、大歓迎の意味でマーチングバンドを最初に聴いて頂きました。それからブラスセクションが気持ちいいビッグバンド。2392+2490Hは、わずかに付帯音が感じられるものの良く鳴ってくれています。「うふふ、ど、どうだ・・・」 真剣に聴かれていたベーダー卿が「ボーカルを」とおっしゃる。しかし、女性ボーカルを聴いてもホーン臭さは感じられません。「うふふふふ、どうだ、どうだ・・・」

しかし、ここまででした。突然ライトセーバーが閃き、「ウーファー部のレベル調整、低すぎるのでは?」「これではV字型バッフルの良さが生かされていない」(良さって、そんなこと、なんで知ってるの?)と、バッサリ斬り返されてしまいました。ベーダー卿の指摘は、後日いろいろ試してみたところ、大正解だったことが分かりました。これが一聴して分かってしまうところが、やっぱり凄い。

よせばいいのにピアノ演奏で挽回しようと勝負を挑みました。しかし、ベーダー卿はピアノの腕前も凄かった! 一緒に聴いていた家族は、全員驚いています。この勝負も完敗。「一曲ずつ仕上げるように練習するといいよ」とのアドバイスが追い討ちをかけます・・・むきゃー!

こうなれば秘密兵器で脅してやろうと、こそこそ買い集めてきたガラクタを見て頂きました。

「これはいかかです?」 「コォーッ、コォーッ・・・」

「こんなのもありますけど」 「コォーッ、コォーッ・・・」

「じゃあ、これはどうだぁ!」 「コオォーッ! ゲホゲホゲホッ」

最後にお見せした馬鹿馬鹿しいシロモノは、約4ヶ月前(2006年10月20日)に発注して忘れていたものが、昨夜突然に届いたのです。まさかベーダー卿のダークフォースが日本に引寄せた?

という訳で、全ての計画が予想外の方向に崩れ落ち、楽しい時間となって消えてゆきました。ヨハネスさんからCDを3枚も頂いてしまいました。妻にショパンのピアノ協奏曲、子供にホルストの惑星、そして、3枚目のブラームスの弦楽六重奏曲は強引に奪ってしまいました。このブラームスの曲は、ルイ・マル監督作品の「恋人たち」という映画に使用されていることも教えて頂いたので、後日、このDVDを購入しました。とても美しい映像の映画でした。





こうしてベーダー卿は去ってゆきました。卿の去った跡といえば・・・綺麗に片付いたお部屋、真剣な音楽鑑賞、素晴らしいピアノ演奏、クラシックCDのお土産。家族は「オーディオマニアって凄く知的な方達なのでは?」と認識を新たに。喜んでいいものやら?




2004/05/17

幸せの黄色いホーン 77話 キール氏の論文



B&C社のME15+DE500を導入して、モノラル5ウェイへの挑戦を開始。2451Hの高域端側へのブーストを行うイコライザを外し、5kHzで2332+2451Hとクロスさせます。これはいい感じ。高域に繊細な感じが出てきました。

しかし、5ウェイにしたところで、74話でお話した「特定の帯域での強い刺激音」、これが未解決のままです。2451Hの帯域をイコライジングしても修正できないので、2490Hの帯域かも、と考えていました。また、74話のデジタルチャンネルデバイダ-の設定表で2490Hと2451Hとのクロスのカットオフ周波数(ハイカットが1.23kHz、ローカットが1.62kHz)が離れていることも気になっていたのです。ある日、2192のデジタルチャンネルデバイダ-設定表が他にもあることを思い出し、その設定表を74話でご紹介した設定表と見比べてみました。すると、全く同じクロスのカットオフ周波数が掲載されている・・・

これはミスプリではないな、と早速このクロス設定を試してみたところ、何とあの刺激音がフッと消えたのです。定指向性ホーンは、やはり測定してキチンと特性を把握しないとダメみたいです。

ところで、定指向性ホーンの歴史は30年以上前の1975年3月に発表されたDON.B.KEELE,JR.(ドン キール ジュニア)氏の論文「WHAT'S SO SACRED ABOUT EXPONENTIAL HORNS?」から始まります。この論文発表当時、キール氏はエレクトロボイス社に所属しておりました。その後、1977年から1984年までJBL社に所属しバイラジアルホーンを開発しました。キール氏は、定指向性ホーンの生みの親であると同時に育ての親でもあるわけです。

定指向性ホーンのお世話になっているので、この論文を要約してみました。誤訳&大誤解の可能性もあります。あしからず。

キール氏のこの論文は、エクスポーネンシャルホーン(指数関数ホーン)は、指向性の制御に問題があるという話から始まっています。また、エクスポーネンシャルホーンでは、その指向性がフレアレート(広がり率)に依存している点も指摘されています。この2つの問題を解決するために、ラジアルホーンとマルチセルラホーンが開発されたものの、いずれも指向性のパターンに問題がありました。また、周波数によって指向性が変化してしまうことも問題となったそうです。

指向性パターンの問題とは、下の指向性パターンのグラフのように、音圧の分布を示すラインがゆらゆらと波をうっていたり(lobing)、あるいは広げた手の平のようなパターンになったり(fingering)することのようです。



Lobingの例(P6のHOR.5kHz)







Fingeringの例(P9のHOR.10kHz)

周波数によって指向性が変化してしまうとは、下のグラフ(Beamwidth vs. Frequency)のように、X軸に示されている周波数が変化すると、Y軸に示されている指向性の角度(軸上の音圧に対して-6dB以上の分布が認められる範囲の角度)が不規則に変動してしまうというものです。このグラフでは、水平指向性(HOR.で表示されているライン)は630Hzで狭い指向性の角度(約63°)を示しており、また、垂直指向性(VERT.で表示されているライン)は2kHzで狭い指向性の角度(31.5°と40°の間)を示しています。このような特性を「中域において指向性が狭くなってしまうという問題点(Midrange narrowing)」として定義しているようです。







上記の2つの問題点を解決するために、キール氏は、エクスポーネンシャルホーンをスロート側に配置し、それと連続するように開口部側にコニカルホーン(円錐形ホーン)を配置させてみたらどうだろうか?と考えた訳です。下の図は、エクスポーネンシャルホーンとコニカルホーンの形状の相違を示しています。




エクスポーネンシャルホーン(実線)とコニカルホーン(破線)

下のレスポンスグラフ(このグラフのエクスポーネンシャルホーンとコニカルホーンのカットオフ周波数はいずれも100Hz)に示すように、エクスポーネンシャルホーンは、カットオフ周波数まで理想的なレスポンスを確保することができます。一方、コニカルホーンでは低域側のレスポンスに問題があり、100Hzから500Hzまでレスポンスが低下しています。しかし、コニカルホーンでは周波数が変化しても指向性は一定に維持され、良好な指向性制御を行うことができるという利点があるそうです。また、コニカルホーンでは、エクスポーネンシャルホーンにみられるホーン開口部からホーン内部への望ましくない反射が生じないため、ホーン開口を大きく設計することができるという利点もあるそうです。




キール氏が最初に考えた複合ホーンは、下の図のような、開口部側をコニカルホーンとし、スロート側をエクスポーネンシャルホーンにしたCEホーン(Conical-exponential horn)です。スロート側のエクスポーネンシャルホーン部分によってカットオフ周波数まで良好なレスポンスを確保しつつ、開口部側のコニカルホーン部分によって良好な指向性制御を実現しようとしたわけです。




しかし、このCEホーンでも、「中域において指向性が狭くなってしまうという問題点」が残り、また、指向性パターンにおいてもlobingやfingeringが見られるという問題点がありました。そこでキール氏は、こうした問題を解決するために、さらに知恵を絞りました。その結果、誕生したのが、下の図のような3段構成のCEホーンです。この3段構成のCEホーンは、スロート側の部分がエクスポーネンシャルホーンである点では同じですが、開口部側のコニカルホーン部分が2段構成になっています。大きく開いた開口側のコニカルホーン部分の開き角度は、真中のコニカルホーンの開き角度の2倍になっています。




下のグラフは、3段構成のCEホーンの開口部の差し渡しの長さ(Y軸)と、指向性制御の下限周波数fI(X軸)と、指向性の角度との関係を示しています。このグラフから分かることは、開口部の差し渡しの長さにより、指向性制御の下限周波数が決定されるという考え方。カットオフ周波数のみを問題にするエクスポーネンシャルホーンの設計とはずいぶん異なります。3段構成のCEホーンにより指向性パターンやMidrange narrowingの問題点が解消され、この考え方が定指向性ホーンの基礎的な理論となりました。




という訳で、キール氏の論文の要約はこれでおしまいです。ふう~。こういう理論を学ぶのは楽しいことですが、理論だけというのもつまらないものです。タイプはどうであれ、お気に入りのホーンと楽しく暮らせれば、それが一番では?




2004/05/16

幸せの黄色いホーン 76話 ME15+DE500



大物を買っちゃうと、しばらくは何にも買わないもんね、と心に誓いますよね。でも、その「しばらく」の後には、アレ注文しちゃおうかなぁ、という気持ちがふつふつ・・・

B&C Speakers社というイタリアの業務用スピーカーユニットメーカーがあります。設立は1945年という老舗。日米ではほとんど知られていませんがヨーロッパでは有名な・・・はず? ヨーロッパのかなり多くのスピーカーシステムメーカーにユニットを供給しているようですし、ユニットのデザインが面白いので、以前から使ってみたいなぁと思っていました。

B&C社のドライバーのラインナップは豊富です。1インチスロートは10機種、1.4インチスロートは7機種、1.5インチスロートは2機種、2インチスロートは7機種あります。この中から1インチスロート/1.7インチ(44mmm)ダイアフラムのフラッグシップモデルのDE500ドライバーを選びました。



ME15+DE500

このDE500は、チタンダイアフラム、一体型タンジェンシャルエッジ、3重スリットのフェージングブラグ、アルミボイスコイル、ネオジウムマグネット。重さは1.5Kgあり、ネオジウムマグネットを搭載するドライバーとしては重いほうです。組み合せたホーンはME15。アルミ製の90°×60°タイプです。しかし、購入直後に新型(ME20)が発表されました。このME20は滑らかなホーン曲面なのです。ううっ、残念!

米国サイトから購入してみるとネオジウムマグネットの磁力の強さに驚いてしまいました。DE500のマグネットはとても小さいのですが、かなり遠くから引き合うのです。ネオジウムマグネットのスピーカーユニットが急速に多くなってきている理由が分かるような気がします。

このB&C社から今年(2007年)の春先、面白そうなユニットが2つ発表されました。1つめは21インチ(54cm)ウーファーの21SW150。ネオジウムマグネット、6インチボイスコイル、連続許容入力3kW。そしてBL値が何と39.2! これは猛烈な馬鹿力。実効質量も448gとウルトラヘビー級です。なにより、そのデザインがイタリアンです。



21SW150

2つめは同軸ドライバーのDCX50。断面図が公開されていないので、どんな構造なのかが分かりません。53話でご紹介したBMS社(ドイツ)のBMS4590と似たような構造だと思いますが、特許の問題があると思うので、もしかしたらこんがらがったナポリタン構造?なのかもしれません。スロート径は2インチ。中域のダイアフラムはコンポジット(複合材)とだけ表示されています。これ、どんな「複合」なのでしょう? ボイスコイル径は51mm。妙に小さいですね。でも、DCX50の紹介には5インチ(127mm)ドライバーって記載されています。う~む。

DCX50の高域のダイアフラムはMylar(商標)です。強度や耐熱性のあるポリエステルフィルム。最近の業務用ドライバーのダイアフラムでは、こうした合成樹脂系の素材を見かけるようになりました。こちらのボイスコイル径は32mmです。これ一本で400Hz~16000Hzをカバーするそうです。そして、ご覧のように、これまたデザインがイタリアン!



DCX50






2004/05/15

幸せの黄色いホーン 75話 2332+2451H



2192の中央にしっかりとした2本のアルミ製のステーで同軸に固定されている小型ホーン、これが2332と2451Hです。2451Hドライバーはギョッとするほど高価。こういう機材とは無縁だったのですがオマケ?でくっついてきました。しかし、高い安いと音は別。ホーンが小さすぎる(2332ホーンの奥行きは約11.5cm)ので期待していなかったのです。ところが、2332+2451Hは2192の音のかなりの部分を支配している上に、イコライジングを煮詰めてゆくと全くクセが感じられずJBLの音?という感じがしないほど。



2332+2451H

2451Hというドライバー、実は、黄色いホーンに使用している2446Hと同じダイアフラムを備えています。もっと詳しく説明すると、2446H、2447H、2450H、2451H、2451H-1の5つのドライバーは、どれもD8R2450というリブ入りの4インチチタンダイアフラム。よくもまあ、これだけ作り分けますよね。そして、2インチスロートでは2446Hが最後のドライバーになったようですが、1.5インチスロート/4インチダイアフラムでは、フェライトマグネットの2447H/J、ネオディミウムマグネットの2450SL、2451H/J、2451H-1、2451SL、2452H/J、2452H-SL、そして2451SLをベースに開発されたDD66000の476Beと、知らぬ間にどんどん増えてます。なお、「SL」というのはSnout Less(スナウトレス/筒先なし)の略でしょう。

最も新しい2452H(16Ωタイプは2452J)と2452H-SLは、チタニウム・ダンプド・ダイアフラム(Titanium Damped Diaphragm)を備えています。このダイアフラムの放射方向のチタンリブは直線状ではなく、下の図のように渦巻き状にカーブしています。また「ダンプド」ですからダンプ材(アクアプラス)がコーティングされているのでしょう。



2452H

2451Hと組み合わされている2332ホーンはアルミ製のオプティマイズド・アパチャー・ホーンです。よく調べてみると、この2332、DMS-1(Digital Monitor System One)というモニタースピーカーに使用されていました。これ、JBL社がデジタルチャンネルデバイダーと組み合わせて使用する新世代のモニタースピーカーとして開発した渾身の一作。1996年発売。しかし、お値段(デジタルチャンネルデバイダーと左右2台のセット価格がなんと350万円!)が高すぎるためか、それともデジタルチャンネルデバイダーをユーザーが使いこなせなかったためか、みごとな空振り三振。話題にならずに消え去りました。なお、DMS-1で2332と組み合わされているドライバーは、2451Hではなく2450SL-Aです。



DMS-1

2332はDMS-1の他、シネマスピーカーシステムの5671、TTM129、SP222WH等、いくつかのJBL社のスピーカーシステムに搭載されています。DMS-1や5671のデジタルチャンネルデバイダーの設定表も興味深いものでした。イコライジングでは、受け持ち帯域の中ほどをやんわり削り、高域端側をググッと持ち上げている点では共通していますが、これらスピーカーシステム毎にかなり設定に差があり、ぷろふぇっしょなるでんなぁ、という感じです。

という訳で、タダ同然で入手した2332+2451H、芋蔓式徹底身辺調査や驚愕失敗的粘着微調整といったお金のかからない楽しい作業を提供してくれました。なんだかお気に入りのユニットになったかも。




2004/05/14

幸せの黄色いホーン 74話 モノラル4ウェイの調整



巨大な2192ですが、2、3日そのままの状態にしておくと、段々と目が慣れてきたのでしょう、この部屋にしばらく置いておいてもいいかなって気になってきました。家族の方も、この馬鹿馬鹿しい巨大ホーンに対応しかねている状態ですから、彼らの混乱に乗じてもう少し遊んでみることにしました。

片付けるのが惜しくなったのは、モノラルなのになかなか聴かせてくれるから、ということもあります。ご存知のようにモノラルって少しさびしい感じがしますよね。でも、2192が朗々と鳴るために物足りない感じがしないのです。結局、2006年の10月から2007年の1月いっぱいまで、このモノラル4ウェイのシステムを聴くことになりました。

相変わらず耳だけでレベル調整を続けていきました。なかなかうまく鳴ってくれません。特定の帯域でかなり強い刺激音がします。部分的にエネルギー感が暴走している感じ。これが2392+2490Hが原因なのか、それとも2332+2451Hが原因なのかが判然としません。

3ヶ月ほどがんばってみたものの、とうとう白旗。そこでちょっとだけカンニングすることにしました。JBL社のサイトからダウンロードした2192のデジタルチャンネルデバイダー(DSC280)の設定表、これをチラッと(ホントはマジマジと)見てしまいました。本格的なマルチアンプは初めてだから修行するのだ!という当初のココロザシは、どこ行った?




これはなかなか複雑。それにしても、Bチャンネルの「Lows」って何? これ、どんなウーファー部? それはさておき、2451Hの2つのイコライジングの内の一つがミスプリントのようです。Q値が-3というのは明らかにおかしい。これ、Q値が0.2で、レベルが-3dBの間違いでしょうね。しかし、Q値0.2というのはプロの凄さ。Q値がこれほど小さくなると非常に広い帯域に渡って浅くカーブすることになります。こんな設定、到底思いつきません。2490HのイコライジングのQ値も0.3です。※

さらにクロスオーバー周波数では、2490Hのハイカット(1.23kHz)と2451Hのローカット(1.62kHz)と両者の周波数が違う。これもミスプリか?と、この時は思ったわけです。結局、このパンフレットの設定はミスプリントのテンコ盛りにちがいないと、適当に無視することにしました。なお、「LR」というのは、Linkwitz-Rileyの略でしょう。DCX2496では、Linkwitz-Rileyの-12dB/oct、-24dB/oct、-48dB/octの3種類のスロープ特性を選ぶことができます。

JBL社の設定表の中から、スロープ特性、2451Hのディレイタイム(2ms)、2451Hと2490Hのイコライジング設定を拝借し、さらにレベル調整と各帯域別のイコライジングを詰めてゆきました。マルチアンプ初心者なりに理解できたのは、2490Hではなく2451Hのレベルやイコライジング設定によってシステム全体の音の雰囲気が大幅に変わってしまうということです。こうして、特定の帯域での強い刺激音が未解決のままとはいえ、2007年の1月末には、ある程度満足できる状態に追い込むことができました。



※訂正です。
ここに表示されている2192等の設定表は、Q値ではなくBandwidthで表示されています。
このため、BandwidthをQ値に換算するとC1のBandwidth0.3はQ値の約4.8、D1のBandwidth0.5はQ値の約2.9、D2のBandwidth0.2はQ値の約7.2ということになります。




2004/05/13

幸せの黄色いホーン 73話 モノラル4ウェイでの音出し



2192のパーツが全部揃ったのは2006年9月30日の午前10時。珍しくすぐに行動開始。正常に動作するのかどうか試聴してみることにしました。組み上げてみると、これは大きい。黄色いホーンの2360A+2446Hを組み上げたときにも、その大きさに驚きましたが、今回もやっぱり動揺してしまいました。それにしてもこの後ろめたさ、プライスレス・・・

とりあえず「音が出るのかなテスト」ということで、2色ホーンシステムに接続して以下のようなモノラル4ウェイのマルチアンプシステムを急造しました。DCX2496はモノラル6ウェイまで対応しており、また、AVアンプのDSP-AX450は5つのパワーアンプを搭載しているため、モノラルであれば5ウェイマルチアンプシステムまで構成することができます。




各チャンネルのレベルをざっと合わせて音を出してみました。正常に作動するので、音を出したこの2192をすぐに分解、もう一本の2192を組み立てて音出しします。こっちもOK、一安心。耳だけでレベル調整を始めましたが、しかし、どんどん訳の分からない感じになってきて手に負えません。モノラルとは言え、相手は4ウェイ。

これは難しい。測定しようか?と思ったのですが、これは止めときました。測定結果に引きずられてしまい偏見ができてしまうこと、それから使い手の訓練のためです。また、長い付き合いになるのですから、先を急ぐ必要もありませんし。

という訳で、レベル調整をあれこれ試してみると、ホーン臭い音やホーン鳴きのような音が出たり、そうした音が不意に消えてしまったりします。太い音が出るかと思えば、今度は細い音が出る。ともかく様々な音が次から次へと出てきます。七変化、これは面白い。そして、こうした音の変化を聴いていく内に、これはうまくいきそうだと思うようになりました。鳴らし込みが足りないため音数が少ないし、鮮やかな感じも出せない状態でしたが、なかなか端正な音。どうにもならないようなクセは感じられず、家庭内での使用を拒絶するような驚天動地の音?ではありません。これなら好みの音にまとめて行けるかも、と思うようになりました。





2004/05/12

幸せの黄色いホーン 72話 2392



コンプレッションドライバーとホーンの組み合わせを考えることは楽しいですね。しかし、2490Hのお相手となると、3インチスロート径を持つ2392、2393、2394の3つのホーンしかありません。一方、JBL社は、2インチスロート径の従来のドライバーをこれら3つのホーンに適合させるためのスロートアダプターを販売しませんでした。ホーンとドライバーの許婚状態。

2392とその姉妹達は、Optimized Aperture Horn(オプティマイズド アパチャー ホーン/最適化された開口部を有するホーン)。これがその許婚状態の理由になっています。JBL社のテクニカルノート「JBL's New Optimized Aperture Horns and Low Distortion Drivers」には、そのメリットなどが書いてあります。



従来のドライバー(長いスロートを構成している部分がスナウト部分です)



スナウトレスドライバー


1950年代にWE社の549をベースに設計された375以来、4インチダイアフラム/2インチスロートの大型コンプレッションドライバーを延々と作り続け、JBL社は完璧にあきてしまった・・・のではなく、研究の結果、従来のスロート部を変更してドライバーからホーンへの接続部分を急激に広げる(ラピッドフレアー)と、2次及び3次高調波歪を劇的に減少できることに気付いたのだそうです。

ドライバーからホーンへの接続部分を急激に広げるためには、スナウト(Snout/筒先)を取外す必要があります。幸いにもフェライトやネオディミウム磁石の場合には、このスナウト部分を設ける必要がありません。高域特性が改善されるほか、ドライバーの重量を軽くすることもできます。下の比較グラフによると、歪率が小さくなっているのが分かります。



2380+2450



2352+2451

このあたりのことを見事に看破されていらっしゃるのがヨハネスさん。曰く、「ホーンの利点や好みなんかをとりあえず置いておいて、ホーンというのが必要悪だと考えると、その「悪」の最たる部分はそのスロート部にある。同じ形態で、指向性の広いもの、狭いものの音の違い、音色への影響なんかを聞いてみると、実感としてスロートをなくしたくなる気になることが理解できる。現在の一般の進んでいくべき音の方向として、ダイレクトラジエター的な音で、ホーンの利点を併せ持たせるということで、あのスナウトレスというのが理解できます。」なるほど!

ところで、2392のような大型ホーンの場合、このスナウトレスによる歪の低減は良いとしても、高域側のレンジの拡大はそれほど関係ないはずです。また、ラピッドフレアーと言っても2392のスロート側の形状は急激に広がっていません。



2392

「?」の2490Hに続き、2392の特徴も「?」です。2392のパンフレットには「クリアーで色づけがない音(uncolored sound)」としか記載されていません。こんな説明では納得できないではありませんか。しかし、こういうのが一番いけません。あわれなカタログ男はこういう不十分な情報に弱い。貧弱な想像力をかきたてられてしまうのです。




2004/05/11

幸せの黄色いホーン 71話 2490H



さて、この38cm2ウェイという構成、これがなかなか難しい。なにが難しいかと言えばツィーターを用いないためにドライバーユニットの高域側への広帯域化が必要となるからです。特に、4インチダイヤフラムの大型コンプレッションドライバーになると10kHz以上の再生は至難の業。そのためにダイヤフラムの材質やフェージングプラグの改良等、様々な技術が開発されました。それでどうなったかというと、ある日突然JBL社の技術者達はいっせいにスプーンを投げた…のかどうかは分かりませんが、JBL社はシネマスピーカーシステムを3ウェイ構成にすることを考え始めた。

…3ウェイにするならやってみたいことがある。高域側を伸ばす必要がないからミッドドライバーのコンプレッションレシオを下げて低歪化を図れる。それに厚手のダイヤフラムも使える。サラウンド(ダイヤモンドエッジ)の強度も稼げるから許容入力に余裕が持てる。いっちょ、やってみるべぇか!

という具合に話が進み2490Hが開発されたのかもしれません。2490Hの再生可能帯域は250Hz~4kHz。250Hzまで再生できるということよりも、厚手とは言えチタンダイヤフラムのくせに4kHzまでしか再生できない、というのがこのドライバーの不思議なところ。



2490Hのダイアフラム

もともとチタンダイヤフラムというのはドライバーユニットの高域側への広帯域化のために採用されてきたという歴史があります。2490Hがカバーする帯域なら2480系に採用されているフェノール含浸布製のダイヤフラムの方が好適でしょう。このタイプのダイヤフラムは事実上破壊されることがありませんから強度の点でもチタンダイヤフラムよりも優れているはずです。それに音に厚みが感じられ、その音質の美しさは米国でも高く評価されています。

う~む、よく分かりません。どうしてチタンなのか。チタンダイヤフラムには、何か他の可能性があったのでしょうか? ドライバーユニットの広帯域化と引替えになっていた何か、それをJBL社の技術者達は2490Hによって取り戻そうとしたのではないか。そういう空想話が頭の中でグルグル回るようになり、そのグルグルが2192を買わせたという訳なのです。

2ウェイか3ウェイかという議論。これ、業務用スピーカーの世界では陳腐化していないような…




2004/05/10

幸せの黄色いホーン 70話 38cm2ウェイのルーツ



2192について何をモタモタ考えていたのでしょうか。まずは38cm2ウェイのルーツを探るお話。

JBL社の5000番シリーズのパンフレットには「3ウェイのシネマスピーカー」ということが強調されています。シネマスピーカーの代名詞、ALTECのVOTTシリーズは2ウェイ。しかし、いまさら2ウェイか3ウェイかなどという宣伝文句は時代錯誤もいいところ。



シァラーホーンシステム

ところで38cm2ウェイというのは1935年に発表されたShearer Horn System(シァラーホーンシステム)が商業的に成功したことに端を発しています。このシァラーホーンシステムは、それ以前にスタンダードだったWE社のワイドレンジシリーズが持ついくつかの問題点を解決する事を目的として開発されました。



ワイドレンジシリーズ

ワイドレンジシリーズは3ウェイ。ジェンセン製の46cmウーファー、555ドライバー(アルミ合金製の2インチダイアフラム)とカタツムリホーンの15Aホーンや16Aホーンの組み合せ、そして596Aツィーター。なお、上の写真のワイドレンジシステムのウーファーユニットはTA4151A(13インチ/32cm)の3発。

Lansing Heritageの解説によると、その問題点とはこんな具合。低音部が開放バッフルだったため最低域の能率が低く、またレンジも伸びていない。ウーファー部の歪が多い。555ドライバーと組み合わされている巻貝型の15Aホーンの音道(約3.6m)が長くウーファー部との位相差が大きい。この位相差は2msec.もあり、タップダンスの1度のステップ音が2度に聴こえるほどだったとか。



フレッチャーシステムの低音ホーン部

シァラーホーンシステムの開発に関係したシステムはもう一つ。それは1933年に実験的に開発されたベル研究所のFletcher System(フレッチャーシステム)。これがなかなか好評だったそうで、このフレッチャーシステムを参考にシァラーホーンシステムは開発されたそうです。このシステム、巨大な低音ホーンとマルチセルラホーンによる2ウェイでした。低音ホーンと組み合わされていたウーファーユニットはアルミ振動板を備えた20インチ。中高域用の4インチダイアフラムのコンプレッションドライバーは594の原型、375の本当のご先祖様。

もちろんこのフレッチャーシステムにも問題点がありました。ホーン長が短いマルチセルラホーンになったのに、今度は低音ホーンの音道が長くなってしまい、ワイドレンジシリーズと同様の位相差の問題が。しかし、このフレッチャーシステムはワイドレンジシリーズよりも近代的なスピーカーであり、はるかにマシだった。何がって? それは「2ウェイ構成」だったという点です。

シァラーホーンシステムの開発はMGM社のジョン・ヒリヤード氏が仕掛け人。彼の下に集められたエキスパート達は、J.B.ランシング氏(ユニット開発担当)、ジョン ブラックバーン氏(ランシング氏のアシスト)、ハリー キンブル氏(ネットワーク開発担当)、ロバート スティーブン氏(マルチセルラホーン設計)等々。そして、このエキスパート集団は、新しいシネマスピーカーのウーファー部をどのような構成にしようかと話し合ったはずです。

問題になっているWE社のワイドレンジシリーズは3ウェイ構成。18インチウーファーのくせに低域のレンジや歪率に問題がある。そしてWE社の親分であるベル研のフレッチャーシステムは20インチウーファー。このフレッチャーシステムは評判が良かった。ここでフツーの頭の持ち主なら18インチ以上のウーファーを考える・・・はず。

ところがところが、シァラーホーンシステムのウーファー部は2インチボイスコイルの38cmウーファーである15XS、これとホーン長の短いW型の低音ホーンとの組み合せ。そして中高域はマルチセルラホーンと組み合わされた2.84インチボイスコイルの284コンプレッションドライバー。ワイドレンジシリーズやフレッチャーシステムに比べると非常に小柄な?システムになった。

エキスパート集団の誰かが38cm2ウェイを主張したのでしょう。うーむ、かなり大胆。それにしても一体誰が?

別冊ステレオサウンド誌の「JBL 60TH ANNIVERSARY」には、ランシング氏がダイアフラム径を2インチにするか4インチにするかで悩み、結局2.84インチにしたということが記載されており、また、別冊ステレオサウンド誌の「ヴィンテージスピーカー大研究ユニット編」では、JBL社の前身であるランシングマニュファクチャリング社にはシァラーホーンシステムで有名になる前に8インチから15インチの色々なモデルがあったと杉井真人氏が解説されていました。

これらの記事から想像をたくましくすると、38cm2ウェイ構成はランシング氏が提案したのではないかと思うのです。ランシング氏は彼の15インチウーファーの低域性能に絶対の自信があった、そして、大きすぎない2.84インチドライバーを使えば2ウェイでも高域側のレンジを確保できる上、マルチセルラホーンにより高域端での良好な指向性をも確保できると、そう主張したのではないでしょうか?

ランシング氏が38cm2ウェイの生みの親なのかどうか、その真偽のほどは分かりませんが、ともかく彼らのシァラーホーンシステムはWE社のワイドレンジシリーズを打ち破った。WE社はワイドレンジシリーズでの敗北を、シァラーホーンシステムの成功の後に開発されたミラフォニックシリーズによっても挽回できなかった。ミラフォニックシリーズの18インチ2ウェイという構成は、その後、どのメーカーも真似しようとはしなかったからです。

シァラーホーンシステムによって確立された38cm2ウェイという構成はその10年後の終戦の年、1945年に発表されたALTEC社のVOTTシリーズで大成し、そして1983年に提唱されたTHXの認定を最初に受けたJBL社の現代的なシネマスピーカー4675へ踏襲されていきました。




2004/05/09

幸せの黄色いホーン 69話 2192上陸



JBL社のサイトにはデッドストック品を格安で販売しているE-TENT SALEというコーナーがあります。そこに「2192」という4文字がここ数年間表示されたまま。どうしたものか、と考えること5年。

2192というのは大型ホーンと小型ホーンを組み合せた同軸ホーンシステムです。大型ホーンの部分は2392ホーンと2490Hコンプレッションドライバーから構成され、小型ホーンの部分は2332ホーンと2451Hコンプレッションドライバーから構成されています。そして、この大型ホーン部分の2392ホーンと2490HはJBLシネマシステムのフラッグシップである5674に搭載されています。(2192についてはカタログ散策の07話「大型ホーンのお話」を、また5674については03話「5000番シリーズ」をご参照ください。)



5674

2006年6月8日、購入作戦発動。7月19日の夜に2つの大きな箱が届きました。ワクワクしながら開けてみると、2490Hコンプレッションドライバー、2392のスロート部分、ネジ類が入っていません。これにはガッカリ。そこで2192、93、94のパンフレットをよく読んでみると「To facilitate shipping and handling this horn is made, and shipped in two halves.」という一文を見つけました。どうやら大箱と小箱に分けて梱包されている模様。JBL社に問い合わせ、小箱の方も送ってもらいました。その小箱が届いたのが9月30日。



2色ホーンシステムに接続してテスト中の2192

2392の表面はツヤツヤしており、黄色に塗るのはもったいないなぁ、というのが最初の感想。とても綺麗なホーンでした。



2004/05/08

幸せの黄色いホーン 68話 帝国の逆襲



ヨハネスさんのリスニングルームに入ると、やっぱり嬉しくなってしまいます。ヨハネスさんはクラシック音楽を愛するあまり、こういう大規模システムに発展してしまったそうです。ところが、こちらは恐ろしく単純。そういう難しいことはこれっぽっちも考えたことがありません。こういう得体の知れない装置から音が出てしまうというだけで子供みたいにワクワクするのです。なにかもう、これは夢のよう。

オーディオの華の一つが大口径ウーファー、そしてEV社の30Wはそうした大口径ウーファーの代表格。これをダブルウーファーにして左右計4発でお使いになっておられます。58話で紹介させて頂いた時は左右の壁面に対向するように配置されていましたが、これを正面向きに変更されたとのこと。また二重扉と強制排気装置を備えたアンプタワー(消音箱)も新たに自作されました。今回のDWS'のオフ会の開催目的は「2220お茶会転じてみんなでかまじいさんのパラゴンを聴いちゃおう」というものでしたが、個人的にはこの正面向きの30W×4発に非常に興味を持っておりました。




初めてお顔を拝見するEV社30W。う~む、これはデカイ。この76cmウーファーに比べると隣の38cmウーファー(2220C)がミッドバスのように見えます。そして一つ2400Lもの自作箱さえも小さく見えるほどです。この30Wダブルウーファーシステムを箱入りの状態でごさ丸さんが計測したところ、その最低共振数はピタリ20Hzだったそうです。そして密閉箱なんですよ、これ。

前回聴かせて頂いたときには「この音好きです」なんてはっきりしないことを申し上げましたが、それはいくつかの問題点があるように思えたからでした。低音の姿が今ひとつすっきりしない。ダブルドライバーの中低域が重い感じ。また胸につかえるような一種のホーン臭さのようなものが感じられたのです。ところが、ところがなのです。今回はこうした問題が綺麗さっぱり解決されており、超絶の音に激変していました。まさに帝国の逆襲!

眼を閉じなくても眼前にフルオーケストラがズラリと出現するのです。巨大なスピーカーシステムとその幻のオーケストラが重なって見える。広大で素晴らしい音場感。そして、クラシックとは思えないような強烈な迫力とリアリティ。超重量級のスピーカーシステム全体が総力を挙げて臨んでくる、その途方もないエネルギーが心の中にグングン入ってきて気持ちが高揚してきます。そして、このシステムからは多くのオーディオマニアや音楽ファンがこう鳴って欲しいと切望する音が出ています。弦楽器の切れ味と厚み。管楽器のきらめきと咆哮。そして、ここ一発の大太鼓が大砲のように鳴り響きます。もちろん迫力一辺倒ではなく、霧に包まれたような神秘的で奥の深い雰囲気を漂わせることもできます。これ以上、何も求めるものはない・・・




例えばグランドキャニオンのような広大な風景を写真で表現しようとする場合、シノゴでは足らず少なくとも8×10を使用して非常に精密な描写を行い、これをドーンと大きなパネルに仕立てるというのが正攻法だと思います。そうした手法はクラシック音楽の再生と通じるところがあるのではと思っています。クラシック音楽は遠景描写?になりがちですから、そのまま再生すると漠然としてしまい濃密なエネルギー感やリアリティといったものが失われてしまいます。ホールでの音場のスケール感を維持しつつ濃密なエネルギー感やリアリティを再現するという難題への挑戦、これこそがヨハネスシステムの核心だと思いました。

普通のオーディオマニアならまず考えつかないハウルの動く城のような巨大システムからこういう音が出てしまうことに驚き、同時にこのような方向へオーディオを進めて行くことについて勇気づけられました。そして単にシステムを大型化すれば良いのではなく、小さな要素の積み重ねが必要だということも理解できました。この小さな要素の積み重ねには、ごさ丸さんとARISAさんというシンクタンクが影で動き回っている様子。彼等はヨハネスさんの狙っている方向をよく理解しており、彼等の謎に満ちた自作機材で援護しているようなのです。

なお、ヨハネスさんのリスニングルームではセレッション66というパッシブラジエターのスピーカーシステムも聴かせて頂きましたが、その音は残念ながら気持ちの中に入ってきませんでした。素晴らしい音が出ていると思うのですが、メインシステムに打ちのめされ上の空状態になっていたからです。

今回のDWS'のオフ会は経験豊かな方々から色々な解説や経験談を聞くことをでき、大変楽しくまた勉強になりました。ちょっとレベルが高すぎてついていけない感じもありました。特にやまかささんの薀蓄。大変デリケートな話。しかし、うまく想像できないまでも、そうした世界があるということを知ることができたのは大きな収穫でした。また、どんたくさんは試聴用のCD-Rを繰り返し繰り返しかけます。それをリベロさんをはじめとして皆さん真剣な態度でじっと聴いてらっしゃいます。こういう根気は見習わないといけないと思いましたが、雑な性格故にちょっと無理かも。

聴かせて頂いたシステムは沢山ありましたが、かまじいさんのメインシステム、ごんた先生の4350A、そしてヨハネスさんのシステムの3つのシステムの音が強く心に残りました。パラゴン換装実験をして頂いたかまじいさん、シネマスピーカーシステムをセットアップして頂いたごんた先生、宿泊させて頂いたヨハネスさん、本当にありがとうございました。それにしても前回と同様、楽しみにしていた夕食がファミリーレストランというのは・・・




2004/05/07

幸せの黄色いホーン 67話 ごんた先生のシステム



ごんた先生のシステムを聴かせて頂きました。ごんた先生はガラクターズ総裁。ガラクタを集めるからガラクターズと呼ばれるらしいのですが、呆れるほど多種多様な素晴らしい機材をお持ちです。全くうらやましい限り。こうした方のシステムには大変興味があります。というのは、様々な機材を自宅で聴き比べられておられるので、こうした経験がシステムの音に生かされていると思うからです。

最初に聴かせて頂いたのはホールのようなとても広い部屋に設置されている5.1chのシネマシステムです。JBL社の純正システムとも呼べるような非常に贅沢な構成であり、大型スピーカーがズラリと並んだ様子は圧巻。左右のメインスピーカーは2360A+2450H、2035H+4508箱、そして2242Hのサブウーハーの3ウェイです。これをM553チャンネルディバイダーによりマルチアンプ駆動。2360A+2450HはM553の内蔵回路によって高域補正がなされ、パワーアンプもJBL社の業務用アンプで統一。



5.1 シネマシステム

このシネマシステムの音は非常に純粋な印象を受けました。鮮やかで浸透力のある2360Aの生のままの音。そしてパワフルで豪快な低音。しかし、純粋さ故に多少厳しい印象も受けました。シネマ用のスピーカーシステムは映画館のスクリーン裏に設置され、そのスクリーンを透過させることにより高域側が拡散されますから、スクリーンがない状態ではこのような音になるのだと思います。このシステムは、これから時間をかけて手を入れられるそうですから今後が楽しみなシステムです。ともあれ2360Aはこういう音のために開発されたということを知ることができ大変参考になりました。




次に聴かせて頂いたのは書斎に設置されている4350スタジオモニターです。4350を聴くのは初めてです。至近距離で聴くことになりましたが、この4350の音には驚嘆しました。比較的小音量だったということを差し引いても、刺激的な音が一切しないのです。音が非常に練れているというか、濃密というか、完璧に調整されているように思いました。おそらく大音量で鳴らしても一切破綻することなく迫真の音が聴けるように思います。アンプは低域がマッキントッシュ、高域がクレルのモノーラルアンプです。何れも常軌を逸するような巨大アンプであり、さらにユーレイの放送局用のコンソール(ミキサー)がプリアンプ代わりに使用されていました。到底真似できないような贅沢かつ独創的な組み合せです。

4350が置かれている書斎にはパラゴンも設置されていました。このパラゴンの音も大変素晴らしかったのですが、お伺いした時間が明け方近くというとんでもない時間帯だったため音量が上げられず、十分にその実力を知ることができませんでした。4350とパラゴンは同じ部屋にあるので、ごんた先生にどちらをよくお聴きになりますか?と尋ねたところ、パラゴンの方をよくお聴きになられるとのことでした。

最後に聴かせて頂いたのは八角柱状のエンパイヤのスピーカーシステムです(大変残念なことにカメラが故障してしまい撮影できませんでした)。このエンパイヤのスピーカーは豪華な応接室に置かれており、マーブルトップの家具調の外観が部屋の雰囲気とよく調和していました。この八角柱状の箱の下方に38cmウーファーが床に対向するように設置されており、側部下方に複数形成されている小さなスリットを通して低音が八方に拡散するという珍しい形式です。ハードドーム型のように思われるツィーターとスコーカ-は、それぞれ一つずつが箱の側方に近接して縦に並べられています。音はまるでオルゴールのような美しさ。しかし、低音がしっかりしているので独特の豊かさが感じられます。大変くつろげる音でした。アンプはマッキントッシュのセパレートアンプであり非常に贅沢なオーディオです。

ごんた先生はこのエンパイヤのスピーカーようなシステムがあればオーディオは十分だと思えますとおっしゃっていました。しかし、こんな具合に語れるのは豪華絢爛な大型スピーカーシステムを複数所有されているからだと思います。この一言に経験と格の違いを感じさせられました。そして、こんなに素晴らしい名器をたくさん聴かせて頂いて幸せいっぱいの一夜でした。




2004/05/06

幸せの黄色いホーン 66話 かまじいさんのパラゴン



2006年9月9日、DWS'(ダブルウーファーズ)のオフ会に部屋の隅っこの吸音材として参加させていただきました。ズラリと集結したDWS'軍団のお歴々はやっぱりサメさん系。メインシステムのウーファー部だけ紹介させていただきますと、FUJIYAMAシステム+2226J×4発のリベロさん、4550ダブルスタック+2220A×4発のARISAさん、500L自作バーチカルツイン+2220A×4発のごさ丸さん、EAWフロントロード箱+M151-8×2発のやまかささん、4350のどんたくさん。そしてホスト役の方々はオーディオ暗黒面を司るダースベーダー卿ことヨハネスさん、ガラクターズ総統のごんた先生、巨大アンプの熱で今日も風呂焚きにいそしむかまじいさんです。それから六甲の魔物ことティール使いのhide。さんも参加されました。

今回の軍団はいくつかの師団から編成されています。2220師団はごさ丸さん、ARISAさん、ヨハネスさん、かまじいさん。目についたものは必ず手に入れるガラクターズ師団はごんた先生とかまじいさん。九州師団はやまかささんとどんたくさん。こてどろ三兄弟師団はヨハネスさん、ごんた先生、かまじいさん。そしてリベロさんはなんとDWS'の3名の設立メンバーの内のお一人・・・

さて、かまじいさんは複数の師団に所属していることからも推察できるように、ともかくテリトリーがむやみやたらと広い方なのです。特にガラクターズ師団というのがクセもの。収集の鬼。この師団の進軍跡にはペンペン草もはえていないという猛烈さ。「根こそぎコレクター」とでも申せましょうか。



メインシステム

かまじいさんの自作リスニングルームにて最初に聴かせて頂いたのはメインシステム。59話で紹介させて頂いた前回の状態からどのように変化したのか大変興味がありました。主な変更点は、中低域部の2350ホーンを駆動する2482のダブルドライバー化、817箱のウーファーユニットをガウスから2225へと変更、2450+ショートホーンのツィーターの導入です。また2350を収容する箱を自作したこと。このホーン収容箱のデザインが817とピッタリでカッコいい。

前回聴かせて頂いた時、非常に力強く男性的、そしてパワフルでキレのいい音という印象を持ちました。しかし、かまじいさんは「低域から中域にかけてうまくつながっていない」と指摘。この指摘の意味がよく分からなかった。だって、文句のつけようがない音でしたから。

ところが今回の音! かまじいさんが問題にされていた点、はっきりと理解できました。低域と中域が完全に同じエネルギーバランスになりシステム全体の音が堂々としたものに。これはきっとダブルドライバー化された2482の底力。ホーンの下限帯域が痩せているとウーファーとのつながりが悪くなりますが、この下限帯域がウーファーとつり合うエネルギー感を持つと、中域が濃密な印象になりシステム全体の音が豊かなものになります。

よく考えてみると前回の力強い音はガウスのウーファーユニットのおかげという訳ではなさそうです。中低域部の下限帯域が痩せていたので2350+2482シングルドライバーがウーファーに負け、それでウーファーの帯域の音が相対的に力強く感じられたように思います。そこをちゃんと見抜いてきちんと改善、これが好結果を生んだようです。おそれいりました。



サブシステム

次に聴かせて頂いたのがサブシステム。蜂の巣と山水箱に入った2202(30cmウーファー)という異色の取り合わせ。2202は善戦していたものの、蜂の巣+375に対してはエネルギー感に差がありすぎるようです。でも、蜂の巣+375の音はとても美しく、このシステムにハマるCDもあるかも。



 A5システム

3番目に聴かせて頂いたのがA5システム。3ウェイ化されており、さらにウーファーユニットが416から515へと変更されていました。このシステムは前回から大幅に進化しており、これは素晴らしい音でした。



パラゴン

さあ真打登場、JBL社の永遠のフラッグシップ、パラゴンです。つい最近入手されたそうです。このパラゴンは凄いぞ!という評判・・・

実はパラゴンを聴くのは初めてなのです。なんと立派なお姿。そして固唾を飲んでの音出し。これは美しい音でした。特徴的な湾曲板によって375(376?)ドライバーの綺麗な音がうまく拡散されています。家庭用のスピーカーシステムとして全くよくできていると思いました。低音も多少クセが感じられるものの楽しめます。

ところが・・・かまじいさんがLE15Aを2220に交換してみましょうか?と言い出される。パラゴンがいい調子で鳴ってしまったので照れられたのか、それとも誰かかまじいさんに何事か囁いたのか? かまじいさんはパラゴンの背後の狭い空間で汗まみれになりながら2220へとユニットを交換。ハラハラしながら見守ることでしかできませんでした。

この2220に換装されたパラゴンの音は、残念ながらレベルバランスがとれておらずあまり感心できませんでした。この換装実験については、LE15Aが良かったという方、2220が良かったという方、そしてどっちでもいいやという意見など様々でした。また、マルチアンプ駆動はどうだっ!という声もあがりましたが、やっぱりパラゴンのような高級スピーカーシステムはノーマルのまま、それにふさわしい高級アンプでゆったり鳴らすのが似合うように思います。かまじいさん、貴重な聴き比べをさせていただき本当にありがとうございました。





2004/05/05

幸せの黄色いホーン 65話 初期調整?



音出しから1週間ぐらいすると音がややモコつく状態になりました。あれっ?こんな音だったかな、とDCX2496のイコライザーをいじってみます。ところがちっとも良くならない。そこで試しにハイ側のレベルを+1dBブーストしてみました。するとモコつきはなくなり、あっけなく元のバランスに戻りました。これはウーハー部の1508-8ALCPの能率(聴感上の?)が鳴らしこみによって少し上昇したためだと思います。その後3週間ぐらいたってからさらに+1dB。

+1dBという細かなレベル調整の話は耳の良さを自慢している訳ではございません。イコライジングのブースト/カットとマルチアンプのレベル調整はその効き方が違うようなのです。イコライジングは「面積」で効いてくるという説明を読んだことがあります。例えばイコライジングで極端なブーストやカットを行っても、そのブーストした帯域が非常に狭ければ変化した「面積」は狭いので影響が少ないということです。逆にわずかなブーストやカットであっても、それが非常に広い帯域に及んでいれば変化した「面積」が広いので影響が出やすくなります。

2色ホーンシステムはサブウーハーが付加されているものの基本的には2ウェイです。このためチャンネルデバイダ-のハイ側のレベルを+1dBブーストすると、500Hz以上(500Hz以下のスロープ部分も含めて)の帯域全部が+1dB上昇することになります。31素子グラフィックイコライザの一つのスライドノブを+1dB上昇させるのとは比較にならないほど影響があります。

音出しの際のイコライジングはかなり適当でした。ローライダー18用の最低域のブーストは30Hzで+10dBという数値を先に決定し、あとはQ値を変化させブーストする範囲を広げたり狭めたりして調整、一方、高域のブーストはRX22のスペックシートに掲載されていたレスポンスグラフを参考に適当に合わせました。しかし再調整を試みたもののこれらについては変わらず。新たに1508-8ALCP用のロー側出力のEQを設定。LP、12dB/oct、80Hz、+4dBとし、1508-8ALCPの低域側の量感を増やしました。この新たなEQ設定により、ローライダー18のサブウーハー出力をOFFにしても低音を十分に確保できることが分かりました。




この2色ホーンシステムの出来は予想を遥かに上回るものでした。エネルギー感や迫力では黄色いホーンシステムに負けていますが、2色ホーンシステムの方が気持ちがいい。例えば黄色いホーンシステムでは好きな曲だけ拾い聴きしていたようなCDを一枚通して聴かせます。エネルギー感や迫力があるというのも、ある意味、一長一短ではないか?とも思うようになりました。

ここで殊勲選手のPEAVEY社製ユニットのご紹介。PEAVEY社のユニットのスペックシート(PDF形式)はPEAVEY社のホームページから入手できます。例えば1508-8ALCPの場合、右上のサーチ欄に「PRO RIDER」と入力してGOをクリックすると「Search Manual Results」の欄にそのスペックシートがあることが表示されます。これをクリックしてゆくとダウンロードできます。なお、このスペックシートのユニットの写真は旧型フレームを搭載した初期型のものです。

RX22は「RX22」、ローライダーは「LOW RIDER」、他に「BWX」「LOW MAX」「44XT」などなど。なお、CH-1やCH-2はスペックシートがないようです。その代わり「9040」「9045」と入力するとそれらの旧型と思われるホーンのスペックシートが、また「MF1」と入力するとCH-1が箱に入ったタイプのスペックシートが入手できます。これらスペックシートのレスポンスグラフは最新型であるRX22と組み合せたものではないため高域はもう少し伸びていると思われます。

楽しみにしていた業務用アンプやツィーターの導入計画はその必要性が感じられないため全部ご破算に。2色ホーンシステムは当分このままの状態で聴いてゆこうと思います。初期調整されてしまったのはシステムではなく聴き手の頭の中というお粗末でした。




2004/05/04

幸せの黄色いホーン 64話 2色ホーンシステムの音出し(2)



ボリュームを上げてゆくと・・・「低音はモヤモヤボウボウのお団子状態。2色ホーンの中高域も曇り空、しかもホーン臭い。パニックの中でCDを何枚も取り替えてみたものの全滅。この脱力感、頬をつたう涙・・・」という悪夢のような展開を想像していたのですが、とんでもございません。

心配していた2色ホーン、これがぜんぜんホーン臭くないのです。表情が豊かで極めてナチュラル。CH-1という比較的大きな定指向性ホーンをダブルホーンとして使用しているせいかホーン特有の刺激感が皆無ですし、うれしいことに音が細くならない。1.75インチダイアフラムの2155Hのドライバー(2416H)は細身の音だったので、そういう傾向を覚悟していたのですが、CH-1+RX22(2インチダイアフラム)の音には厚みがあります。

2360A+2446Hの音が生まれ出てくるような(妻の感想)異常なまでの鮮やかさや力強さには今一歩及びませんが、それでも鮮度の高く歪感のない音を聴かせてくれます。それに高域側が美しい。この美しさは2360A+2446Hよりも一枚上手。なお、イコライジングした状態では高域も適度に伸びています。

V字型バッフルのウーハー部はボンつきや混濁するような感じがなく一安心。ボンボンドンドンという音は皆無。ダイレクトラジエタータイプとは異なり押し出し感があります。また音色の傾向としては弾むような躍動感があります。この躍動感はV字型バッフルの特徴ではなく、おそらく1508-8ALCPのキャラクター。フロントロード箱でも音色のキャラクターはユニットのキャラクターに支配されているからです。この1508-8ALCPはローライダー18よりも1808-8SPSの音の傾向に似ています。

擬似V字型バッフル+ローライダー18のサブウーハーについては貧弱なAVアンプなんかで46cmウーハーを駆動できるの?って先入観がありました。しかし、この先入観は外れました。パンチがあって戦闘的。家庭用サブウーハーの低音とはまったく異なる性質。同じローライダー18の黄色いホーンシステムの低音よりもずっと楽しめます。この低音を聴きながら思ったのはウーハーの空振り現象のこと。擬似V字型バッフルではウーハーユニットの周囲三方と対向面側が閉鎖されているため、空振り現象が極度に押さえ込まれているのでは?

それから最低域の指向性なんかコントロールできるわけがないと勝手に思い込んでいたのですが、擬似V字型バッフルの開口部から最低域の低音が前方へ叩き出されてくるのです。箱の容積が減少してしまうにもかかわらず業務用のサブウーハーシステムにV字型バッフルをわざわざ採用している理由、納得です。

全体的には大型スピーカーらしい鳴りっぷりの良さを感じさせるシステムです。JBLのような細身で乾いた感じではなく、艶があり濃密。また躍動感があるため音楽の情感のうねりをよく伝えてくる。色々苦労しましたが、うまくいったのでとても幸せな気分です。モタモタ病も悪くないかも。





2004/05/03

幸せの黄色いホーン 63話 2色ホーンシステムの音出し(1)



おまたせしました。一組目のCH-1+RX22を購入してから約1年2ヶ月経過した2006年6月16日の夜、ようやく音出しをすることができました。モタモタ病は酷くなる一方です。二転三転の設計変更、無い知恵は絞ってもやっぱり出ない、すぐに目移りするのね困りますわの優柔不断。ホントに完成するのでしょうか?と他人事のように怪しむこともしばしばでした。

このシステムもマルチアンプ構成。チャンネルデバイダーは2台目のDCX2496です。値上がり前に3万円で購入。アンプはとりあえずAVアンプのDSP-AX450。フロント2chをパラ接続した1508-8ALCP、サラウンド2chをシリーズ接続したRX22、センターchをローライダー18に割り当てました。DCX2496とDSP-AX450の接続ケーブルはサウンドハウスのクラシックプロ製CXR006F(キャノンメス/RCAオスで1本350円)×5本。

CDプレーヤーとして使用するのは約1万円のSONY社製DVDプレーヤー。DCX2496との接続はデジタル接続。DVDプレーヤーのSPDIFのRCA出力端子と、DCX2496のデジタルXLR入力端子Aとを接続。このデジタル接続には、カナレのBNC/RCAビデオケーブルであるD3C01-SR(730円/サウンドハウス)と、同じくカナレのインピーダンス変換アダプタであるBCJ-XP-TRB(1580円/同)を使用しました。DCX2496の取扱説明書にはAES/EBUの他にSPDIFでも受信できると記載されていたからです。そしてこのデジタル接続、全く問題ありませんでした。

DCX2496のクロス設定は500Hz(-24dB/oct)、サブウーハーは80Hz(-24dB/oct)。1508-8ALCPの低域側はカットしていません。ディレイ等の設定もなし、全て正相接続です。




これでいいはず、と恐る恐るAVアンプのボリュームを少し上げ、各ユニットから音が出ているかを確認。すると左右計4本のRX22から音が出ていない。うーむ、5.1ch入力の場合にはDSPはパスされるとDSP-AX450の取扱説明書には記載されているので、うまくいくと思ったのに。

しばらく考えました。もしかするとサラウンド2ch出力の設定がOFFになっているのでは? それに色々な設定項目をあれこれいじって遊んでいたし・・・ そこでDSP-AX450の取扱説明書を調べてDSP-AX450を初期化してみました。するとRX22から音が出るようになりました。しかし、センターchに接続しているローライダー18から低音が出ていない。これはDSP-AX450のセンターchのデフォルトの設定が「小型スピーカー」になっており、「大型スピーカー」に設定を変更すると低音が出るようになりました。さらにサラウンド2chも「小型スピーカー」になっていたので、これも「大型スピーカー」に設定変更。

ボリュームを絞った状態でとりあえずの調整。まず、DCX2496の出力レベルが高すぎるためDCX2496の入力レベルと5chの各出力レベルを-5dB減衰させました。合計-10dB。それからDCX2496のハイ側出力のEQで高域側をブースト(HP、12dB/oct、6.03kHz、+8dB)、またサブウーハー出力のEQで最低域をブースト(BP、Q=6.3、30Hz、+10dB)しました。このときは偶然にもハイ、ロー、サブ出力のレベルは同一になりました。さあ、試聴開始です。



2004/05/02

幸せの黄色いホーン 62話 箱を作ろう



3つの箱で24mmサブロクシナ合板を5枚使用。カットはいつも親切丁寧な東急ハンズにお願いしました。2155Hの箱を作ったのはちょうど10年前の今ごろだったな、10年たったのに相変わらず似たようなことばかりしているのはどうしたことかいな?なんて思いながら箱を作り始めました。しかも工作技術はヘタクソで当時のまま。進歩の形跡が認められない。今回も数々の小さな失敗に四苦八苦。

最初にバッフル板にウーハーのネジ止め用の穴をドリルで開けます。ホームセンターで売っている5千円ぐらいのドリルガイドを使って垂直を心がけます。緊張のドリル作業の際にはドリル先端が飛び出す面(下側になる面)に使用しない端材等を当てがっておきます。こうしないとドリルが貫通したときにその穴の周囲の突き板がめくれ悲惨な仕上がりになってしまうからです。全部の穴がうまくいったらT型ナットを慎重かつ大胆に打ち込んでゆきます。防護ネットの付属の押え金具のネジ止め用穴も同時に開け、これにも付属のT字型ナットを打ち込む。できあがったらユニットや防護ネットを仮にネジ止めし確認。

次は仮組み。V字型バッフルの箱の場合、底板の上にバッフル板や側板を立ててゆきます。板目や板の反り具合等をチェック。天板ものっけてみて、しばしその勇姿に感動します。仮組みに納得できたら板の組み合せが分からなくならないようにマーキング。接着の順序もここで再三確認。準備ができたらバッフル板や側板に補強材を接着し、それらが硬化したら裏返しにした天板の上に立てるように接着。はみ出した接着剤(木工用ボンド)はすぐにぬれ雑巾でふき取り、それからセロテープでバッフル板や側板の上端同士を軽く固定します。接着剤が半分硬化し接着部分がズレにくくなってから裏返した底板をのせ、その底板の上に雑誌やレンガ等などの重いものを積み上げます。




一番の大敵は板の反りです。隙間の原因。対処方法その1。僅かな隙間なら接着剤を塗りこむだけ。対処方法その2。少し隙間が大きい場合。箱の内側から隙間部分に細材を当てがうように固定し接着剤を流し込む。対処方法その3。板の反りが酷く隙間がかなり大きい場合。隙間ができていない部分のみに接着剤を塗り接着してしまう。1日以上待って完全に接着剤が硬化してから隙間部分に接着剤を適量注入し、隙間部分がぴったりくっつくように一発逆転気合の釘打ち。あっと言う間に板の反り自体を修正してしまいます。

仕上作業は、気温天候風速家族状況午後の予定おなかの減り具合等を指差し確認後、にこやかに決行致します。まず、白色との粉を木口に塗り240番のサンドペーパーをホームセンターで売っている安物電動サンダーに取付けて全体を軽くペーパーがけ。おおっ、だんだん美しくなる! それからきれいな濡れ雑巾で木屑を丁寧にふき取ります。そして、ようやく水性ウレタンクリアの登場。ハケは事前に水洗いしておいて抜け落ちそうな毛は全て抜いておく。薄く塗って乾くのを待ち、また塗っては待つ。これにてめでたく作業終了のはずでしたが、今回は木口に塗った白色との粉がマダラ模様になってしまい悲惨な仕上がりに・・・責任問題だっ!内閣総辞職か?という窮地に立たされたものの、これは木口テープを貼って再塗装。

塗装膜が十分に硬化し、水性ウレタンクリアの強烈な臭いがおさまるまで約1ヶ月待ちました。それに塗料は接着剤の一種ですからユニットが貼り付く等、ロクなことにはなりません(涙の実証済み)。乾くのを待っている間に、箱やはかまの底面にホームセンターで売っている薄いフェルトのようなもの(90cm×1mで800円ぐらい)を板厚の幅に裁断し木工用ボンドで貼り付けました。箱を引きずっても床に傷がつきませんし、今回のサブウーハーの箱では床との間の隙間をふさぐ目的もあります。




2004/05/01

幸せの黄色いホーン 61話 低音を叩きつけろ!



サブウーハーは設置スペースの制約から46cm1発にしました。しかし、このサブウーハー用の箱の設計はV字型バッフルの設計よりも難航しました。せっかく38cmダブルウーハーのV字型バッフルにフロントロードホーンのような雰囲気を持たせることができたのにサブウーハーがダイレクトラジエタータイプでは興ざめです。そこで背面の壁をイメージホーンとして利用した折り曲げタイプのフロントロードホーンやバックロードホーン等、様々な形式を設計してみましたが、いかんせん箱の大きさに対して設置スペースが足りない・・・

ところでV字型バッフルの挟み角には非常に狭いタイプもあります。EAW社にはこんなV字型バッフルのサブウーハーシステムがあります。挟み角を狭めれば箱の容積を稼げるような気がしますが、あんまり狭くするとユニットがひっかかって取付けられない!とか、ネジ止めできない!というような非常識事態が発生しそうです。これ笑えないかも。



EAW SB1000Z

このサブウーハーシステムを見ているうちに、このV字型バッフルをスパッと縦に切断しグルッと90度回転させ、床に低音を叩きつけるようにしたらどうだろうか、と閃きました。46cmウーハー1発を傾斜した下向きのバッフルに取付けて、その傾斜したバッフルと床との間の空間をクサビ型の断面を持つ擬似V字型バッフルにしようというわけです。さらにユニットの両サイドにダクトを設け、クサビ型空間にこれらダクトを開口させてみようと。

文句ございません、これでいきましょう。ユニットはPEAVEY社のローライダー18にしました。すいません、またピービーになってしまいました。でも、これでオールピービーの音が聴けるわけです。なお約2万円で購入したのですが、これも円安ドル高の影響で約2万5千円になってしまいました。




サブウーハー箱の外寸は790W×560H×700D。内寸容積は約200Lです。補強材、ダクト、ユニットにより減少する容積は約20L。従って、実効容積は少なめの約180L。ダクトは4本。各ダクト開口は100×80mm、ダクト長は274mmです。普通に計算するとダクトチューニングは約35Hzになりますが、クサビ型の空間が延長ダクトとして働いて、30Hzぐらいに下がるのではないかと勝手に想像。ハチャメチャな感じになってきて、ちょっと不安です。




底面側から見たところです。ダクトの配置、お分かりになりますでしょうか?