2012/02/28

JBL 2332 and 2352 (3)

下の画像はPEAVEY社の米国特許6059069号に掲載されている図1です。











上の特許図面は煩雑で理解しにくいので作図してみました。
下の図は普通のコニカルホーンです。
スロートから80°の広がり角度を持っています。










 下の図はPEAVEY社の米国特許に基づいて作図したウェーブガイドホーンです。










このウェーブガイドホーンは、スロート部(赤)とベル部(黒)の2つの部分を有する複合ホーンです。
ベル部のコニカルホーンは、両壁面の延長線がスロート口の中央で交差する点で普通のコニカルホーンとは異なります。

スロート部は半径R(青)の円弧をもつ曲面で構成されています。
この円弧の半径はtanθを用いた簡単な連立方程式でももとめられますが、この図のように作図からもとめることもできます。
半径Rの円弧の中心角度はコニカルホーン部の広がり角度の半分の角度になります。
この例では広がり角度は80°ですから、円弧の中心角度は40°になります。
このため交点Aから70°の角度をもつ線を描き、この線がスロート口の延長線と交わった点までの距離が半径Rとなります。


下の図は広がり角度が大きくなるにつれてスロート部が小さくなる様子を描いたものです。
広がり角度は60°、80°、100°です。









2012/02/23

JBL 2332 and 2352 (2)

ウェーブガイド理論はむずかしい理論ではありません。
一言でいうと音波の波面(acoustic wavefront)をうまく手なずけて望ましい放射パターンを獲得するという理論です。

アップロードを断念した4つの論文の代わりに、以下の3つの特許文献でウェーブガイド理論を理解してみよう。
3つの特許が並存するのですからウェーブガイドホーンと言っても色々なタイプがあるのです。
同じ定指向性ホーンでも面構えの異なる2360AとMR94があるように。


1. 我らがPEAVEY社のUS6059069号
この米国特許による同社のQuadratic-Throat Waveguideの解説もアップロードしておきます。

2. アップロードを断念した4つの論文の筆者であるEarl Russell GeddesさんのUS7068805号
4つの論文には掲載されていない興味深いホーンの図面が掲載されています。

3.我らがJBL社の(またかい!)US7936892B2号。
彼らが呼ぶところのProgressive Transition (PT) Waveguidesの米国特許なのだよ。
登録日が2011年3月3日でありようやく現代に追いつきました。


これら3つの特許の中で最も理解しやすいPEAVEY社の特許から見てゆこう。





2012/02/15

JBL 2332 and 2352 (1)

ウェーブガイド理論について調べていたころ、ネットで
"Acoustic Waveguide Theory"
"Acoustic Waveguides In Practice"
"Acoustic Waveguide Theory Revisited"
"Sound Radiation From Acoustic Apertures"という4つの論文を入手しました。

しかし、これら論文は論文の執筆者自身がネットで開示しているものではないため、アップロードすることは問題があると判断し断念しました。
ごめんなさい。



原典の引用なしで説明するというのは・・・
う~む、これは不可能か。









Commented by johannes30w at 2012-02-17 17:04 x
バカでも解るようなご説明をお待ちしております。
(^^)/

Commented by kiirojbl at 2012-02-17 20:44 x
2352が2360や2392とは違うホーンだということをお話しようと思って。
2352はスロート部がない。

Commented by johannes30w at 2012-02-18 03:06 x
あははは
もっとお願いします   !(^^)!

Commented by kiirojbl at 2012-02-18 14:30 x
今度こちらにいらっしゃったときには声をかけてください。
おいしものでも食べに行きましょう。



2012/02/09

JBL 2360A(12)

2360AとMR94Bはいずれも水平指向性が90°です。
しかし、その指向性パターンはかなり違います。

下のグラフの上段はMR94Bの水平指向性のパターン(濃い線)を示しています。
下段は2360A
実線の500Hzと8kHzをMR94Bのそれと比べてみてください。





 





下のグラフも上段はMR94B、下段は2360A。
こちらは1.25kHzと3.15kHzです。









どちらの指向性パターンが優秀なのかは、前方90°の範囲内における均一性や、側方や後方への回り込み量など、比較する要素が複数あるためにわかに判断できませんが、MR94Bの方が側方への回り込み量がかなり少ないのが見てとれます。
2360Aの厚みのある音とすっきりした印象のMR94の音。
こうした指向性パターンの違いも音の違いに影響を与えていると思います。



2360Aというバイラジアルホーン対複合コニカルのMR94。
ライバルの存在が互いの特徴を明らかにします。
スロート口の絞り形状、全長に占めるスロート部の長さ、スリットの幅、ベル部内側の開き角度、ベル部外側の開き角度、ベル部内側と外側の長さの割合等々、多くの構成要素が異なっています。

ホーンの歴史から見ると、定指向性を実現したことは革命的な出来事でした。
しかし、定指向性というのはホーンの有する特性の一つにすぎません。
2360AとMR94を定指向性ホーンという呼び名で同類に分類するにはあまりにも構成やその音に差があるように思っています。




2012/02/03

JBL 2360A(11)

指向性パターンについてさらに考えてみよう。
下の画像はALTECの米国特許4187926号に掲載されている図5である。

2.5kHzにおける指向性パターン。
MRシリーズの原型となったALTEC社の試作ホーンと従来の他社製ホーンとの比較。
試作ホーンのラインは符号40であり、他社製ホーンのラインは符号41。









この他社製ホーンについて、この米国特許公報には"that described in U.S.Pat. No.4071112(米国特許4071112号に記述されている)"としている。
これはEV社のHR6040だろうと思っている。
なお、EV社の古いホーンについてはこちらを。

上の図5は、その指向性の狭さから見て、おそらく水平指向性パターンではなく垂直指向性パターン。
ちなみにHR6040の2.5kHzは下のようなパターンである。

薄いラインで描かれているのが垂直指向性のパターン。
中央に表示されている60°は水平指向性の6dB落ちの範囲を示し、45°は垂直指向性のそれを示している。







図5のライン41と見比べてみると、側方(90°と270°)の方向に膨出している点が共通している。
EV社のグラフの方が整っているが、これは両社の測定環境の差と、好意的かどうか、の差だろう。






図5のライン41の側方への膨出を見て、"ウエストバンディング効果"という不思議な言葉を思い出したなら、あなたの記憶力は相当なものだ。
メタボ腹をベルトで締め付けると・・・たまらず贅肉が側方へ膨出する。
美しくない現象を美しくない喩えで説明する。
これがALTECのセンスである。

そして、この現象を抑えるためには"ベル部に平坦面を用いる"のが良い、と記述がある。
それはそうだろうと思う。
外側に徐々に広がる曲面なら、音波が側方に回り込みやすいというのが、なんとなくイメージできる。
これが曲面ではなく平坦面なら音波はホーンの側方に出かけてみることに興味を持たなくなる、ということだ。

このイメージは理解しやすい。
しかし、だからといってそんな安直なイメージによって"平坦面最高"などという単純な話にはならない。