2019/10/11

JBL 4315 Studio Monitor



4315の"意味のないミッドベース"というのは、12インチウーファーと5インチミッドハイの間に挟まれた8インチの2108のことです。
2108は4315のために開発されたユニットなのですが、12インチクラスのウーファーの磁気回路をそのまま8インチに適用したようなユニットです。
当時は、15インチ、12インチ、10インチ、8インチの各口径のユニットの特徴を把握していなかったので、この8インチというミッドベースユニットがどういう役割を持っていたのかが理解できませんでした。
この疑問がきっかけになり、口径による音の違いに注意しながらスピーカーと接していくようになります。

当時のJBLの8インチといえば、LE8Tが代表作。
比べてみるとこんな感じです。




2108は、3インチ径の銅ロングボイスコイル。
このユニットは、比較的小さな箱に入れると低域側がフラットになるように設計されているように思います。
ちなみに4315では2.83Lの密閉箱に入れられていました。

一方、LE8Tは、2インチ径のアルミショートボイスコイル。
当時のフルレンジのお手本というべきユニットで、密閉なら28L、バスレフ箱なら85L(ダクトは8平方インチ、長さ4インチ)がカタログ(LE8TH)で推奨されています。

LE8Tに比べると、2108の化け物ぶりが理解できます。
グレッグティンバーズ氏の狙いがどのようなものであったかは想像するしかないのですが、おおむねこんな感じだったのではなかろうかと思っています。

"4315は小型モニターであるから、12インチウーファーでいく。
12インチウーファーはウーファーとしては小口径だけれども、"ウーファーの音"がするから、ミッドベースが必要。
ミッドベースとしては10インチと8インチが候補になるけれど、12インチウーファーなら400Hzまでカバーできるので、8インチでいこう。
この8インチはキラーユニットでなければならない。
クロスオーバー回路もきっちり作りこむ…"

L212に搭載するために、2108は手直しされて民生版の112Aが誕生します。
4315での2108の受け持ち帯域は400Hzから2kHzでしたが、L212の112Aは70Hzから800Hzになりました。
TSデータを見ると、低域側の再生能力を重視したパラメーターになっていますが、基本的な性格はあまり変わらないようにも思います。




これも想像の域を出ないのですが、4315を開発して後、もっとクロスを低くした方が良いのではないか、それならマルチアンプだ、というような思惑があったように思います。
しかし、この思惑通りにはいかなかった。JBLらしい"ウーファーの音"を失ってしまったから。
結局、L250では400Hzクロスに戻しています。
なお、SFG磁気回路に変更された2108Hと112Hは、型番のみ異なる同一ユニットです。









2019/10/09

JBL 4315 Studio Monitor



4315に"新しいプロフェッショナル用"を感じたのは、三菱の2S-305のイメージがあったからだと思います。
プロフェッショナルというより仕事用というか"裏方用"。
見ていて全く面白くないというか、魅力がない。
でもまあ、そういうものなんだと、仕方がないことなんだと、それは理解できた。
だから、4320はスタジオモニターとしてストンときたけど、4341や4350は違和感があって無理だった。

もともと秋葉原の街は、キラキラした要素がない地味な街だった。
整然と分類された目立たない部品が、店を違えても全く同じように並べられており、その得体のしれない整列がそれこそ無限に続くという訳の分からない街だったから。

その街で育った感覚は、"裏方用"を嗅ぎ分けることができた。
地味なら裏方用、というわけでもない。
フォスターのユニットなど論外だった。技術のないメーカーの単なる安物という印象しかなかった。

4315は、"意味のないミッドベース"を備えていた。
2S-305は2ウェイで、4315は4ウェイ。
どちらも3ウェイではない理由が"裏方用"であるから、それを無言のうちに語っていた点で共通するものがあった。

閑話休題。XPL200との比較で4315についてグレッグ氏自身が語っている文章がランシングヘリテッジにあったので翻訳してみました。


"4315 vs XPL200

両スピーカーを熟知しているだろうから、このスレッドについてコメントしてほしいとGiskard氏に依頼されました。

4315は、非常にコンパクトでハイパワーの4ウェイスタジオモニターです。
このスピーカーシステムは、実際にそうされることは非常にまれですが、スタジオの壁に埋設することを前提として設計されました。
4315の長所は、非常に強力で速い(けれども深い音はちょっと苦手な)ウーファーと、素晴らしいミッドベース(killer midbass unit)を備えていることです。
LE5は少し攻撃的な感じもしますが、非常に生々しい表現をします。
また、LE5と2405のボイスコイルアライメントがほぼ完璧であるため、ホーンドライバーと共に使われる際に2405が発生するコーミング(ツィーターを並列配置すると発生する干渉のこと)が発生しません。

4315では、HFおよびUHFのアッテネータを「0」設定よりかなり下げないと、システム全体の音が明るくなりすぎます。
とは言え、4315は非常にダイナミックであり、かつ、克明な描写をし、さらに、非常に音楽的な表現に長けたスピーカーシステムです。
今でも私のお気に入りのスピーカーの1つです。

一方、XPL 200は、091や093という素晴らしいミッドレンジを備えています。
ミッドレンジとツィーターは同一平面上に配置され、かつ、ダイアフラムが同じ素材で作られているため、両ユニットの音はててもよくブレンドされています。
2214Hは最低域側の再生帯域の拡張を目的に採用されたましたが、残念なことに4インチ径ボイスコイルを備えている2203と比べると、キックやダイナミクスが感じられません。
そして、XPL200の最大の弱点は、そのミッドベースユニットです。
このユニットは、ビニール製のサラウンドを有するポリプロピレンコーンを使用しており、基本的には非常に滑らかな音を特徴としています。
しかし、駆動中にポリプロピレンが分割振動を生じ、生暖かくて「ふわふわ」したサウンドになってしまいます。
さらにXPL200の問題点として、ウーファーとミッドベース間のパッシブクロスオーバーの位相管理があります。
このクロスオーバー回路は、トグルスイッチの切り替えだけでバイアンプドライブ用に切り替えることができました。
一方、4315のクロスオーバー回路は、高次の遮断特性を持ち、より複雑な切り替え用回路を備えていました。
これは、XPLの開発においてコストの制限が私に課せられていたからです。

2.83vの入力で1dBから1.5dB程度、4315の方が能率が高いと思います。
両システムのツィーターのレベルを同程度に調整した場合、すなわち、4315の方のレベル調整を少し下げると、全体的な特性は次のようになると思います。
4315は、800Hzから1000Hz以下において、よりダイナミックかつ克明な描写を行います。
XPL200は、そこから上の帯域では優れた描写を行います。
XPLは、狭まったバッフルとネオプレーン製のカバー素材により、かなり3次元な描写を行います。
両システムのどちらを選ぶかは難しいと思います。
それは、両者ともに優れている一方、違いもあるからです。
XPLをバイアンプで駆動すると2214への経路からローパスフィルターが除去されるのでクロスオーバーの問題が解決し、XPLの音に命が吹き込まれます。
しかし、そうするためには専用のスロープ特性を与える必要があります。
DX1は理想的であり、その目的のために開発されました。 4315のバイアンプ駆動でも同様の利点が認められます。

両スピーカーシステムがいまだに多くの方々に使われており、喜びをもたらしているのを見てうれしいです。



"4315 vs XPL200

Giskard asked me to comment on this thread as I come from a position of knowing both speakers very well.

The 4315 is a very compact, high power 4 way studio monitor.
It was designed around in-wall mounting although they are very rarely used that way.
Its strong points are a very powerful and fast woofer (doesn't go real deep however) and a killer midbass unit.
The LE5 is a little aggressive but quite lively.
The good news here is that the VC alignment on the LE5 and the 2405 is nearly perfect so none of the combing that usually occurs with the 2405 used with horn drivers happens.

The 4315 requires that the HF and UHF L-Pads be turned down considerably below the "0" setting or the system is too bright.
With that said, it is very dynamic, detailed and quite good tonally.
It is still one of my favorite spaekers.

The XPL 200 has a killer midrange in the 091 or 093.
The blend between the HF and UHF is really good as they are in the same plane and identical materials.
The 2214H was chosen to give good bass extension and it does just that.
Unfortunately compared to a 4" VC 2203, it doesn't have the kick or dynamics.
The biggest weak link inthe XPL 200 is the mid bass unit.
It uses a filled polypropylene cone with a vinyl surround.
It is very smooth but it is too warm and "fluffy" sounding due to the poly collasping under drive.
Another weak point is the LF/MF passive crossover topology.
It was done to allow bi-amping with a simple toggle switch.
The 4315 crossover uses a higher order crossover at that point and has a much more complicated switching circuit.
That means money which I didn't have in the XPL.

I would only expect about 1-1.5 dB difference in 2.83v sensitivity in favor of the 4315.
If both systems are adjusted to similar HF response (i.e. turn down the 4315 a little) and overall sensitivity I would expect the following:

The 4315 should be more dynamic and detailed below 800 Hz - 1000 Hz.
The XPL200 should kick butt above that.
The XPL will be considerably more 3-dimensional due to the narrower baffle and neoprene covering.
It could be hard to choose between them as they are both quite nice but just different.
Bi-amping the XPL really brings it to life by fixing the crossover problem and taking the LF inductor out of the path for the 2214, but a special drive slope is required to do the job correctly.
The DX1 is ideal and was developed exactly for that purpose.
The 4315 benefits substantially from bi-amping as well.

I'm pleased to see that both are still around and bringing pleasure to people. "