2004/07/03

幸せの黄色いホーン 103話 ヨハネスさんと白ホーンシステム



2009年3月15日、春の日曜日、穏やかな午後、数km離れた駅前で待ち合わせ。落ち着かない。家に居られない。車で駅の周囲をグルグル巡回しながら時間をつぶす。どうしたものかと悩む。どこの馬の骨とも知れぬ18インチを埋め込み、ペンキをベタベタ塗りたくり、白ホーンシステムなどというフザケた命名。調子に乗ってこんなことをすれば、相応の報いを覚悟しなければならぬ。だから「よせっ!」と言ったのに… そんなことを考えているうちに、黒装束に身を固めたベーダー卿が通りの向こうに出現。休日の横断歩道が静寂に包まれる。実に危険。こちらは、アンプを暖めたのとお菓子を買いに行っただけの丸腰状態。これで白ホーンシステムからドジな音が出てしまえば…

大袈裟だなぁ~、ですね。まあ、オーディオの話ですから、そうそうドラマチックな展開にはなりません。お昼ごはんがまだとおっしゃるので、子供と一緒に春野菜ラーメンを食べに行き、煙草を吸い、なんとなくリラックス。「最近、我が家はエヴァンゲリオンブームなのです。」「あっ、あれは面白いね。」というような朗らかな会話。そんな雰囲気のまま白ホーンシステムを聴いて頂きました。いつもの数枚の試聴用CD。ちょっとドキドキしながらお聴かせすると…「ちゃんとALTECの音がするなぁ。」とヨハネスさん。おおっ、笑ってる、怒ってないね! ううっ、良かった。何だかうれしい気持ちになってきた。ありがとう。感謝の言葉、初めての言葉。あの人にも言ったことなかったのに…(エヴァのファンなら分かりますよね)

白ホーンシステムは初期調整の段階から非常にまとまりの良い音が出ており、あれこれ弄る必要がありませんでした。-24dB/octの遮断特性を選択すると、ダークサイドの音の遺伝子が感じられる分厚い音になります。ヨハネスさんには、主にこの設定で聴いて頂きました。この設定、クラシックにぴったりなのですが、それ以外のCDだともう少しすっきりさせたい気持ちになることがあります。それで-48dB/octの遮断特性の設定をあれこれ試しています。これがなかなかうまくいきません。もしかすると-36dB/octぐらいがいいのかもしれないなぁと思っています。

次に、白ホーンシステムと同じ部屋に置いてある電子ピアノシステムの2155Hと1808-8SPSを聴いて頂きました。大型ホーンを使用している白ホーンシステムには太刀打ちできませんが、伝統的なJBLサウンドを聴かせてくれます。白ホーンシステムと電子ピアノシステムは、1台のDVDプレーヤーのSPDIFのRCA端子と光端子からそれぞれデジタル信号を受信しているため、同時演奏が可能です。ワルターのブラームス交響曲第3番(モノラル)の同時演奏を行うと、「うん、これはヒントになる」とのご感想。ALTECとJBLのキャラクターが溶け合い、さらに部屋中の空気が揺り動かされるような面白い効果があります。

なんだか警戒心がすっかり無くなり、調子に乗って2色ホーンシステムも聴いて頂きました。この2色ホーンシステムにはミッドベース等を加える計画があり、その様子をみるために別アンプにつながれたLS-11EXが同時に鳴っているという変則的な状態になっていました。2色ホーンシステムの音だけ出すと「500Hzあたりが足りない。」「V字型バッフルのウーファー部のローパスフィルターを外してみよう。」とのご指摘。卿は耳が良いのはもちろんのこと、なによりも大切な「その音」への対処法が身についている。これは経験のなせる技。こういうのが、かなわないなぁと思う。こちらは何度も測定しイコライザやクロスをいじり、このシステムの詳細を把握しているので、ヨハネスさんの指摘が非常に正確であることが良く分かります。最後に、Q値を10に設定したノッチフィルターを解除し、2色ホーンの干渉によって生じる3kHzちょい上のピークを聴いて頂くと、すぐにテッシュを3枚まるめてご覧のとおり。この方法でも干渉を消すことができました。




という訳で、白ホーンシステムの前に二人して黙り込んでしまう、という最悪の状況はなんとか回避できました。オーディオは一人でコツコツ、自由で孤独が一番安心かもしれませんが、こういう緊張感のある場面を迎えるのもなかなか楽しいものです。それに、やはりスピーカー談義が面白かった。ヨハネスさん、本当にありがとうございました。また、遊んでやってくださいね。次回は黄色いホーンシステムの試聴会ですか? う~ん、これはがんばらないと!





2004/07/02

幸せの黄色いホーン 102話 LoMax18



昨年(2008年)はスピーカーの年でした。4月に黄色いホーンシステム、11月には白ホーンシステムと、怒涛の増殖、残る場所はお風呂場だけ、むやみやたらの快進撃。あげく家庭の構成員よりもスピーカーのほうが多いという事態となり、こんなところにも少子化の影が…で、作ってしまったものは仕方ありません。とことんお付き合いしたいと思います。そういえば、昨年は2155Hと付き合い始めて12年目の年でもありました。いまだ2155Hは電子ピアノシステムでがんばっています。一方、LUXKITのパワーアンプ、A501は、ブツブツという異音を出すようになり残念ながら倉庫に引退。ちょうど30年間使用しました。

白ホーンシステムの音は、フロントロードホーンによる中低域の質感が特徴的です。この手のフロントロードホーンは、厚みのある中低域を持つものの、同時に、中低域が一塊に感じられるような傾向も持っています。白ホーンシステムでは、MR94+291-16Kによる鮮やかで生々しい高域成分が、この中低域の分解能にも影響を与えており、一塊に感じられるような傾向は弱められているように思います。この充実した中低域はオーケストラの弦楽器群の厚みや力強さを実にリアルに表現します。

ところで、18インチウーファーのLoMax18は、フロントロードホーンの中低域をしっかり下支えしているため、VOTTの中低域の張り出した雰囲気を抑えています。この強力なウーファーユニットの磁気回路は2段積みされた4インチボイスコイル用のフルサイズのフェライトマグネットから構成されており、ユニットの重さは15.2kgもあります。Peavey社の他の18インチウーファーユニットと共用であると思われるアルミ鋳造製のバスケット部を備えています。この8本のスポークは厚みが薄く、指先で弾くとチンと小さく鳴ります。これはおそらく、軽量化の要請、バスケットの共振周波数を高めウーファーの受持ち帯域内での共振を排除、そして、トッププレートの放熱効率を高めネオジウム磁気回路を搭載した場合にも転用できるように工夫されているのだと思います。LoMax18を白ホーンシステムに採用した理由は、828内部に確保できる箱の容積が小さかったことと、大きな実効質量(Mms194.68g)に興味があったためです。エージング中なのでまだはっきりしたことは分かりませんが、パンチがあってクリアな性格のように思えます。なお、828のウーファー部に取り付けた2本のダクトは、開口部が12cm×14cm、長さが28cmです。





Peavey社の18インチウーファーユニットは、Black Widow BWXシリーズの1808-8SPS、1808-4SPS、1808-8CU、1808-8HEの4機種、LowRider18、今回のLoMax18、そして、ProRiderシリーズの1808-8ALCPがあります。この中でLoMax18の価格がかなり高いのですが、これは磁気回路がLoMaxシリーズのみに適用されており同磁気回路の生産数が少ないことが原因だと思います。従って、これら7機種のユニットは、業務用としての過酷な使用状況における耐久性を除き、家庭内での使用における性能においては差がないのではなかろうかと。また、安価な製品でも厳しいQC(品質管理、Quality Control)が要求されている現代においては価格が安いから品質が劣るという心配もほとんどありません。7機種の中からどれか1機種を選ぶとなると、それぞれ実効質量が異なり必要となる箱の容積も様々であるため、大いに迷いますよね。

18インチウーファーを導入すると低音問題に一応の決着がつくように思います。かなり広い部屋でも1発で十分な低音エネルギーを提供することができます。一方、こうした大口径ウーファーは、最低域まで再生するために部屋のクセの影響を強く受けたり、中低域への影響により音が濁ったりするため、使いこなすのがなかなか大変です。特に、クロス設定では、クロス周波数よりも遮断特性の方が鍵を握っているようです。中低域に濁りを感じる場合には-24dB/oct以上の急峻な遮断特性が効果的だと思っています。