2019/06/10

DIY Speaker (105)



デジタルアンプ(Behringer A800)を導入しようかどうか迷っていたころ、デジアンのレイテンシーってどうなんだろう?と思い、ヨハネスさんにたずねてみたことがありました。
ヨハネスさんはデジアンをお使いになっていたようなので。

「マルチアンプでデジアンを混用すると問題ないの?」
「ホームオーディオでは気になるかもね。一番嫌なのは最初は気にならず、でもいつまでたっても落ち着かないなんてことがおこりそう。」
「う~む」
「デジチャンならレイテンシーをそろえる機能があったと思うよ。」

DCX2496にはそんな機能なかったような…と思いつつ、後日、取扱説明書を確認してみると、おおっ、あるではないですかオートアライン。
これは楽しそうです。早速、試してみました。
黄色いホーンシステムや改造ALTECシステムでは、CADで描いたユニット配置からディレイの距離を設定していたので、こうした作業は初めてです。




ECM8000をDCX2496のC入力に接続。"SET UP"の2ページ目にオートアラインがありました。
比べる出力を選び、中央の大きなダイヤルを回して音量調整。
ザッザ、というようなノイズが出て、あっという間に調整完了です。

1. SUB 1808-HPS                 600mm
2. LOW LOWER 1508-8ALCP         518mm
3. LOW UPPER 1508-8ALCP         580mm
4. MID LOW 1008-8HE             0mm (DLY OFF)
5. MID 2451H                    0mm (DLY OFF)
6. MID HIGH 2431H               428mm
7. HIGH 2407H                   498mm

サブウーファーは、自動調整で得られた数値ではなく、こちらの都合で変更させていただきました。
また、ホーンタワーの両ユニットについては位置を合わせて作ったつもりなので、いずれもディレイはゼロです。

初期調整の際にレーザー距離計でざっくりあわせておいたので、それほど変化はありませんでしたが、気持ちすっきりしたように思いました。
ディレイの設定がうまくいってないと、高域の鮮やかさが後退します。
例えば、このDIYホーンシステムの場合、大型ホーンの2451Hに500Hz以上を全部再生させたときの音と、ディレイの設定をせずに2451Hと2431Hと2407Hとをならした音を比べるとすぐにわかります。
2451Hに500Hz以上を全部再生させるときには、2451Hの高域側のLR48をOFFにし、2431Hと2407Hをミュートします。

一方、低域側は高域側と比べると分かりにくいというのが感想です。
また、サブウーファーは群遅延の領域での設定になるので、クロス周辺の周波数で合わせこまないとダメなんじゃないのか、なんて考えています。

オートアラインではマイクの位置で結構数値が変わります。
しかし、ディレイの設定がうまくいっていると、リスニングポジションから外れている場所でも音の鮮やかさが後退することがありません。
これは結構不思議なことだと思っています。




 

2019/05/27

DIY Speaker (104)



自作スピーカーの楽しさ、これはまさにプライスレスです。
どれにしようかな?のスピーカーユニットの選定。
箱の容積やバスレフの計算。あれこれ思いをめぐらす。
それからデザイン。ユニットを箱のどこに取り付けようかとか、仕上げはどうしようかとか。
そして工作。工作技術が低ければ低いほど、経験が少なければ少ないほど、ドキドキ感がすごい!
小さなスピーカーから大きなスピーカーまでこうした楽しさにかわりはありません。

そういう意味で、今回のDIYホーンスピーカーの製作は大変楽しめました。
ホーン作りでは大失敗の繰り返しで、これがまた得難い経験というか泣き笑いの連続でした。
できあがってみると、よくあきらめないで完成にこぎ着けたものだと感無量。
人生の素晴らしい思い出になったと思います。

自作スピーカーの魅力のひとつに好みのデザインにできるというのがあります。
市販のスピーカーシステムは、音楽を楽しむには、デザインが固いというか真面目すぎるというか。
業務用ユニットを使用した自作スピーカーの海外サイトやLansing HeritageのDIY Forumの中には、「こやつ、こんな魔法を使ってくるのか!」みたいなユニークなシステムを見ることができます。
そういうシステムを見ると、創作意欲が刺激され、何故だかこちらも生き生きとしてきます。

DIYホーンスピーカーでは、ユニットやダクトの数が多いので、その配置についてあれこれ検討しました。
製作期間が8年ぐらいと長かったので、その間、様々なデザインが浮かんでは消えを繰り返しました。
ブログを振り返ってみると、ホーンタワーの横に幅55cmのウーファータワーをくっつけるという案は2012年の3月ごろに出てきます。


この案が基本になり、2017年の11月の最初の音出しの前後からウーファータワーのデザインの本格的な検討が始まります。
1. 左側に現れるオーケストラのヴァイオリン群の艶やかさを堪能するために2431Hを中央に配置すること。
これが最優先事項。次に、
2. 上部ウーファーは、ヨハネスさんの4発の30Wの配置を参考にしてなるべく高い位置に配置したい。
という希望が続きます。

ツィーターである2407Hの配置を2431Hに近接させることは決まりましたが、これを2431Hの外側にするか内側にするかで悩みました。
JBLの4348では、2431Hの民生版である435ALを10kHzまで使用しています。
10kHzであれば、通常のツィーターの帯域は2431Hから再生されるであろうから、2407Hを2431Hの内側に配置することにしました。

上部ウーファーのダクトは、2431Hのせっかくの美音を損なわないように、サイドダクトや背面ダクトを検討しました。
背面ダクトは背板の無用な共振を招きそうなので却下、また、側面内側に配置すると2つのダクトが対向することになるので、これも気持ちが悪く却下です。

結局、部屋のコーナーに向けて側面外側にダクトを配置することになりました。
部屋のコーナーは悪いことにホーンタワーによって封鎖されてしまった状態になっていますが、ホーンの背面形状が複雑なため気柱共振は避けられるのではないかと。
また、何らかの効果が感じられる場合には、響きの補強という点からこれを積極的に活用してみるのも面白いと思ったのです。
もっとも、悪影響が出るようであれば、ダクトに詰めものをするまでですし。







複数のスピーカーユニットの連続的な配置、あるいは、視覚的な関連性により、視覚的な意味合いが生じます。
例えば、上の画像のLo-DのHS-10000では、小さなユニットから大きなユニットへ至る視覚的な誘導が感じられます。
こうした視覚的誘導を意識しながら全体のデザインを考えてゆきました。




大きなホーンとウーファーユニットとの関連性が2つ、それを縮小したようなミッドハイとハイの関連性が1つあります。
これらを赤のラインでつなぐと上昇する視覚的な誘導が生じます。
一方、4つのウーファーとサブウーファーを青いラインでつなぐと下降する視覚的な誘導が生じます。
この赤の上昇ラインと青の下降ラインから、両翼を広げた猛禽類のイメージを創り出しました。
この視覚的イメージは、扇型に各楽器が配置されたオーケストラを前方から見たイメージにも合致し、音楽鑑賞の際のイマジネーションを広げてくれます。

こうしたことはCADの図面で検討できるのですが、中央の十字状のスリットや、ウーファータワーのバッフル面に対して内側を向いているホーンタワーのバッフル面がどのような感じになるのかは、完成するまで想像の域を出ませんでした。
中央の十字状スリットの水平スリットは当初2mm厚のシナ合板をスペーサーにして形成していたのですが、これではスリットの存在感が薄いため、4mm厚に変更した経緯があります。

ウーファータワーとホーンタワーのバッフル面との角度はホーンタワー側を微妙に移動することにより変化させ、「ここだねっ!」という角度を選んでいます。
また、サブウーファーの傾斜バッフルがウーファータワーとホーンタワーの角度のついたバッフルにマッチしていることに気づいたのも、2期工作完成後でした。

DIYホーンスピーカーは、その浮世離れした雰囲気がインスタレーション アートのようでもあります。
大型スピーカーの場合、音が出ていない時でも目を楽しませてくれるというのは、かなり重要なファクターではないかと思っています。