2004/09/07

セブンのお話 07話 君のこと忘れない



2012年12月19日、750iLとさよならの時がきました。2005年11月25日の納車から7年、オドメーターは94000kmとなりました。購入時は45000kmでしたから49000km走ったことになります。購入当初は3年程度もってくれればいいと思っていたので7年間も乗るとは思いませんでした。車検1年付きを3回車検に通し、その3回目の車検が切れるのが12月20日。その前日まで乗っていました。




7年間、エンジン、トランスミッション、オートレベライザーという主要部分にトラブルはありませんでした。エンジンは乗れば乗るほどあたりがついていったような気がします。1995年製なので17年も経っているのにいまだに全体がしっかりしています。
3回目の車検では走行に支障がない箇所(天井の布張りの剥がれ等)については手を入れず最低限の費用で済ませました。車検の際にバッテリーも交換したほうが良いとアドバイスされたのですが、750iLは大型のバッテリーを2個も搭載しており交換費用も馬鹿にならないのでそのままにしておきました。結局、バッテリーはもちました。
左側のストップランプが点灯したりしなかったりというクセがあり、車検の際に修理してもらったのですが、その後、すぐに再発しました。BMWは修理しても直らないというのは本当です。




最後の1年、ウォッシャー液が出なくなったりしましたがこれも修理せず。ポンプの作動音はするのでおそらくパイプかタンクに穴があいたのでしょう。ステアリングオイルの漏れも持病です。対処法はオイルを注ぎ足すだけ。そのほか助手席と右後席のドアロックが時々作動不良になりました。これもそのまま。オイル交換は車検ごと。こんな具合ですからメンテナンス費用はほとんどかかりませんでした。
なお、無理な運転はしていません。据え切り、フルロックは厳禁、暖機は十分に行っていました。急発進など駆動系に過大な負担がかかるようなこともしていません。




車を停めていると年配の方から話しかけられることが結構ありました。そのときに必ず話題になるのが燃費のこと。オンボードコンピューターによると49000kmの平均燃費は7.3km/L(カタログ値6.4km/L)でした。以前乗っていた日産セフィーロ(750iLと同じ95年製のV6 1995cc)の燃費が10km/L(カタログ値11.6km/L)。49000kmを走るのに必要な燃料費を750iLとセフィーロで比較してみると、750iLが104万410円(ハイオク155円/L)、セフィーロが71万500円(レギュラー145円/L)。差額は33万円、7年間だと毎月3900円ぐらい。
平均車速は37.3km/hでした。都心の渋滞を這いずり回ることが多いのでこんなものでしょうか。平均車速で49000kmを割ってみると1314時間乗っていたことが分かります。日数にすると55日間。




高速を流していると本当に気持ちがいいです。V型12気筒の緻密な感触とEDC(電子制御ダンパー)よる乗り心地に陶然としてしまいます。一方、峠道も実に楽しい。軽快にステップを踏むようにワインディングロードを駆け抜けます。カーグラフィック誌の1995年9月号の750iLのインプレッション記事には、「飛ばすと高まる一体感の不思議」としてこんなことが書いてあります。「たとえば交通量の少ない夜の首都高速を走るだけでも、750iLがただのプレスティッジサルーンとはわけが違うことがよくわかる。本来遠く離れた位置で路面を蹴たてているはずの後輪が、あたかも背中のすぐ後ろでグリップしているように感じられるのだ。しかも前述したようにエンジンとスロットルペダルの緊密な関係はいついかなる時も失われないから、まるでふたまわりも小さい車を操っているかの如き一体感とともに、自信を持ってコーナーに飛び込んでいける。しかも飛ばせば飛ばすほどこの一体感が高まっていくから不思議だ。」多少大袈裟ですが、750iLの特長をうまく表現できていると思います。この記事に付け加えるとするならば、それはふたまわりも小さい車では到底望めない重厚な乗り味を持っていることと、BMWのフラッグシップならではの精密なハンドリングを楽しめるということでしょう。

流していても飛ばしていても面白い、というわけで750iLは素晴らしい車でした。メンテナンスをほとんどしなかったのでマニアとはとても言えませんが、車道楽の楽しさがちょっぴり分かったような気がしました。

(2012/12/19)





2004/09/06

セブンのお話 06話 BMW V12エンジンの血統

 

乗っている750iLの形式はE38です。この12気筒エンジンについて調べてみました。E38のエンジンはM73と呼ばれています。1994年から製造されており、ボアストロークが85mmX79mm、気筒当たり448.25ccの5379cc。SOHC2バルブ、圧縮比10:1、240kW(326PS)5000rpm、490Nm(50mkg)3900rpm。このM73は先代E32の12気筒エンジンであるM70エンジン(4988cc、ボアストローク84mmX75mm)を拡大し圧縮比8.8:1を高めたもの。


M73

WikiによるとM70を搭載したE32の750i/iLは第二次大戦後のドイツ車で初のV型12気筒エンジン搭載車だそうです。そしてM70は1987年から1994年まで製造されています。1989年からは8シリーズの850iにも搭載されます。


M8

さらに1990年にはM70をベースにそのスポーツバージョンであるS70/1が開発され、M8プロトタイプに搭載されます。このS70/1の詳細なスペックは公表されていませんが、排気量は約6Lに拡大され、410kW(558PS)という高出力でした。4バルブだったのか、DOHCだったのかは不明です。このM8は1台のみが製作されただけでお蔵入りとなりますが、エンジンはディチューンされS70(5576cc、86mmX80mm、381ps、56.1mkg)として850csiに搭載されることになります。850csiは1992年秋のパリショーで発表されています。


マクラーレンF1

S70/1はS70/2に発展し、あのマクラーレンF1に搭載されることになります。このS70/2は6064cc、DOHC4バルブ、Double VANOS、86mmX87mm、627PS、66.3mkgという怪物エンジンであり、もはやM70と共通するパーツは一つもありません。マクラーレンF1をレース用に再設計したマクラーレンF1GTRは1995年のルマン24時間レースで1位、3位、4位となっています。


エンゾフェラーリ

なお、フェラーリのエンゾフェラーリ(F60)のF140エンジンはこのマクラーレンF1のS70/2をターゲットとして開発されたと言われています。


BMW V12 LMR

S70/2エンジンは、さらにBMW V12 LMRに搭載され1999年のルマン24時間レースでまたもや勝者となっています。このときの2位はトヨタGT-One TS020でした。


TS020

このようにS70/2はモータースポーツ部門で成功しますが、同じくM70をルーツとするM73はどうかというと1999年度のInternational Engine of the Year(4L以上の部門)を受賞しており、1998年にはロールスロイスのシルヴァーセラフに搭載されることになります。


シルヴァーセラフ

(2012/7/1)