2004/04/20

幸せの黄色いホーン 60話 挟み角の決定



プロライダー1508-8ALCPを入手してみると、これは素敵なユニットでした。深めのカーブドコーンと波型エッジ。新型フレームは仕上げがグッド。4インチボイスコイルであり磁気回路やターミナルもなかなか立派。これで約1万7千円ですからDIYオーディオには助かります。なお、購入後に円安ドル高の影響で約2万円に。

V字型バッフルの箱はバスレフにしようと考えていましたが、箱がバカでかくなってしまうのでヤメ。それなら困ったときの背面開放。最低域はサブウーハーに任せてしまえばいいわけです。問題がもう一つ。V字型バッフルの挟み角は90度だと思い込んでいましたが、ホーン部分の奥行きが浅くなってしまうのでV字型バッフルならではの音?が期待薄です。これは困る。

なんとなく踏み切れないまま半年以上が経過。やっぱり納得するまで考え抜いたという実感を得ておかないと幸せにはなれないかも・・・と、そんなある日 Community Professional Loudspeakersのサイトをぼんやり見ていたら30cmウーハー6発のスタジアム用ホーンが目に止まりました。



R6-Basshorn

これV字型バッフルというより立派なホーンですよね。こんな具合に挟み角を狭めてホーン部分の奥行きを深くすると面白いかもしれないと考え、さっそく設計変更。どの程度の挟み角にすれば良いのか分からないので、箱の奥行きを深めにしてみると挟み角は約60度になりました。フロントロードホーンの雰囲気もあるし、これなら作ってみる価値がありそうです。


 
ホーンのカットオフを計算してみようかとも思ったのですが、スロート面積をどんな具合に捉えればよいのかさっぱり分かりません。結局ルックスと設置スペースから適当に決定。箱の幅を78cm奥行きを60cmにし、板取の都合からバッフル板の高さは45cmにしました。傾斜しているバッフル板と側板の合わせ目等も全く適当。直径1.5cmほどの安い丸材を継ぎ目にくっつけてごまかしました。完璧を求めても工作技術が追いつきませんし背面開放型なので精密に作る必要もありません。うーむ、お気楽DIYとは言え、こういうことで良いのであろうか・・・


 





2004/04/19

幸せの黄色いホーン 59話 かまじいさんのシステム



ヨハネスさんのとても美しいアルピーヌ  ル・マン(全世界300台限定!)に乗せていただき、かまじいさんのリスニングルームに連れて行ってもらいました。普段は優しい方なのですがハンドルを握ると人格豹変。炸裂するターボパワー! そしてサメさんのお友達はやっぱりサメさんでした。

かまじいさんのシステム、ALTEC社の817フロントロード箱の上に積み上げられた大型ホーン2350と2360T。817に組み込んだ38cmウーハーはガウス社のユニットだそうです。このシステムはミッドローに2350+2482を導入された直後だそうで調整はこれからということでした。しかし、このシステム、鮮烈そのものの素晴らしい音でした。下の画像(この画像の撮影時には2350+2482は導入されていません)は、だーださんに提供して頂いたもの。カメラを忘れてしまったという失態。




下の画像はヨハネスさんから頂いたもの。2350が写っています。どうして画像が入手できなかったかというと、かまじいさんはその2日後にシステムを解体してしまったからです。2350をダブルドライバーで駆動するためだそうです。いい音なのに・・・




ALTEC社のフロントロード箱の聴き比べもできました。メインシステムの817とA5システムの828です。この828に組み込まれていたのは416(515は床の上でお休み中)。箱の違いよりもユニットの性格の違いが大きいと感じました。817は非常に好印象です。パワフルなのにキレがいい。

この817だけでも低音部は十分なのですが、さらにJBL社の4842が加えられています。この4842は46cmダブルウーハーによる重さ129kgのサブウーハーシステムです。3個の大口径のダクトは、直径20cm、ダクト長40cmもあります。ヨハネスさんが「凄いよ」とおっしゃっていたように圧巻の重低音。JBL社の最強アンプであるMPX1200を片CHあたり1台使用。これぞJBL社の低音。

2245Hは2235Hの46cm版という位置付けになり、46cmウーハーの中でも実効質量が重い本格的なサブウーハーユニットです。ローライダー18よりもずっとヘビーな低音を聴くことができました。なお、2245Hのバスレフ箱とイコライジングについてはNew Lows In Home-Built Subwoofersに詳しい解説があります。

817や4842という猛獣をお使いになられているかまじいさんは、実は大変優しく物静かな感じの方です。しかし、その内に秘めた情熱は大変なものです。ヨハネスさんの2400L密閉箱がお手製なら、こちらはなんと広々としたリスニングルーム自体がお手製。

このリスニングルームはビルのフロアの一画を仕切って作られています。さらにビックリするほど巨大な3管プロジェクター(鮮烈な画像!)が吊ってあるし、これ並大抵の努力では不可能です。メインシステムの他に、A5システム、4675、B&W801、ランサー44があり、床には巨大アンプ、大口径ウーハー、大型コンプレッションドライバー、大型ホーン等、入手困難な名器がそこらじゅうにゴロゴロ。かまじいさんは並べた375の上に腰掛けて音を聴いています。唖然。

ところで、ヨハネスさんとかまじいさんの共通点は「グタグタ言ってないで実行してみる」という点だと思います。オーディオの世界でよく耳にするような話を一度は疑ってみる。そして苦労して試してみてそこから一つ一つ学んでゆくという姿勢があります。

また、お二方の共通点は稲妻型超高速移動が日常茶飯事らしいこと。かまじいさんの戦闘機はコスワースエンジンを搭載したピカピカのロータスセブン。エンジンルームを覗かせていただくとフレームワークが美しい。タペット音や排気音から完璧に整備されていることが分かります。その他、無限キットを組み込んだオフロードバイクと忍者。全くうらやましい。

かまじいさんのリスニングルームでごんた先生とboliceさんにもお会いすることができました。ダブルウーハーズのサメさん達に囲まれて本当に楽しい(緊張の)ひとときをすごさせていただきました。これからもよろしく!







2004/04/18

幸せの黄色いホーン 58話 ヨハネスさんのシステム



オーディオが好きな方はオーディオ雑誌をすぐ信じてしまうようなどちらかというと従順な方が多いと思っています。ところが、そうではない方が時々紛れ込んでくる。おだやかな港に入ってきてしまったホオジロザメ。ヨハネスさんはそういう方。こういうサイトで生意気なことを書いていると港の中で退屈しているサメさんがニッコリ笑いながら近づいてくる!

ヨハネスさんとは2360好きという共通点があります。しかし、好きだから6本並べちゃったヒトと、好きだから黄色く塗っちゃったヒトでは、根本的に何かが違っているような・・・ ま、細かい話はさておき、2006年3月11日、往復500マイル、久しぶりの空の旅。ヨハネスさんのシステムを聴かせて頂きました。




このスピーカーシステムは6ウェイのマルチアンプで駆動されています。これだけ大規模なシステムなのにバラバラに鳴っている感じを受けません。また2360のような大型ホーンが6本も並んでいると迫力に満ちた攻撃的な音をイメージしますが、実際の音は非常に柔軟で深いのです。このような自然な感じの音がスピーカーという機械から再生できるということ自体に驚いてしまいました。この音、好きです。

一番下の2360Aにはごさ丸氏製作のダブルドライバー用スロートに換装されています。組み合わせれているのは2本の2482。帯域は300Hz-1150Hz。その上に配置されている2360Aには2440。帯域は1150Hz-8000Hz。4520の上に配置されている2360Tには2441。帯域は8000Hz以上であり高域側はカットされていません。4インチダイアフラムのコンプレッションドライバーを大型ホーンと組み合せてツィーターとして使用する、こういう発想はなかなかできるものではありません。

2360Tというのはカタログ上で見たことがないタイプなのですが、おそらくTour用(巡業用)に強化したタイプだと思われます。2360は2350の後継機種とされていたため、生産当初の頃に巡業用のものが製造されていたのだと思います。

2360Aに比べるとベル部の補強リブが非常に太いのが特徴です。鋳物のスロート部のラベルには「2360T」と表示されており、一方ベル部のシールには「2360H」と表示されていました。下の写真のように左側下方の2360Aのスリット状開口部は湾曲しているのに対し、右側上方の2360Tのスリット状開口部は湾曲していません。これは大変珍しいものだと思います。なお、2360Tであってもスリット状開口部が湾曲しているものもあります。




角度をつけて4本並んでいるのは10000Hz以上を受け持つ2402H。無信号時のサーというノイズの質感が柔らかい。高域は4本の2402Hと2360T+2441が受け持つため、ユニット1つあたりが負担するエネルギー量が小さいのです。ホーンツィーターの音とは思えませんでした。

4520のウーハーは2220C(32Ω)。バックロードホーンのクセが感じられず、スロートに詰め物でもしてあるのかな?と思ったほどです。このバックロードホーンの調整にはかなり苦労されたそうです。

4520の後方の大きな箱は76cmダブルウーハー。45Hz以下を再生するEV社の30Wは部屋の側壁に対向するように配置されています。全部で4本の76cmウーハーが豪快に鳴るとコンクリートの壁がドドドドドッと振動します。とてつもないエネルギーを感じさせるウルトラ級の超低音なのですが、これが野放図になっていない。

30Wを収めている2400Lの密閉箱はなんと自作箱。2本で6000本の木ねじを使用したそうです。再生音を聴きながら振動が感じられる部分に1本づつ打ち込んでゆくという気の遠くなるような作業を行ったそうです。

ヨハネスさんのシステムの音は一言ではとても表現できません。ただ一つ言えることはオーディオっぽい音ではないということです。そういうオーディオ特有の「良い音」はずいぶん以前に卒業されているようです。ヨハネスさんはフルオーケストラから湧き上がる虹色のオーラを再現しようとしているのではないでしょうか? オーディオを超越したその先にある音、これは今まで考えたことがありませんでした。うーん、このシステムの音が頭から離れない。






2004/04/17

幸せの黄色いホーン 57話 2色ホーン



PEAVEY社の1508-8ALCPとV字型バッフルという組み合せに決定しCADで箱の設計にとりかかりました。しかし、軽い実効質量の38cmウーハーで最低域までカバーできるのか不安になり、サブウーハーを加えてみたらどうだろうかなどと考え始め、なかなかまとまりません。こういうときには無心になってホーンでも塗ってみるとスッキリするかも?




アサヒペン無臭水性ビッグ10の黄色とパステルオリーブという色です。真っ黒のままならダブルホーンの形が奇妙なので「知られざるWEの試作品です」なんて紹介してもバレないと思いますけど、この色じゃ無理ですよね。

最初にスロート開口部の小さなバリやホーンの開口縁にあった3個の凸部を削り取りました。ちなみにスロート開口部の形状は2360Aのように左右が狭められた形状になっています。このような形状が定指向性ホーンの特徴のようです。

各ホーンの上下のパーツの接合部分に隙間!がありますので、組み立てる際には浴室等の防水に用いるバスコーク(透明タイプ)薄く塗って塞ぎました。これは接着剤ではないのでホーンを再度分解することも可能です。ホーンの開口縁にある穴にM5の長さ50mmのボルトを貫通し上下のホーンを連結しました。連結すると重さも10kgになりますから手ごたえ十分。2360Aでもホーン本体の重さは12.3kgですから。

4つのホーンをそれぞれ上下のパーツに分解すると全部で8個のパーツになります。各パーツの片面あたり下地の白色で2回、本塗り5回の計7回塗りました。8パーツ×両面×7回塗りということで112回塗った訳です。数日かかりましたがイメージどおりに仕上がり大満足。塗りあがった夜に全米ホーンペインティング協会からワールドシリーズ日本代表として招待状を頂いた夢を見ましたって、どんな競技なの?




2004/04/16

幸せの黄色いホーン 56話 ユニットを比べてみよう



V字型バッフルと組み合わせるユニットは38cmウーハーにしました。46cmウーハーも考えてみましたが、さすがに恐ろしくなってきてやめました。

38cmウーハーをちょっと比較してみましょう。振動系の実効質量の順で並べてみました。有名なユニットの数値はだいたい覚えてますけど、あなたはどう?




フロントロード向きの515-8HGPと2220Aは、実効質量が60gと軽く、やはりQ値が0.2以下と小さいですね。ところで、最近の業務用のサブウーハー用フロントロード箱は、密閉箱の特性にホーンロードの帯域を付加するという考え方で設計されています。こうした箱に適合する最近のユニットはコーン紙が強靭なためか、それともサブウーハー用だからなのか、実効質量は大きめになっています。

ハイコンプライアンス型のTL-1601aと2235Hは、FsとQ値の何れもが小さく、小さな箱に入れてFsとQ値を上昇させることを前提に設計されています。

2265Hと2266HはJBL社の最新型主力ウーハーです。いずれもNDD構造の磁気回路(3インチボイスコイル)を搭載しています。2265Hは過去の主力ウーハーであった2226Hよりも実効質量が重くなっています。低域のレンジを欲張る傾向になってきているようです。2266Hはサブウーハー用のユニット。実効質量はなんと260gもあります。残念ながら両ユニット共に単品では販売されていません。

PEAVEY社の38cmウーハーは全て4インチボイスコイル。1508-8ALCPとCUCPはプロライダーシリーズ、また1508-8SPS、HE、CUはブラックウィドウBWXシリーズのユニットです。プロライダーシリーズは、BWXシリーズの改良型であり上位機種になります。ちなみに、BWXシリーズは2001年頃、プロライダーシリーズは2003年頃に開発されました。

1508-8HPSはローライダー18の38cm版であるローライダー15のこと。非常に強力なサブウーハー用ユニットです。そして、LO MAX15はこのローライダー15をさらに強化した怪物ユニットです。LO MAX15はブラックウィドウシリーズのフルサイズフェライトマグネットを2段積みにした磁気回路を備えており、ユニット重量が14.8kgもあります。


LOMAX15

安価に入手できるPEAVEY社のユニットの中から1508-8ALCPに決定。適度に軽い実効質量、4インチアルミボイスコイル、そして新型フレームの搭載と魅力を感じていたからです。






2004/04/15

幸せの黄色いホーン 55話 V字型バッフル



さあ、問題のウーハー部。箱やユニットを考えていると、これは無限の組合せ。楽しい悩みは尽きることがありません。色々な案を考えましたが、V字型バッフルを用いたシステムが有力な候補に上がってきました。

この手のV字型バッフルのシステムは家庭用スピーカーでは見られないものの、PA用スピーカーの世界ではかなり以前からあり、珍しいものではありません。下の画像はEV社のX-LineシリーズのXvlsです。38cmウーハー(EVX155Plt)2発と20cmミッドレンジ(ND08)2発がV字型バッフルに取り付けられています。


XVLS

また、JBL社ではASB6128Vという46cmウーハー(2258H)2発を用いたサブウーハーシステムがあります。V字型バッフルの中央部にはバスレフのダクトが開口しているようです。JBL社ではこの形式のバッフルにVローデッドバッフル(V-Loaded baffle)という名称(商標)をつけています。



ASB6128V

たいぶ以前のことになりますが、長岡鉄男氏がポラリス(BS-77)という20cmフルレンジを用いたV字型バッフルのスピーカーを製作されました。そして押し出しのよさがあると感想を述べられておりました。しかし、それ以降、このタイプの自作スピーカーを発表されていませんので、お気に召さなかったのかもしれません。このポラリスの特性グラフではフロントロードホーンのような中低域の盛り上がりが見られ、これが長岡鉄男氏の好みから外れた原因なのではないかと想像しています。

また46cmダブルウーハーを用いたラフトクラフトのSL-18-V Driveという箱もあります。この箱についてラフトクラフトは「ユニット同士互いに音響負荷がかかり、ホーン効果も期待できる」としています。

V字型バッフルのいいところは工作技術が低くても作れるところです。また、EV社やJBL社のシステムに見られるようにホーン用のウーハーではなく普通のウーハーでもかまわないようです。それから設計理論のようなものはなさそうなので気楽なDIYオーディオには向いているかもしれません。





2004/04/14

幸せの黄色いホーン 54話 ダブルホーン



CH-1とRX22が届きました。早速CH-1を包装箱から取り出してみると思っていたよりも大きなホーンでした。なかなか買い得感があります。ただし真っ黒で不気味です。これも塗装しようかなと思いました。ちなみにCH-1の造作はかなり雑。

ベル部の奥のほうが狭くて塗りにくそうだと思いながらCH-1をしげしげと見ていると、どうやら二つの部品をもなかのように上下に配置してホーンの側部でネジ止めしているようです。試しにホーン側部の8つの木ネジを外してみると二つの部品は接着されておらず簡単に分解することができました。またスロート部にはドライバ取付け用の金属製の六角ナットがはめ込まれています。これも取外すことができました。これならベル部の奥まで楽に塗装できます。

このCH-1は、背びれと尾びれのように設けられている一対のスタンド部がホーンの後端(スロート部)の上下に一体成型されています。このためホーンスタンドが不要です。さらにそのスタンド部の先端にはネジで取付けるためのネジ穴までついています。この手のホーンはPAで使用する際にはホーン用の箱に組み込むため、箱に固定しやすいように工夫されているのでしょう。また、このようなホーン固定用のためにホーン開口部の上端縁部と下端縁部にそれぞれ3個のネジ穴が設けられています。

ふたたび8つの木ネジを取付けて元に戻し、しばらく2つのホーンを眺めていました。2360A(ホーン開口部は一辺79.5cmの正方形形状)を見慣れているせいかその大きさが今一つもの足りません。そこで2つのホーンを上下に重ねてみました。すると中央部にボリューム感のある大きなふくらみが出現し、なんとも不思議な形のホーンになりました。子供は宇宙船のようだと喜んでいます。これは面白い。この状態ではホーン開口部のサイズが一辺72.4cmの正方形になります。

垂直方向の指向性を改善するためにホーンを上下に重ねる(スタックする)方法は、従来からPAの現場で行われてきました。パワーハンドリングを改善する場合にこの方法が採られています。この方法に関してはJBL社のテクニカルノート(Technical Notes Volume 1, Number 7, In-line Stacked Arrays of Flat-front Bi-Radial Horns)に詳細な解説が掲載されています。また、この文献によるとデュアルスロートによるダブルドライバよりも複数のホーンをスタックする方法を勧めているようでした。

複数のホーンをスタックすると広い面積から音波が放射されることになる訳ですから、ホーン特有の刺激的な感じが和らげられます。一方、干渉によって高域の減衰が予測されます。2360Aの大きなホーン開口部から放射される音の感じが好きなので、もう一組発注することにしました。





2004/04/13

幸せの黄色いホーン 53話 RX22



CH-1にと組み合せるドライバはPEAVEY社のRX22にしました。サウンドハウスで1万円位です。PEAVEY社はコンプレッションドライバを30年に渡り作り続けており、2インチダイアフラムドライバは、22、22A、22T、22TI、22XT、RX22と進化してきました。また、4インチドライバは44Tから44XTへと発展しました。

RX22は2000年ごろに発売された比較的新しい製品です。エッジと一体成型されたチタンダイアフラムとRadialinerという名称(商標)の新しいフェーズプラグを採用し、また、改良された磁性流体を開発したことにより高域特性の改善が図られたようです。ちなみに22XTは22Tの改良版であり1995年ごろ開発されました。RX22はこの22XTを磁気回路も含め全面的に変更した全く新しいタイプだそうです。ダイアフラムの互換性もないそうです。

高域特性は改善されたそうですが、パンフレットのレスポンスグラフを見てみると、10kHz以上はダラ下がりになり、イコライジングで持ち上げても15kHz程度までと思われます。それにCH-1のように比較的大きな定指向性ホーンと組み合せた場合には、あまり高域の伸びは期待できないと思います。


PEAVEY RX22

RX22のボイスコイル直径は50.8mm、外寸の直径が133mmで奥行きは74mm、重さは2.44kgです。ちなみにJBL社の2426Hは、ボイスコイル直径が一回り小さい44mm、外寸直径が134mm(マグネットカバーなし)で奥行きは104mm、重さは約4.3kgです。この重さの差は、RX22が安価だから・・・ではございません。2426Hのスロート取付け部に付属している鋳鉄製スロートアダプタの重さが原因。これはスタンダードサイズのネジ型スロートをボルト止めの1インチスロートに変換するためのもの。

こういうコンプレッションドライバの構造は、どれもこれも同じようなものです。ちがうのはダイアフラムの材質や大きさ、それに磁気回路の規模だけ。あきちゃったね・・・と思っていたら、なんと同軸ドライバを発見。BMS社の4590は、2インチスロート、リング型の中域ダイアフラムのボイスコイル直径が90mm、同じくリング型の高域ダイアフラムのボイスコイル直径が44.4mm。ダイアフラムの材質はポリエステルだそうです。オリジナリティがあるユニットは素敵ですね。







2004/04/12

幸せの黄色いホーン 52話 CH-1



新しいスピーカーシステムの構成を考えることはとても楽しいものです。そして、未知のスピーカーユニットの音を想像するとワクワクします。難しい理屈は後回し。自作スピーカーでは聴いてみたいユニットを選ぶのが一番ですよね。

まず、最初に中高域のホーンを決めました。これはなるべく大きなホーンにしたい。何故って、システムの外観がぐっと愉快?になるからです。しかし、今回は奥行きを浅く仕上げたいので2360A+2446Hのような大型ホーンの導入は難しそうです。

PEAVEY社にはCH-1という中型ホーンがあります。写真でしか見たことがありませんでしたが、何故かピンとくるものがあり、これにしました。これは大きさの割に奥行きが浅く、価格もサウンドハウスで1本約1万円と格安です。2インチダイアフラムのドライバ用なのでドライバの購入費用も節約できます。うーむ、今回もPEAVEY路線になりそう。

CH-1は1980年代末に開発された定指向性ホーンであり、そう新しいものではありません。外観がそっくりのA/A9040-1という型番のホーンもありました。両者の関係は単に型番の違いなのか、それともスロート径(パンフレットによるとCH-1が0.875インチ、A/A9040-1は1インチ)の違いなのか、そのあたりは良く分かりません。外寸も微妙に異なるようです(どうでもいいけど)。また、22AコンプレッションドライバとCH-1を箱に収め、ネットワークをくっつけたMF-1MK3というホーンユニットもありました。




CH-1の大きさは幅72.4cm×高さ36.2cm×奥行き42.9cmであり、中型ホーンとしてはかなり大きい方。ちなみにJBLの2350は幅80.3cm×高さ20.3cm、それから山本音響工芸のF280Aは幅80.6cm×高さ33cm。1インチスロートだから比べてもしょうがないですけど。

このCH-1の材質は真っ黒の合成樹脂製で重さは約5kgです。指向性は90度×40度、500Hzから使用可能だそうです。どこで見たのか忘れましたが、カットオフは250Hzだそうです。

CH-1のホーン開口部の面積は2360Aの約40%の広さです。ホーンの奥行きは約半分の50%。単純に計算すると40%×50%になりますから、CH-1は2360Aの約20%程度の規模であること分かります。2インチダイアフラムの面積は4インチダイアフラムの1/4の25%ですから、このデタラメな論理によるとドライバの駆動力に対してホーンが大きすぎるということはなさそうです?

PEAVEY社の文献 The Quadratic-Throat Waveguide には、ホーンの歴史が分かりやすく解説されています。辞書をひきひき読んでみるとなかなか楽しめました。



2004/04/11

幸せの黄色いホーン 51話 AVアンプ



LS-11EXとサブウーハーのYST-SW160が失業状態になっています。そこで29型テレビが置いてある部屋に持ち込むことにしました。DVDプレーヤーがあるのでアンプを購入すれば音が出るからです。

LS-11EXとYST-SW160をこの部屋に持ち込もうとすると、ここにも大きなスピーカーがあればいいかもと妻は言います。しかし、すでに黄色いホーンシステムとピアノシステムがありますし、スピーカーなんて頼まれて作るようなものでもございません。お断りしました。

とりあえずAVアンプを購入することにしました。普及品のプリメインアンプでも良かったのですが、音場プログラムを搭載しているAVアンプの方が面白そうです。AVアンプのことはよく分からないので入門用として格安のAVアンプを探してみました。インターネットで調べてみると定価4万8千円のヤマハのDSP-AX450が型遅れのため2万円になっており、これを購入しました。音場プログラムならヤマハと思っていたので渡りに舟です。




85WのアンプがフロントLR、サラウンドLR、センター、サラウンドバック用と6基も搭載されています。85W×6ですから255W×2!相当の能力があることになります。また31種類の音場プログラムを選べるそうです。それから包装箱から出してから気付いたのですが、なんとFM/AMチューナーまで搭載されていました。昔風に言えばレシーバー。重さも11kgと手ごたえ十分。さまざまな調整機能が満載され、これで2万円ですから安いなと思っていたES70が割高に感じてしまいます。

早速スピーカーとサブウーハーをつないで音場プログラムを試してみました。エフェクトは飽きちゃうことが多いのよね、なんて考えながらも結構楽しんでしまいました。イコライザとリバーブだけではこの音は出ないかも、と思うような音場プログラムもありました。そして、このアンプ、問題ございません。技術の進歩は凄いと思いました。




というわけで、LS-11EXのまともなスピーカースタンドを作らなければと、久しぶりにCADを使い設計を始めたら、これがいけません。画面に描かれていくのはスピーカースタンドから、やがて新しいスピーカーシステムへ・・・?




2004/04/10

幸せの黄色いホーン 50話 クロスオーバー周波数の調整(3)



クロスの高低による音の変化に慣れてきたので300Hzから400Hzの範囲のクロスオーバー周波数を探りながら、イコライジングを煮詰めてゆきました。遮断特性は-18dB/octです。しかし、500Hzでクロスさせていたときの音を超えられません。なんだか元気がないような遠慮した感じになってしまいます。

2360Aはカマボコ型の特性で悩ませてくれるのですが、実は、ローライダー18にもクセがあります。測定してみると200Hzから400Hzあたりのレスポンスが見事に落ち込んでいます。これはローライダー18だけではなく46cmウーハーにはよく見られる特性です。46cmだとサラウンド(エッジ)の逆共振の領域がこのあたりになるのではないかと思っています。このローライダー18のクセは、500Hzクロスの時には、単にイコライジングだけで解決できました。

ところが、300Hzから400Hzの範囲でクロスさせようとすると、ローライダー18のこの落ち込んだ帯域にクロスさせることになるので、これがうまくいかない原因になっているようなのです。この帯域をブーストすれば良いはずなのですが、これが理屈どおりにいかない・・・ 結局、4ヶ月ぐらいに渡り、測定と試聴を繰り返しながら悪戦苦闘してみたのですが、残念ながら「全くの無駄」という結果に終わりました。

「全くの無駄」という事実を受け入れると気分がさっぱりします。どうせダメならと、お蔵入りになっていた-24dB/octも試すことにしました。この遮断特性は冷たく寂しい感じになってしまうことが多いので敬遠してきました。-24dB/octならクロスを下げても良かろうと、ちょっと意地悪な気分でクロスを280Hzに設定しCDを聴いてみました。すると、予想に反して中域の厚みと密度感がぐんと増しました。これを逃がしてはいけません。測定と試聴を繰り返しつつハイ側のハイパスフィルターのQ値を探ると、狙っていた躍動感が出てきました。厚みと艶があり鮮やかです。

ところが、素晴らしいけど、なにか気持ち悪い・・・興奮していたので位相のことなどすっかり忘れているわけです。半日ほどたってからようやく気付き、ローとハイをアブソリュートでの正相接続に変更すると、音像がすっきりしてこの気持ち悪さがなくなりました。それに-18dB/octの逆相接続よりも音像が前に出てきて、これも好ましいです。

ローライダー18の不得意な帯域を2360A+2446Hがそっくり引き受けてくれたのが良かったようです。この280Hzクロスの設定は、以下のようなものでした。




これはイコライジングの設定です。赤ラインの「1」(300Hz、Q値2、+7dB)は、クロス付近の調整用です。黄色ラインの「2」(1250Hz、Q値0.7、-12dB)は、2360Aの調整用です。緑色ラインの「3」(2400Hz、Q値3、-1dB)は、サ行の刺激を取り除きます。水色ラインの「4」(5600Hz、Q値3、-1dB)は、高音の浮いた感じを抑えます。シェルビングの「5」(15000Hz、スロープ6dB、+1dB)は、2402H-05の調整用です。




チャンネルデバイダ部の設定です。ロー側では、20Hzのローカットフィルターを設定し、このフィルターのQ値を1にすることで60Hz以下をややブーストしました。SH-D1000+EQCDのイコライジング部の5素子を全て使い切ってしまったため、こうした技をやむなく繰り出すことに。なお、ローパスフィルターのカットオフ周波数は280Hz、Q値は標準の0.7です。ハイ側のハイパスフィルターのカットオフ周波数も同じく280Hz、Q値は標準より大きい0.9です。




イコライザ部とチャンネルデバイダ部の設定を合算して表示するとこんな具合です。ハイ側のハイパスフィルターのQ値が大きいため、実際のクロスオーバー周波数は250Hzとなりました。それにしても気持ちの悪いハイとローのかぶり・・・Q値と相談しつつロー側のカットオフ周波数を引き下げてみるというのが今後の課題です。

クロスを低くとった今回の設定はタナボタでした。ようやく500Hzクロスの音を超えることができました。こうした調整での音の変り方は信じられないほどですから、まだまだ試す余地がありそうです。しかし、調整はデリケートでとても疲れました。しばらくはこの艶のある音を楽しみたいと思います。




2004/04/09

幸せの黄色いホーン 49話 クロスオーバー周波数の調整(2)



クロスオーバー周波数を調整する場合、クロスする帯域をフラットにしておく必要があります。ここが乱れているとクロスオーバー周波数の正確な聴き比べが難しくなります。下のグラフはJBL社による2360A+2446Hの特性グラフです。



見事な!カマボコ型です。高域のロールオフ特性も問題ですが、このままウーハーとクロスさせるとクロス付近のレスポンスが低下してしまい中低域が痩せてしまいます。今まではカマボコ状の盛り上がりをイコライザによって5dB程度減衰させていました。盛り上がりの上限を赤色のラインのあたりになるように調整していたということです。しかし、このような設定ではカマボコ型の特性を完全に補正することはできません。

今回は一気に水色のライン(105dBのライン)を基準にしてイコライジングの設定を行ってみました。但し、200Hz~800Hzに渡る急斜面?をイコライジングで補正すると、ウーハーにもそのイコライジングの影響が及んでしまいます。SH-D1000+EQCDは、入力信号がイコライジングされた後、チャンネルデバイダ部により帯域分割されるという構成だからです。

しかし、諦めるのはまだ早いです。SH-D1000+EQCDのチャンネルデバイダ部は、遮断特性のQ値を変更(0.3から7まで)することができるため、これでハイ側のクロス帯域を調整することができます。このグラフ図は、いずれも300Hz(-18dB/oct)での遮断特性を示し、青色ラインがQ値5、緑色ラインがQ値1.2、黄色ラインがQ値0.7、そして赤色ラインがQ値0.3を示しています。なお、上のグラフ図は±10dB、下のグラフ図は±50dBのレンジで表示しています。






2360Aの補正に実際に使用したQ値は、このグラフ図に示した1.2という数値でした。300Hzから500Hzぐらいの範囲をフラットにすることができます。なお、DCX2496は、このようなQ値の変更はできないようですが、チャンネルデバイダ部により分割したそれぞれの帯域についてもイコライジングをすることができるので、同様の補正が可能です。さて、チャンネルデバイダ部のQ値による補正とイコライジング部による補正を合算したものを表示させると以下のようになりました。300Hz(-18dB/oct)での設定です。




猛烈なイコライジングですね。この設定で2360A+2446Hのみを駆動して実際に測定してみると軸上ではほぼフラットになります。定指向性ホーンにイコライジングが必要な理由についてはPEAVEY社のTech NotesのConstant Directivity Horn Equalizationという文献があります。

定指向性ではないホーンの場合、高域になるほど指向性の分布がビーム状になり狭くなってゆきます。軸上の特性がフラットでも、軸上から外れた位置では高域がダラ下がりの特性になってしまいます。逆に、軸上から外れた位置を基準にしてイコライジングを行うと、今度は軸上がハイ上がりの特性になってしまいます。これに対し定指向性ホーンでは、ホーンの軸上から外れた客席にも高音を十分に届けるために全帯域での均一な指向性を確保するように設計します。そして、それに伴う上記のようなカマボコ型の特性はイコライジングによって修正するという方法を採っています。

さて話を戻しましょう。上記のようなイコライジングを施し、最初に300Hz、500Hz、700Hzのクロスを聴き比べてみました。何れも遮断特性は-18dB/octです。これはかなり差があります。300Hzでは最も引き締まった印象、そして700Hzでは中低域が最も分厚い感じになります。この分厚いというのはウーハーの音が全体を支配しているという意味です。700Hzのクロスなんて46cmウーハーとしては高すぎる「はず」ですが、それほど変な音になるわけでもありません。この音が好きだと言う人がいてもおかしくないと思います。

一方、300Hzではウーハーのキャラクターがすっかり消え失せ、これは初めて聴く世界でした。ウーハーの力強さは感じられない一方、音が澄んでいます。2360A+2446Hの音って、こんなに綺麗だったのかと驚きました。しかし、いいことばかりではなく、ウーハーによる音の広がりや厚みが消えてしまうので音場が急に寂しくなってしまいます。

結局、300Hz、400Hz、500HzをSH-D1000の3つのメモリに記憶させ、CDによって使い分けている状態です。400Hzと500Hzはウーハーのキャラクターが味わえるので標準的なオーディオ装置の音が聴けます。そして、300Hzはちょっと変った世界。これも好きです。なお、-24dB/octは今後の課題です。今ひとつ良い結果を得られませんでした。

今回分かったことは、コーン型ウーハーとホーン型のミッドレンジという異なるキャラクターを持つユニット間のクロスを変更すると、全体の音色の傾向だけではなく、音場の深さや広がりまで変ってゆくことが分かりました。しばらくは、良い方向だけを探るのではなく、こうした調整によりどこまで音を変えられるのか色々試してみようと思っています。





2004/04/08

幸せの黄色いホーン 48話 クロスオーバー周波数の調整(1)



黄色いホーンシステムのクロスオーバー周波数を変更するとどうなるのか実験してみました。2360Aのパンフレットによるとこのホーンに2446H(2445/2450)を使用する場合のクロスオーバー周波数の下限は500Hzと表示されています。また、2446Hのパンフレットには、クロスの下限として500Hz(12dB/oct)が推薦されています。

その一方、2360Aのパンフレットには、ホーン自体の使用可能な低域限界(Usable Low Frequency Limit)が300Hzと記載されています。適切なイコライジングを施して測定してみると180Hz程度までフラットな特性が得られます。これだけ大きなホーンですから、低めのクロスオーバー周波数を試してみることにしました。

そうはいってもドライバーである2446Hの振動系に過度の負担をかけるのは望ましくありません。どの程度の負担がかかるかを直接知ることはできませんが、SH-D1000+EQCDによりハイパス側の遮断特性をコンピュータに描かせて推測してみることにしました。もっとも、こうして表示された特性はSH-D1000の実際の出力特性とは若干ズレがあるように思います。でも、そこまで厳密に考えるような話でもないので、実際の出力特性の測定はしませんでした。




このグラフ図の赤色ラインは500Hz(12dB/oct)のハイパス側の遮断特性を示しています。黄色ラインは300Hz(18dB/oct)、緑色ラインは250Hz(18dB/oct)、青色ラインは200Hz(18dB/oct)です。そして、黄色ラインは-3dB、緑色ラインは-6dB、青色ラインは-9dBという減衰を行った状態を示しています。

設定する遮断特性がこの赤色ラインの右側(高域側)に収まっていれば正常な動作が保証されると考えてよいと思います。2446Hの許容入力は100Wですから、300Hzの場合なら50Wの入力に耐えられることになります。

同様に24dB/octの遮断特性を描かせてみました。黄色ラインは300Hz、緑色ラインは250Hz、青色ラインは200Hzです。それぞれ、-3dB、-6dB、-9dBという減衰を行った状態を示しています。




このように18dB/octや24dB/octの遮断特性であれば、300Hz程度のクロスオーバー周波数でも問題はなさそうです。さて、音質的にはどうなるのでしょうか。




2004/04/07

幸せの黄色いホーン 47話 DCX2496



T1951とDCX2496の何れにしようかと考えた結果、調整の自由度が高い方がよかろうということになりDCX2496を導入することにしました。

国内最低価格保証ということでサウンドハウスから2万8千円ぐらいで購入することができました。注文した翌日に届いたDCX2496の天板を外してみると、中はガランとしています。中央にCPUのような大きなDSPユニットがあり、その横にプログラムを書き込んだチップが並んでいました。このチップには「Ver.1.15」と表示されたシールが貼ってありました。

MG10/2からのアナログ入力で使用するため余計なA/Dコンバータ、D/Aコンバータが信号系に介入することになります。デジタル接続でもD/Dコンバータ(サンプリングレートコンバータ)を介しただけで若干のノイズの増加が計測できるそうですから音質の劣化があるはずです。そこでOut Configurationで「LHLHLH」を選択し、1808-8SPSを駆動するA501へのSUM出力を「A+B」に設定し、EQやクロスオーバー等は設定せず、素のままで聴いてみました。でも、A501への入力系統ではMG10/2のヘッドホンアンプやCRボリューム等がパスされ、A501のレベル調整も厳密には再現できません。こうしたこともあり厳密な聴き比べができません。注意深く聴いてみましたが音質の劣化は確認できませんでした。

このDCX2496がSH-D1000+EQCDよりも優れている点は、入力側とのイコライジングと、チャンネルデバイダ部により分割した後の各出力側のイコライジングとを独立して設定できることです。各出力側のイコライジングで徹底的にフラットな特性を作り、入力側のイコライジングで好みの方向を探れば良いので調整作業が楽です。また、DCX2496もSH-D1000と同様にコンピュータにより操作することができますが、フロントパネルの操作性が良好なためその必要性を感じませんでした。

測定しつつ左右の2155Hと1808-8SPSの特性を各出力側のイコライジングにより無理のない範囲でフラットにした後、クロスオーバー周波数の設定を行いました。1808-8SPSの受持ち帯域を100Hz以下にしてゆくとサブウーハーとして常識的な質感になってゆきますが、それ以上の帯域まで1808-8SPSを働かせると中低音の厚みがどんどん増してゆきます。

今度は2155Hの低域側と1808-8SPSの高域側とをチャンネルデバイダ部によりカットして受け持ち帯域を整理してみました。すると1808-8SPSのみから低域が再生されるようになるため、システムから離れて聴くとバラバラに鳴っているような感じがします。結局、2155Hの低域はそのまま出して1808-8SPSの高域側のみを80Hz程度でカットするという一般的な設定になりました。

DCX2496には大変満足できました。多機能であり操作性も良好。そして様々な設定による音の変化を体験できました。今回の調整の過程で感じたのは1808-8SPSを生かすならサブウーハーではなく、通常のウーハーとして使用したほうが良さそうだということでした。このユニットは中低域に至るまで弾むような生き生きとしたキャラクターを持っていると思います。

なお、DCX2496の購入と同時にノイトリックのNL4MPを購入し、ES70のスピーカー出力端子と交換しました。NL4MPの背面端子側基部にある薄く小さなリブを丁寧に削り取ると両者の外形サイズは全く同じになります。4つの背面端子の位置や大きさも同じでした。交換したところ接続部のガタツキはなくなり接触不良を解消することができました。




2004/04/06

幸せの黄色いホーン 46話 イコライザの導入



ピアノシステムの音はこのままでも堂々とした個性的な音?を楽しませてくれます。でもさらに調整を進めるとどうなるのでしょう。そこでイコライザを導入することにしました。このイコライザとしてベーリンガーのT1951とDCX2496を検討しました。

T1951は4素子のフルパラメトリックイコライザであり、左右を独立して調整することができます。2Uのパネルにはノブやスイッチがずらっと並び、いかにもという感じです。重量は8kgもあるのに価格は約2万円とリーズナブルです。さらに、UTCチューブインターフェイスという回路を搭載しており、パネルに顔を見せている真空管(選別品の12AX7)によって発生した高次倍音が入力信号に付加されるそうです。シンセサイザーのブライトネスのような効果なのでしょうか?



T1951

この世界ではすっかり有名になってしまったDCX2496はイコライザというよりもSH-D1000と同類のデジタルチャンネルデバイダです。2155Hと1808-8SPSのクロスオーバー周波数を設定もできるため、かなり遊べそうです。デジタル入力もできますが、電子ピアノであるMP9500や音源モジュールであるMU100Bはアナログ出力のみなのでMG10/2のアナログ出力に接続して使うことになります。



DCX2496

最近DCX2496の価格が大幅に値下がりしたためT1951との価格差は問題となりません。T1951は真空管により音が変えられるというのが魅力です。一方、DCX2496は真面目に追い込むにはピッタリの機種です。しかし、T1951の4素子のイコライザとMG10/2の3素子のイコライザを併用すれば7素子のイコライザを構成することができますから、これでもかなり追い込めるはずです。どっちにしましょうか。



2004/04/05

幸せの黄色いホーン 45話 ピアノシステムの音出し



ピアノシステム構築の最後の難関?はA501のBTL切替スイッチを切り替えることです。このスイッチにはアンプを作ってから今まで一度も触ったことがありません。キット製品とは言え自作アンプの25年以上触ったことがないスイッチですから、もしかすると煙モクモクかもと恐れたのですが大丈夫でした。

さてさてMG10/2のCRボリュームや3バンドEQなんかを適当にイジッて音を出してみると、なんと目論見どおり2155Hのホーン臭さがほとんど出ません。こんな安物のMOS-FETアンプでも効果があるとは・・・おみそれしました。

このES70のキャラクターは、最近の中国経済の発展を思わせる活気のある音です。それに2155Hのホーン部に耳を近づけてもシーとかサーというノイズがほとんど聴こえません。このES70、スピコン端子の問題もありますが気に入りました。それから、ファンコネクタを外したES70は4時間ぐらい駆動すると結構暖かくなりますが、2155Hの能率が高いせいか熱いというような温度にはなりませんでした。

全体の音はなかなかまとまっています。ちゃんとCDの鑑賞に耐えます。それどころか2155Hのホーンの浸透力と1808-8SPSの厚みがあるキャラクターが混ざり合い、これはこれでかなり気分のいい音なのです。LS-11EXの時とは異なり高能率型業務用ユニット同士の相性の良さを感じます。

それならばという訳でパイプオルガン、エレクトリックベースのソロのCDを再生してみました。これは強烈です。LS-11EXの時にはこういう音は聴けませんでした。2155Hの中高域により低音が一段と生々しくなったように思います。パイプオルガンの音色を選択しリバーブ等をドーンとかけてMP9500を演奏すると地鳴りのような低音に酔えます。





1808-8SPSを鳴らさずに2155Hの音を聴いてみると箱の容積不足のためか低音は控えめです。それに躍動感が今ひとつ。こうした2155Hの控えめな低音が1808-8SPSの低音を邪魔しないためか低音や中低音が膨らむような感じもありません。また1808-8SPSがフルレンジ駆動されているにもかかわらず、ちゃんとステレオの広がりも感じられました。巨大なモノラルシステムになっちゃうかなという淡い期待?はめでたく裏切られました。

厳密にいうと高域がやや薄い感じです。38cm+46cmの厚い低音に負けています。EQ等の調整を追い込んでいってもこの傾向は変らず、2360A+2446Hのような鮮やかさが今ひとつ。でも、粗末な駆動系にもかかわらず、2155Hからこんな風に本気にさせるような音が出たことが一番の収穫だと思いました。






2004/04/04

幸せの黄色いホーン 44話 新しいFETアンプ



2155Hを駆動するFETアンプには、SAL(Stage Acoustic Laboratory)というメーカーのES70を選びました。プロサウンド誌に掲載されていた広告で見つけたこのアンプは、小型スタジオモニタースピーカー用の業務用アンプだそうです。プロフューズのサイトから約2万5千円で購入しました。

出力は70W+70W(8Ω)、重さ11kg、トロイダルトランス、終段はパワーMOS-FETだそうです。ちなみに、上位機種のES100は出力100W+100W(8Ω)、重さ11.5kg、約3万円です。ES100でも良かったのですが、例によって空冷用のファンを作動させないつもりでしたので、発熱量が小さいであろうES70の方にしました。

プロフューズに発注するとすぐに届きました。包装箱には「Factory」として「SAE China」と記載されており、また、ブランドとして「SOUND STANDARD」と記載されています。おそらく中国製だと思われます。また、取扱説明書には「株式会社ステージインスツルメンツ」と記載されています。うーむ、メーカーの実体が今ひとつ分かりません。

包装箱から出してみると業務用らしく無骨な感じで全体がグレーに塗装されています。ペンキ塗装仕様という感じで全く高級感がありません・・・ このES70の入力端子はXLR、出力端子はスピコンなので、HOSAのフォン/XLR変換ケーブルとノイトリックのスピコン端子をサウンドハウスで購入しました。





早速ES70を接続してみると音が出ません。あれこれいじっていると音が出たり出なかったりします。どうやらES70のスピコンの出力端子が原因のようです。プロフューズに電話してみるとES70のスピコンの出力端子はノイトリック製ではなく、特にノイトリック製の2極タイプとは相性が悪いそうです。無償修理のためにプロフューズに送り返しました。

3週間後に戻ってきたES70の接続不良は残念ながら直っておらず、もとのままです。ガタツキのあるスピコン端子部に上下左右方向に少し力を加えてご機嫌をとると何とか音が出ます。こんな100円程度のパーツで信頼性を損ねるのはあまり得策ではないのでは?

天板はプラスネジとTORXネジ(T10)により固定されています。直径16cm、厚さ4cm弱のトロイダルトランスと、容量4700μF(耐圧50V)の電解コンデンサが2本。終段のMOS-FETは放熱器の裏側にあり天板を外しても見ることができません。その放熱器と基板を取外してみると、放熱器の裏面にはずらりと半導体が取り付けられています。出力70Wなのにパラレル(あるいはトリプル)プッシュプルのようです。

小型の冷却用ファンは静かな方だと思いますが、やはり耳につきます。このため今回もファンのコネクタを外しました。



2004/04/03

幸せの黄色いホーン 43話 ミキサーの2系統の出力



電子ピアノのシステムがいくら寄合いシステムでも、2155Hのホーン臭い音を再び聴きたいとは思いません。このため2155Hを駆動するためのFETアンプを購入することにしました。一方、1808-8SPSはA501により駆動します。A501はBTL駆動に切換えることができ300WのAB級モノラルアンプに変身します。

電子ピアノやCDプレーヤーの信号を2台のアンプに出力し、しかもその内1台はモノラルアンプとなると、これは普通の並列の接続方法では無理です。ミキサーのMG10/2の出力は、メインの出力(ST出力)と、モニター用スピーカーやヘッドホンを接続するためのモニター用の出力(CR出力)の2系統の出力があります。この2系統の出力を利用することにしました。メインのST出力を2155H用にし、また、モニター用のCR出力を1808-8SPS用に使うということです。




MG10/2のこのような構成は簡単に言えばヘッドホン端子の付いたプリアンプのようなものです。Yケーブルを用いてモニター用のCR系統の左右出力をショートしても、CR系統のヘッドホン用アンプは一種の絶縁体ですから、メインのST出力がモノラルになったりしないわけです。

また、CR系統にはボリュームも付いていますので1808-8SPSの音量を調整できます。もっとも、これはパワーアンプ側の入力ボリュームでも調整できますので、あれば便利という程度のものです。

なんだかデタラメな使い方ですよね。まあ、そこは寄合いシステムですから気楽に行きましょう。1808-8SPSにはチャンネルデバイダもネットワークも使わないので相変らずフルレンジで鳴らすことになります。こういうのもバイアンプシステムと呼ぶのでしょうか?








2004/04/02

幸せの黄色いホーン 42話 2155Hふたたび



ローライダー18にウーハーの座を奪われた2155Hは、ピアノモニター用として復活することになりました。LS-11EXの代わりということになります。ピアノシステムは、メインシステムを引退した機材による寄合いシステムの様相を呈してきました。

2155Hは21mmシナ合板で作った小さなバスレフ箱に入れることにしました。外寸650mm×480mm×282mm(内寸608mm×438mm×240mm)で実効容積55リットル程度です。ダクト開口寸法は100mm×100mm、ダクト長は86mmです。吸音材はなし。端子はスピコンのNL4MPRです。仕上げは今回同時に製作したローライダー18の箱と同様、白色との粉による板端面の目止めと水性ウレタンクリアの3度塗りです。

Q値の大きなユニットを小さな箱と組み合せると、ボンついた低音になる恐れがあると雑誌に書いてありました。2155HのQ値がそこまで大きいとは思えないので、おそらく単に低音が出にくくなるような気がします。ダメならEQ調整でごまかそうと思います。




2155Hをメインシステムの46cmウーハーや大型ホーンと比べてしまうと、これは残念ながら勝負になりません。2155Hはホーンの浸透力を備え38cmユニットらしい幅のある音の出方をしますが・・・ そうしたこと以外にも中低域が薄く音楽の豊かさが乏しい感じがします。でもピアノスタンドに仕込んだ1808-8SPSの分厚い低域や中低域がそれを補ってくれるのではないでしょうか。




今回はネットワーク駆動に戻します。2155Hのネットワークとマルチアンプ駆動との差については、マルチアンプでも12dB/octの遮断特性を選択すると、ほとんど同じ傾向の音になります。もっとも、バイラジアルホーンですからEQによる高域補正は必須であり、そういう意味においては純粋に比較したことにはならないかもしれません。

こうした細かい話はさておき2155HはJBLらしい音を聴かせてくれます。それに愛着もありますし、こういう古典的な構成のユニットが身近にあるとそれだけでうれしいものです。なお、2155Hのウーハー部は151-8のフレームや磁気回路を流用したものではないかと以前書いてしまいましたが、最近151-8のサービスマニュアルを見たところ全く別物のようです。両者のフレーム形状は完全に異なっており、また磁気回路も151-8の方がかなり大きいようです。お詫びして訂正いたします。








2004/04/01

幸せの黄色いホーン 41話 音像の高さ



ローライダー18の鳴らし込みは順調に進み、どんどん低音の再生能力が向上してきました。量感、質感共に全く文句ございません。情けないことにこれまでオーディオをやってきて満足な低音を出すことができたのは初めてのことです。録音時に低域を持ち上げたと思われるCDではベースのお化けが床を這い回るようになりました。このため最低域のブーストはやめました。

音量を上げてゆくと壁や薄い天井の共振が激しくなり低域が不明瞭になってきます。YSTの導入以前、2155Hの低音不足に悩んでいたころ、JBLの46cmフルレンジであるE155の導入を検討したことがあります。資料が手に入らなかったため当時の日本代理店にFAXで資料を送ってもらいました。そのとき詳しそうな担当者の方と電話でお話したところ、家庭内での使用は強烈すぎると思います、というアドバイスをいただきました。46cmウーハーが家庭用スピーカーとして根付かないのは箱の大きさのせいもありますが、低域のエネルギー量が無用に大きすぎるせいだとも思います。

鳴らし込みが進んできたので、ここでもう一度調整を行いました。最初に手をつけたのは2402H-05のコンデンサ容量の再調整です。半田ゴテ片手にコンデンサの表面の文字をふと見ると、「2.0μF」だと思い込んでいたコンデンサには「2.2μF」の表示が・・・ 購入した時からずっと勘違いしていたようです。

というわけでコンデンサ容量は3.67μFでは大きすぎ、2.67μFでは小さすぎると。ならばその中間位の3.2μFにすればドンピシャのはず、と試してみたところ、聴感上はバランスがとれたようです。でも、イコライジングをさらに追い込む予定なので、これで決まりにはならないと思います。




なんとなく整ってきた感じがするのでローとハイの位相を見直してみることにしました。2155Hのウーハー部を使用してきたときから、ローとハイ(2446H)は共にアブソリュートでの正相接続にしてきました。ハイ側を正相接続にすると音像が前に出てくる一方、音像が若干大きくなるという傾向があります。ハイ側を逆相接続にすると音像がやや奥に引っ込み、その一方音像は小さく引き締まります。

こういう場合、一般的には音像が引き締まる逆相接続が正解だと思うのですが、音像が前に出てくるほうが好ましいと思っていたため、あえて正相接続を選んでいました。しかし、鳴らし込みによりローライダー18の中低域の質感が高まってきたこともあり、引き締まった音像を得ることができる逆相接続に変更しました。

今回の調整を行ったとき、主な音像が目の高さに現れることに気付きました。正確に言うと耳の高さだと思います。座っていると音像の位置は座っているときの耳の高さに、立ち上がると立ったときの耳の高さになるようです。水平線は常に目の高さと同じ位置に見えます。音像の位置も同じことのようです。2360Aの垂直方向の指向性が優れているためなのか、音離れが良好なためなのか、それともスピーカーユニットの高さに音像が出現すると思い込んでいたためなのか、これまで全く気付きませんでした。