2017/12/18

View of Jupiter from NASA's Juno spacecraft



今年はDIYホーンシステムの完成や手持ちの全CDのリッピングの完了と、オーディオの年でした。
来年もオーディオの年になるのでしょうか?


今年もっとも印象に残ったのは、ジュノー探査機による木星の画像でした。
天体望遠鏡で見る木星はスジが2本か3本確認できる程度で、遠くにあるのに随分明るいなぁと思うぐらいでした。
しかし、この動画には驚かされました。
静止画像を繋ぎ合わせて連続させると、こんなに不気味とは。
木星、何かいるのではなかろうかと思ってしまいました。








次点は、ノドサウルスの化石。(他の画像)
恐竜の復元図は子供の頃から見ていますが、ともかく10年ぐらいで恐竜の姿が変わってゆく。
全く信憑性がない。
しかし、この化石はまさにリアルに恐竜の形を見せてくれました。
ああ、生きててよかった!








2017/12/05

DIY Speaker (88)



(87)からの続きです。


<低音ホーン>

ミッドホーンと組合わせる低音部はどのようなタイプが良いのでしょうか。
「ホーンにはホーン」だから低音ホーンが合うというのがホーンマニアの一般的な考え方だと思います。
しかし、最近の業務用システムでは、PA用、映画館用を問わず、ダイレクトラジエターのバスレフタイプが主流であり、Klipschなどの一部のメーカーしか低音ホーンを採用していません。
とは言え、「ホーンにはホーン」というのは理屈に合います。
だからこの選択にはかなり悩みました。




低音ホーンというにはちょっと小さなホーンですが、改造ALTECシステムにショートホーンを備えた828エンクロージャーを使用しています。
下のレスポンスグラフは、A7/MR994A(828、515-8G、MR944A、909-8A)というシステムのものです。



A7/MR994Aのパンフレットには"From 35Hz to 120Hz, the system is bass reflex operated. From 120Hz to the Crossover frequency, it is operated through a straight, exponential flare horn."(35Hzから120Hzまでがバスレフ、120Hzからクロスオーバー周波数(500Hz)まではエクスポネンシャルホーンとして作動する)との記載があります。

レスポンスグラフを見てみると、90Hzあたりと200Hzを越えたあたりに盛り上がりがあります。
90Hzの小さなピークがバスレフ、200Hzを越えたあたりを中心として150Hzから450Hzまでの盛り上がりがショートホーンによるものだと思います。
気になるのは、赤い丸印で示した2つの谷です。

828、どのような音かというと、最低域がさっぱりない軽い低音で、しかも温かみのあるキャラクターなのです。
その精悍な外観とはかけ離れた雰囲気の音。
改造ALTECシステムでは、事前に軽い低音ということは分かっていたので、828を改造し46cmウーファーを組み込みました。
バスレフ領域だった120Hz以下を46cmウーファーに、また400Hz以上をMR94+291-16Kに任せた。
828はショートホーン部分だけを生かしたということになります。
このシステム全体の音は、MR94+291-16Kの繊細で柔らかで艶がある素晴らしい中高音に、828+3156のあたたかみのあるキャラクターがうまく重なって、癒し系というかなごめる音なっています。
この音のためか、2008年11月にこの改造ALTECシステムが鳴り出してから、このシステムは全く発展していません。

JBLのコンプレッションドライバーを中心としたシステムは何故か戦闘的な雰囲気になるのに、改造ALTECシステムは癒し系。
ALTECのシステムで戦闘的にやろうとしてもなんとなく途中で寝っころがって楽しんでしまいます。
音量も控えめで音量をあげて聴くことはほとんどありません。
結局、黄色いホーンシステムはF1のようなレーシングカー、改造ALTECシステムは田舎の風景を楽しみながら流すクラシックなオープンカー、そうした位置づけになりました。

低音ホーンといえば、ヨハネスさんのところで何度か聴かせて頂いたJBL4550が印象に残っています。
下のレスポンスグラフは4550Aのもの。



このグラフ、手書きなんでしょうか?
それはさておき、828の特性をそのまま低域よりに移動させたような特性です。
828の90Hzのバスレフのピークは45Hzに、200Hzを越えたあたりのホーンのピークは110Hzあたりに見られます。
(ヨハネスさんの4550は密閉タイプでしたので45Hzのピークはなかったと思います。)
4550の音は、828のあたたかみのある音と共通するキャラクターを持っています。
但し、全体的に低域側にシフトした特性を持つせいか、あたたかみというより奇妙なモワッとした中低域になっています。

828のレスポンスグラフで見られた2つの谷があるのかは、このグラフからは分かりません。
この2つの谷はウーファーユニットの分割振動によるものか、それともホーンの空間での気柱共鳴のような現象により生じているものかは分からないのですが、4550の音を聴いているとこれは後者が原因だろうと思っています。

4550などの低音ホーンはカッコいいのですが、そのモワッとした中低域と2360のような大型ホーンの鮮やかな音が合いません。
これでは「ホーンにはホーン」というのが理屈だけということになってしまいます。
また、ALTECには4550よりもやや大きい210や211もありますが、ホーン長がさらに長いので状況は悪化しているような気がします。

結局、上記のような理由で低音ホーンは諦めてしまいました。
また、V字型バッフルや床に低音を叩きつけるタイプの低音部もクセがあって家庭用には向きません。
特にV字型バッフルは特性が荒れており、長く付き合うには心理的に無理があります。


<ミッドホーンの役割>

低音部はダイレクトラジエターのバスレフ型にしました。
ミッドホーンは低音部のダイレクトラジエターと高音部のホーン+コンプレッションドライバーの間に挟まれることになります。
このため、ミッドホーンの低域側にはダイレクトラジエターのような感触、そして、高域になるにつれホーン+コンプレッションドライバーのような感触を持たせれば、低音部と高音部を自然な感じでつなげることができます。
下のグラフ図は、JBL5732のダイレクティビティインデックス(無指向音源に比べて正面軸上の音の強さが何デシベル高いかを表します)です。


5732のクロスは250Hzと1.3kHz。
このグラフでは1kHzを中心とした盛り上がりがあり、ミッドホーンがややがんばりすぎのようですが、ほぼ無指向性状態になる100Hzから徐々にインデックスが上昇していきます。
このようなシステムに仕上げれば、低音部と高音部がバラバラに鳴っているような、マルチウェイでは最悪の状態を回避できると思います。

さらに、ミッドホーンがあれば、高音ホーンの低域側の再生能力をあまり気にせずに設計することができます。
800Hzまでミッドホーンに任せることができれば、800mmもの開口径がある高音ホーンならば余裕でしょう。
ホーンの自作は、エクスポネンシャルホーンやハイパボリックホーンの計算から始まりますが、実際にはカットオフ周波数と断面積の話ばかりです。
具体的に「どんなホーンを作りたいのか」という話が出てこない。
そして、この手の計算をさんざんやったことのある方なら理解できると思いますが、不思議なことにホーン長に比べて開口面積が小さくなりがちです。
ミッドホーンによりカットオフ周波数で悩むことなく、上記のようなホーン計算の呪縛から開放されて、市販ホーンの音の経験から思ったような形状の自作高音ホーンに挑戦できるというメリットがあります。


<ミッドホーンの開口サイズ>

ミッドホーンの開口サイズは、高音ホーンの開口サイズと同じにしました。
直径800mmです。
クロス周波数の周辺では、ミッドホーンと高音ホーンの開口サイズが同じため、同じような音の感触になるはずです。
このような設計手法は一般的ではありませんが、それほど特殊なものでもありません。
PA用の2ウェイスピーカーにおいて、低音部のダイレクトラジエターのウーファーの口径と円形の高音ホーンの開口径が同じというデザインをたまに見ます。
ウーファーの音と高音ホーンの音の感触を違和感なくつなげるのが目的です。
こうした手法を流用したというわけです。


この口径800mmというサイズを5732のミッドホーンと比べてみると上の図のようになります。
5732のミッドホーンよりもその開口面積が広いことが分かります。


<ミッドホーンの形状>

ミッドホーンの形状はかなり悩みました。
5732に使用されているミッドホーン(正確にはウェーブガイド)は、364897-001という部品番号が与えられています。
ミッドホーンの設計当時、364897-001だったかは正確には覚えていませんが、このようなJBLのミッドホーンの画像や資料を集めて検討していたことは覚えています。
下の画像や図面は、364897-001のものです。




JBLのミッドホーンのホーン長は、ホーン全体の軸線が傾いているためにはっきりとしませんが、図面から推定すると中央で270mm程ではないかと思います。
高音ホーンと同様に、矩形のホーンの広がり形状を円形ホーンに移しかえることになりますが、JBLのミッドホーンは8インチ2発なのでお手上げです。
そこで水平方向の広がり形状のみを参考にして作図し、ホーン長を351mmにしました。
JBLのミッドホーンの垂直方向の広がり形状はかなり狭い。
ですから、本当はJBLのミッドホーンの水平方向の広がり形状を狭めたような形状の円形ホーンにしなければならないのですが、上述したような気柱共鳴のような現象が恐ろしく、ホーン長をこれ以上長くすることができません。



ホーン長で思い出すのはWE15Aホーンの音です。
1度目はかなり昔のことで音の記憶が無いのですが、2度目はじっくりと聴くことができました。
そのとき、頭の位置を動かすと音量が大きくなったり小さくなったりする現象が生じていることに気付きました。
また、そのような現象を他の15Aホーンでも体験したというお話を聞いたこともあります。
先日、池田圭氏の音の夕映を読んでいると、頭を動かせない旨の記載があり、やっぱりそうだったのかと思いました。
巻かれた音道という形状の他に、やはりホーン長が長すぎるのだと思います。
気柱共鳴のような現象が無数に生じ、共鳴して音が強くなったり、それらが互いに逆相になって音が消えたりしている領域が交互に現れているような気がします。

ミッドホーンのホーン長が長くなることで828のように温かみのあるキャラクターになってしまったり、音圧にむらが出たりするのは困ります。
ちなみに828のショートホーンのホーン長は37.5cm。
結局、ホーン長はJBLのミッドホーンよりも長いものの、大きな開口サイズにより全体のプロポーションはJBLのミッドホーンよりも浅いホーンにしました。
「浅いホーン」という表現方法はなんとも稚拙な感じがしますが、さまざまなホーンを聴いている内に「ほとんどのホーンが深すぎるのではないか?」という疑問を持つようになっていました。
深すぎるホーン、長すぎるホーン長、そうしたホーンが多すぎるような気がします。
開口面積がとんでもなく広く、そしてホーン長が短い、こうしたホーンの方がホーンキャラクターを持ちにくいと思っています。
ホーンの歴史を振り返ってみると、ホーンの役割の変遷(アンプのパワーが稼げなかった時代からの)というよりも、ホーンがどんどん浅くなっていった歴史という理解もできるかもしれません。

ミッドホーンの形状については、円形であることも気になっていました。
円形ホーンにした理由は、手持ちのホーンが全て矩形だから。
それに、今回の布を使用した製作方法の場合、円形の方が作りやすそうだったからです。
何故、円形であることを気にしていたかというと、過去にジャズ喫茶で聴いたYLかゴトーの円形ホーンの音がほんとに酷かったからです。
当時はその原因が分からなかったのですが、それらがエクスポネンシャルホーンであることに原因がある事を定指向性ホーンを使うようになってから知りました。
しかし、本当にエクスポネンシャルホーンに原因があったのだろうかとも思うようになりました。

キール氏の論文に出てくる原初的な定指向性ホーンは円形ホーンです。
だから、円形であることにキール氏が指摘していたような問題は無いはずです。
しかし、矩形のホーンに比べて、あらゆる方向で寸法が同じ、というのは共鳴という観点からは非常に気持ちが悪いです。
あまり外観を醜くしないでこの「あらゆる方向で寸法が同じ」という形状を改善できないだろうかと考えました。
結局、紙管を用いて布を変形させ、水平方向において複合ホーンの形状を持たせることにしました。
こんなことをするカットオフ周波数が上昇するのではないかと危惧していましたが、それは大丈夫でした。

円形ホーンは正方形のバッフルに開口しています。
円形ホーンの縁がやはり円形の場合、そこで均一の反射が生じてしまいます。
それを避けるためにバッフルを設けました。
また、映画館のホーンシステムはたいていバッフルに装着されています。
いつかはバッフルに装着したホーンの音を聴きたいものだと思っていました。



バッフル面は上下部分(緑)と中央部分(青)で面積も形状も異なります。
このためホーン外周での反射も様々な態様になるのではないかと。
なお、上下部分と中央部分の面積の総和は、800mmのホーンひとつ分の開口面積と等しいです。
このため、ホーンタワー前面の三分の一の面積がバッフル板の面積になっています。




2017/12/02

DIY Speaker (87)




ホーンを自作するにあたり何を考えていたのかをまとめてみました。


<システム全体からホーンを考える>

今回のシステムは、ミッドホーンを作ろうという動機からから始まっています。
ミッドホーンと言っても色々ありますが、10インチか12インチのコーン型ユニットをドライバーとするタイプを考えていました。
どうしてかというと野外PA用やシアター用にそうしたタイプが散見されるからです。

野外PA用はホーン長が長いものが多く、製作は可能でも部屋に設置するのは難しそうです。
一方、シアター用システムのJBL5732のミッドホーンは、ホーン長が短い。
というわけで、製作、設置共に容易(そう)なJBLのミッドホーンをお手本にすることにしました。
しかし、JBLミッドホーン模倣計画は、DIY工作技術が絶望的に低いため失敗してしまいました。

メーカー品の模倣がうまくいかないとなると、自分で考えてオリジナルのホーンを作るということになります。
最初はどうしたものかと思いましたが、考え始めるとこれが実に楽しい。
単にホーンの設計というのではなく、スピーカーシステムの全体から各ホーンの役割を考えるようになっていきました。


<ホーンの役割>

家庭用のスピーカーシステムにとって、ホーンの役割とは何か。
それは鮮やかな音を提供することにあると考えています。
この鮮やかな音というのは、具体的にはJBL2360やALTECのMR94のような大型の定指向性ホーンから聴くことができる音です。
JBLには2380(下の画像)という2360より小型のホーンがあります。




同じ4インチダイアフラムのコンプレッションドライバーを接続しても、この2つのホーンの音の差は歴然。
それは2360が大型でカットオフ周波数が低いから?
最初はそんな風に考えていたのですが、1kHz程度でクロスさせても2360の鮮やかな音は消えないのです。
全く不思議です。
「大型」というのは単にカットオフ周波数の高低だけでは説明できないホーンの「本質的な何か」と関係しているのではないか。

黄色いホーンシステムで2360を900Hz以上で使用していますが、この2360は外せないコンポーネントだと思っています。
システムの中核、システムのスターなのです。
黄色いホーンシステムでは、より大型の2392ホーンとJBLの最強コンプレッションドライバーである2390Hがミッドホーンを構成していますが、これはシステムの鮮やかな音の直接の原因となっている訳ではありません。


<ホーンタワー>

黄色いホーンシステムは8ウェイという大規模かつ複雑なシステムです。
このため、定期的に各ユニットの状態を点検しています。

まず、DCX2496のミュート機能を使い、全てのユニットの音を消します。
次に、2360+2446Hのミュートを解除します。
897Hzから4.02kHzまでの音を聴く。
異常音がしないかのチェック。
次に、2392+2490Hのミュートを解除。
今度は249Hzから4.02kHzまでの音を聴きます。
ここでも同じようなチェック。
このときの音、250Hzから4kHzまでの範囲だけで音楽の基本的な部分は成立している。
そして、わずか4オクターブのこの帯域が全てを握っているとも言えます。




その後、2332+2431H、ME15+DE500、2402H-05、と順にミュートを解除し、最終的に5ウェイで構成されているホーンタワー部のみの音を聴きます。
このホーンタワー部の音、250Hz(-48dB/oct)以上の音、太さや厚みというものがありませんが、素晴らしい音で聴きほれてしまいます。
定期点検という名目の戯れは、この音が楽しみでやっているようなものです。

このような点検作業を通じて250Hzから4オクターブというのがシステムの中核になるべきだというコンセプトが生まれました。
しかし、あくまでも2360+2446Hが担当する2オクターブがメインです。
そして、その下の2オクターブを受持つ2392+2490Hの役割は、2360+2446Hの鮮やかな音をダイレクトラジエターのウーファーやミッドローの太く厚みのある音に違和感なく繋げることです。


<高音ホーンの開口サイズ>

再優先で考えたのは、高音ホーンの大きさです。
2360ホーンの大きさが必要だと考えたのです。
2360のサイズは、H795xW795xD815mm。
そこでH870xW870mmのバッフル板に直径800mmの円形ホーンを形成することにしました。
このバッフル板はホーンの一部と考えています。

円形ホーンの場合、理論的には、その円周の長さと同じ長さの波長の周波数が再生可能な最低音となるそうです。
常温の音速を340m/secとすると、直径800mmの円形ホーンは135Hzまで再生できることになります。
また、定指向性ホーンの場合は、円周の長さはホーン設計の要素ではないことはご存知の通り。
下の図(キール氏の論文より)のようなグラフを見れば分かるように、所定の指向性を確保できる周波数が問題になります。




しかし、上記のような理論上の話では2360と2380の両ホーンの音の違いを説明できない。
なのでこれらの理論的な話は、あくまで理論にすぎず、それ以上の意味がないということです。


<高音ホーンの広がり形状>

円形の開口部を持つ定指向性ホーンを作ろう、というのではありません。
ホーンキャラクターがないホーンを作ろうと思っているわけです。
2360とMR94はホーンキャラクターがあります、厳密に言えば。
そしてその原因は、金属製の細く絞った長いスロート部分にあると思っています。

ところで高音ホーンの製作は途中で失敗し、再設計することになります。
その際、長いスロート部を持たないJBLの2353ホーン(下の図)を参考にすることにしました。
また、その回折部にはM2のスロート部の形状を導入することにしました。




2360ホーンのカバー角度は、90°x50°、また、MR94は、90°x40°です。
これらホーンの音の感触を円形ホーンで再現するにはどうしたら良いでしょうか。
円形ホーンの場合、垂直方向と水平方向の指向性は同じになります。
そこで、90°と40°の間ぐらいの広がりを持つ定指向性ホーンの広がり形状を参考にすべきであろうと考えたわけです。
というわけで、60°x40°のカバー角を持つ2353ホーンの60°の水平方向の広がり形状を僅かに広げた形状に決定しました。
下の図、黒線で示す広がり形状が2353ホーンの60°の水平方向の広がり形状です。




回折部周辺の広がり形状は、2353ホーンを参考に決定したわけですが、さらに外側のベル部分は、2360ホーンのラジアルホーン状の曲面を参考にしました。
この曲面は、フェルトの布をやや引っ張っぱることにより形成できます。
フェルトの布にはマジックペンでマーキングをし、引っ張る距離がホーン開口全周にわたり均一になるようにします。

なお、高音ホーンのホーン長は354mm、2353ホーンのホーン長は305mm(1フィート)です。
2353ホーンの回折部以降の広がり形状を生かしつつ、800mmの開口部直径とマッチさせた結果、この354mmという数値になりました。


<回折部の形状>

高音ホーンの回折部の形状は、JBLのM2ホーンの形状を参考にしました。
しかし、厳密に模倣する必要はありません。
何故なら、M2ホーンは900Hzから20kHzまでを担当するホーンだからです。
作ろうとしているホーンは800Hz前後から5kHz程度まで。
どうしてかというと2451Hに5kHz以上を受持たせると映画館の音になってしまうからです。

ところで、黄色いホーンシステムは、JBL社最大の5674とほぼ同規模のスピーカーシステムですが、肝心の帯域分割とホーンの使い方は業務用のそれとは全く異なります。
5674の2392+2490Hは、297Hzから2.5kHzまでをカバーし、2352+2451Hは2.5kHz以上をカバーします。
しかし、2490Hのレスポンスグラフ(下の図)を見ていると2.5kHzクロスというのはかなり無理がある。
さらに、2392ホーンは3kHz以上まで使用可能と、そのパンフレッドには記載されています。
1200人以上もの観客を収容可能な映画館用のシステムなので、2451Hの耐入力をカバーするように2490Hの受持ち帯域を広げたのでしょう。




定指向性ホーンは、4つのカットオフを持っています。
受持ち帯域の高域端の垂直、水平、低域端の垂直、水平についてそれぞれカットオフ周波数を考えて設計されています。
2392ホーンの回折部であるスリット幅は、2360の回折部のスリット幅よりもうんと広い。
これは、2392ホーンが20kHzまで使用するようなホーンではないからです。
スリット幅が狭ければ狭いほどより高い周波数でも回折効果を発揮できますが、ではその場合、低い帯域において問題は無いのか?
回折部を備えた定指向性ホーンの問題点としてウェーブガイドの論者は歪みが生じるということを指摘していました。
漠然とした指摘ではありますが、やはり周波数に対してスリット幅が狭すぎる場合、何らかの歪みが増大する事は想像できます。

ならば、高音ホーンに2451Hを使用し、20kHzではなく5kHz程度まで受持たせる場合、このホーンの高域側のカットオフ周波数に合わせた回折部を作る必要があります。
20kHzまで回折効果を発揮させるならスリット幅は20mm程度に抑えなければならない。
10kHzなら40mm程度ということになり、これは、2451Hのスロート径である38mmと近似します。
M2ホーンは左右のプラグが内側に膨出するような形状(下の図で黄色い線で囲んである部分)になっており、この38mmの中央部の間隙の幅を狭めているように形成されています。
今回の高音ホーンには、この膨出部分をあえて作りませんでした。




なお、今回のシステムの音に十分なポテンシャルが認められない場合には、2451Hではなく2431Hをドライバーに変更するつもりでした。
この3インチのアルミダイアフラムを持つドライバーは大変美しい音を持っています。
これに8kHz程度まで受持たせ、これ以上のマルチウェイ化は見送るつもりでした。
この場合、上記の膨出部を付加する予定でした。


<スナウト部分の自作>

高域側のカットオフ周波数を低く設定するのならば、回折部のプラグはもっと穏やかな形状でも良かったのかもしれません。
この回折部のプラグのエッジは、曲りくねった形状をしています。
この曲りくねったエッジ部で回折現象が生じる訳です。
ところで、この曲りくねったエッジをCAD上で直線状に延ばしてみると、結構な長さになります。
今回の自作ホーンの場合、回折効果を発揮できそうな部分は約36cmにもなります。
プラグの高さが約4cmなので当然といえば当然ですが。
さて、MR94の直線状の回折部のエッジは、どの程度の長さか。
片側23.5cm、両方で47cmになります。
下の画像は、M2ホーンの曲りくねったエッジを示しています。
谷の部分のエッジを黄色、山の部分のエッジを青色で示しました。





回折現象は音圧の高い部分で効率的に生じます。
M2タイプのホーンは、フェーズプラグ直後にプラグがあってそこで回折現象が生じます。
しかし、以前のドライバーはフェーズプラグの直後にはスナウトと呼ばれる音道がありました。
下の画像は、JBL375の断面図です。黄色い線で囲まれている部分がスナウトになります。




ALTECのMR94であれば、フェーズプラグからスナウトと呼ばれる音道を通り、そこから長さが約1フィートもある金属製のスロート部を通過した後、ようやく回折現象が生じることになります。
どちらが効率的かは明らかでしょう。
M2タイプのホーンの回折部は、JBL375やALTEC288などのスナウト付のドライバーのスナウト部分に位置しています。
だからM2タイプのホーンの回折部の自作は、スナウト付ドライバーの内部の音道を自作していことと同じなのです。