2011/11/14

JBL 2360A (3)

米国特許4308932号には先行技術として以下の3つの特許文献を説明しています。

1. US2537141号
Paul Wilbur Klipsch氏のmulti-cellular radial sectoral hornの発明。
出願日は1945年6月15日。






米国特許4308932号によるとこのクリプシュ氏のホーンはmidrange narrowing、polar lobingなどの問題があったとしています。
しかし外側に大きく開いたフレアー部を持っている点は2360Aなどの定指向性ホーンの構成にやや似ています。






2. US4071112号

D. Broadus Keele, Jr.氏の定指向性ホーンの発明。
出願日は1975年9月30日。
特許権者はエレクトロボイス社。




第1の部分26はエクスポネンシャル、第2の部分28はコニカル、そして第3の部分30はコニカル、エクスポネンシャル、あるいは他の曲率のホーンとなっています。
第1の部分26と第2の部分28だけだと、ホーンの開口直径と略同じ波長の帯域においてnarrowingが発生してしまいますが、第3の部分30を加えることによりその問題を解決。
図5では円形のスロート口を矩形の第1の部分の断面に変換する形状を示しています。

米国特許4308932号は、発明者が同じキール氏だからか具体的な問題点は指摘していない。
キール氏のAESの論文はこちらを
同論文のつたない解説はこちらを





3. US4187926号

Clifford A. Henricksen氏とMark S. Ureda氏による共同発明。
出願日は1978年12月8日。
特許権者はALTEC社。






この特許についてはここで少し説明しました。
厳密に言うと、この特許に記載されているホーンは試作品でありALTEC社で実際に製品化されたものではないと思います。
MR94は横長ですし、MR64はもっとずっとスロート長が短い。







しかし、米国特許4308932号は、このマンタレイホーンの発明について"poor low frequency response"(低域レスポンスの不足)であり"nonuniform sound dispersion at some frequencies"(いくつかの帯域では音の拡散が不均一)であるとしています。

う~む。
これはMRシリーズに対するJBL社の見解なのでしょうか。
だって、ALTECの試作品を入手してテストしたわけではないでしょう。
当時、JBLとALTECの両社の関係は緊迫していたからかなぁ。





2011/11/11

JBL 2360A (2)

米国特許4308932号の続きです。
この特許公報には「何故なのか」ということが記載されていない。
そして最愛の2360Aは常に無言である。
仕方がないから延々と考え込む羽目になる…




下の画像(同公報の図2)において角度AはHorn throat included angleと呼ばれている。
この角度Aは経験則からBeamwidth angle Bの90%になるのだそうだ。

A=0.9B

Beamwidth angleは2360Aの場合、90°x40°だ。
この図2ではホーン壁面が16aと16bになっているので角度Bは水平方向の指向性である90°になる。
すると角度Aは81°(公報実施例では80°と表示されている)ということになる。

次は、ホーンの開口幅Wを決定する。
この開口幅Wは、上記角度A、最低限界周波数F、そして定数Kから求める。

W=K/AF

定数Kは25000m・degrees・Hertzだそうだ。
角度Aの81°と周波数Fの400Hzを代入すると約0.77mとなる。
この0.77mはホーンの内側寸法であるから2360Aの外側寸法である0.795mと概ね一致する。





次にホーンの開口幅Wを1.5で割ってW'を求める。
このW'は上の画像(図2)において角度Aと対応している。

W'=W/1.5

そして下の画像の式によりホーン長Lを求めることが出来る。
なお距離Dは角度Aの交差位置からスリット(ギャップ22)までのオフセット寸法である。






このあとは公報に記載されている冪数の数式に上記各計算式で得た解を導入すればホーンカーブを決定することができる。




数式を単純に追うのであればここまではいい。
問題はない。
しかし、上記の話は16aと16bという水平指向性用のホーン壁面についてである。
もちろん、垂直指向性用壁面の18aと18bについても同様の計算をするわけであるが、そうするとスロート部を構成する26aと26bという平行な壁面は上記16aと16bにおけるホーン長Lとは計算上無関係ということになってしまう。