2011/11/16

JBL 2360A (4)

2360A、MR94B、HP9040のスリット(ギャップ)がどの位置あるのか比べてみよう。

最初は2360A。
スリットの位置はスロート口から516mmの位置にある。
従って、水平指向性用のホーン長は815mm-516mm=299mmになります。







次はMR94B。
スリットの位置はスロート口から327.2mmの位置にある。
そして水平指向性用のホーン長は389.9mm。






最後はHP9040。
スリットの位置は表示されていませんが、図面から計ってみるとおよそ520mmの位置にあり、これは2360Aと略同じ。
従って、水平指向性用のホーン長は808.2mm-520mm=288.2mmになります。







この3つのホーンの構成の相違が面白い。
定指向性ホーンだからと言って十把一絡げにはできない。
スリット位置の相違の他、2360Aの開口は正方形、MR94Bは横長の長方形、HP9040は縦長の長方形とずいぶん違う。

さらに、2360Aはラジアルホーンであり、他の2つはフラットフロントタイプだ。
さらに、2360Aはホーン壁面が曲面であり、MR94Bはステルス戦闘機のような平面構成。
HP9040は水平指向性用のホーンの内側がやや曲面でありその外側の部分は平面という複雑な構成。








2011/11/14

JBL 2360A (3)

米国特許4308932号には先行技術として以下の3つの特許文献を説明しています。

1. US2537141号
Paul Wilbur Klipsch氏のmulti-cellular radial sectoral hornの発明。
出願日は1945年6月15日。






米国特許4308932号によるとこのクリプシュ氏のホーンはmidrange narrowing、polar lobingなどの問題があったとしています。
しかし外側に大きく開いたフレアー部を持っている点は2360Aなどの定指向性ホーンの構成にやや似ています。






2. US4071112号

D. Broadus Keele, Jr.氏の定指向性ホーンの発明。
出願日は1975年9月30日。
特許権者はエレクトロボイス社。




第1の部分26はエクスポネンシャル、第2の部分28はコニカル、そして第3の部分30はコニカル、エクスポネンシャル、あるいは他の曲率のホーンとなっています。
第1の部分26と第2の部分28だけだと、ホーンの開口直径と略同じ波長の帯域においてnarrowingが発生してしまいますが、第3の部分30を加えることによりその問題を解決。
図5では円形のスロート口を矩形の第1の部分の断面に変換する形状を示しています。

米国特許4308932号は、発明者が同じキール氏だからか具体的な問題点は指摘していない。
キール氏のAESの論文はこちらを
同論文のつたない解説はこちらを





3. US4187926号

Clifford A. Henricksen氏とMark S. Ureda氏による共同発明。
出願日は1978年12月8日。
特許権者はALTEC社。






この特許についてはここで少し説明しました。
厳密に言うと、この特許に記載されているホーンは試作品でありALTEC社で実際に製品化されたものではないと思います。
MR94は横長ですし、MR64はもっとずっとスロート長が短い。







しかし、米国特許4308932号は、このマンタレイホーンの発明について"poor low frequency response"(低域レスポンスの不足)であり"nonuniform sound dispersion at some frequencies"(いくつかの帯域では音の拡散が不均一)であるとしています。

う~む。
これはMRシリーズに対するJBL社の見解なのでしょうか。
だって、ALTECの試作品を入手してテストしたわけではないでしょう。
当時、JBLとALTECの両社の関係は緊迫していたからかなぁ。