2012/01/06

JBL 2360A (9)

あけましておめでとうございます。
今年もよろしく。



2360Aの音が客観的に理解できるようになったのはMR94と付き合いはじめてからです。
どちらも2ウェイ用の超広帯域型大型ホーンという同じ土俵で戦う製品。
また、いずれもALTECとJBLの両社の社運をかけて開発されたという経緯があります。

この2つのホーン、音色の傾向がかなり違います。
簡単に言ってしまうと2360Aは厚みを感じさせる音、MR94と94Aは素直でストレートな音。
これはドライバーではなくホーンの違いによるもの。
この事実を知ってから、音のちがいの原因について考えるようになりました。

ホーン全体のプロポーションの相違、これについては2360A(8)で書きました。
しかしそれだけではない。
やはり2360Aの曲面構成とMR94、94Aの平面構成の差ではなかろうか、と考えています。

コニカルホーン派のBill Woodsさんも、コニカルホーンは色づけがないとおっしゃっている。
キール氏の論文でもコニカルホーンの優れた特性が紹介されている。
さらに、現代ホーンの主流であるウェーブガイドホーンもコニカルホーンが基調になっている。








当時のALTEC社はどのように考えていたのか。
キール氏の定指向性ホーン理論が登場したのは1975年3月。
MRシリーズの基になった特許出願は1977年6月27日。

上の画像はALTEC社の複合エクスポネンシャルホーンの特許出願のもの。
出願日は1977年11月21日。
MRシリーズの特許出願と略同時期。

ALTEC社の技術者はキール氏の定指向性ホーン理論を詳細に検討したと思う。
そして、彼らはその理論が複合ホーンに対して、あるいはコニカルホーンに対して新たな技術的視点を与えていることに気付いた。
そこでフレアレートの異なるエクスポネンシャルホーンの複合形態も試してみたのだろう。






ALTEC社ほどホーンと長く付き合い続け、そして苦しめ続けられたメーカーはない。
それだけにホーンを、特にエクスポネンシャルホーンを知り尽くしている。
そのALTEC社が最後に辿り着いたのがコニカルホーンの複合形態だった。
これはとても興味深い事実だ。

2360AとMR94、94A、どちらが優れているのか。
ビジネスの観点からは2360A、音の観点からはMR94、94Aだと思っている。
2360Aは15インチダブルウーファーとの組み合わせを想定して音造りがなされているように思える。
MR94、94Aはそうした用途を限定することがないままに純粋に完成度の高いホーンを目指して作られたのではないか。

しかし優れた戦略が無ければ市場では敗北する。
ALTEC社は優れた兵器の開発に成功したが戦略で失敗した、のかもしれない。




2011/12/28

JBL 2360A (8)

2360Aのことをより深く理解するためには、比べられる相手、ライバルが必要。
黄色いホーンの場合、それはALTEC MR94と94A。

MR94との出会いはヨハネスさんのA5システムでした。
そのMR94の音は…本当に素晴らしかった。
生粋のJBLファンとして叩きのめされた。

シネマシステムの歴史から推察すると、MR94は2360Aに届かなかったホーンではなかったのかと思っていました。
しかし、ネットワークの、それも定指向性ホーン用の補正回路を備えていないそれにつながれてのあの音は、想像をはるかにはるかに超えるものだったのです。

ALTEC vs JBL。
誰が何と言おうとこの構図に当てはまるのはMR94と2360Aだけ。
あの日以来。




しかし、日が経つにつれていろいろな疑問が湧いてくる。
MR94の実力がほんとうにあの音の原因だったのか。
ドライバーのちがいなのではなかったのか。

それを確かめる機会はやがてやってきた。
なんとなく入手したMR94A。
これはFRPホーン。
MR94や2360Aよりもはるかに剛性がある新型。
MR94はそれ以前のマルチセルラホーンと同じ造り。







ただしドライバーは黄色いホーンと組合わせている2446Hのスナウトレス版として2451Hをあてがった。
スロート部分には0.05インチの段差があるが、これはそのまま接続した。
しかもMR94Aは縦置き。
不利な条件下でMR94Aを負かしてやろうと思ったからだ。









そしてその音に驚嘆させられた。
またしても打ち負かされたのはこちらのほう。
ホーンの材質も、スロート部分の段差も、そしてドライバーの相違も超えて、MR94Aは「あの音」で鳴り響いた。
ほとんど未調整の状態なのにどうしてこんな音が出せるのであろうか。
その後もその状態で聴き続け、比べ続けたが、結論は変わらない。
現在でもMR94と94Aは2360Aの手強いライバルである。



聴感上の周波数レスポンスはMR94 94Aの方が2360Aよりも整っている。
おそらく大型マルチセルラと代替可能にするために、ネットワークにそのまま接続しても使えることを考えて開発したのかもしれない。
さらに、4インチダイアフラムではなく3インチダイアフラムで300Hzから使用可能とするために、ホーンのプロポーションをあれこれ試したのかもしれない。
2360Aのスロート口からスリット部分までの長さに対してMR94Bはその長さが短く、その代わりにMR94Bのベル部の方が長い。
全体のプロポーションはMR94Bの方がエクスポネンシャルホーンに近いことが理解できるだろうか。
より自然なプロポーションが一役かっているのは間違いない。