2019/09/20

JBL D130



オーディオの見果てぬ夢というのは、要するに生演奏されている楽器の音と聴き間違えることです。
"あれっ、スピーカーだったの?"ということ。
業務用15インチには様々なタイプがありますが、D130はそうした中で見果てぬ夢に近づくための素質をある程度持っているユニットではなかろうかと、そんな風に考えております。

結局、D130を入手することはできませんでしたが、使用中の15インチはD130の特徴をもつユニットばかりです。
D130の特徴とは、まず、第一にアルミボイスコイルであること。
インダクタンスが小さく、高域減衰が小さい。
次に、実効質量(mms)が小さいこと。
D130は60gしかありません。
あとはカーブドコーンであることかな。

なお、効率(no)がそんなに低下しないのであればロングボイスコイルでも構わないと思っています。
磁石側の磁界はギャップの外にも常に一定の範囲に広がっており、家庭内で使用する場合の小出力時、ボイスコイルの磁界がこの磁石側の磁界から大きくはみ出すことはないんじゃないかと。
ロングボイスコイルの程度にもよると思いますが。

ピアノモニターに使用している2155Hの実効質量は62g、改造ALTECシステムのALTEC 3156は68g、DIYホーンシステムのPEAVEY 1508-8ALCPは82.5gです。
そして、2155Hと1508-8ALCPはアルミボイスコイルです。
ALTEC 3156のボイスコイルの材質は不明(同モデルのパンフレットでは"an exceptionally high power voice coil"としか説明していない)ですが、おそらくCCAWの一種か、特殊なアルミ合金ではないかと思っています。
そして、3機種ともカーブドコーンです。
なお、1508-8ALCPはTHXの認定を受けたサブウーファーシステムに使用されているユニットなので、これを大昔のD130と比べるのは無理があります。

現役のユニットでは、PEAVEY 1508-8HEがD130にもっとも近いかもしれません。
というか、PEAVEYの技術者は、あきらかにD130を意識してこの1508-8HEを設計したように思います。
現代的なウーファーとしては、驚くほど小さいXmax、そしてD130と同等の効率(no/下の表ではEFF)値を見ていると、まるで生き写しです。
ショートボイスコイルかどうかはわかりませんが、ロングボイスコイルではないと思ってます。
実効質量に至ってはD130よりも小さく、これは音質上邪魔なジュラルミン製のダストキャプを除いたせいか、約53gしかありません。




Qmsの設定については楽器用のM115-8に近い考え方ですね。
バスレフ箱に入れるのであれば、1508-8HEは大変使いやすいユニットです。
PEAVEY社はJBL社からスピーカーユニットのOEM供給を受けていたため、その良さをよく理解していたのだと思います。
そして、ケブラー繊維混抄コーンやトリプルロールサラウンドなど、現代的な高性能ウーファーの技術を取り入れており、新旧ごった煮状態で大変面白いです。
PEAVEY社のウーファーは、取付穴径や取付ネジ径(PCD)がJBL社のそれと同じなので、互換性があるのもいいですね。




 

2019/09/18

JBL D130



1970年代後半から1980年代前半にかけて、JBL社の15インチウーファーは様々なタイプが発売され、百花繚乱の状態でした。
これは、当時のJBL社が業務用15インチユニットに関して混乱状態にあったということかもしれません。

D130のアルミボイスコイルを銅ボイスコイルへ、実効質量を60gから70gに増やしたウーファー版の130Aや2220が開発されますが、この系統は結局消滅します。
この系列は、アンプの出力が十分ではない時代に、高効率を優先して設計されたもの。
しかし、高出力のトランジスタアンプが出現した後は、効率が多少悪くなっても低域側の再生能力に優れたユニットにとって代わられます。

D130系はXmaxが非常に小さいため、ホーンロードをかけることが好ましいユニットでした。
ホーンロードをかければコーンの振幅幅(はば)を抑えることができるからです。
また、効率や遠達性という点からもホーンエンクロージャーは理にかなったものでした。
しかし、4520、4530、4550、4560の後継機種は現れませんでした。
理由は箱が大きすぎたからではなく、現代の基準からするとびっくりするほどの音質の悪さでした。
クレアブラザース(Clair Brothers') S4のようなシングルボックスの時代になり、積み上げタイプのPAスピーカーシステムはすたれていきます。


Clair Brothers' S4 System


1970年代後半から1980年代前半の混乱期を経てD140系のウーファーは主力ユニットとして発展してゆきます。
JBLの業務用15インチユニットの歴史を総括すると、D130の開発が第一期、D130系からD140系への進化が第二期、1990年代後半のディファレンシャルドライブのウーファーへの進化が第三期ということになります。
そして、現在のJBL社は現行ユニットの販売をやめてしまい、それらのTSデータも開示しなくなってしまいました。
滅びの序章、残念無念の第四期でございます。