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2004/06/16

幸せの黄色いホーン 96話 降伏文書



大阪夏の陣での歓談中、「ベーリンガーはねぇ」という話題に。この手の話は困ります。ハチャメチャな自作スピーカーシステムの音をなんとかまとめてくれるDCX2496は手放せない・・・しかし、そういう次元での話ではなくオーディオに対する態度が何となく不真面目であ~る!というご指摘なのです。これには冗談を連発したもののごまかし切れず、あえなく無条件降伏。気付いてみれば衆目監視の下、降伏文書、もとい、宅配便の送り状に自宅の住所等をせっせと書き込んでおりました。

と、これでは何の話なのかよく分かりませんよね。大阪夏の陣に集結した「カタログ男的安直路線なんて認めないもんね即席連合軍」による「逆相に接続しちゃった程度の腕前なのは承知しているけど、名の通った本格的な製品をそろそろ使いなさいよ」という温かい声援によろめき、「納得したならちゃんと態度で示そうね」という訳で、ステレオサウンド誌風本流オーディオ機器をヨハネスさんから譲って頂くことになったのです。う~む、やっぱりうまく説明できていないような・・・

「値段はそっちで決めてね。」「ありがとうございます。」「おまけにウーファーユニットも付けるよ。」「ええっ!いいんですか? ありがとうございます。ありがとうございます。」降伏は幸福の始まり。その送り状により送って頂いたのはALTEC社の291-16Kと3156です。

お礼の電話をかけました。「無事届きました。ありがとうございました。」「ホーンはどうするの?」「B&C社のME90をつけようかと。」「箱は?」「小型のバスレフ箱を設計中です。」これでこの話は終わるはずだったのですが、その数日後、ヨハネスさんから電話がありました。「もう箱、作ったの?」「まだです。これからホーンを発注するところです。」「828とMR94、使いませんか?」「!」



B&C社 ME90

94話で少しご報告しましたように、この828とMR94によるALTECシステムを実際に聴かせて頂いております。スピーカー遍歴に終止符を打つことができるほどの素晴らしい音。ヨハネスさんはご満悦、お気に入りの様子。それを譲って頂くのですから、これは棚から牡丹餅&猫に小判。



ダークサイド城でのALTECシステム
(この画像はヨハネスさんのブログから転載しました。)

このときのヨハネスさんの電話の声、少し思い詰めたような雰囲気でした。手許に置いておきたいというお気持ちだったのでしょう。こちらも設置スペースがないなぁと躊躇。少し考えさせて下さいと、とりあえずお返事したものの、どう考えてみてもこれは頂戴したい。置き場なんかどうにかなります・・・よね。結局、828とMR94を「こんなに甘えちゃっていいのかな?」というお値段で譲って頂きました。さらに、ホーンスタンドも頂いてしまいました。ベーダー卿のご厚意に深く感謝。

828とMR94が届いたのでお礼の電話をしました。「丁寧な梱包、ありがとうございました。」「ホーンや箱を塗装すると響きが変わってしまうからね・・・」ベーダー卿は愛機の行く末を心配されておりました。








2004/06/15

幸せの黄色いホーン 95話 大阪夏の陣



2008年7月19日と20日、大阪夏の陣に参加させて頂きました。新幹線の小さなテーブルに広げられているのはDSC280の英文マニュアル。このマニュアルを読んでヨハネスさんが最近購入されたデジタルチャンネルディバイダーDSC280の取扱方法を説明することになっています。大阪夏の陣に手ぶらで参加するのは気が引けるのでこれはありがたい。なお、英文カタログやマニュアルの読解には英語力は不必要です。日本のカタログやマニュアルに親しんでいる方なら単語さえ調べれば大抵理解できます。逆に英語力があってもオーディオに疎ければこれは非常に困難だと思います。

ヨハネスさんのダークサイド城に到着。久しぶりにお会いできたARISAさん、ごさ丸さん、そしてヨハネスさんと楽しいおしゃべり。お世話になります。リスニングルームに入ると、いきなり2360を一組降ろすというホーンタワーの簡素化作業。さらに、4発の30Wも鳴らさないとのこと。う~む、と考えたところで真意は分かりません。お気に召さない? で、それはいいとしても、この簡素化したシステム(それでも4ウェイマルチアンプシステム)にこれから様々な機材をつないで鳴らすわけですから、ちゃんと調整できていないと困ります。しかし、そこはヨハネスさん、即座に調整完了。やっぱり凄い。

この簡素化されたダークサイドシステムで早速戦闘開始。プリアンプの代わりのアクティブフェーダーとミキサー対決。ヨハネスさんのノイマンフェーダーは精悍な音。これに対して歴戦のアンペックスやクワドエイトが挑みかかる。例によって、鈍感な吸音材は、それら機材の違いを聴きとるのに必死です。今回はなんとか違いが分かるようになってきました。初心者の学習効果炸裂?

ふと振り返ると、ARISAさんが年季の入ったジュラルミンケースから小型のミキサーを慎重に取り出しています。スチューダー169。知る人ぞ知る(知らなかった…)クラシック録音用の名機。しかも、ARISAさんの改造によるスペシャルバージョン。この音が「!」なのです。音楽がゆっくりと聴こえてきます。絹のような肌触り。コンサートホールの空気感までもがそのまま伝わってきます。全員唖然陶然。ARISAさんは照れた表情で、長く聴くとボロが出ちゃうからと言いながら、やっぱり慎重にジュラルミンケースの中に隠してしまいました。

スチューダー169の強烈なインパクトに触発されたのか、続いて行われたアナログプレーヤー対決は全軍突撃状態となりました。ここでごんた先生登場。ヨハネスさんのレコカット、ARISAさんの…あれっ機種名忘れた! そしてごんた先生ご自慢の無数のプレーヤーが、浮き輪を利用した特製フローティングプレートの上に次から次へとセッティングされていきます。カートリッジとトーンアームはオルトフォン。さらに、昇圧トランス、ヘッドアンプ、フォノイコライザー等も聴き比べ。一番印象に残ったのは、ごんた先生のエンパイア限定版カートリッジの音。以前使用していた4000DⅢと同じMI型なのにこんな音が出るとは…




DSC280の操作方法の解説、なんとかなりました。これは解説者の手柄ではなくDSC280の操作性が良かったからです。呼び出す画面と操作ボタンとの関連性が理解しやすい。特に感心したのはそのセキュリティ機能。パスワードを設定すると指定した設定画面を表示不能にすることができます。要するに他人による設定変更を阻止するだけではなく設定画面の表示を不能にしてノウハウを秘密にしておけるのです。DSC280の内部も見せて頂きました。さすが90万円、中身がギッシリ詰まっています。JBL社と共にHarman Internationalの企業グループに属しているBSS社の小さなステッカーが貼ってあるので、このDSC280はBSS社によって製造されているのかもしれません。

こうして2日間の楽しい時間はあっという間に過ぎてゆきました。お忙しい中、無数のアナログプレーヤーを聴かせて頂いたごんた先生、適確な解説をして頂いたごさ丸さん、素晴らしい改造スチューダー169を聴かせて頂いたARISAさん、2日間じっくり煮込んだおいしい野菜スープをご馳走して頂いたヨハネスさん、ありがとうございました。また遊んでやってくださいね。








2004/06/14

幸せの黄色いホーン 94話 ダークサイド巡礼記



黄色いホーンシステム、中高域はだんだんまとまってきたように思えるのですが、低域に違和感があり、これをどんな具合に調整していいのか迷います。クロス周波数、遮断特性、レベル設定、イコライジングの無限の組合せにあっちふらふら、こっちよろよろ。調整を続けると続けただけ?悪化。使い手のレベルが装置に全然追いついていないことを、ここに素直に認めます・・・

こんなときはベテランの方のシステムの音がどんな具合だったのかを思い出せばいいのですが、これが「凄いっ!」というような驚いてしまった記憶だけしか残っていないという悲しさ。聴かせて頂いたシステムのどれもが巨大で複雑怪奇なマルチアンプシステムであり、当時3ウェイだった黄色いホーンシステムには、そうした経験を生かそうにもできなかったからだと思います。それに、ダークサイドで開催された2007年10月のALTEC大会、2008年3月の4550導入を手伝おう会、この2つの魅力的かつ貴重なオフ会を野暮用で連続欠席。このため、2007年5月の尾張・春の陣でごさ丸さんのシステムとARISAさんのシステムを聴かせて頂いたのが最後。それからもう1年以上も経っています。

という訳で、次のオフ会を大人しく待てば良いのですがやっぱり待ちきれない。結局我慢しきれずヨハネスさんにお願いし、2008年6月6日、金曜日の夜、ダークサイドの扉を叩きました。久しぶりに拝見できたヨハネスさんのシステムには4550が組み込まれ、もはや漆黒の巨大要塞という雰囲気。巨大な30Wが4発並び、その両側にホーンタワー、さらにホーンタワーの外側に4520が設置されています。ダークサイドのホーンタワーは約2.5mの高さがあり、これを設置するのは大変だっただろうなぁと思いました。




いつも感心するのはホーンタワーを複数の2360から構成したこと。高域になるにつれ小さなホーンを使用するのが常識なのに。これは様々な小型や中型ホーンを試した上でのことだそうです。それに、そんな説明よりも6連装の2360の音が全てを物語ってくれます。

音を聴かせて頂いて、最初に感じたのは黄色いホーンシステムと比較して、低音の質感がとても軽やかなことです。しかし、質感が軽やかと言っても、黄色いホーンシステムよりも圧倒的に迫力がある。自然なのに底知れぬパワーがあり、音楽の土台をがっちりと構築しています。これに比べると、黄色いホーンシステムの音は、まるで栄養ドリンク剤の味のように不自然で不気味です。この違和感は、低域や最低域に過度の量感やパワー感を求めたことが原因だということに気付きました。

次に感じたのは、サイズの差がそのまま音のエネルギー感の差になっていること。黄色いホーンシステムの両ch分のエネルギー感が、ダークサイドシステムの片ch分という感じです。そして、やはり4550が凄い。しかし、4550の強烈なエネルギー感のせいで低音のキレが悪くなっているように思えたので、その旨をヨハネスさんに話しました。すると、ヨハネスさん、いくつかのアムクロンK1やK2の入力レベルつまみをちょこちょこと調整・・・

出てきた音にギョッとしました。わずか数秒の調整で望んでいた低音のキレがきちんと出たのです。ヨハネスさんは言葉ではなく「こういう音のことでしょう?」と音で示したのです。シロートが指摘するようなことは承知しており、そうした音など簡単に出せる技量を持っている。これには心底驚かされました。




「エネルギーバランスをとるということは、すべてのユニットが同じくらいの仕事量をこなす状態にしてやるということ。そうでないと、ある帯域のユニットだけが妙に頑張った音になってしまう。」ヨハネスさんはこんな風にブログに説明されていました。マルチアンプシステムの各帯域毎のホーン、ユニット、アンプの選択、受持ち帯域の広狭等は、周波数レスポンスグラフなどでは何も推し量ることができない、ということなのです。

まだ導入したばかりの4550の可能性を探るべくヨハネスさんの調整作業が続きます。4550の帯域をあれこれいじっている訳ではなく、その他の帯域もどんどん変更しているようです。何がどう変っているのか、何を探っているのか、明確には分からないデリケートな作業。実際に、こうしたマルチアンプの調整作業を見たのは初めてだったので参考になりました。そして、翌日の昼前には、巨大システムがいよいよ「目覚めた」というような音が出て、その喜びのスターウォーズ、ダースベイダーのテーマにペチャンコに踏み潰されてしましました。

それから、ALTECの大型マンタレイホーンのMR94+291-16Kを使用したシステムも聴かせて頂きました。ALTEC大会に参加できず聴きたい聴きたいと思っていたので、これはとてもうれしかったです。ALTEC社の伝統と格調の高さを感じることができました。そして、とても書ききれないほどの様々なアドバイスを頂きました。ヨハネスさん、本当にありがとうございました。




2004/06/13

幸せの黄色いホーン 93話 初期調整



"ベースになる2ウェイか3ウェイのシステムを作り、それに一つずつユニットを加えてゆくといいよ作戦"は、まだ発動していません。全部のユニットを鳴らしておきたいですし、新しい音に惹かれているからです。それから、もう少し調整の練習もしていたい。自信のない手つきでDCX2496の設定を変更し、そのたびに変わる音に耳を傾け小首を傾げ、こんな感じかなぁと不安げに満足するとその設定をメモリーします。しばらくそのまま聴いて、やっぱり変かしらとまた新たな設定を作り始める・・・

そんなメモリーがいくつか出来上がったところで測定してみるとフラット・・・ではないです。しかし、ここで元気よくフラットにしてしまうと調整のやり直しが測定のやり直しを招くという無限ループに陥ってしまうので、おおまかなバランスをそのままに、わずかに残っている定指向性ホーンのかまぼこ状の特性や部屋のクセのようなものを少しずつイコライジング。すると、あいまいな音が消えて全体が引き締まってきます。

新しい音の傾向は、鮮明、重厚、強靭、そして時々凶暴です。リラックスできるような雰囲気は皆無。その代わりオーケストラが楽しめます。これは一塊になりがちな低音パートがよく分解するから。この甘さがなくクリアな低音は旧システムからは聴けなかったので、おそらくPD.2450の仕業でしょう。低音の甘さが消えたと言うよりも、旧システムの低音に甘さがあったことを気付かされました。




またPD.2450のパンチ力はヘビー級です。猛烈に力があって重い。時として再生音楽の範疇から逸脱してしまうような凄まじさ。この打ち出されてくる低音エネルギーをどの程度抑え込むべきなのか、これがいまひとつ分かりません。だいたい低音の調整は昔から苦手なのです。

それに一番いけないのは、苦労して作った新しいウーファー部が鳴り始めるとうれしくなってしまい、ついつい"低音主義"のバランスにしてしまうことです。そのあっぱれな言い訳は"エージングを早く終了させるため"。さらに愚かなのは、そうした異常なバランスが際立つ"低音てんこ盛りCD"ばかりに手が伸びるということ。でも、これはやめられない至福の時間でもあります。そして、一過性ではなく時々再発するから困ったものです。

初期調整ではっきりと分かったことが2つありました。まず、強力な業務用ユニットを集めるとこんな音になっちゃいますよ、ということ。それから、システム全体の音に対して黄色いホーンの2360A+2446Hの支配力が相変わらず大きいことです。新しいシステムと仲良く暮らせるようにのんびりいきましょう。

※2008年5月22日、とうとう10万アクセスを超えました。ありがとうございます。これからもどうぞよろしく!






2004/06/12

幸せの黄色いホーン 92話 新しいシステムの音出し



工作の完了から一週間後の週末、音出しのときを迎えることができました。「ベースになる2ウェイか3ウェイのシステムを作り、それに一つずつユニットを加えてゆき、音の変化を把握するといいよ。」というヨハネスさんのアドバイスに従ってじっくり作業を進めることにしました。今回は慎重に事を運ぶのだ、いつまでもお調子者ではいけないのだ、と心に誓います。

こうして落ち着いていられるのはPD.2450以外のユニットの性格をすでに把握しており、また、ヨハネスさんのシステムのホーンタワーを聴かせて頂いているためです。ヨハネスさんの6連装の2360Aによるホーンタワーの素晴らしさには驚嘆しました。そして、その体験がこの新しいシステムを製作した原動力になっています。

DCX2496の初期設定は、カタログに記載されている各ユニットの能率値を参考にしてレベルの設定、2オクターブ程度を目安に帯域分割を行いました。ミュートボタンを操作して8組のユニットの中から一組ずつ音を出し、左右の位相が正しいかどうかをチェック。過大入力等の原因による変な歪が発生していないかもチェックしました。異常なしです。

とりあえずこの状態で音場はどんな具合なのか聴いてみようと考えDCX2496のミュートボタンをポンポンと景気よく解除。ところが出てきた音に呆然。迫力は皆無、ことごとく繊細。透き通るような音がサラサラと流れてきます。この音、マルチアンプらしい音と言えば言えるのかもしれませんが、しかし、これでは音楽の生命力のようなものが何も伝わってきません。しかししかし、こういう音しか出せないならこの方向に行くのも仕方のないことなのかしら・・・

いや、そんなのは困ります!という訳で当初の慎重な態度はあっと言う間に吹っ飛んでしまいました。ともかくこのサラサラ音の方向を変えることができるのかどうかを試さないと落ち着いていられません。息つく暇もなくDCX2496を操作し、次から次へとCDをとっかえひっかえの戦闘開始と相成りました。




今回のシステムはホーンタワーと箱が分離しています。様々な試行錯誤で分かったことは、ホーンタワーと箱のレイアウト変更が大きな影響力を持っていること。音場の広がり方の違いは当然ですが、そのレイアウトによってDCX2496の設定に大きな影響が出ます。中高域の指向性やサービスエリア、低音の回り込み等、様々な条件が変化するためなのでしょう。




レイアウトは、ホーンタワーを左右の外側に配置し、その間にウーファーの箱を4つ並べることにしました。そして、さらにDCX2496のレベル調整や帯域別のEQ設定を進めてゆくと、どんどん好みの音に近づいていきます。求めているのは、実体感のある音の厚みと鮮やかさ、深々と震える空気感、そして広大で豊かな音場。DCX2496の設定はとりあえずこんな具合になりました。位相は全てアブソリュートでの正相。ディレイの調整は行っていません。2台のEP1500の入力ボリュームの目盛りは24、1008-HE用のES70の入力ボリュームの目盛りは9時の位置+6ノッチ、他のES70の目盛りは9時の位置から+1ノッチです。

      Input Gain
DCX2496-L     -3dB
DCX2496-M     -6.2dB
DCX2496-H     -6.2dB


                                       Gain     HPF     LPF     EQ
1.     Sub-bass     PD.2450     -9.5dB     n/a     100Hz 24LR     30Hz BP +3dB 4.0
2.     Bass     1808-8HPS     -7dB     n/a     141Hz 18BUT     30Hz BP +3dB 4.0
3.     Mid-bass     1008-8HE×2     ±0dB     100Hz 24LR     294Hz 24LR     n/a
4.     Midrange     2392+2490H     -10dB     249Hz BUT18     1kHz 24LR     647Hz BP -3dB 0.3
5.     Upper-midrange 2360A+2446H  -10dB   1kHz 24LR   4.47kHz 24LR   662Hz BP +2dB 0.5
6.     Lower-treble   2332+2451H  -10dB   3.04kHz 24LR 7.97kHz 24LR   3.46kHz BP -3dB 0.2
7.     Treble     ME15+DE500     -9dB     7.97kHz 24LR     n/a     n/a
8.     Upper-treble     2402H-05      -10.5dB       9.06kHz 24LR      n/a     n/a


3台のDCX2496は、高域、中域、低域の3つの帯域に振り分けました。デジタル入力で使用しているためDCX2496の入力レベル調整は使いたくなかったのですが、これを使用すると3ウェイのような調整も可能になるためとても便利でした。後日、落ち着いてきたらこの入力レベル調整の値は出力レベル調整の値に移し替えようと思います。




音出し2日目には当初のサラサラ音とは全く異なる方向にもっていけました。一段落ついたので、調整を止めて聴きなれているCDをじっくり聴いてみました。あらゆる点で旧黄色いホーンシステムの音をはるかに凌駕しています。クロスを高め鳴らし放題にしたローライダー18とPD.2450によるウーファー部の猛烈なパワー感にホーンタワーによる中高域の鮮やかさがバランスし、8ウェイにもかかわらず全体の音にまとまりがあるように思えます。最後にこの音出しの記念にとエルガーのCoronation March, Op.65を聴きました。






2004/06/11

幸せの黄色いホーン 91話 工作完了



夜8時半になってようやく犬小屋完成、あなたぁそろそろお風呂に入って夕食にしてくださいよ、というようなお気楽DIYの世界のはずが、七転八倒の長期戦になってしまいました。2008年4月6日、新しい黄色いホーンシステムの工作がようやく完了。設計ミスや勘違いが相次いで発生、ホームセンターをウロウロ、でも解決策は見つからずこれは来週考えようと先送り。そしてその来週になっても妙案は浮かばず… 2192の購入作戦を発動してから2年弱。のんびりおやりになるにも限度というものがありますでしょう、と反省はするものの、どんどん事を進めるほどの腕と思い切りがないので仕方ありません。しかし、もたもたしていても諦めなければなんとかなるものです。さあ、新しいシステムをご紹介しましょう。




ホーンタワーと箱は配置変更を容易にするためキャスター付にしました。重心が低いのか、移動中でもホーンタワーはしっかり自立しています。移動中にひっくり返らないか、ホーンがゴロンと脱落しちゃうのではないか、というようなことをずいぶん心配していました。この画像のレイアウトの場合、スピーカー1本の大きさは、幅1.9m、高さ2.1m、奥行き1mです。




意外に面倒だったのは配線関係。全てのスピーカー端子とアンプ端子はスピコンになっているため、16本のスピーカーケーブルの両端にスピコンコネクタをつけなければなりません。スピーカーケーブルにはカナレの4S8と4S6を使用。4S8は被覆のビニールが硬くて弱りました。試しにドライヤーで加熱してみるとビニールは柔らかくなりを簡単に引き抜くことができました。でも指先を火傷しそうでした。




今までのラックにはアンプ類が収まらないのでラックを作りました。ラックと申しましても4本の脚をアンプに直接取り付けただけです。棚板等の材料費を節約するのが目的。断面がくの字型のアルミ材(50mm×50mm、3mm厚)の長さはちょうど1mです。このアルミ材は合板で補強してあります。全体の重量のせいかがっちりしています。




アンプケースの横幅はES70よりもEP1500の方が幅広いため、ES70の背面側の取り付け部分にワッシャーを3枚重ねて調整しました。アンプケースの横幅は規格化されていないようです。このラック、制作費が安いのはいいのですが、アンプの取り付け作業が大変です。また、アンプを変更する場合には後脚のネジ孔の位置を変更する必要があるため汎用性に欠けます。あまりお勧めできない代物。










2004/06/10

幸せの黄色いホーン 90話 システム構成



PD.2450用のスピーカーネットを製作しました。千円ぐらいのタッカーというのを購入して挑戦。縦横の枠材の中ほどから順に画鋲で仮止めしながら生地を伸ばしてゆき、タッカーでパチンパチンと固定するだけ。すこぶる簡単。出来栄えに満足しつつも、使用した生地が微妙に透けるのが気になります・・・




生地屋さんにて
「伸びる生地はありますか?」
「そこの白と、黒と、黄色のが伸びますよ。」
「端がほつれたりしますか?」
「特殊な編み方なのでほつれたりしません、レオタード用ですから。」
「!」



システム構成は8ウェイマルチアンプ、妄想の果ての寄せ集めシステム。音の良し悪し以前に、ちゃんと音が出るのかしら? 帯域分割の周波数は妄想値。
1.     Sub-bass     PD.2450     ~50Hz
2.     Bass               1808-8HPS          50Hz~100Hz
3.     Mid-bass     1008-8HE×2     100Hz~270Hz
4.     Midrange     2392+2490H     270Hz~900Hz
5.     Upper-midrange     2360A+2446H     900Hz~3kHz
6.     Lower-treble     2332+2451H     3kHz~6kHz
7.     Treble     ME15+DE500     6kHz~10kHz
8.     Upper-treble     2402H-05     10kHz~

9ウェイに発展させる場合には、Sub-Bass、Bass、Upper-bass、Lower-midrange、Midrange、Upper-midrange、Lower-treble、Treble、Upper-trebleになるのでしょうか? だんだん訳が分からなくなってくることだけは確かなようです。

デジタルディストリビューターとしてのSRC2496と3台のDCX2496を使用します。SRC2496のデジタルXLR出力端子とデジタルRCA出力端子からAES/EBU規格のデジタル信号を出力させ、デジタルXLR出力端子にY字型ケーブルを使用すると、全部で3つのデジタル出力に。さらに、デジタルRCA出力端子にもY字型ケーブルを接続したところ、こちらもDCX2496が正常に受信しているため、全部で4台のDCX2496が接続可能だと思います。

恐ろしいことにDCX2496は4台持っており、スライドボリュームを1本買い足せば12ウェイマルチアンプに対応可能・・・1.Sub-Bass、2.Lower-bass、3.Bass、4.Upper-bass、5.Lower-midrange、6.Midrange、7.Upper-midrange、8.Lower-treble、9.Treble、10.Upper-treble、11.Super-treble、これでも一つ足りないですね。

モノラル6ウェイにSRC2496をつなぎ、サンプリングコンバーターの機能を使ってCDの44.1kHzを96kHzにコンバートした場合、明らかに音質が劣化することが分かりました。調べてみるとサンプリングレートは2倍の周波数でコンバートするのがお約束だそうです。CDの場合は88.2kHz、DVDの場合は96kHz。こうすると音質は劣化しなくなったのですが、音質が良くなったりする訳でもありません。う~む。

パワーアンプはいつもの安価な業務用。61cmウーファーと48cmウーファーはベリンガーのEP1500、他はSALのES70にするつもりです。何れのアンプも冷却ファンを停止して使用しても問題がなかったという消極的な理由です。





2004/06/09

幸せの黄色いホーン 89話 TOWER OF POWER



以前にお絵描きしたのをあれこれ見ていると・・・ゴマモンガラヤオヨロズだそうです。こういうのを描いては鬼と一緒にニヤニヤ。



ゴマモンガラを描いていた頃には、2360A+2446Hと2392+2490Hを組み合せることについて現実感がまるでなかったです。まさに絵空事。どちらも大型ホーンと4インチダイアフラムのドライバーなので、そんなに音は違わないだろう・・・ だから、黄色いホーンシステムを別の部屋に移し、例えば、こんなシステムを考えていました。



ところが、聴いているうちに2360A+2446Hと2392+2490Hは全く異なる性格を持っていることが分かってきました。2392+2490Hの低域側は非常にパワフルな上、しっかりした音がします。曖昧さがありません。2本の2490Hはそれぞれ半年ほどのエージングですから未だ本来の音ではないにもかかわらず。

2490Hは、5対1の低いコンプレッションレシオ、2重環状スリットのフェイズプラグを持ち、また、コンプレッションドライバーなのにロングボイスコイル。得意な帯域はせいぜい1kHz位までなのではなかろうかという超ナローレンジ。外観は平凡なのに中身が非常識。こうしたドライバーの構造と2392の大きな開口面積が影響しているのでしょう。

一方、2360A+2446Hは、2392+2490Hと2332+2451Hの組合せに対して良いところがないのかというと、2332+2451Hの帯域については2360A+2446Hの方が圧倒的に素晴らしい。どうも2332+2451Hは線が細く神経質なところがあり、これは残念ながら並みのホーンです。鮮やかでパワフルなのに細部まで丁寧に描ききる2360A+2446Hと比較するのは酷です。

という訳で、2392+2490Hの上の帯域を2360A+2446Hに任せてみたいと思うようになり、結局、黄色いホーンシステムに2192を組み合せる方向で再検討することになりました。



作図していて気付いたのですが、2392+2490Hの奥行き寸法は、2360Aの上下の縁から2446Hの後部までの寸法と同じようです。おそらく映画館のスクリーン裏側にある設置スペースの奥行き寸法をそのままにしたい、だからホーン長を延長することができない、ということでホーン開口とスロート径の拡大で対応したのだと思います。なお、2392のホーンの開口面積は2360Aの開口面積のほぼ2倍です。

ホーンスタンドの板取りをCADで作図しているときに陽気な曲ばかり聴いていました。その中の1枚がTOWER OF POWER LIVEのCD。ノリノリで調子がいいのでどんどん設計が進んだのですが、おかげで考えられないような設計ミスを。ほろ苦い思い出の曲がまたひとつ・・・




2004/06/08

幸せの黄色いホーン 88話 PD.2450(3)



そろそろ解体の時期が迫っているモノラル6ウェイと相変らず遊んでいる、というか学ばせてもらっています。ミッドベースを加えてから低音の質感を大幅に調整できることが分かりました。その低音部は、25cm4発のミッドベース、V字型バッフルの38cm4発のウーファー部、そして擬似V字型バッフルの46cm1発のサブウーファーという3ウェイから構成されています。

例えば、サブウーファーのレベルを上げると、ウーファー部のレベルが上げられなくなり弾んだ感じが後退します。そこで、サブウーファーのレベルを下げてウーファー部のレベルを上げると、V字型バッフルらしいパンチがあって弾んだ感じが出てくるのですが、今度は2392+2490Hの質感と合わなくなります。そこでミッドベースとウーファー部とのクロスを調整。120Hzだとウーファー部のキャラクターが強いのですが、100Hzまで下げるとミッドベースの素直な音が支配的になります。ミッドベースはウーファー部と2392+2490Hの質感の橋渡しをしてくれます。

300Hz以下を3分割する必要があるのだろうか?と当初はかなり疑問に思っていましたが、今では悪くないと思うようになりました。こうした調整を通じて得たわずかばかりのノウハウを生かし、黄色いホーンシステムを再調整してみました。モノラル6ウェイのような明快なコントロールは難しいのですが、それでもイコライジングやクロスの調整と音の変化の関係が以前よりも理解できるようになってきました。最低域のブーストが過度であったため、ここを抑え50Hz~80Hzを少し持ち上げると低音の雰囲気が大幅に変わりました。

一方、PD.2450はどうなったのかというと・・・ 箱を作らなければ始まりません。しかし、この箱の容積には迷いました。当初は500L~600Lを予定していたのですが、いろいろな箱の設計ソフトで調べてみると300L位が適切な容積として表示されます。PD.2450の推奨容積は130L~400Lとなっており、この300Lという数値はそれほど異常には見えないのですが、それでも61cmのサブウーファー用ですからもっと大きな箱にしたい・・・

さらに、ユニットが36kgと重いため、バッフル板への取り付けに不安が募ります。ユニットを取り付ける際にバッフル板のネジ穴とユニットのネジ穴をうまく合わせることができるのか、それから、長期間取り付けているとユニットとバッフル板とが張り付きユニットを外せなくなるのではないか。こうしたことも悩みの種。

そこで、今回はバッフル板と背面板を着脱可能にするためにボルトで連結することにしました。ユニットをバッフル板に取り付けて、その後、バッフル板ごと箱に取り付ければ作業は楽ではないかと。また、バッフル板とユニットが張り付いてしまっても、バッフル板ごと箱から取り外すことができれば対処しやすかろうと。それから、箱の容積を増やしたくなったら裏板を外し、新たに製作した側板の延長部分を取り付ければ容積を簡単に増やすことができます。




結局、実効容積300Lを目標にして設計することにしました。24mm厚シナ合板を使用。内寸容積が358L(内寸852W×702H×600Dmm、外寸900×750×663mm)です。補強材、ダクト、ユニット、少量の吸音材により減少する容積を計算すると約38L。したがって実効容積は320L。ダクトチューニングは30Hzを少し切るぐらい。ダクト開口は200×130mm、ダクト長339mmが2本です。




ユニットの取り付け穴の寸法がパンフレットに示されていなかったため、直径568mmの穴を開けたところ、これがハズレ。ユニットがあと少しのところで入りません。仕方がないので578mmの穴を開けた15mmのシナ合板を重ねて事なきを得ました。このため、バッフル板の厚さは39mmになっています。その他にもあちこち手違いがあり製作は一進一退を繰り返したものの、なんとか完成することができました。ああしんど。









2004/06/07

幸せの黄色いホーン 87話 PD.2450(2)



製作途中のバッフル板に取り付けての記念撮影です。パシャ!



PD.2450

非常に獰猛な感じです。箱に入れてしまうと見る機会がないのが残念。

このPD.2450はターボサウンド社のスピーカーシステムには採用されていないようです。しかし、ターボサウンド社のTSW-124には、プレシジョンデバイシズ社の61cmウーファーが使用されていました。このTSW-124は、TMS-3やTMS-4と組み合わせるためのサブウーファーシステムです。フロントロードタイプの箱は1回折り返しただけの単純な構造。




TSW-124


音はクリアーでパンチがあり、同社の46cmダブルウーファーシステムよりも好評だったとのこと。バスレフとはちがい、この手の箱はパンチがある低音が出るみたいです。JBL社のASH6118(46cmウーファーの2242Hを1本搭載)のパンフレットには「Excellent "punch" with true sub-bass extension.」という説明文があることからも分かります。



ASH6118

TSW-124に使用されていた61cmウーファーは、LS-2403という型番で4Ωタイプでした。TSW-124のパンフレットによると、6インチボイスコイル、直径30cmのフェライトマグネットを搭載していると書かれており、これはPD.2450と同じです。しかし、このLS-2403のBL値は41!であり、PD.2450のBL値の32.357よりも大きな値になっています。しかし、このBL値のちがいは、LS-2403の許容入力がプログラムで1200Wであるのに対し、PD.2450ではプログラムで2000Wとなっており、これに伴いPD.2450のXmaxの方が大きくなっていることが原因だと思います。従って、両ユニットは基本的に同じ構成であり、LS-2403はホーン用、PD.2450はバスレフ用に最適化されている姉妹品だと考えています。

残念ならTMS-3やTMS-4同様、TSW-124も生産中止。現在では54cmウーファーをフロントロードタイプの箱と組み合わせたTSW-721が生産されています。このTSW-721には、54cmウーファーのPD.2150同等品が搭載されていると思います。



TSW-721






2004/06/06

幸せの黄色いホーン 86話 PD.2450(1)



モノラル6ウェイとのつきあいは良好です。なんだかんだとDCX2496の設定を変更し聴き比べています。これは楽しい。1008-8HEのミッドベース帯域のさじ加減でシステム全体の雰囲気が大幅に変ります。この帯域が張り出したパンチと厚みのある音、これが段々と心地よくなってきて・・・う~む、音の好みがふらついて迷子になりそう。

ところで大型ホーンから豊かな響きを得るためにはサブウーファー帯域の低音をたっぷり供給することが大切、というようなことを日頃から感じています。46cmウーファーのローライダー18にはその能力があると思っていたのですが、ヨハネスさんの30W(30インチウーファー)×4発を聴いてしまうと… という訳で、スピーカーユニットのお買い物道楽記もいよいよ大詰め。真打登場です。プレシジョンデバイシズ(Precision Devices)社のPD.2450(カタログ散策の11話をご参照下さい)を2本購入。78話の「馬鹿馬鹿しいシロモノ」とはこれのことです。

この61cmウーファーユニットに興味を持った発端は、海外のPA用サブウーファーシステムの自作に関するBBSを読んでいたため。業務用スピーカーユニットマニアの間で「PD.2450を聴いたことある方はいませんか?」とか、「箱はどういうのが合うのでしょうか?」などという話題が時々出てくる。調べてみると、このプレシジョンデバイシズ社は、ターボサウンド(Turbosound)社と同じ業務用音響メーカーの企業グループに属しており、同社へスピーカーユニットを供給しているようです。最近(2007年)同じ英国のFANE社も買収したようでなかなか意気盛んです。また、プレシジョンデバイシズ社は、タンノイ社へも同社の業務用スピーカーシステム用のユニットを供給しているようです。

ターボサウンド社というとTMS-3やTMS-4が有名です。野外コンサートのような大規模PA用スピーカーシステムで一世を風靡しました。最盛期は80年代後半でしょうか。このTMS-3やTMS-4の活躍により、それまで使用されてきたJBL社の4560や4550をベースとするPAシステムを見かけなくなりました。ターボサウンド社とプレシジョンデバイシズ社の連合艦隊は、JBL社の大規模PA艦隊の撃破に成功した、ということになると思います。でも、現在のターボサウンド社には当時の勢いが感じられません。ターボサウンド社の設立者の一人であるトニー・アンドリュー氏が1992年に同社を辞め、ファンクションワン(Funktion One)社を立ち上げてしまったから?




TMS-3

TMS-3は、15インチウーファー×2+ホーン、10インチミッドベース×2+ホーン、2インチコンプレッションドライバー+ホーンという3ウェイホーンシステムです。上の画像の置き方の場合、幅101.9cm×高さ84.4cm×奥行き57.8cm。重さは134kgです。システム構成から考えると非常にコンパクトだと思います。




TMS-4

TMS-4は、18インチウーファー×1+ホーン、10インチミッドベース×1+ホーン、1インチコンプレッションドライバー+ホーンという3ウェイホーンシステムです。上の画像の置き方の場合、幅50.2cm×高さ114.3cm×奥行き73cm。重さは75kgです。46cm3ウェイという構成にはなんとなく親近感があります。当時、TSM-3よりも斬新なシステム構成だったのではと思っています。



GS-1

話は変りますが、80年代中期に突然出現したオンキョー社のグランドセプターGS-1、なんとなくTMS-3の影響を受けたのではないかと考えています。このGS-1に関してはオーディオ懐古録やオーディオの足跡に詳しい解説が掲載されています。






2004/06/05

幸せの黄色いホーン 85話 多連フェーダー



DCX2496をデジタル入力で使用しているため、ボリューム調整用の多連フェーダーを製作することにしました。使用したのはアルプス電気のRSKシリーズのミキサー用2連スライドボリュームです。10kΩ、Aカーブ、操作部形状は9-T。電即納という直販サイトから11個以上購入すると極端に単価が下がるために11個購入しました。それからRCA入出力端子板。これは12個口のものを3つ購入しました。

これらの部品を机の上であれこれ並べてみます。スピーカーシステムならユニットを購入する前に設計図を作ることができますが、多連フェーダーなど作ったことがないので完成したイメージが湧かず、すんなり進みません。連動誤差の不安もありますし、バッファアンプを省略した試験的なものになると思うので、できるだけ簡単に作ってしまいたい。でも、触れる頻度が高い機材ですから、しょんぼりしてしまうような仕上がりでは困ります。

ところでこの手のフェーダーの自作には2つの大きな問題があります。まず、フェーダーをどんな具合に取り付けるのかということ。フェーダーを取り付けるためにはアルミ板にスリット加工を行う必要があります。東急ハンズに相談してみると、そういう加工はできませんときっぱり。そういう即答は幸せを遠ざけるよねぇ…という訳で他力本願の道は早々に閉ざされてしまいました。

次に立ちはだかる問題がフェーダーをどうやって連動させるかということ。これはずらっと並んだノブ同士を棒のようなもので連結すればいいのですが、この連結はしっかりとしたものでなくてはなりません。また、組立ての容易性やメンテナンス等を考えると、この連結棒は取り外しができるようにしたい。

とりあえず厚さ3mmの工作用の木の細板を購入し、多数のフェーダーをビスで細板に固定、アルミの丸パイプ(直径19mm)を両面テープでノブに貼り付けフェーダーの連動実験をやってみました。1cm幅の厚手の両面テープをノブの幅に切断し、各ノブにそれを1枚ずつ貼っていきました。でも、これはダメ。丸パイプはしっかりとノブに固定されるのですが、フェーダーのスライド方向に対して斜めになるような力を加えると、その力の方向にノブの列が簡単にゆがんでしまいます。

丸パイプを取り外し可能にするというのをあきらめて瞬間接着剤で固定するしかないか…と考えたのですが、ダメもとで横一列に並んでいるノブの上面に両面テープを張り渡すように貼ってみたところ、不思議なことにこれが大成功、ガッチリ固定できます。今度は斜めになるような力を加えてもノブの列が全くゆがみません。うふん。

こんな実験をしているうちに、フェーダー取り付け用のスリットなんかいらないんじゃないの?というお手軽な結論に至り、できちゃったのがこれ。





3mm厚アルミ板と両面テープで貼り付けてある40mm角のアルミサイコロが主成分。1円硬貨7枚を接着剤で張り合わせたスペーサーで脚部の高さを稼いでいます。アルミの丸パイプも豪華なアルミムク棒(直径20mm)に変更。土台の板はスピーカー作りの際に余っていた端材です。この板の端面には実験用に購入した細材の余りを貼り付けました。アルミ材の切断と切断面の仕上げには時間がかかりましたが、がっちりしている上にずっしりと重く、なんだかうれしい仕上がりに。





使用した線材はベルデンの1503A。最初にモガミのシールド線2520を購入してみたのですが、並外れて手先が器用!なものですから細い芯線さん達はすぐに折れたり切れたりしてどっかに旅立たれてしまいました。一方、ベルデンは芯線が太くしっかりしており、こちらは大丈夫。という訳で紆余曲折の多連フェーダーの製作、たっぷり楽しめました!

(このフェーダーの製作にはARISAさんからアドバイスやヒントを頂きました。ありがとうございました。)





2004/06/04

幸せの黄色いホーン 84話 LEDライト



ミッドベースの1008-8HEは、ミッドベースホーン用の強力ユニットという肩書きから連想するような強力無比な感じではなく、大変ほがらかで明るい音色です。2392+2490Hの音色がどちらかというと非常に律儀というか真面目な雰囲気なので対照的。そして、明るいといえばLEDライト…と、これはかなり強引な展開ですね。

リスニング中は部屋の灯りを全部消してしまいます。真っ暗。目が慣れてくると黄色いホーンとシナ合板のウーファー箱がぼんやりと見えてきます。こんな具合ですから、CDを交換する際に灯りをつけると目がくらんでしまいます。そこで、以前はローソクを使っていました。このローソク、時計の代わりにもなり、燃え尽きたらリスニング終了。しかし、火を使うのはやっぱり怖いし、1本のローソクの灯りでも眩しくてちょっと煩わしい感じ。

昨年(2006年)電子レンジの調子が悪くなり、妻と二人で家電売り場をウロウロ。スチーム機能だのなんだのと、どれを選んでいいのかさっぱり分かりません。結局、カタログを持ち帰って検討することに。その電子レンジ売り場の裏手に懐中電灯コーナーがありました。そういえば、かまじいさんは握ると発電するLEDの懐中電灯をお使いになっていたなぁ…

懐中電灯ならCDを選んだり交換したりするときだけ点灯できるのでローソクのように常時明るいという問題がありません。これはいいかもと、その懐中電灯コーナーにあった東芝のガンビームを購入してみました。夜を待って早速点灯。おおっ、LEDライトってなんて明るい! 懐中電灯と言えば天体観測のときに豆球を赤色のマジックインキで塗ったものを使用していたので、その暗さからするとこれは異次元感覚。うれしくなって子供のようにガンビームを振り回し、気付けばすっかりLEDライトの虜に。




それでいつのまにかこんなに増えてしまいました。購入順に並べてあります。左端のが東芝のガンビームBK-3031(K)、単三電池3本使用。1W、リフレクタータイプ。配光パターンにはややムラがあります。もっと明るいのはどうだろう、ということで次に購入したのがGENTOS社のSF-303X。単三電池3本使用の3W、コリメーターレンズ。これは明るい。配光パターンは中央部分が四角いスポット状になります。さらに、GENTOS社のSF-102X、ピカピカのアルミ削り出しボディに惹かれての購入。単三電池2本使用の1W、コリメーターレンズ。配光パターンはSF-303Xと同じです。SF-303XとSF-102Xは100%と25%の照度切り替えができるので、室内では25%の明るさで使用することが多いです。

この3本で満足すれば良かったのですが、しばらくしてからELPA社のDOP-09BLを購入。青色仕上げの薄手のアルミボディが素敵。お値段は980円。単四電池3本使用の0.5W、リフレクタータイプ。配光パターンが広く、明るすぎないので気に入りました。青色というか薄い紫色の光がきれい。このDOP-09BLを使ってみて単四電池3本を使用するタイプのコンパクトさが好きになり、さらに、GENTOS社のGT-06PWを購入。緑がかった微妙な色合いのボディ。これは0.5Wではなく1Wでコリメーターレンズ。照度切り替えはできないものの性能はSF-102Xと同等。さらにさらに、OHM社のSL-05Sを購入。1280円。単四電池3本使用の0.5W、リフレクタータイプ。配光パターンや光の色はDOP-09BLと同じ感じです。さらにさらにさらに、勢いあまってランタン(EX-737NX)とSF-503Xも購入。ランタンは1.5W、SF-503Xは単二電池3本使用の5Wです。ランタンは置いておけるのでラックの裏の暗がりで配線作業をする場合も便利です。ここまで購入してようやく一段落。

お気に入りはDOP-09BLとSL-05S。DOP-09BLは、青色のボディと薄紫の光がぴったり。SL-05Sの方は、ややくすんだ銀色と地味なデザインがいい味出してます。いずれも適当な大きさ重さ、そしてCD選びには十分な光量。大きくて重いガンビームは車に、またSF-303Xは玄関に。SF-102XとGT-06PWは暗いところが見づらいと言う母にあげました。

LEDって凄い勢いで進歩しているみたいなので1年ぐらいごとに新型を購入してみたいと思います。ところで、LEDライトの世界もかなりディープ。日本フラッシュライトチャンネル、かなりマニアックなサイトです。楽しませて頂きました。





2004/06/03

幸せの黄色いホーン 83話 モノラル6ウェイの音出し



ようやくモノラル6ウェイの音出しです。遅々として進まず、いつになったらステレオで聴けるのか皆目見当がつきません。でも、モノラル4ウェイ、5ウェイと少しずつ経験を積むことができました。モノラル5ウェイでは大きな問題点が2つありました。まず、2192に今ひとつ鮮やかさが足りないのです。これはME15+DE500を導入した際に2451Hの高域端側をブーストする帯域別のEQ(JBL社指定のEQ)を外してしまったことが原因。これを復活させME15+DE500の帯域と折り合いがつくような新たな設定を探りました。

もう一つは低域の力が全然なかったこと。V字型バッフルのウーファー部は中低域のレベルが盛り上がっており、これを帯域別のEQでカットする必要があるのです。これを怠ったままレベル合わせをすると低域が引っ込み、つかみどころのない低音になってしまいます。また、ウーファー部とサブウーファー部のクロスが100Hzと高めだったのも原因の一つでした。この他にもDCX2496の出力レベルの設定が高すぎたため入力レベルが大きくなるとSN比が悪くなったような歪んだ音になってしまうという基本的なミスもありました。こうした問題点を一つ一つ解決しながら様々な設定による音の変化を学ばせてもらいました。




1008-8HEを加えた6ウェイの音出しの話に戻しましょう。ミッドベースは25cmダブルですが、モノラルなので面白半分に左右2つの箱をシリーズ接続して4発の1008-8HEで鳴らすことにしました。ツィーターもついでにダブルにしました。また、少し前にV字型バッフルのウーファー部も左右2つの箱をシリーズで接続して4発ウーファーにしています。

AVアンプには5つのパワーアンプが搭載されているだけなので、このままではモノラル6ウェイに対応できません。そこでAVアンプのサブウーファー用入出力端子を利用することにしました。なお、サブウーファー用入出力端子を経由する場合にはAVアンプ内に設けられているローパスフィルターが介在します。DCX2496による遮断特性(75Hz)への影響を少なくするために、いくつか設定されているカットオフ周波数の中から一番高い200Hzを選択しました。

サブウーファー用の出力端子に接続するために購入したパワーアンプはSALのES-70です。44話でご紹介したアンプではなく新たに購入しました。このES70の外装はペンキ塗装仕上げではなく美しくなっていました。また、スピコンコネクタもノイトリック社製のものに変更されています。その上、価格もわずかに安くなっていました。なお、ES-70はブリッジ接続には対応しておりません。

音出ししながらちょこちょことレベル調整をしてゆきます。と、これはどうしたことでしょう。もの凄い音になってきました。エネルギーが漲っているというか猛烈な迫力です。音がグンと太くなり、そして厚い。凶暴とも言えるドライブ感! 負けじとホーン部のレベルを上げてゆくと、今度はその猛烈な迫力にハイビジョンのような鮮明さが加わり、これは狂喜の世界に。

このミッドベースによるリッチな中低域の質感、これは今まで大型ホーンとウーファー部を直接クロスさせていたシステムでは聴くことができませんでした。どうしちゃったのかしら?と原因を探るためにDCX2496のミュート機能を使って各帯域別の音を順に聴いてゆくと、低音のエネルギー感のほとんどはV字型バッフルのウーファー部が受け持っていることが分かるのですが、ミッドベース部やサブウーファー部が受け持つ帯域はこの迫力と関係するような無関係のような微妙な帯域であるように感じます。でも、このミッドベース、きっとかなり影響を与えているように思えます。





また、ミッドベースの導入によりV字型バッフルのウーファー部のレベル調整が容易なものになりました。ウーファー部のレベルを上げ下げしても中低域にはその影響を与えないのです。これ当たり前。でも、システム全体のコントロールもとても分かりやすくなったのです。レベル設定の変更が音の変化として意図どおりに反映される気持ち良さ、これははじめて体験しました。

設定はこんな感じに落ち着いてきました。なお、表示されている周波数はDCX2496が対応している周波数によるものであり1Hz単位で調整しているわけではありません。遮断特性は全てLinkwitz-Rileyの-24dB/oct。1008-8HEは両端域がかぶってます。

ME15+DE500(DOUBLE)  4.98kHz~
2332+2450H  1.64kHz~4.98kHz  EQ1:BP(Q:0.2)/3.46kHz/-3dB  EQ2:HP(12dB/oct)/6.57kHz/+0.5dB
2392+2490H  266Hz~1.24kHz  EQ:BP(Q:0.3)/634Hz/-3dB
1008-8HE(QUAD)  100Hz~296Hz
1508-8ALCP(QUAD)  50Hz~111Hz  EQ:HP(12dB/oct)/148Hz/-8dB
1808-8HPS  ~75Hz  EQ:BP(Q:2.8)/35Hz/+4dB

今後の設定のテーマは中低域の質感をどうするかということになると思います。「生命力があっていなせな雰囲気の1008-8HEの音」VS.「浸透力があり深く澄んだ2392+2490Hの音」何れに支配権を与えるのか? 優柔不断ですからDCX2496の設定はあれこれ状態になるでしょう。

こうしてミッドベースの導入は予想外の、そして久々のヒットになりました。システム全体の音もやっと合格点。2192は本当に手強いホーンでしたが、ようやく使い方が分かってきました。こうなるともっとアグレッシブに様々な設定に挑戦できそうです。-48dB/octの遮断特性に挑戦したり、2392+2490Hと1008-8HEとを全く同じ帯域で鳴らしてみる、さらに、ME15+DE500によるダブルツィーター化により高域に余裕が出てきているので2332+2450Hと2392+2490Hのクロスやイコライジングの大胆な見直しも。タイトルは「ミッドベースはマルチアンプを加速するっ!」って加速してどこに行くつもり?




2004/06/02

幸せの黄色いホーン 82話 ミッドベースユニット



ミッドベースユニットはPEAVEY社の1008-8HE BWXにしました。10インチ(25cm)のホーン用ユニットです。Fs62Hz、Qts0.303、Mms40.2g、4インチ径アルミリボンボイスコイル、重さ6.8kg。許容入力は、連続500W、プログラム1000W、ピーク2000W。姉妹機種にバスレフ用の1008-8SPSがあります。なお、ミッドベースの25cm口径で4インチボイスコイルを搭載した同類はMcCauley社の6328やD.A.S.Audio社の10-B、10-BNとごく少数です。



1008-8HEとその交換用バスケット(1008-8HE BWX RB)

30cmではなく25cmを選んだのは大昔にコーラル社の10F-60という25cmフルレンジユニットと使っていたため親近感があるからです。また、25cmという口径は大口径ウーファーで感じられるような面で押してくる雰囲気がなく、2392+2490Hの低域側の領域を濁らさないのではないかと思ったからです。

他社のミッドベースユニットも検討してみました。でも、JBL社の25cmは3インチボイスコイル、EV社では2.5インチボイスコイル。これでは地味目のミッドベースユニットのイメージがさらに地味な感じに。でも、ミッドベースユニットって割と本音で作れる明るい性格?のユニットなんです。ウーファーユニットやフルレンジユニットのように、あちらが立てばこちらが立たず、というようなジレンマに陥るようなことが少ないはず。

例えば、業務用ミッドベースユニットの多くはBLファクターが大きいです。このBLファクターというのはスピーカーの駆動力を示しています。単位はT/mまたはN/A。T/mというのはTesla-metersのことで磁気回路のギャップにおける磁束密度とそのギャップの磁界を横切っているボイスコイルの線材の長さの積。また、N/AというのはNewtons per Ampereの意味で、1Aをボイスコイルに流した際に、どの程度の力が発揮されるかを示しています。2つの単位はこのように考え方が違うのですが、1T/m=1N/Aであるため、どちらの単位を用いてもBLファクターの数値は同じです。

BLファクターを大きくしてゆくと駆動力が大きくなるため、同時にQ値が小さくなってしまい最低域が出にくくなります。でも、ミッドベースユニットなら最低域の再生能力は問われないのでQ値が小さくなってもあまり関係ありません。ウーファーユニットではBLファクターが大きくなると最低域が出づらくなるのです。

また、BLファクターを大きくするためには、より強力な磁石を使用するか、ボイスコイルの巻き数を増やせばいいのですが、ボイスコイルの巻き数を増やすとインダクタンスも増え、高域側のインピーダンスが上昇し高域が出にくくなくなります。大きな磁気回路を備えているフルレンジユニットのBLファクターが意外と小さいのはこのためです。

さらに、ミッドベースユニットでは、ウーファーユニットのようにコーン紙の振幅を確保する必要もありません。磁気ギャップからボイスコイルが外れるまで片道の振幅幅(しんぷくはば)がXmax。Xmaxを稼ごうとすると、ショートボイスコイル/ディープギャップタイプであろうが、ロングボイスコイル/ショートギャップタイプであろうがBLファクターは小さくなってしまいます。磁気ギャップの深さが深くなれば磁束はまばらになり、ボイスコイルの巻き幅を増やすにはまばらに巻くしかない訳です。(ショートボイスコイル等についてはハーマンインターナショナルの解説をご参照下さい。)

という訳で、ミッドベースユニットなら低音は出さなくてもいいよ、高音も出さなくてもいいよ、自由にやっていいよ、という甘い環境なのかというと実はそうでもなく、特にミッドベースホーン用のユニットは実効質量が重めであることに気付きます。ホーンロードがばっちりかけられた上に家庭用ユニットが一瞬で焼損するような入力に長期に渡って耐えなければならないのでコーン紙に高い剛性が求められているからでしょう。



QW-1

PEAVEY社は、1008-8HEを中高音用スピーカーシステムであるのQW-1に使用しています。QW-1は、ホーンと組み合せた1008-8HEを2本と、CH-642QTホーン+44XTを備えています。44XTは4インチダイアフラムのコンプレッションドライバーです。このシステムは200Hz~18kHzを±3dBで再生することができるそうです。

QW-1は、QW-215とQW-218に組み合せ、4ウェイシステムにすることが推奨されています。QW-215はプロライダー15(1508-8ALCPなのか1508-8CUCPなのかは不明)を2本搭載した38cmダブルウーファーシステムであり、QW-218はローライダー18(1808-8HPS)を2本搭載した46cmダブルのサブウーファーシステムです。ホーンと組み合せた2本の1008-8HEは、計4本の大口径ユニットにバランスするだけの能力があることが分かります。PEAVEY社はQW-1以前にも30cmコーン型ユニットと組み合せた大型ホーンのミッドベースシステムを販売しており、この手のユニットやホーン型のミッドベースシステムが好きなのかもしれません。

1008-8HEはホーン用なのでホーンを製作しなければならないのですが、置き場所と気力、そして肝心の設計能力がないのでパス。パンフレットには8.5L、12.7L、17Lの比較的小さな3種類のバスレフ箱が推奨されていましたのでこれ幸いと小箱でお茶を濁すことにしました。しかし、大型のV字型バッフルを製作するという可能性(大抵は計画倒れです)もあるので左右計4本を購入。

21mm厚のサブロクシナ合板を1枚半使用。外寸は縦75cm×横30cm×奥行き28.2cm。内寸容積は約44L、実効容積37Lとなりユニット1本あたりの実効容積は18.5Lになりました。ダクト開口14cm×6cm、ダクト長9.2cm。ダクトの共振数は70Hzを少し下回る程度です。あまりのかわいらしさに製作はお手軽を極め大した苦労もなくあっさり完成しました。








2004/06/01

幸せの黄色いホーン 81話 ミッドベースの形式を考えよう



黄色いホーンシステムは約250Hzでクロスした大型ホーンと46cmウーファーの組合せです。理屈の上ではかなり苦しい構成ですが、遮断特性のQ値を調整し、ロー側とハイ側のクロス周波数をバラバラに設定するなどの悪戦苦闘を繰り返したところ、これは案外マトモな音に(そう思っているのはおめでたい本人だけ)。しかし、2392+2490Hでも同様の方法で誤魔化してしまうのではちょっと退屈。という訳で今回はミッドベースの導入を考えることにしました。

ミッドベースの形式としては、ダイレクトラジエター型やホーン型、あるいは中間的なV字型バッフルのようなタイプが考えられますよね。そこで色々と調べてみました。最初は、ダイレクトラジエター型。ダイレクトラジエター型と言っても、使用するユニットの数によって中低域の質感が相当違ってくるようです。2392(あるいは2392S)+2490Hを使用している5671、5672、5674(カタログ散策03話をご参照下さい)のダイレクティビティ ファクター(directivity factor/指向係数)のグラフを比較してみると、シングルウーファー、ダブルウーファー、4発ウーファーの中低域の特性に差があることが分かります。



5671(シングルウーファー)


5672(ダブルウーファー)



5674(4発ウーファー)


このダイレクティビティ ファクターとは、スピーカーの主軸方向の音圧とスピーカーを中心とする球体面上で音圧の平均値との比だそうです。イメージが湧かないので、スピーカーからあらゆる方向に放射される音の内、スピーカーの軸上に吹っ飛んでくる音の割合を示す特性と理解しています。ちなみにダイレクティビティ インデックス(directivity index/指向指数)は、ダイレクティビティ ファクターの常用対数の10倍を示したものだそうです。ダイレクティビティ ファクターの測定方法は、無響音室内でスピーカーを適当な角度で上下左右斜めに回転させて測定するのではなかろうかと考えています。

ダイレクティビティ ファクターの数値、具体的には、無指向性スピーカーを反射のない空間に吊り下げた場合(自由空間)、ダイレクティビティ ファクターの値は「1」になるそうです。この無指向性スピーカーを床の上に置いた場合には「2」、さらに背面壁を加え「床+背面壁」にすると「4」、さらに部屋の隅のように左右何れかの側壁を加え「床+背面壁+側壁」にすると「8」。しかし、それ以上はどう考えればよいのか残念ながら分かりません。そして低域になるほど指向性はブロードになりますから、それに応じてダイレクティビティ ファクターの数値は小さくなります。

ちなみに、サブウーファー等の周波数レスポンスグラフで表示されている4π空間、2π空間などの表示もダイレクティビティ ファクターと似たような捉え方。4π空間とは自由空間、2π空間は床の上、π空間は「床+背面壁」、π/2空間は「床+背面壁+側壁」。下のグラフでは破線が4π空間での特性を示し、実線が2π空間での特性を示しています。


ASB6128V(55話をご参照ください)


話を戻し5671、5672、5674の3機種を比べてみると、100Hz以下のダイレクティビティ ファクターには大きな差がありません。しかし、100Hz~250Hzの中低域のダイレクティビティ ファクターでは、5671や5672に見られる落ち込みが5674にはありません。要するに5674では、4発ウーファー部と2392+2490Hのホーン部とのそれぞれのダイレクティビティ ファクターがなだらかに連続している訳なのです。ダイレクトラジエター型のウーファー部がホーン型のミッド部とうまく適合している好例でしょう。ごさ丸さん作バーチカルクワドの中低域の充実感はこれが原因だと思っています。

ダイレクトラジエター型ではなく巨大ホーンならどうなるのでしょう。例えば、エレクトロボイスのMH6040AC。開口部のサイズが縦98.1cm、横147.9cm。そして奥行きは187.8cm。100Hz以上で使用可能な定指向性(60°×40°)のスタジアム用同軸ホーンです。この同軸ホーンの中低域用ホーンを300Hz以下で使うなら、ダイレクティビティ ファクターの値は2392+2490Hにも適合しそうです。しかし、2392に合わせるために90°×50°の定指向性を持たせ、MH6040ACと同程度のダイレクティビティ ファクターの値を確保するとなると、ホーン全体の大きさはさらに巨大なものになるでしょう。



MH6040AC



MH6040ACのダイレクティビティ ファクター

ついでに中高域用のホーンにおけるホーンサイズとダイレクティビティ ファクターとの関係も。小さいほうから順に2381(90°×50°)、2352(90°×50°)、2360A(90°×40°)、2392(90°×50°)のグラフを並べてみました。なお、2381というのは2380Aのスロート部を1.5インチ径に変更したものです。


2381




2352

 


2360A



2392

このように中低域側において正面に吹っ飛んでくる音圧の割合はホーンが大きくなるほど大きくなります。これは聴感上どうなのかというと、ホーンが大きくなるほど大人しい印象になります。何故って、中低域と中高域のダイレクティビティ ファクターが略同値になるため、耳につきやすい中高域の吹っ飛び具合が相対的に控えめに感じられるからでしょう。

さらに、90°×50°、60°×40°、40°×30°を比べてみました。60°×40°や40°×30°のホーンでは、2kHz以上での盛り上がりが顕著であり、高域になるほど正面に吹っ飛んでくる音圧の割合が大きくなることが分かります。演奏者との近接感や鮮やかな感じを出しやすい特性だと思います。


 2352(90°×50°)


2353(60°×40°)



2354(40°×30°)

こんな具合にダイレクティビティ ファクターという特性からミッドベースの箱の形式を考えてみるものの、実際には、床、天井、背面壁、両側壁のある部屋の中で使うのですから、この数値だけでは何も語れないかもしれません。それはともかく、巨大なスタジアムホーンは今のところ設置スペースがありません。また、5674のようなダイレクトラジエタータイプ4発では左右計8発のユニットが必要となり、これは資力検査が厳しい結果に。こうなるとダイレクティビティ ファクターのことを勉強しても何にもなりませんね。ガックリ。