2012/05/22

DIY Speaker (52)

スロート口になるアルミ板を加工しました。
使用予定のドライバーはJBL2431Hです。
2451Hもあるため、これも接続できるようにします。






 
 P.C.D.82.5mmが2431H用、114.7mmが2451H用です。






加工したアルミ板とスペーサー板に押しあてて穴の位置決め。







スペーサー板は4mm厚のシナ合板、大きさは380mmX150mm。
中央の穴の直径は70mmです。
このスペーサーによる空間はフリースの折り返し部分が納まる予定。







穴の位置決めをしたスペーサー板を2枚の支持板と重ね穴あけ。







下の画像は裏側(支持板側)から見たところ。






2枚の支持板は何れも4mm厚、サイズは380mmX150mm。
中央の穴の直径は2枚とも44mm。
下の画像はその2枚の支持板。





灰色がアルミ板、赤色がスペーサー板。
青色の2枚が支持板。
このスロート部分の成形は最終的にパテで行う予定です。








上の画像ではアルミ板の厚さは3mm。
なるべく薄くしたかったので2mm厚に変更しました。
強度的には2mmがぎりぎりかな。








仮組み。
心配していたセンターのズレはありません。
ボルト長は20mmと25mmを用意。
使用しているのは20mm。






2012/05/14

Subscription Concert No.734 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第734回定期演奏会に行ってきました。








指揮は小泉和裕さん。
ピアノはアンドレア・ルケシーニさん。
曲目はブラームスのピアノ協奏曲第1番とラヴェルのグフニスとクロエ。

ピアノ協奏曲はアンドレアさんのピアノが素晴らしかった。
第2楽章の深遠な美しさ。
ブラームスの情の深さが伝わってきます。
解説にあった「深い宗教的気分」が普遍的な気持ちを表しているように思えます。

「それでいいのかい?」
「それでいいのよ。」
という無言の会話を聞いたような気がしました。

おなじみのグフニスとクロエ。
第2組曲は70年代のオーディオブームの頃はどこでも頻繁に聴かれていたのでは。
豪華絢爛というより絢爛豪華。
フルートの、これはパンの神の調べなのか、実に神々しい。
素晴らしい演奏でした。

「月刊都饗」の5月号のクラシック名脇役伝(著者小宮正安さん)にはグフニスとクロエにちなんでセルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)さんのことが紹介されていました。
以下のような面白いエピソードが掲載されています。

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「この人は何者だったのか」と問われた時、答えを出しやすい人と出しにくい人がいる。
今回の主役ディアギレフなどはまさに典型的な後者。
「バレエ・リュスの興行主」としてつとに有名だが、他にも芸術愛好家、コレクター等、その肩書きは多岐に渡る。
しかも、バレエ・リュスの興行師として華々しく活躍していた時ですら、彼が何者であるのかすぐには分かりかねたらしい。
例えばスペイン国王アルフォンソ13世(1886-1941)は、いみじくもディアギレフにこう尋ねたそうである。
「君は指揮者でもなくダンサーでもない。ピアニストというわけでもないが、一体何をしておるのかね?」
これに対するディアギレフの答えが傑作である。
「畏れながら陛下と同じです。あくせく働くことはもとより、これといったことは何一ついたしませんが、なくてはならない存在なのです。」

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この解説は続けて「ディアギレフが新作バレエ用の音楽の委嘱を行わなければ、ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ラヴェルの「グフニスとクロエ」、ファリャの「三角帽子」、サティの「バラード」といった傑作は生まれず、現在のオーケストラのレパートリーは随分と寂しいものになっていたに違いない。」としています。







2012/05/10

DIY Speaker (51)

スロート口になるアルミ板です。
厚さ2mm、大きさは150mmX150mm。
中央の穴の直径は38mmです。
切断と中央の穴あけ加工は東急ハンズにお願いしました。





エキサイトの旧ブログから移転した記事はまだ80個ぐらい。
全部で500以上あるからこれは大変だ。

記事は感情的にならず、且つ、攻撃しないように(防御は可)書いているので将来的にも維持できる。
自慢話はよくない。
のちに赤面することになるためブログごと削除することになる。
資料的な価値を高める意識も必要かもしれない。
このあたりがブログを継続させてゆくコツだと思っている。

経済活動は金のやり取りだ。
インターネットは情報のやり取り。
もらった分はお返しする。
ブログを開設すればみんなが発信源になれる。
東電、日立、東芝、鹿島建設、自民党のように儲けっぱなしは困ります。










2012/04/20

Yellow Horn System

黄色いホーンシステムにDEQ2496を導入したは昨年の6月。
それまでは安価な騒音計を使用した測定環境だったため100Hz以下の特性を把握することができませんでした。
DEQ2496とECM8000による測定で右chの最低域のレスポンスが異常なほど高いことが判明。
スピーカーやアンプを取り替えてもこの傾向は変わらないので左右非対称の部屋が原因だと思います。

AUTO EQによる自動補正は何度かやり直し、今は落ちついています。
フラットな音、悪くないと思うようになりました。
このフラットな状態をパラメトリックイコライザでいじってみても、結局フラットな音に戻ってしまう。

白ホーンシステム(改造ALTECシステム)にAUTO EQを使用したときはもの足りない感じがしたのですが、これが黄色ホーンシステムだとしっくりくる。
音の厚みが十分あるのでフラットでも聴けるのかもしれません。

それからミッドベース部とウーファー部を密閉化していたのですが、これはもとのバスレフの状態に戻しました。
低域レスポンスを整えるともの足りなくなる。
スピーカーユニットが密閉向きではないからだと思います。



先ほどブルックナーの交響曲第7番をフルボリュームで鳴らしてみました。
コンサートと同じぐらいの音量。
満足しました。







Commented by johannes30w at 2012-04-20 01:49 x
ほほ~
これは聞かせてもらわなくちゃいけませんね

Commented by kiirojbl at 2012-04-20 09:04 x
お近くにいらっしゃったときはよろしくお願いします。
ところでヨハネスさんは自動補正は試されましたか?

Commented by johannes30w at 2012-04-22 01:16 x
自動補正?
試してないな~

Commented by kiirojbl at 2012-04-22 04:58 x
自動補正をするとボーカルとかはダメになりますけど、オーケストラは改善されるように思います。
メモリできるのでそれほど問題はないですし、もしかすると測定マイクの個性によっても音が変わるとか、面白いこともあるかもしれません。



2012/04/17

DIY Speaker (50)

図面はできました。
でもDIYオーディオは渦巻く混沌。
うまくいくとは限らない。
スリリングです。





左側は水平方向、右側が垂直方向のホーン壁面を示しています。
なお、左側の破線は垂直方向のホーン壁面を参考として示したもの。
DDCHなので2つのホーン壁面が共存し、かつ、滑らかに連続します。







ユザワヤの通販で入手した発泡スチロール製の半球体。
直径20cm。





東急ハンズにカットをお願いしました。



2012/04/12

Subscription Concert No.732 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第732回定期演奏会に行ってきました。






指揮はエリアフ・インバルさん。
ピアノは児玉桃さん。
曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第8番「リュッツォウ」とブルックナーの交響曲第7番。

ピアノ協奏曲はピアノとヴァイオリンの音色が溶け合い、とても美しい演奏でした。
深く豊かな響きも良かった。
モーツァルト聴いちゃったなぁ~という満足感。

いよいよブルックナー。
最初はなんとなく固い印象。
こちらが緊張していたせいもあるかもしれません。
しかし、第3楽章になるとこれは素晴らしかった。
曲が途中で途切れる部分がありますが、聴衆全員が息を凝らして聴き入っているのか、恐ろしいほどの静寂。
都饗会員はマナーがよいらしいのですが、これ程の静寂は初めてでした。
第4楽章はもう圧倒されて、ひたすら感激。
ともかく凄い演奏でした。
ワーグナーテューバも見事。
それから低音を支えたコントラバス、チェロも良かった。
第7番、楽しみにしていた甲斐がありました。

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コンサートに行くとその交響楽団の月刊誌を渡されます。
「月刊都饗」の4月号、インバルさんがマーラーについて語っている記事がありました。
以下、その抜粋。

「とても面白いことに、マーラーの交響曲は全作品でひとつのまとまりになっていて、それはマーラーの人生そのもの、と言えるのです。彼は交響曲で人生を語っているのですよ。」

「全人生がひとつの小説だとすれば、マーラーの各交響曲は小説の一章ですね。しかしいずれもそれぞれひとつの宇宙をなしており、それもまた人生なのです。」

「マー ラーの交響曲には、彼の"さすらう若者の歌"や"少年の不思議な角笛"といったリートが関連して、その主題が使われたりと共通点が多いですね。ですから、 マーラーの前半の交響曲を"角笛交響曲"とか"リート交響曲"と呼んだりしますが、大きく分けると交響曲第5番までがひとつの区切りでしょう。6番以降は 新たな局面を迎え、音楽のスタイルも創造性も変わります。」

「交響曲第1番巨人は、まさに革命です。ここから現代の音楽が始まったと言え ます。フォルクローレの使い方といい、人生の美しさばかりか醜さ、痛みといった人が避けがたいものまで、すべてを表現しています。新しい音楽スタイルや オーケストレーション、私は初めてこの曲を聴いた時の驚き、まったく未聴の世界がひらけてゆく驚きを今でもよく覚えています。」

「第1楽 章は自然の美、夢、郷愁、自然、愛が表現されています。第2楽章ではプロテストとアイロニーが描かれ、ここでマーラーの人生や理想へのシニカルな態度が表 現されています。第3楽章の中間部など、もう信じられない美しさですね。オーボエの旋律に対してトランペットが嘆きを訴えるところなど、片方の目で笑い、 もう片方の目で泣くといった、嘆きと同時に希望がある。そして終楽章、マーラーの場合だいたいそうなんですが、これは世界の終焉ですね。しかしここでは楽 観主義による勝利が到来します。希望があるのです。」

「この交響曲第1番にはすべてがある。こんなものを書いたらもうこれ以上のものは書けない、と思うのですが、彼は次の交響曲第2番でさらに素晴らしい宇宙、新世界を創造したのです。」

「交 響曲第2番復活にもすべてがあるのです。第1楽章は死者へのセレモニー、素晴らしい葬送行進曲ですね。第2楽章は最も美しい郷愁とロマンティックな表現。 不気味な悪夢を表現した第3楽章のスケルツォに続いて、次の第4楽章原光から希望が、人の希求する理想がうたわれ、そして終楽章では世界の終末との戦い。 そこへ天の救済が現れるというわけです。」

「これが交響曲第3番になりますと、各楽章に希望と美、宇宙の理想的創造が描かれているのです。それぞれの楽章にあるのは、自然や動物、愛への賛歌であり、人生のすべてが深く内包されている。」

「そ して交響曲第4番は、マーラーがしばしば描いた天国と地上、あるいは希望と悪意の狭間といったものを聴くことができるでしょう。第2楽章ではその悪意の醜 さも覗かせますが、次の第3楽章では再び郷愁や心の痛みが信じがたい美しさで表現されていて、これ以上の美は想像できないほどですね。そして第4楽章では また天上の生活、理想的な美しさで終わるというわけです。」

「交響曲第5番は、また新しい宇宙です。マーラーは決してくり返さないので す。各交響曲とも新たな世界として解釈されねばなりませんが、同時にそれら全体でひとつの人生であるということ、マーラーは常に理想への変容を探し求めて いるのです。テーマは愛、醜さ、希望といった同じものですが、それらが常に異なる表現をされているのです。」

「この5番では、第1楽章が 再び巨大な葬送行進曲。第2楽章では前楽章の素材もあちこちで使われ関連づけられ、第3楽章のスケルツォではこれまた人間と悪魔の戦い。第4楽章では不気 味な悪夢、人間の影の部分も表現され、終楽章は疑問符つきの楽観主義への皮肉。一種の勝利が表現されても、そこには疑問符がついているのです。マーラーは 第4楽章の天上の愛のテーマを第5楽章で風刺的に使っているのです。悪魔が愛の妥当性を問いかけるようにね。こうしてマーラーは悪魔的な性格から天上的な 性格まで、人生のすべての観点を音楽で表現しているのです。これは他の作曲家にみられないマーラー独自の凄さなのです。」

なお、第6番悲劇的以降はまたの機会にと、この記事には書かれておりました。



2012/04/09

DIY Speaker (49)

暖かくなってきたのでそろそろ再開しようと思っています。
設計は最終段階ですが、やや迷いがあります。
伸縮性の高いフリース生地と発泡スチロールの半球を発注。







対向する半球状のスロート部を備えています。






PT Progressive Transition WaveguidesのJBL PD5200/95
こんな具合に作ってみたいと。




2012/04/05

JBL 2332 and 2352 (8)

1.5インチ径スロートの2352と組合わせるドライバーとして発売されたのが2447H/Jと2451H/Jでした。
1993年頃だと思います。
この2447、2451に先だって1988年に発売されたのが2450H/J
こちらは2インチ径スロート。







2450はネオジム磁気回路を最初に搭載したドライバーであると共に、フェージングプラグが新しいタイプになったことが特徴です。
そのコヒーレント(整合的な) ウェーブ フェージング プラグについて2450のパンフレットには以下のような記載があります。

"The newly-developed Coherent Wave phasing plug assembly consists of four die-cast annular aperture structures of constant path length to provide in-phase combining of diaphragm output at the driver’s exit.
This optimized configuration allows coherent summation of energy up to much higher frequencies than previous designs, with an attendant increase in perceived high-frequency clarity."

要約すると「4つの環状スリットの音道長を等しくすることによりドライバーの出口で位相の整合を図ることができ、これにより高域側のレスポンスや明瞭さを向上することができる」ということになります。

ところでウェーブガイド理論は1987年10月16日から19日までニューヨークで開催された第83回AES総会で発表されています。
ウェーブガイドホーンはスロート口へ供給される音波が平面波であることが前提となっています。
コンプレッションドライバーの出口から放射されている音波は平面波なのでしょうか?
これについては後日。

JBLの技術者は1987年の冬から実験を開始。
コンプレッションドライバーの出口における音波の放射状態を検証したのだと思います。
ホーンのスロート口付近での音波の拡散状態も。
当然フェージングプラグはコヒーレントウェーブタイプでなければこうした検証はできない。
2450のフェーズプラグはその実証実験用として生まれたのではないか。
そして2450やそのスナウトレスタイプによる検証を通じてJBLはホーンやドライバー全般について見直しを始めた…

5年後に出現した2352、2447、2451は1.5インチスロートというフォーマット変更をもたらした。
これはスロートというドライバーとホーンの結合部とドライバーのフェーズプラグに関するJBLの新たな見解に基づいていた。
このとき多くのオーディオマニアが脱落したが、理解できなかったのだから仕方がない。
残念なことです。






下の画像はTD-4003。
JBLが1.5インチスロートを発表した直後にTADがあわてて発売したドライバー。
当時スナウトレスの意味を理解できなかったのはマニアだけじゃなかった。















2012/03/29

Subscription Concert No.731 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第731回定期演奏会に行ってきました。








指揮はエリアフ・インバルさん。
メゾソプラノはイリス・フェルミリオンさん、テノールはロバート・ギャンビルさん。
曲目はマーラーの亡き子をしのぶ歌と交響曲「大地の歌」。
どちらも素晴らしい演奏でした。
マーラーさんを好きになったというか、理解できるようになった。


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亡き子をしのぶ歌は震災のあとなのでこれは聴くのは辛そうだなぁと。
それに大地の歌は酒に酔った厭世的な内容。
酒に酔うような話は嫌いなんだ。
そんな気持ちでコンサートへ。

しかし亡き子をしのぶ歌が始まるとそのあまりに悲しく美しい音楽がだんだんと気持ちに入ってきます。
歌詞はフリードリヒ・リュッケルトさんの詩による。
リュッケルトさんの二人の子供さんがお亡くなりになった心境が綴られた詩。
そしてマーラーさんの娘マリアさんもこの曲が作曲された4年後にお亡くなりになったそうだ。

1901年から1904年にかけて作曲され、初演は1905年1月29日。
100年以上経過している。
それなのにこれだけの人がコンサートに集まり、リュッケルトさんの二人のお子さんとマーラーさんの愛娘マリアさんの死について考え、その悲しみを想像する。
100年たっても曲を聴いた人々が気持ちをよせるというのは凄いことだ。
思い出すことが亡くなられた3人の子供さんを蘇らせる。
だから100歳以上長生きしたのと同じになる。
さらに子供を亡くすという悲しい体験をした方はこの曲を聴けば深く共感するだろう。
共感はその人を癒し救う。

厭世的なはずの大地の歌は、だからこんな具合に聴くことができた。
長女マリアさんを失い、さらに反マーラー運動でウィーン宮廷歌劇場監督の地位を辞任せざるを得なくなって、もしもマーラーさんが本当にイヤになっちゃったら、こんなに素晴らしい交響曲を作曲することはできなかったであろう。
作曲時期は1907年から1909年。
当時はブルジュア支配層による貧富の差の拡大、理性的人間観の敗北、社会主義や民族主義の台頭と、どんどん世の中がおかしな方向へ傾いてゆき、第一次世界大戦(1914年~1918年)に突入する寸前。
中国の詩に含まれていた西洋にはない価値観の提示というより、厭世的な気持ちをこんなに素晴らしい曲に仕上げてしまったということが素晴らしい。


「しかるに人間よ お前の生はいかほどか?
百年と持たぬではないか。
朽ちるばかりの瓦落多(ガラクタ)にうつつをぬかしながら。」

「涙は止まるところをしらない 我は独り
あまりに長い 心の秋
愛の太陽よ お前はもう輝ってはくれないのか
苦渋の我が涙を優しく乾かしてはくれないのか」

「人生もまた一場の夢なら艱苦に耐えて何になろう?」


というような内容であってもそれを高度な交響曲に織り込んでしまった。
マーラーさんはとても音楽が、作曲が好きだったのだ。
イヤになっちゃうことも音楽で客観化し克服してしまった。
ということは…

好きなことを存分におやりなさい、というメッセージだったのではなかろうか。
そうすれば思い残すこともないかもね、というメッセージだったのではなかろうか。
ガラクタという言葉は傍観者の言うこと、ガラクタかどうかは本人が決めることだ。
我々に残されている時間は少ない(のかもしれない)。


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今回もマルチマイク録音がされていました。
ところがマイクの配置が以前のと全然ちがう。
音に対する考え方が違うのが分かる。
面白いなぁと思いつつも、これだけ違うとマルチマイクなどと十把一絡げでは片付けられないな。


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これで2011年度の東京都交響楽団定期演奏会会員のコンサートはすべて終了。
2012年度も同交響楽団定期演奏会の会員です。
後期は少ないので他のコンサートにも行こうと思っています。





Commented by bj44v190e at 2012-03-31 13:50 x
一見マルチマイクでも実は違うというものがあります。たとえばTBMジャズ録音で有名な神成さんは超オンマイクのイメージを持つ人が多いのですが、じつはクラシックもジャズも同じ手法で録音するひとで、オフマイクのペアをメインにして、近接マイクが補助です。

Commented by kiirojbl at 2012-04-02 00:51 x
なるほどです。
前回は楽器毎にマイクが立てられた状態だったのですが、今回は第一、第二バイオリン、ビオラ、チェロの方向へ各1本づつ計4本、それから打楽器に2本と何故かホルン1本という具合でした。
それ以外はオーケストラ上空のオフマイクです。
近接マイクを補助に、という使い方のように思います。


2012/03/24

JBL 2332 and 2352 (7)

ところで"Figure 1B. New driver configuration."に記載されている"Fast flare rate"は2352のどこの部分なのでしょうか?
下の図は上が2352の平面図であり水平方向におけるホーンの外形を、下が側面図であり垂直方向における外形を示しています。





水平方向における部分Cはスリット(ギャップ)が形成されているため急速な広がり率を持つ部分とはいえません。
そうすると垂直方向におけるコニカル部、部分Bのスロート側が"Fast flare rate"を実現している部分ということになります。



2012/03/18

JBL 2332 and 2352 (6)

2352はOptimized Aperture Bi-Radial Horn(オプティマイズドアパチャーバイラジアルホーン)と呼ばれています。
アパチャーは「開口部、孔、隙間、口」というような意味なのでスロート口を最適化したホーンという意味になると思います。

この「最適化」はホーンだけではなく組み合わされるコンプレッションドライバーのスナウトレス化を伴います。
下の図はJBLのテクニカルノート"JBL’s New Optimized Aperture Horns and Low Distortion Drivers"に掲載されているもの。
コンプレッションドライバーのスナウト(筒先)を取り外すことにより、スロート口の直径が50mm(2インチ)から37mm(1.5インチ)に小径化されていることが分かります。






上記テクニカルノートによると、こんな説明がなされています。

「現在のドライバーにはネオジムマグネットや薄いフェライトマグネットを使用しているため、アルニコマグネットを用いた磁気回路には必須となるスナウトを必要としない。」

「スナウトがあるコンプレッションドライバーと組合わせるホーンのスロート口近傍におけるフレアレート(ホーンの広がり率)は約160Hzである。
これはトーキー(1930年前後の映画)で使用されていた巨大なホーンに合致させる設計手法によるものである。
しかし、今日のコンプレッションドライバーのクロスオーバー周波数は800Hzである。」

「オプティマイズドアパチャーホーンにおけるスロート口における急激な広がり率(rapid flare rates)は、高域におけるパターンコントロールを改善する。
な ぜならフェージングプラグがホーンの仮想頂点にあり、フェージングプラグから見て良好なサイトライン(sight line/劇場で観客とステージをまっすぐで妨げられない視線、ここではフェージングプラグから放射された音波が遮蔽物なしにホーン全体に広がることを意 味する)を実現するからだ。
これは極端に広いカバー角度をもつホーンにおいても実現される。
そして、高域の音波はウェーブガイドへくまなく放射され、ホーンの軸線のビームの発生を小さくすることができる。」

Today, with very small, high energy neodymium magnets and thin profile ferrite magnets, we do not need that space.
The overall depth of the driver can be significantly reduced, as shown in Figure 1 B, providing a relatively rapid flare into the throat of the horn.

By our calculations, the initial flare rate in the older driver design was approximately 160 Hz, reflecting the need to drive the very large horns that were used in early motion picture systems.
Today, we can double or quadruple that flare rate, inasmuch as many horns are
now intended for nominal crossover at 800 Hz.

Rapid flare rates offer an opportunity to make improvements in high frequency pattern control.
Since the exit of the phasing plug is virtually at the apex of the horn, there is normally an excellent sight line into the phasing plug, even at the extremes of angular coverage;
this is virtually a guarantee that high frequency signals will illuminate the entire wave guide and show little tendency to beam on axis.







オプティマイズドアパチャーホーンの効果のひとつとして高調波歪の低減があります。
上のグラフはAが2380と2450(タイプミスで24S0となってますね)、Bが2352と2451の組合わせ。
5kHz以上の高域における2次高調波歪が激減しています。
フェーズプラグからホーンの隅々まで見通しが利くから歪が低減するというのは説得力があります。


2012/03/15

JBL 2332 and 2352 (5)

2352が出現したときはかなり衝撃を受けました。
何故ならまだ2インチ径のスロート口をもつコンプレッションドライバーを持っていなかったからです。
従来のドライバーを装着できないホーン…

さらにあまりにもホーン長が短く、そして残念なほど軽量だった。
たったの10インチ、そして2.2kg…
ホーンは長く重くないとダメだと思い込んでいた。

しかし、2352について長い間考え込んでいたからか、今では2352を別の方向から評価することができるようになりました。








2352の外観図を眺めていると、2360や2380とずいぶん異なることが分かります。
2360や2380のような長いスロート部がありません。
スロート部は非常に短く、スリット(ギャップ)もとても小さい。








それにスリットから続く左右のホーン面は平坦面であり、これはウェーブガイドホーンのようです。
ところがこの2352はウェーブガイドホーンではなく、Optimized Aperture Bi-Radial Horn(オプティマイズドアパチャーバイラジアルホーン)と呼ばれています。




2352、君のことが好きだった、というわけで昔のスピーカーファイルの中から数枚を。
ネットワークの設計図などがあり、これでマトモな音に追い込めると思ってたんだ...
2360Aを入手するはるか以前のものです。







2012/03/10

JBL 2332 and 2352 (4)

PEAVEY社の米国特許6059069号の続きです。

ウェーブガイドホーンが従来のホーンと一番違うことはスロート口へ供給される波面が平面波でなければならないという点です。
下の図は上記特許の図5です。
スロート口14に接続されたドライバーから供給された平面波は曲面部分24から平坦面42へと進行する。
このとき、波面は常にホーン壁面に対して直角となりスムーズに進行します。








定指向性ホーンではスリット(ギャップ)による回折現象を利用して拡散していましたが、ウェーブガイドホーンは、曲面部分24により平坦面42のコニカルホーン部へスムーズに移行させつつ拡散させます。
正確な球面波が進行するということです。
このため大音量時における歪率の低下を達成することができました。









リボン型ユニットがウエーブガイドホーンのドライバーとして採用されるのは平面波とこのホーンとの相性が良いためです。
上のシステムはリボン型ユニットを採用したPeavey社のVersarray 112です。









ウェーブガイドホーンと称していますが、曲面部分24は見当たらず、複合コニカルといった雰囲気です。


2012/03/02

DIY Speaker (48)

東急ハンズ渋谷店から先日お願いしておいたウーファー部用のカット材が届きました。
FRPの樹脂成形作業は気温がもう少し上がらないと再開できません。
樹脂が固まらない、というのではなく、お外が寒い・・・
そこで屋内で作業できるウーファー部を先に作ってしまおうと。
お隣の白ホーンシステムは大きさの比較用です。









ご覧のような15インチシングルウーファー部を製作することにしました。
このシステムのホーン部はうまくいくのかどうかよく分からないためウーファー部にはスタンダードなものを採用。
うまくいくようであれば、下のようなダブルウーファー化やフラットパネル型ウーファー部へと発展させる計画です。






15インチユニットは旧2色ホーンシステムのV字型バッフルで使用している1508-8ALCPそのものを流用します。
同時にV字型バッフルは新たに作成したバッフル板で封鎖しシングルウーファー化します。









1508-8ALCPはV字型バッフルという変則的な箱で使用したためその実力が分かっていません。
これはもったいないです。
またエージングが済んでいるのですぐに使えるというメリットがあります。

サブウーファーは暫定的にYST-SW160を使います。
YST-SW160についてはここでも少し書きました。
サブウーファー部も製作することになると思います。

計画通りに発展するのかは分かりません。
でもスピーカー道楽はこれからも続きますのであわてず騒がずのんびり行くことにしましょう。






2012/02/28

JBL 2332 and 2352 (3)

下の画像はPEAVEY社の米国特許6059069号に掲載されている図1です。











上の特許図面は煩雑で理解しにくいので作図してみました。
下の図は普通のコニカルホーンです。
スロートから80°の広がり角度を持っています。










 下の図はPEAVEY社の米国特許に基づいて作図したウェーブガイドホーンです。










このウェーブガイドホーンは、スロート部(赤)とベル部(黒)の2つの部分を有する複合ホーンです。
ベル部のコニカルホーンは、両壁面の延長線がスロート口の中央で交差する点で普通のコニカルホーンとは異なります。

スロート部は半径R(青)の円弧をもつ曲面で構成されています。
この円弧の半径はtanθを用いた簡単な連立方程式でももとめられますが、この図のように作図からもとめることもできます。
半径Rの円弧の中心角度はコニカルホーン部の広がり角度の半分の角度になります。
この例では広がり角度は80°ですから、円弧の中心角度は40°になります。
このため交点Aから70°の角度をもつ線を描き、この線がスロート口の延長線と交わった点までの距離が半径Rとなります。


下の図は広がり角度が大きくなるにつれてスロート部が小さくなる様子を描いたものです。
広がり角度は60°、80°、100°です。









2012/02/23

JBL 2332 and 2352 (2)

ウェーブガイド理論はむずかしい理論ではありません。
一言でいうと音波の波面(acoustic wavefront)をうまく手なずけて望ましい放射パターンを獲得するという理論です。

アップロードを断念した4つの論文の代わりに、以下の3つの特許文献でウェーブガイド理論を理解してみよう。
3つの特許が並存するのですからウェーブガイドホーンと言っても色々なタイプがあるのです。
同じ定指向性ホーンでも面構えの異なる2360AとMR94があるように。


1. 我らがPEAVEY社のUS6059069号
この米国特許による同社のQuadratic-Throat Waveguideの解説もアップロードしておきます。

2. アップロードを断念した4つの論文の筆者であるEarl Russell GeddesさんのUS7068805号
4つの論文には掲載されていない興味深いホーンの図面が掲載されています。

3.我らがJBL社の(またかい!)US7936892B2号。
彼らが呼ぶところのProgressive Transition (PT) Waveguidesの米国特許なのだよ。
登録日が2011年3月3日でありようやく現代に追いつきました。


これら3つの特許の中で最も理解しやすいPEAVEY社の特許から見てゆこう。





2012/02/15

JBL 2332 and 2352 (1)

ウェーブガイド理論について調べていたころ、ネットで
"Acoustic Waveguide Theory"
"Acoustic Waveguides In Practice"
"Acoustic Waveguide Theory Revisited"
"Sound Radiation From Acoustic Apertures"という4つの論文を入手しました。

しかし、これら論文は論文の執筆者自身がネットで開示しているものではないため、アップロードすることは問題があると判断し断念しました。
ごめんなさい。



原典の引用なしで説明するというのは・・・
う~む、これは不可能か。









Commented by johannes30w at 2012-02-17 17:04 x
バカでも解るようなご説明をお待ちしております。
(^^)/

Commented by kiirojbl at 2012-02-17 20:44 x
2352が2360や2392とは違うホーンだということをお話しようと思って。
2352はスロート部がない。

Commented by johannes30w at 2012-02-18 03:06 x
あははは
もっとお願いします   !(^^)!

Commented by kiirojbl at 2012-02-18 14:30 x
今度こちらにいらっしゃったときには声をかけてください。
おいしものでも食べに行きましょう。



2012/02/09

JBL 2360A(12)

2360AとMR94Bはいずれも水平指向性が90°です。
しかし、その指向性パターンはかなり違います。

下のグラフの上段はMR94Bの水平指向性のパターン(濃い線)を示しています。
下段は2360A
実線の500Hzと8kHzをMR94Bのそれと比べてみてください。





 





下のグラフも上段はMR94B、下段は2360A。
こちらは1.25kHzと3.15kHzです。









どちらの指向性パターンが優秀なのかは、前方90°の範囲内における均一性や、側方や後方への回り込み量など、比較する要素が複数あるためにわかに判断できませんが、MR94Bの方が側方への回り込み量がかなり少ないのが見てとれます。
2360Aの厚みのある音とすっきりした印象のMR94の音。
こうした指向性パターンの違いも音の違いに影響を与えていると思います。



2360Aというバイラジアルホーン対複合コニカルのMR94。
ライバルの存在が互いの特徴を明らかにします。
スロート口の絞り形状、全長に占めるスロート部の長さ、スリットの幅、ベル部内側の開き角度、ベル部外側の開き角度、ベル部内側と外側の長さの割合等々、多くの構成要素が異なっています。

ホーンの歴史から見ると、定指向性を実現したことは革命的な出来事でした。
しかし、定指向性というのはホーンの有する特性の一つにすぎません。
2360AとMR94を定指向性ホーンという呼び名で同類に分類するにはあまりにも構成やその音に差があるように思っています。




2012/02/03

JBL 2360A(11)

指向性パターンについてさらに考えてみよう。
下の画像はALTECの米国特許4187926号に掲載されている図5である。

2.5kHzにおける指向性パターン。
MRシリーズの原型となったALTEC社の試作ホーンと従来の他社製ホーンとの比較。
試作ホーンのラインは符号40であり、他社製ホーンのラインは符号41。









この他社製ホーンについて、この米国特許公報には"that described in U.S.Pat. No.4071112(米国特許4071112号に記述されている)"としている。
これはEV社のHR6040だろうと思っている。
なお、EV社の古いホーンについてはこちらを。

上の図5は、その指向性の狭さから見て、おそらく水平指向性パターンではなく垂直指向性パターン。
ちなみにHR6040の2.5kHzは下のようなパターンである。

薄いラインで描かれているのが垂直指向性のパターン。
中央に表示されている60°は水平指向性の6dB落ちの範囲を示し、45°は垂直指向性のそれを示している。







図5のライン41と見比べてみると、側方(90°と270°)の方向に膨出している点が共通している。
EV社のグラフの方が整っているが、これは両社の測定環境の差と、好意的かどうか、の差だろう。






図5のライン41の側方への膨出を見て、"ウエストバンディング効果"という不思議な言葉を思い出したなら、あなたの記憶力は相当なものだ。
メタボ腹をベルトで締め付けると・・・たまらず贅肉が側方へ膨出する。
美しくない現象を美しくない喩えで説明する。
これがALTECのセンスである。

そして、この現象を抑えるためには"ベル部に平坦面を用いる"のが良い、と記述がある。
それはそうだろうと思う。
外側に徐々に広がる曲面なら、音波が側方に回り込みやすいというのが、なんとなくイメージできる。
これが曲面ではなく平坦面なら音波はホーンの側方に出かけてみることに興味を持たなくなる、ということだ。

このイメージは理解しやすい。
しかし、だからといってそんな安直なイメージによって"平坦面最高"などという単純な話にはならない。




2012/01/28

JBL 2267H

2267Hは2012NAMMショーで発表されたVTXシリーズに搭載されているJBLの最新型15インチコーン型ユニットです。
4インチ径ボイスコイル、デュアルボイスコイル、デュアルネオジムマグネット、ディファレンシャルドライブ。
2267Hは18インチユニットの2269Hと同じ磁気回路を備えています。
2269Hについてはこちらこちらを。






2269Hは定格入力2kW、ピーク8kWという世界屈指のハイパワーユニットです。
その性能を15インチユニットにも適用したのですから、これは現時点で世界最強の15インチユニットだと思います。
最近のJBL社の15インチユニットでようやく入手したいユニットが出現しました。
下の画像、左が2267H、右が2269Hです。






2267Hの構造は下の画像の2269Hと同じです。
ところで"Saturated Pole Tips Eliminate Flux Modulation"というのは何だろう。







2267H

FS 41Hz
QTS 0.42
QMS 8.3
QES 0.44
VAS 89L
EFF 1.4%
PE 600W
XMAX 15mm
RE 4.8Ω
LE 2mH
SD 881sq inches
BI 22.64N/A
MMS 180g


2265HのMMS112gに比べて、180gとかなり重くなっています。
もっとも、サブウーファー用15インチの2266Hは260gもありますので、現代的なウーファーではこんなものなのでしょうか。
なんとなくですが、ウーファー設計の考え方が変わってきているように思います。
これは入手して聴いてみないといけないかもね。
2265Hや2266Hについてはこちらを。




2012/01/26

JBL D2430K

D2430Kは2012NAMMショーで発表されたVTXシリーズに搭載されているJBLの最新型コンプレッションドライバーです。
2つのドライバーがスタックされている全く新しい構造を持っています。
詳しくはVTXのパンフレットD2430Kのプレス用パンフレットを。







下の画像、2つの空色の部分がネオジム磁石。
それぞれの磁石について独立した磁気回路が構成されています。

中央部には緑色の円錐状イコライザ。
そのイコライザの基部周囲には、緑色の部材と薄いオレンジ色の部材との間に隙間が形成されています。
この隙間は下の画像ではイコライザの右側基部のほうがはっきり分かります。

隙間の上下には断面がV字型に盛り上がった部分があります。
この盛り上がった部分がフェーズプラグ。
このフェーズプラグに上下のリング状ダイアフラムがそれぞれかぶさるように配置されています。
それぞれのダイアフラムの磁石側にはボイスコイルと磁気ギャップがあります。









下の画像、紫色が上部ダイアフラム、薄いオレンジ色部材が上部フェーズプラグ。
緑色部材は中央円錐状イコライザと下部フェーズプラグ、黄色が下部ダイアフラム。
オレンジ色の上部フェーズプラグの底面側には放射状のスリットが見えます。
このスリットは緑色部材の上面側にも形成されているはずです。

この放射状スリットは部材を貫通しており、フェーズプラグの小穴と連通しています。
緑色部材ではV字型断面を持つ凸部に「ハ」の字型の小穴があります。
おそらくオレンジ色の上部フェーズプラグの上面にもあるはずです。
そして、環状ダイアフラムにより圧縮された空気はフェーズプラグの小穴から放射状スリットを通り、上記の隙間に放出されます。
そしてこの隙間では上下の環状ダイアフラムからの音波が合成される。

ボイスコイルのリード部は中央部に向かって設けられており、上下ボイスコイルの端子は独立して設けられていることが分かります。
インピーダンスはそれぞれ16オームであり、並列に接続すると8Ωになります。







環状ダイアフラムとフェーズプラグの構造はBMS社のドライバーと類似する構造です。
また、D2430Kのダイアフラムはポリマー(合成樹脂)であり、この点でもBMS社のドライバーと共通します。
しかし、2つのダイアフラムが対向しているのが新しい。

ボイスコイルと磁気回路は2つあるため放熱に優れ、許容入力は2倍の200Wあります。

環状ダイアフラムは従来のドーム状のダイアフラムに比べると2つの利点があります。
ドーム状ダイアフラムは往復動の際、ダイアフラムの凸状側に変位すると、ダイアフラム中央部がへこむ。
その逆側に変位する際には、ダイアフラム中央部は膨らむ。
ソフトドームの方がハードドームよりも鋭い音になるのは、このダイアフラムの望ましくない変形量が大きいため。
環状ダイアフラムはこのダイアフラム中央部を持たないので、こうした問題がありません。

もうひとつは環状ダイアフラムの質量が小さいこと。
このため高域のレスポンスに優れる。

しかし上記のような利点の反面、環状ダイアフラムはその振動面積が小さく、能率と低域側のレスポンスが悪い。
D2430Kは対向する2つの環状ダイアフラムにより振動板面積を稼ぎ、そんな問題点を解決したというわけです。




D2430Kという型番、面白い。
24XXはドライバーの番号だけど、Double DriverのD2と組合わせたのかもね。
そして30だから、おそらくボイスコイル径は3インチだと思います。
ええっと、スロート径も今のところ不明。
これはおそらく1.5インチスロート。
2430H、2431H、2432H、2435Hの代替機種だと思うからです。

末尾のKも目新しい。
Fは2Ω、Gは4Ω、Hは8Ω、Jは16Ω。
だからKは16Ωのダブルボイスコイルという意味なのでは?




VTXのパンフレットには下記のように記載されています。
"At the heart of VTX is the D2 Dual Driver, a revolutionary device developed by JBL that dramatically improves the sound and performance of high frequencies."
また、このドライバーの構造についてはAESで発表していることも記載されています。
"Audio Engineering Society Convention Paper “Dual Diaphragm Compression Drivers,” Author Alex Voishvillo, Preprint 8502, presented at the 131st Convention, New York, Oct 2011"
D2430Kのラベルには"Patent Pending"(特許出願中)の表記もあり、JBL社のオリジナル製品であることは確実です。
"D2 Dual Driver"などの表記を見ていると、JBL社はこのドライバーを相当気に入っているように思います。
かなり音がいいのではないか。

なお、同ラベルには"Made in Mexico"という表示があったので調べてみた。
同社はロス郊外のノースリッジにある。
だからメキシコに工場があるとしたらティファナだろうなと。
JBLとTijuanaで検索するとこんなのを見つけた。

ノースリッジに工場があってそこでは主力製品を製造し、それ以外の製品をメキシコ工場で生産する、というのではなさそうだ。
米国ではもはや生産は行わず、ノースリッジの製造ラインをメキシコに移転し、すべてのJBL製品をメキシコで生産するということらしい。
ティファナには日米の企業の工場が多数あり、隣接する米国都市であるサンディエゴに研究施設を置くというパターンが多い。
ノースリッジからティファナだと3時間以上かかるような気がするが、それでも多国籍化を図るならティファナに製造拠点を移すのは最良の選択ではなかろうか。

BMS社のOEMを受けるままではどうかと思っていましたが、これでめでたく王者復活。
もともと環状ダイアフラムはランシング氏謹製075の技術。
違いは中央部のイコライザの形状。
D2430Kはエクスポネンシャルではなくコニカルなんだよね。















Commented by johannes30w at 2012-01-28 17:48 x
久しぶりにワクワクしますね!
でも、見た目がしょぼいのは時代なのかな。。。

Commented by kiirojbl at 2012-01-28 20:38 x
これの4インチ版(D2440K)とか5インチ版(D2450K)とかが出てきてミッドレンジがコーン型からコンプレッション型に戻らないかなと期待しているのです。
JBLなんだからもう少しお化粧してほしいです。
黒の縮み塗装とか無理かなぁ。
ボイスコイル焼損の場合、分解しないといけないから外観はこんなかんじにならざるを得ないのでしょうか。
う~む。


2012/01/24

Subscription Concert No.729 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第729回定期演奏会に行ってきました。








今回の演奏会は「日本管弦楽の名曲とその源流」という企画だそうです。
曲目は野平一郎作曲、オーケストラのための「トリプティーク」、野平一郎作曲、チェロとオーケストラのための「響きの連鎖」、ブーレーズ作曲、エクラ/ミュルテプルの3曲。

オーケストラのための「トリプティーク」とチェロとオーケストラのための「響きの連鎖」の指揮者は作曲した野平さん自身でした。
エクラ/ミュルテプルの指揮者は杉山洋一さん。

いつもより遅れてホールに入るとステージで野平さんと聞き手の方との対談が終わる寸前。
う~む、アークヒルズのさしてううまくもない蕎麦など食べている場合ではなかったと後悔。
月刊都饗というパンフレットにも野平さんがご自身の曲の解説をされています。
作曲者自身のお話や解説というのは貴重ですよね。



オーケストラのための「トリプティーク」はかなり強烈でした。
うむむむ、と聴き入ってしまいました。
いろいろなイメージがどんどん湧いてきます。

高揚した気持ちで今度はチェロとオーケストラのための「響きの連鎖」。
チェロ奏者は堤剛さん。
大太鼓が4つ、分散して配置されています。
同時に4つが鳴るのではなく、1つづつ交互に鳴る感じです。
発音位置を変えることにより音の遠近感を出そうという試み。

この曲は堤剛さんの鬼気迫る好演もあり、すばらしかったです。
日本の森の中に潜んでいる怖れの対象を想起させるような深さを感じました。



エクラ/ミュルテプルは、日本初演。
もとになったエクラが15楽器、エクラ/ミュルテプルは10楽器増えて25楽器のための曲であるため、前の2曲に比べると楽器の数が少ないです。
でも、ツインバロンやチューブラーベルなどがあり、どんな風なのかなぁと興味深く聴きました。

杉山洋一さんの指揮は各楽器の余韻までもが、すべて指揮のなかに見て取れるようです。
指や手のひらの表情がオーケストラの音とそのままつながっている感じです。

今回の演奏会は、野平さんの曲とブーレーズさんの曲は同じ範疇の曲ということになっていると思うのですが、しかしその内包しているものは全然違うように思いました。
野平さんの曲は雅楽に通じるものを感じ、エクラ/ミュルテプルはやはりヨーロッパ音楽の雰囲気があります。
作曲家の個性の違いよりも文化的な背景の違いを感じました。



2012/01/17

JBL 2360A(10)

今年はオーディオ歴40周年という節目の年。
しかし、寒いのでホーンの製作ができません、というかサボってます。
そろそろ戦闘を開始せねば。
でもやっぱり寒っ…

ところでJBL HornのカテゴリDIY Speakerを製作するにあたり検討した資料の総まとめのつもり。
2360A、2392、2332や2352のこと、それからウェーブガイドホーンの理論とJBLのウェーブガイドホーンについて展開しようと思っています。
DDCHの製作時にホーンについてどの程度理解していたのかを記録に残すべきだと。








で、突然話は始まっちゃう。

2360Aは超広帯域の2ウェイ用ホーン。
それ以前のホーンシステムは5ウェイとか6ウェイにならざるを得なかった。
そういうシステムに使用されていたホーンは、必ず特定の帯域でビーム感を生じる。
そのビーム感を生じる帯域をカットするためにその帯域を他のホーンに任せた。
さらにその「他のホーン」のビーム感を生じる帯域をカットするために「さらに他のホーン」にその帯域を任せる…

ホーンがビーム感を生じる帯域を持たない場合、上記のようなホーン補完計画?とも言える5ウェイとか6ウェイのホーンシステムを構築する必要が無い。
指向性云々という以前に、ビーム感を発生しないという性格はホーンシステムの構築において大きなアドバンテージになる。
しかし、2360Aが2ウェイというシンプルな構成の4675のような比較的コンパクトなホーンシステムを構築することができるのは、他にも理由がある。
指向性というより、音響エネルギーの分布パターンのマジック。

2360Aの場合、水平指向性は90°だから、左右45°の方向において軸上よりも6dB、レスポンスが低下している。
そしてこの6dBのレスポンス低下が生じる左右角度は300Hzから10kHz以上に渡り、維持されている。
ところが帯域によってその指向性パターンは異なっている。









上のグラフはJBL Professional White Paper New 4675C-HF with 2360Bに掲載されている2360Aの水平指向性パターン。
左側のグラフの実線500Hzと右側の実線8kHzを比べてみよう。
500Hzと8kHz、どちらも300°と330°のほぼ中間、30°と60°のほぼ中間で6dB落ちになっています。
これが水平指向性90°を意味している。

ところが、実線グラフの全体の形は全然ちがいます。
500Hzの方は下半分も膨らんでいる。
これは後方(180°の方向)へも音圧が回り込んでいることを示している。
一方、8kHzの方はそうした回りこみはない。

下のグラフ、左側の実線は1.25kHz、右側は3.15kHz。
低域側になるにつれて後方への回り込みが増えてくる。
しかし、6dB落ちの角度は不変であることに注目。





オーディオマニアなら誰でも知っているように低音というのは回り込む。
2360Aの凄いところは、全ての帯域において90°という指向性だけはきっちり守りつつ、その一方、低域になるほど側方や後方への回り込みを増やしているという点。

エクスポネンシャルホーンの低域特性と比べてみると…
カットオフ周波数でがっくりとレスポンスが低下する。
このとき突然指向性がブロードになってしまう。

ダイレクトラジエターのウーファー部とこの手のホーンが聴感的につながらないというのはこれが原因。
低域になるにつれて自然な低音の回り込みを許さないホーンの場合、ウーファー部もホーンタイプにしないとうまくつながらない。

2360Aはダイレクトラジエターのウーファー部と組合わせることができる。
比較的コンパクトなホーンシステムを構築することができる、とはそういう意味なのです。









500Hz、1kHz、2kHzと等音圧線の分布はそれぞれ異なります。
しかし、-6dBの等音圧線に注目すると、何れの帯域においても、垂直(90°)の方向では20°をやや越える位置、水平(0°)では40°を超える位置を通っていることが分かります。






2012/01/06

JBL 2360A (9)

あけましておめでとうございます。
今年もよろしく。



2360Aの音が客観的に理解できるようになったのはMR94と付き合いはじめてからです。
どちらも2ウェイ用の超広帯域型大型ホーンという同じ土俵で戦う製品。
また、いずれもALTECとJBLの両社の社運をかけて開発されたという経緯があります。

この2つのホーン、音色の傾向がかなり違います。
簡単に言ってしまうと2360Aは厚みを感じさせる音、MR94と94Aは素直でストレートな音。
これはドライバーではなくホーンの違いによるもの。
この事実を知ってから、音のちがいの原因について考えるようになりました。

ホーン全体のプロポーションの相違、これについては2360A(8)で書きました。
しかしそれだけではない。
やはり2360Aの曲面構成とMR94、94Aの平面構成の差ではなかろうか、と考えています。

コニカルホーン派のBill Woodsさんも、コニカルホーンは色づけがないとおっしゃっている。
キール氏の論文でもコニカルホーンの優れた特性が紹介されている。
さらに、現代ホーンの主流であるウェーブガイドホーンもコニカルホーンが基調になっている。








当時のALTEC社はどのように考えていたのか。
キール氏の定指向性ホーン理論が登場したのは1975年3月。
MRシリーズの基になった特許出願は1977年6月27日。

上の画像はALTEC社の複合エクスポネンシャルホーンの特許出願のもの。
出願日は1977年11月21日。
MRシリーズの特許出願と略同時期。

ALTEC社の技術者はキール氏の定指向性ホーン理論を詳細に検討したと思う。
そして、彼らはその理論が複合ホーンに対して、あるいはコニカルホーンに対して新たな技術的視点を与えていることに気付いた。
そこでフレアレートの異なるエクスポネンシャルホーンの複合形態も試してみたのだろう。






ALTEC社ほどホーンと長く付き合い続け、そして苦しめ続けられたメーカーはない。
それだけにホーンを、特にエクスポネンシャルホーンを知り尽くしている。
そのALTEC社が最後に辿り着いたのがコニカルホーンの複合形態だった。
これはとても興味深い事実だ。

2360AとMR94、94A、どちらが優れているのか。
ビジネスの観点からは2360A、音の観点からはMR94、94Aだと思っている。
2360Aは15インチダブルウーファーとの組み合わせを想定して音造りがなされているように思える。
MR94、94Aはそうした用途を限定することがないままに純粋に完成度の高いホーンを目指して作られたのではないか。

しかし優れた戦略が無ければ市場では敗北する。
ALTEC社は優れた兵器の開発に成功したが戦略で失敗した、のかもしれない。