リスニングルームの中に楽器の発音部に似た状態を現出させることができたからです。
しかし、この超高圧の音の塊、残念ながらかなりの難物なのです。
上の図は、スナウト付きのコンプレッションドライバーとエクスポネンシャルホーンを組合わせたもの。
ダイアフラム表面とフェーズプラグ表面との間で発生したオレンジ色の圧力は、フェーズプラグを通じてフェーズプラグの端面に集合して赤い超高圧の音の塊になります。
スナウト部分の内壁はほとんど広がらず、また、エクスポネンシャルホーンの入口付近の広がり率も小さいので、この超高圧の音の塊は広がって減圧することなくそのまま射出されるようなイメージになります。
まるで砲身から発射される弾丸のようです。
エクスポネンシャルホーンの広がり率は、スロート口からの距離の二乗に比例して増えます。
スロート口付近では、ほとんど広がっていきませんが、途中から急激に広がり始めます。
波長の長い低周波ならばこの急激な広がり部分においてもホーンの内壁に沿って広がってくれます。
低音は回り込みやすいという性質を持っているからです。
しかし、波長が短い高周波は、急激に広がってしまうエクスポネンシャルホーンの内壁に沿って広がることができません。
その結果、超高圧の音の塊が、ほぼそのままの状態を維持して弾丸のようにホーン中央から発射されることになります(右側の赤い部分がその弾丸)。
これがホーンのビーム現象です。
下の図を見てみると、エクスポネンシャルホーン、ハイパボリック、トラクトリックスの3種のホーンが、このビーム現象を起こすホーンであることが理解できると思います。
ホーンのビームが生じると、これは聴いていられません。
絵画を鑑賞しているときに絵画側からカメラのフラッシュを頻繁にたかれるようなものです。
オーディオマニアにとって、定指向性ホーンというのは、このビームを生じない点で有用なのです。
超高圧の音の塊の最大の問題であるビームを回避し、超高圧の音の塊から生じるVividな音を得ることができるからです。
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