2004/07/12

幸せの黄色いホーン 112話 ヨハネスさんと黄色いホーン(2)

 
ヨハネスさんの密閉化の実験は大成功。そこで黄色いホーンシステムの10インチの箱と18インチの箱を本格的に密閉化することにしました。ダクトを塞ぐ板はネットショップにアクリル板をカットしてもらいました。ホームセンターでの合板のカット代や水性ニス代などを考えるとアクリル板の方が安価ですし、仕上げの手間も省けるからです。



10mm厚と5mm厚のアクリル板の間に黄色い画用紙を挟み込みました。表札のような雰囲気。ネジの間隔は文房具のパンチの間隔です。パンチで画用紙にあけた小穴の位置にあわせてアクリル板に穴をあけました。画用紙を挟み込んだ状態で四隅をテープで仮止めしておき、箱にネジ止めした後にテープをはがしました。ダクトの内部には60mm圧のスポンジを詰め込み、これで密閉化完了。


密閉化による低域側のレスポンス低下はイコライジングにより補うことにしました。WinISDを使ってそれぞれの密閉箱での特性をシミュレート。そのグラフを見ながら、SH-D1000のEQCDというソフトでその密閉箱の特性を補正するカーブを検討しました。この補正カーブを設定して聴いてみると失われていた低音感が戻ってきました。理屈としては当たり前ですが、こうして低域がパワフルに鳴り出すと、にわかには信じがたい気持ちになりましたと、ここまでは良かったのです…

慣れてくると調子にのって低域側のレベルを上げ、イコライジングも欲張った設定に。さらに、システム全体のレベル設定も変更し、低音がたっぷり入っているCDを次々にかけて、バスレフに劣らない低音の量感にすっかり有頂天になってしまいました。このおばかな低音有頂天騒ぎが7月2日の深夜のこと。そして前回から約1ヶ月後の7月3日、再びヨハネスさんが来てくれました。「今日は設定なんかしないよ。聴かせてもらうだけだから。」とニコニコ。

当然、そのままで済む訳がございません。ヨハネスさんの前回の設定を呼び出し、それに低域の補正カーブを加えたところから再スタート。ヨハネスさんの指示に従ってレベル設定を変えてゆきます。やはり凄い。どんどん良くなっていきます。低域のレベルを絞っても低音の姿が明確になれば、それで十分な低音感を得られることが今回初めて分かりました。さらに、分かったことは使い手の頭の中身がとても重要だということ。はい、オーディオの良し悪しは機材の良し悪しではないのです…

それからリニアトラッキングアームのレコードプレーヤーも聴いて頂きました。「音量を上げるとジーというノイズが聴こえるのです。」と言うと、「モーターの電源部のアースをとった? 電源スイッチを切ってみてノイズが消えればそれが原因。」とのアドバイス。即座に解決。確かに電源部のアースをとり忘れていました。リニアトラッキングアームはミストラッキングすることなく動作したので一安心。もう少し針圧を上げたらどうかというのがヨハネスさんの感想。針圧を軽くすることばかり考えていたので、これは気付きませんでした。

今回も脱帽です。こちらは女性ボーカルでないとレベル調整ができないのに、クラシックの楽器の音のみで調整完了。その後、女性ボーカル等のCDを聴くとちゃんと調整ができていることがようやく分かる始末。そのほか、測定もしていないのに部屋やシステムの各帯域のクセを把握されているように思えます。設定の変更の指示内容からそれが分かるとドキッとしました。ヨハネスさんは立派な人間音響アナライザー、こちらは穴があったら入りたいさ~。それでも楽しいひと時でした。ヨハネスさん、ありがとうございました。また、来てくださいね!




2004/07/11

幸せの黄色いホーン 111話 ヨハネスさんと黄色いホーン



「おとがでるだけさん、宣戦布告文書、確かに受け取りました。
本土決戦のX-dayは、2010年6月5日としましょう。
よぉ~く首を洗っておいてくださいね。」

いよいよ黄色いホーンシステムをヨハネスさんに聴いて頂くことにしました。2色ホーンシステムが不調の時に「いえいえ黄色いホーンはこんなものではございません。あれは次元が違う。これは単なる実験システムですから。あはは…」みたいな逃げを打っておいたのが、ここにきてその逃げ場に追い込まれる事態に相成りました。返信に書いてある「本土決戦」という言葉はそういう意味なのです。う~む。

AVアンプのPS3001を導入する前、2332+2451Hを2332+2431Hに変更しました。この2431Hは3インチアルミダイアフラムを備えているドライバーです。美しい音。2430Hの後継機種であり、民生用は435ALですが、発売は435ALよりも後発です。今回はLR-48dB/octの遮断特性を採用し、2431Hの美しさを生かすようにホーンタワーの設定を慎重に行いました。さらに、ヨハネスさんに聴いて頂くのですから少し背伸びもしました。ダークサイドシステムの音を思い浮かべて、中低域を厚くしようと2392+2490Hをブースト、加えて小技を繰り出し低音は厚く重量感のある仕上がりになったような気になっていました。

ところで、ヨハネスさんというのは恐ろしく耳が良い方です。今までにダークサイドシステムで機材等の聴き比べでそれを感じました。機材の音の差異が微妙で判断しかねていると、ヨハネスさんが解説してくれます。そして、もう一度聴いてみると「なるほどなぁ。」とようやく理解。そんなヨハネスさんの耳に黄色いホーンシステムの音がどんな具合に聴こえるのか興味津々です。残念なことに今回は2時間弱程度の試聴時間しかなかったのですが、その内容は今までで一番濃かったのです。



黄色いホーンシステムを聴いたヨハネスさんは、「なかなか良い。」と言ってくれました。これはうれしかったです。「でも、低音が重い。今の設定は保存されてるんでしょ。新たに設定してもいいよね。」ご指摘の通りです。迫力はあるものの低音が何となく締りがない。不明瞭な感じ。でも、これは仕方がないものと諦めていました。

ヨハネスさんの最初の指示は「2392+2490Hを2dB下げてね。」うっ、いきなり見抜かれてる。それからが凄かった。矢継ぎ早に「46cmを0.5dB下げて。」「25cmを2dB上げて。」「61cmのクロスを45Hzに。」とどんどん指示が飛ぶ。言われたとおりにチャンデバの設定を変えてゆきます。一段落すると突然「タオル、4枚ある?」とおっしゃった。

何に使うのか分からないままタオルを用意すると、クルクル巻いたのを46cmの左右4つのダクトに詰めたのです。それから、再度レベル調整の指示。低音の質がどんどん良くなっていくのが分かります。うわぁ!と驚いていると、今度はタオル2枚。これを25cmのダクトに詰め、再度レベル調整の指示。重苦しい低音が豹変、今までの黄色いホーンシステムからは決して聴くことができなかった恐ろしく強烈で明瞭な低音が出るようになってしまいました。

「少し厳しすぎる音になったね。2360+2446Hを0.5dB下げて。」と指示されたのですが、黄色いホーンシステムの新しい音に舞い上がっていたので、誤って0.5dBブーストしてしまいました。30秒も聴かないうちに「う~ん、さらに1dB下げて。」とおっしゃる。このときメモ用紙に書きとっておいた設定データと見比べながら設定を行っていたため、誤ってブーストしてしまったことにすぐ気付きました。要するに、ヨハネスさんは、元の設定値から0.5dBカットすることを2度目の判定でも正確に行ったことになります。これには心底ゾッとしました。

低音の重さの原因を短時間で正確に判断し対処する。ヨハネスさんは耳が良いだけではなく、それを生かすことができる腕があるのです。お話を伺うと、その腕がすべて今までの経験というか苦労の連続に裏打ちされていることが分かりました。という訳で今回もとても楽しかったです。それに黄色いホーンシステムの音が1000万円分!ぐらいドーンとレベルアップしちゃいました。ヨハネスさん、遠いところまで来ていただき感謝しております。また、来てくださいね!

ちなみに問題の「宣戦布告文書」には駅の待合わせ時刻が書かれているだけです。大袈裟だなぁ…