2004/05/11

幸せの黄色いホーン 71話 2490H



さて、この38cm2ウェイという構成、これがなかなか難しい。なにが難しいかと言えばツィーターを用いないためにドライバーユニットの高域側への広帯域化が必要となるからです。特に、4インチダイヤフラムの大型コンプレッションドライバーになると10kHz以上の再生は至難の業。そのためにダイヤフラムの材質やフェージングプラグの改良等、様々な技術が開発されました。それでどうなったかというと、ある日突然JBL社の技術者達はいっせいにスプーンを投げた…のかどうかは分かりませんが、JBL社はシネマスピーカーシステムを3ウェイ構成にすることを考え始めた。

…3ウェイにするならやってみたいことがある。高域側を伸ばす必要がないからミッドドライバーのコンプレッションレシオを下げて低歪化を図れる。それに厚手のダイヤフラムも使える。サラウンド(ダイヤモンドエッジ)の強度も稼げるから許容入力に余裕が持てる。いっちょ、やってみるべぇか!

という具合に話が進み2490Hが開発されたのかもしれません。2490Hの再生可能帯域は250Hz~4kHz。250Hzまで再生できるということよりも、厚手とは言えチタンダイヤフラムのくせに4kHzまでしか再生できない、というのがこのドライバーの不思議なところ。



2490Hのダイアフラム

もともとチタンダイヤフラムというのはドライバーユニットの高域側への広帯域化のために採用されてきたという歴史があります。2490Hがカバーする帯域なら2480系に採用されているフェノール含浸布製のダイヤフラムの方が好適でしょう。このタイプのダイヤフラムは事実上破壊されることがありませんから強度の点でもチタンダイヤフラムよりも優れているはずです。それに音に厚みが感じられ、その音質の美しさは米国でも高く評価されています。

う~む、よく分かりません。どうしてチタンなのか。チタンダイヤフラムには、何か他の可能性があったのでしょうか? ドライバーユニットの広帯域化と引替えになっていた何か、それをJBL社の技術者達は2490Hによって取り戻そうとしたのではないか。そういう空想話が頭の中でグルグル回るようになり、そのグルグルが2192を買わせたという訳なのです。

2ウェイか3ウェイかという議論。これ、業務用スピーカーの世界では陳腐化していないような…




0 件のコメント: