2004/05/16

幸せの黄色いホーン 76話 ME15+DE500



大物を買っちゃうと、しばらくは何にも買わないもんね、と心に誓いますよね。でも、その「しばらく」の後には、アレ注文しちゃおうかなぁ、という気持ちがふつふつ・・・

B&C Speakers社というイタリアの業務用スピーカーユニットメーカーがあります。設立は1945年という老舗。日米ではほとんど知られていませんがヨーロッパでは有名な・・・はず? ヨーロッパのかなり多くのスピーカーシステムメーカーにユニットを供給しているようですし、ユニットのデザインが面白いので、以前から使ってみたいなぁと思っていました。

B&C社のドライバーのラインナップは豊富です。1インチスロートは10機種、1.4インチスロートは7機種、1.5インチスロートは2機種、2インチスロートは7機種あります。この中から1インチスロート/1.7インチ(44mmm)ダイアフラムのフラッグシップモデルのDE500ドライバーを選びました。



ME15+DE500

このDE500は、チタンダイアフラム、一体型タンジェンシャルエッジ、3重スリットのフェージングブラグ、アルミボイスコイル、ネオジウムマグネット。重さは1.5Kgあり、ネオジウムマグネットを搭載するドライバーとしては重いほうです。組み合せたホーンはME15。アルミ製の90°×60°タイプです。しかし、購入直後に新型(ME20)が発表されました。このME20は滑らかなホーン曲面なのです。ううっ、残念!

米国サイトから購入してみるとネオジウムマグネットの磁力の強さに驚いてしまいました。DE500のマグネットはとても小さいのですが、かなり遠くから引き合うのです。ネオジウムマグネットのスピーカーユニットが急速に多くなってきている理由が分かるような気がします。

このB&C社から今年(2007年)の春先、面白そうなユニットが2つ発表されました。1つめは21インチ(54cm)ウーファーの21SW150。ネオジウムマグネット、6インチボイスコイル、連続許容入力3kW。そしてBL値が何と39.2! これは猛烈な馬鹿力。実効質量も448gとウルトラヘビー級です。なにより、そのデザインがイタリアンです。



21SW150

2つめは同軸ドライバーのDCX50。断面図が公開されていないので、どんな構造なのかが分かりません。53話でご紹介したBMS社(ドイツ)のBMS4590と似たような構造だと思いますが、特許の問題があると思うので、もしかしたらこんがらがったナポリタン構造?なのかもしれません。スロート径は2インチ。中域のダイアフラムはコンポジット(複合材)とだけ表示されています。これ、どんな「複合」なのでしょう? ボイスコイル径は51mm。妙に小さいですね。でも、DCX50の紹介には5インチ(127mm)ドライバーって記載されています。う~む。

DCX50の高域のダイアフラムはMylar(商標)です。強度や耐熱性のあるポリエステルフィルム。最近の業務用ドライバーのダイアフラムでは、こうした合成樹脂系の素材を見かけるようになりました。こちらのボイスコイル径は32mmです。これ一本で400Hz~16000Hzをカバーするそうです。そして、ご覧のように、これまたデザインがイタリアン!



DCX50






2004/05/15

幸せの黄色いホーン 75話 2332+2451H



2192の中央にしっかりとした2本のアルミ製のステーで同軸に固定されている小型ホーン、これが2332と2451Hです。2451Hドライバーはギョッとするほど高価。こういう機材とは無縁だったのですがオマケ?でくっついてきました。しかし、高い安いと音は別。ホーンが小さすぎる(2332ホーンの奥行きは約11.5cm)ので期待していなかったのです。ところが、2332+2451Hは2192の音のかなりの部分を支配している上に、イコライジングを煮詰めてゆくと全くクセが感じられずJBLの音?という感じがしないほど。



2332+2451H

2451Hというドライバー、実は、黄色いホーンに使用している2446Hと同じダイアフラムを備えています。もっと詳しく説明すると、2446H、2447H、2450H、2451H、2451H-1の5つのドライバーは、どれもD8R2450というリブ入りの4インチチタンダイアフラム。よくもまあ、これだけ作り分けますよね。そして、2インチスロートでは2446Hが最後のドライバーになったようですが、1.5インチスロート/4インチダイアフラムでは、フェライトマグネットの2447H/J、ネオディミウムマグネットの2450SL、2451H/J、2451H-1、2451SL、2452H/J、2452H-SL、そして2451SLをベースに開発されたDD66000の476Beと、知らぬ間にどんどん増えてます。なお、「SL」というのはSnout Less(スナウトレス/筒先なし)の略でしょう。

最も新しい2452H(16Ωタイプは2452J)と2452H-SLは、チタニウム・ダンプド・ダイアフラム(Titanium Damped Diaphragm)を備えています。このダイアフラムの放射方向のチタンリブは直線状ではなく、下の図のように渦巻き状にカーブしています。また「ダンプド」ですからダンプ材(アクアプラス)がコーティングされているのでしょう。



2452H

2451Hと組み合わされている2332ホーンはアルミ製のオプティマイズド・アパチャー・ホーンです。よく調べてみると、この2332、DMS-1(Digital Monitor System One)というモニタースピーカーに使用されていました。これ、JBL社がデジタルチャンネルデバイダーと組み合わせて使用する新世代のモニタースピーカーとして開発した渾身の一作。1996年発売。しかし、お値段(デジタルチャンネルデバイダーと左右2台のセット価格がなんと350万円!)が高すぎるためか、それともデジタルチャンネルデバイダーをユーザーが使いこなせなかったためか、みごとな空振り三振。話題にならずに消え去りました。なお、DMS-1で2332と組み合わされているドライバーは、2451Hではなく2450SL-Aです。



DMS-1

2332はDMS-1の他、シネマスピーカーシステムの5671、TTM129、SP222WH等、いくつかのJBL社のスピーカーシステムに搭載されています。DMS-1や5671のデジタルチャンネルデバイダーの設定表も興味深いものでした。イコライジングでは、受け持ち帯域の中ほどをやんわり削り、高域端側をググッと持ち上げている点では共通していますが、これらスピーカーシステム毎にかなり設定に差があり、ぷろふぇっしょなるでんなぁ、という感じです。

という訳で、タダ同然で入手した2332+2451H、芋蔓式徹底身辺調査や驚愕失敗的粘着微調整といったお金のかからない楽しい作業を提供してくれました。なんだかお気に入りのユニットになったかも。