2012/03/29

Subscription Concert No.731 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第731回定期演奏会に行ってきました。








指揮はエリアフ・インバルさん。
メゾソプラノはイリス・フェルミリオンさん、テノールはロバート・ギャンビルさん。
曲目はマーラーの亡き子をしのぶ歌と交響曲「大地の歌」。
どちらも素晴らしい演奏でした。
マーラーさんを好きになったというか、理解できるようになった。


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亡き子をしのぶ歌は震災のあとなのでこれは聴くのは辛そうだなぁと。
それに大地の歌は酒に酔った厭世的な内容。
酒に酔うような話は嫌いなんだ。
そんな気持ちでコンサートへ。

しかし亡き子をしのぶ歌が始まるとそのあまりに悲しく美しい音楽がだんだんと気持ちに入ってきます。
歌詞はフリードリヒ・リュッケルトさんの詩による。
リュッケルトさんの二人の子供さんがお亡くなりになった心境が綴られた詩。
そしてマーラーさんの娘マリアさんもこの曲が作曲された4年後にお亡くなりになったそうだ。

1901年から1904年にかけて作曲され、初演は1905年1月29日。
100年以上経過している。
それなのにこれだけの人がコンサートに集まり、リュッケルトさんの二人のお子さんとマーラーさんの愛娘マリアさんの死について考え、その悲しみを想像する。
100年たっても曲を聴いた人々が気持ちをよせるというのは凄いことだ。
思い出すことが亡くなられた3人の子供さんを蘇らせる。
だから100歳以上長生きしたのと同じになる。
さらに子供を亡くすという悲しい体験をした方はこの曲を聴けば深く共感するだろう。
共感はその人を癒し救う。

厭世的なはずの大地の歌は、だからこんな具合に聴くことができた。
長女マリアさんを失い、さらに反マーラー運動でウィーン宮廷歌劇場監督の地位を辞任せざるを得なくなって、もしもマーラーさんが本当にイヤになっちゃったら、こんなに素晴らしい交響曲を作曲することはできなかったであろう。
作曲時期は1907年から1909年。
当時はブルジュア支配層による貧富の差の拡大、理性的人間観の敗北、社会主義や民族主義の台頭と、どんどん世の中がおかしな方向へ傾いてゆき、第一次世界大戦(1914年~1918年)に突入する寸前。
中国の詩に含まれていた西洋にはない価値観の提示というより、厭世的な気持ちをこんなに素晴らしい曲に仕上げてしまったということが素晴らしい。


「しかるに人間よ お前の生はいかほどか?
百年と持たぬではないか。
朽ちるばかりの瓦落多(ガラクタ)にうつつをぬかしながら。」

「涙は止まるところをしらない 我は独り
あまりに長い 心の秋
愛の太陽よ お前はもう輝ってはくれないのか
苦渋の我が涙を優しく乾かしてはくれないのか」

「人生もまた一場の夢なら艱苦に耐えて何になろう?」


というような内容であってもそれを高度な交響曲に織り込んでしまった。
マーラーさんはとても音楽が、作曲が好きだったのだ。
イヤになっちゃうことも音楽で客観化し克服してしまった。
ということは…

好きなことを存分におやりなさい、というメッセージだったのではなかろうか。
そうすれば思い残すこともないかもね、というメッセージだったのではなかろうか。
ガラクタという言葉は傍観者の言うこと、ガラクタかどうかは本人が決めることだ。
我々に残されている時間は少ない(のかもしれない)。


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今回もマルチマイク録音がされていました。
ところがマイクの配置が以前のと全然ちがう。
音に対する考え方が違うのが分かる。
面白いなぁと思いつつも、これだけ違うとマルチマイクなどと十把一絡げでは片付けられないな。


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これで2011年度の東京都交響楽団定期演奏会会員のコンサートはすべて終了。
2012年度も同交響楽団定期演奏会の会員です。
後期は少ないので他のコンサートにも行こうと思っています。





Commented by bj44v190e at 2012-03-31 13:50 x
一見マルチマイクでも実は違うというものがあります。たとえばTBMジャズ録音で有名な神成さんは超オンマイクのイメージを持つ人が多いのですが、じつはクラシックもジャズも同じ手法で録音するひとで、オフマイクのペアをメインにして、近接マイクが補助です。

Commented by kiirojbl at 2012-04-02 00:51 x
なるほどです。
前回は楽器毎にマイクが立てられた状態だったのですが、今回は第一、第二バイオリン、ビオラ、チェロの方向へ各1本づつ計4本、それから打楽器に2本と何故かホルン1本という具合でした。
それ以外はオーケストラ上空のオフマイクです。
近接マイクを補助に、という使い方のように思います。


2012/03/24

JBL 2332 and 2352 (7)

ところで"Figure 1B. New driver configuration."に記載されている"Fast flare rate"は2352のどこの部分なのでしょうか?
下の図は上が2352の平面図であり水平方向におけるホーンの外形を、下が側面図であり垂直方向における外形を示しています。





水平方向における部分Cはスリット(ギャップ)が形成されているため急速な広がり率を持つ部分とはいえません。
そうすると垂直方向におけるコニカル部、部分Bのスロート側が"Fast flare rate"を実現している部分ということになります。



2012/03/18

JBL 2332 and 2352 (6)

2352はOptimized Aperture Bi-Radial Horn(オプティマイズドアパチャーバイラジアルホーン)と呼ばれています。
アパチャーは「開口部、孔、隙間、口」というような意味なのでスロート口を最適化したホーンという意味になると思います。

この「最適化」はホーンだけではなく組み合わされるコンプレッションドライバーのスナウトレス化を伴います。
下の図はJBLのテクニカルノート"JBL’s New Optimized Aperture Horns and Low Distortion Drivers"に掲載されているもの。
コンプレッションドライバーのスナウト(筒先)を取り外すことにより、スロート口の直径が50mm(2インチ)から37mm(1.5インチ)に小径化されていることが分かります。






上記テクニカルノートによると、こんな説明がなされています。

「現在のドライバーにはネオジムマグネットや薄いフェライトマグネットを使用しているため、アルニコマグネットを用いた磁気回路には必須となるスナウトを必要としない。」

「スナウトがあるコンプレッションドライバーと組合わせるホーンのスロート口近傍におけるフレアレート(ホーンの広がり率)は約160Hzである。
これはトーキー(1930年前後の映画)で使用されていた巨大なホーンに合致させる設計手法によるものである。
しかし、今日のコンプレッションドライバーのクロスオーバー周波数は800Hzである。」

「オプティマイズドアパチャーホーンにおけるスロート口における急激な広がり率(rapid flare rates)は、高域におけるパターンコントロールを改善する。
な ぜならフェージングプラグがホーンの仮想頂点にあり、フェージングプラグから見て良好なサイトライン(sight line/劇場で観客とステージをまっすぐで妨げられない視線、ここではフェージングプラグから放射された音波が遮蔽物なしにホーン全体に広がることを意 味する)を実現するからだ。
これは極端に広いカバー角度をもつホーンにおいても実現される。
そして、高域の音波はウェーブガイドへくまなく放射され、ホーンの軸線のビームの発生を小さくすることができる。」

Today, with very small, high energy neodymium magnets and thin profile ferrite magnets, we do not need that space.
The overall depth of the driver can be significantly reduced, as shown in Figure 1 B, providing a relatively rapid flare into the throat of the horn.

By our calculations, the initial flare rate in the older driver design was approximately 160 Hz, reflecting the need to drive the very large horns that were used in early motion picture systems.
Today, we can double or quadruple that flare rate, inasmuch as many horns are
now intended for nominal crossover at 800 Hz.

Rapid flare rates offer an opportunity to make improvements in high frequency pattern control.
Since the exit of the phasing plug is virtually at the apex of the horn, there is normally an excellent sight line into the phasing plug, even at the extremes of angular coverage;
this is virtually a guarantee that high frequency signals will illuminate the entire wave guide and show little tendency to beam on axis.







オプティマイズドアパチャーホーンの効果のひとつとして高調波歪の低減があります。
上のグラフはAが2380と2450(タイプミスで24S0となってますね)、Bが2352と2451の組合わせ。
5kHz以上の高域における2次高調波歪が激減しています。
フェーズプラグからホーンの隅々まで見通しが利くから歪が低減するというのは説得力があります。


2012/03/15

JBL 2332 and 2352 (5)

2352が出現したときはかなり衝撃を受けました。
何故ならまだ2インチ径のスロート口をもつコンプレッションドライバーを持っていなかったからです。
従来のドライバーを装着できないホーン…

さらにあまりにもホーン長が短く、そして残念なほど軽量だった。
たったの10インチ、そして2.2kg…
ホーンは長く重くないとダメだと思い込んでいた。

しかし、2352について長い間考え込んでいたからか、今では2352を別の方向から評価することができるようになりました。








2352の外観図を眺めていると、2360や2380とずいぶん異なることが分かります。
2360や2380のような長いスロート部がありません。
スロート部は非常に短く、スリット(ギャップ)もとても小さい。








それにスリットから続く左右のホーン面は平坦面であり、これはウェーブガイドホーンのようです。
ところがこの2352はウェーブガイドホーンではなく、Optimized Aperture Bi-Radial Horn(オプティマイズドアパチャーバイラジアルホーン)と呼ばれています。




2352、君のことが好きだった、というわけで昔のスピーカーファイルの中から数枚を。
ネットワークの設計図などがあり、これでマトモな音に追い込めると思ってたんだ...
2360Aを入手するはるか以前のものです。







2012/03/10

JBL 2332 and 2352 (4)

PEAVEY社の米国特許6059069号の続きです。

ウェーブガイドホーンが従来のホーンと一番違うことはスロート口へ供給される波面が平面波でなければならないという点です。
下の図は上記特許の図5です。
スロート口14に接続されたドライバーから供給された平面波は曲面部分24から平坦面42へと進行する。
このとき、波面は常にホーン壁面に対して直角となりスムーズに進行します。








定指向性ホーンではスリット(ギャップ)による回折現象を利用して拡散していましたが、ウェーブガイドホーンは、曲面部分24により平坦面42のコニカルホーン部へスムーズに移行させつつ拡散させます。
正確な球面波が進行するということです。
このため大音量時における歪率の低下を達成することができました。









リボン型ユニットがウエーブガイドホーンのドライバーとして採用されるのは平面波とこのホーンとの相性が良いためです。
上のシステムはリボン型ユニットを採用したPeavey社のVersarray 112です。









ウェーブガイドホーンと称していますが、曲面部分24は見当たらず、複合コニカルといった雰囲気です。


2012/03/02

DIY Speaker (48)

東急ハンズ渋谷店から先日お願いしておいたウーファー部用のカット材が届きました。
FRPの樹脂成形作業は気温がもう少し上がらないと再開できません。
樹脂が固まらない、というのではなく、お外が寒い・・・
そこで屋内で作業できるウーファー部を先に作ってしまおうと。
お隣の白ホーンシステムは大きさの比較用です。









ご覧のような15インチシングルウーファー部を製作することにしました。
このシステムのホーン部はうまくいくのかどうかよく分からないためウーファー部にはスタンダードなものを採用。
うまくいくようであれば、下のようなダブルウーファー化やフラットパネル型ウーファー部へと発展させる計画です。






15インチユニットは旧2色ホーンシステムのV字型バッフルで使用している1508-8ALCPそのものを流用します。
同時にV字型バッフルは新たに作成したバッフル板で封鎖しシングルウーファー化します。









1508-8ALCPはV字型バッフルという変則的な箱で使用したためその実力が分かっていません。
これはもったいないです。
またエージングが済んでいるのですぐに使えるというメリットがあります。

サブウーファーは暫定的にYST-SW160を使います。
YST-SW160についてはここでも少し書きました。
サブウーファー部も製作することになると思います。

計画通りに発展するのかは分かりません。
でもスピーカー道楽はこれからも続きますのであわてず騒がずのんびり行くことにしましょう。