日本画の虎図が猫っぽいことについては、福田美術館の円山応挙の虎図の解説が的確である。
"虎は日本には生息しておらず、江戸時代の画家たちは中国や朝鮮から輸入された絵画や毛皮を参考に、また生体としては猫を参考に虎を描きました。
そのためちょっと猫のような虎、「ネコトラ」の絵が多く残っています。
こちらの円山応挙の虎図も瞳が三日月になっていますが、実際の虎の瞳孔は猫と異なり、丸い形のまま収縮して調光するため、このような眼にはなりません。"
応挙の高弟である蘆雪の虎図襖も同様に猫っぽいし、そうしたネコトラ日本画は無数にある。
これは撮影が許されている福田美術館で撮影した蕭白の虎図である。
解説にはこうある。
"横向きに座って体をひねり、こちらへ振り向く虎。
目の上にある眉毛のような白い毛は、中国や朝鮮半島の文物が入ってきた長崎で活躍した画家たちの虎図に見られる特徴です。
曽我蕭白の描く虎は、どこか人間味があり、本作においてもニヤリと笑う表情は楽し気です。"
さて、どうしたものか。
鑑賞ではなく画家として描く立場になると非常に困るのである。
現在では動物園で虎を見ることができ、そんなものをどんなにうまく描いてみても、これはつまらん。
そういうのは絵がうまい奴にまかせればいいのであってわざわざ画家が描く必要はない。
だからと言って、応挙などを真似てみるというのも面白くない。
やはりオリジナリティが無いと描く意味が無かろう。
しかし、オリジナリティを発揮するためには虎に対する独自の見解をはっきりさせる必要がある。