こうしたテストドライブは黄色いホーンシステムやDIYホーンシステムでも時々行っているが、今回は特にうまくいった。
そのイコライジングは、匙加減が難しいとはいえ、わずか5素子のPEQのみで作成した250Hzと3kHzに谷がある単純な三つ山特性である。
800Hzというのは、2オクターブ下が200Hz、2オクターブ上が3.2kHzと、上記2つの谷の中間周波数である。
最近は"モノよりコト"という時代だそうである。
機材の買い換えではなく、イコライジングで音をまとめてゆく、というのが現代的な、いや、これからのオーディオなのかもしれない。
こういうのはいくら金を払っても理屈をこねても本を読んでも習得できないし、実際、地道に経験を積み上げてゆかないとうまくいかない。
楽器の練習と同じだ。
音がこもっていると感じるときは、高音が足りないのではなく、低音や中低音が過多であり、高音を覆い隠してしまっている、つまり高音がマスキングされて聴きづらくなってしまっていると考えた方がコントロールしやすい。
低音と高音が強調されているいわゆるドンシャリは、程度にもよるが基本的に悪い状態ではない。
イコライジングの入門としてはドンシャリから始めるのがいいかもしれないとも思っている。
低音をカットするのではなく、最低域や中低域をややカットすると低音の勢いはそのままに"ドン"と鈍く詰まった感じがなくなりすっきりする。
この場合、本来の低音が最低域や中低域によってマスキングされていたのである。
また、シャリついた高音は、PEQを最低2素子使って解決する。
1つは狭帯域にしてピンポイントでピークを潰す。
もう一つは広帯域にして高域全体のエネルギー量を調整するのに使う。
ピークにマスキングされ、本来の高域のエネルギーが不足している場合があるのでそれに対応するためだ。
また、機材から発生するノイズや部屋の外から聞こえてくる環境音もマスキングの一種であると拡大解釈してとらえることができる。
さらには、録音状態が悪いというのも、帯域バランスの崩れが原因でマスキングが発生し、それ故に低評価になっているものも多いと思う。
"マスキングされている音がない音"を作り出すこと、これがオーディオの極意である。