クロスの高低による音の変化に慣れてきたので300Hzから400Hzの範囲のクロスオーバー周波数を探りながら、イコライジングを煮詰めてゆきました。遮断特性は-18dB/octです。しかし、500Hzでクロスさせていたときの音を超えられません。なんだか元気がないような遠慮した感じになってしまいます。
2360Aはカマボコ型の特性で悩ませてくれるのですが、実は、ローライダー18にもクセがあります。測定してみると200Hzから400Hzあたりのレスポンスが見事に落ち込んでいます。これはローライダー18だけではなく46cmウーハーにはよく見られる特性です。46cmだとサラウンド(エッジ)の逆共振の領域がこのあたりになるのではないかと思っています。このローライダー18のクセは、500Hzクロスの時には、単にイコライジングだけで解決できました。
ところが、300Hzから400Hzの範囲でクロスさせようとすると、ローライダー18のこの落ち込んだ帯域にクロスさせることになるので、これがうまくいかない原因になっているようなのです。この帯域をブーストすれば良いはずなのですが、これが理屈どおりにいかない・・・ 結局、4ヶ月ぐらいに渡り、測定と試聴を繰り返しながら悪戦苦闘してみたのですが、残念ながら「全くの無駄」という結果に終わりました。
「全くの無駄」という事実を受け入れると気分がさっぱりします。どうせダメならと、お蔵入りになっていた-24dB/octも試すことにしました。この遮断特性は冷たく寂しい感じになってしまうことが多いので敬遠してきました。-24dB/octならクロスを下げても良かろうと、ちょっと意地悪な気分でクロスを280Hzに設定しCDを聴いてみました。すると、予想に反して中域の厚みと密度感がぐんと増しました。これを逃がしてはいけません。測定と試聴を繰り返しつつハイ側のハイパスフィルターのQ値を探ると、狙っていた躍動感が出てきました。厚みと艶があり鮮やかです。
ところが、素晴らしいけど、なにか気持ち悪い・・・興奮していたので位相のことなどすっかり忘れているわけです。半日ほどたってからようやく気付き、ローとハイをアブソリュートでの正相接続に変更すると、音像がすっきりしてこの気持ち悪さがなくなりました。それに-18dB/octの逆相接続よりも音像が前に出てきて、これも好ましいです。
ローライダー18の不得意な帯域を2360A+2446Hがそっくり引き受けてくれたのが良かったようです。この280Hzクロスの設定は、以下のようなものでした。
これはイコライジングの設定です。赤ラインの「1」(300Hz、Q値2、+7dB)は、クロス付近の調整用です。黄色ラインの「2」(1250Hz、Q値0.7、-12dB)は、2360Aの調整用です。緑色ラインの「3」(2400Hz、Q値3、-1dB)は、サ行の刺激を取り除きます。水色ラインの「4」(5600Hz、Q値3、-1dB)は、高音の浮いた感じを抑えます。シェルビングの「5」(15000Hz、スロープ6dB、+1dB)は、2402H-05の調整用です。
チャンネルデバイダ部の設定です。ロー側では、20Hzのローカットフィルターを設定し、このフィルターのQ値を1にすることで60Hz以下をややブーストしました。SH-D1000+EQCDのイコライジング部の5素子を全て使い切ってしまったため、こうした技をやむなく繰り出すことに。なお、ローパスフィルターのカットオフ周波数は280Hz、Q値は標準の0.7です。ハイ側のハイパスフィルターのカットオフ周波数も同じく280Hz、Q値は標準より大きい0.9です。
イコライザ部とチャンネルデバイダ部の設定を合算して表示するとこんな具合です。ハイ側のハイパスフィルターのQ値が大きいため、実際のクロスオーバー周波数は250Hzとなりました。それにしても気持ちの悪いハイとローのかぶり・・・Q値と相談しつつロー側のカットオフ周波数を引き下げてみるというのが今後の課題です。
クロスを低くとった今回の設定はタナボタでした。ようやく500Hzクロスの音を超えることができました。こうした調整での音の変り方は信じられないほどですから、まだまだ試す余地がありそうです。しかし、調整はデリケートでとても疲れました。しばらくはこの艶のある音を楽しみたいと思います。