3台体制のA-S301の音の第一印象は、PS3001とあまり変わらんなぁというものだった。
楽器の質感がやや向上し、低音側のエネルギー感が少し増えたように思ったぐらいだ。
この差異も気のせいというか微妙である。
もともと完成度が高い音だったので、当然と言えば当然なのかもしれないが、めざましい変化はなく、少しがっかりである。
まあ、部屋のリフォーム後、測定等を行っておらず再調整が必要なのだが、以前の設定のままなので本領発揮ではないのかもしれない。
とは言え、この音でもなかなかだ。
ALTECの最初期型のMR94、その個性がうまく生かせている。
音を聴かせるのではなく音楽を聴かせるALTEC。
繊細であるにもかかわらず深い抑揚があり音楽の情感のエネルギーがそのまま空間にあふれてゆく。
6万6千円も支払ったのに変わり映えしないというのはつまらないので、新システムのポテンシャルを計るべくワイルドなテストドライブを開始。
要するにラフに再設定をして遊ぼうというのである。
最近はマルチアンプのレベル調整やイコライジングに自信がつき、設定を全部まっさらにしても程なく音をまとめ上げることができるようになった。
昔は緊張の連続で大変だったが、今ではサクサク作業を進めることができる。
最初にDCX2496の各chのレベルを0dB、DEQ2496のPEQをすべてフラットにする。
頭の中からも以前の設定に関する記憶をすっかり追い出すことにする。
次にDCX2496で3ウェイマルチのレベル調整を行う。
これで少しハイが強めのバランスを作る。
音の芯はMR94という大型ホーンで作る、ということだ。
本来はレベル調整でフラットな音を作ってから、ということなんだろうけど、高域のエネルギーを強めにしてPEQの調整に入った方が近道ということが長年の経験から分かっている。
MR94/291-16Kが全帯域への支配力を持つことを確認したら、今度はDEQ2496で80Hzをブーストしてゆく。
さらに50Hzをブーストし、かなりアグレッシブな感じになってきたら、250Hzをカット(減衰)して低音をクリアに。
今度は中高域の充実を図るため800Hzをブースト。
高域のエネルギー感を殺さないように3kHzを慎重にカットして強い高音を自然な感じに。
ここで再度DCX2496で3ウェイのレベルバランスをとり直し、18インチの最低域をやや増強。
それからDEQ2496でさらに微調整。
まあ、こんな具合に音をまとめるわけだ。
こうした調整には30分もあれば十分だ。
最後に少し聴いてからDCX2496のハイを0.2dB持ち上げたら納得の音になった。
3ウェイ程度のマルチアンプのレベル調整は広範囲に影響が及ぶので0.2dBでも効果が大きい。
PEQとマルチアンプのレベル調整を併用すると非常に複雑な操作になると思われがちだが、習熟すると操作の選択肢が増えて調整はかえってやりやすくなる。
ところで、"納得の音"というのは、不明瞭な音がない、つまり"他の音によってマスキングされている音がない"、ということである。
聴感上の帯域バランスが完璧にとれていると、オーケストラのすべての楽器群の表情がまんべんなく聴こえる。
満天の星空のような無限の音数、そして、生々しくアタックの芯がはっきりしており、見事な切れ味を感じさせる。
重厚で量感のある低域や中低域でさえも濁りを感じさせない。
余韻は深く美しく透明感をたたえ、コンサート会場の巨大な空間とその空気感が再現される。
そして、これらが18インチと15インチという大口径ウーファーと大型ホーンによる圧倒的なスケール感と躍動感を伴って迫ってくる。
期待以上の音に大満足である。
A-S301の実力についてはやや不安もあったのだが、これだけの音になったのだから悪くないのだろう。
さらなるピークを踏むべく、オートアライン、オートGEQをやり直し、本格的な調整に入るとしよう。