2020年10月28日、BMW E66 760Liとサヨナラすることになりました。
2012年年末、43400kmで乗り始め、142000kmになりました。
8年間10万km、共に駆け抜けたことになります。
維持費というか修理費は、年一回か二回、30万円から40万円の請求書がやってきます。
70万円を超えることもありました。
総平均車速は33.8km/h、燃費は5.8km/L(ハイオク)。
まあしかし、こういう経済的なことは気にしませんでしたというか、気にならなかったです。
修理屋さんからの帰路、ああ、またこんな車に乗れるんだ、という喜びを感じていました。
それほど760Liには魅了されてしまいました。
760Liは重厚な乗り味に特徴があります。
そして重厚なんだけれども、恐ろしく俊足。
そんな乗り味を支えているのは、至極のフィーリングを持つ5972ccのV12。
そしてその余裕たっぷりのエンジンパワーです。
足の親指にじわりと力を込めると、望み通りのパワーを得られます。
さらに力を込めると、760Liがニヤリとする。
パワーがどんどん湧き出してきて、それはもう底なしです。
加速中のエグゾーストノートがまたしびれます。
その痛快なV12の音色はうまく表現できないです。
そして、その巨大なパワーを陰から支えているのが卓越したブレーキ性能。
コントローラブルでありながら驚くべきストッピングパワー。
ホイールがパッドの削りカスで真っ黒になったり、お値段がかなり高くても、ブレーキパッドを社外品にすることなど考えられないです。
ペダルの踏みごたえも絶妙。
硬めのサスペンションとARS(アクティブ ロール スタビライザー)のおかげで、ワインディングロードを重戦闘機のように舞います。
61.2kg-mものトルクがもたらす猛烈な速さ。
しかし、760Liは常識的な速度域でも非常に楽しい。
ブレーキを積極的に使わず、アクセルペダルの加減だけでワインディングロードを泳がせると、その快感は筆舌に尽くしがたい。
ほとんどロールしないため、アクセルワークがトラクションの増減と直結しており、まさに自由自在。
狙ったラインを760Liが正確にトレースしてゆきます。
スポーツドライビングとは異次元の爽快感。
760Liは、制限速度で走っていても実に楽しい。
BMWは、車のエンターテイメントとはどういうものか、ということを熟知しているような気がします。
"高級車"という感じではなく、BMWが理想とする車を760Liを介して提示されているような気がします。
確かに760Liは高級車に分類される車だとは思いますが、そういう"高級"には半年ぐらいで慣れてしまって、そのあとはあまり意識しないです。
至れり尽くせりの機能や装飾やら、そんなものはどうでもよくなる。
ハンドルを握ると車との対話が始まる。
そんなシンプルな関係が日常になる。
"高級"なんて面倒な話を意識しなくなると、760Liの豊かで深い世界がより理解できるようになります。
この理解は付き合いが長くなればなるほど深くなる。
一年や二年の付き合いではとてもとても。
話を戻すと、制限速度で走っていてもというより、どんな速度域でも760Liは完璧な走りを味合わせてくれる。
ありとあらゆる挙動が正確無比に実行されていて、それに重厚な乗り味が重なる。
交差点での右折や左折が楽しい。
巨大な横っ腹を見せつけつつゆったりと方向を変える怪魚という雰囲気。
そして、そういうハンドルさばきが身につく。
回転半径は6.3m。
グッと深く突っ込んでから、ハンドルを素早く回転させるのがコツ。
当然のことながら切り返しもうまくなります。これも楽しめる。
駐車さえも楽しい。この巨体をきちんと駐車するのは快感です。
こうしたことに一つ一つ満足感がある。
いや、満足感を覚えさせてくれる、というのが正しいのかもしれない。
BMW、さすがです。
40代半ばからV12と付き合うことができました。
E38 750iLとの7年5万kmと合わせると、その付き合いは15年15万kmにもなります。
僥倖というより、素晴らしい思い出をくれた車への感謝の気持ち。
うまくいった、いや、うまくやったという達成感もあります。
おそらくは史上最後のそして史上最高の大排気量自然吸気のV12。
こんなマシンと思う存分付き合えて、本当によかったなぁと思っています。
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