オーディオが好きな方はオーディオ雑誌をすぐ信じてしまうようなどちらかというと従順な方が多いと思っています。ところが、そうではない方が時々紛れ込んでくる。おだやかな港に入ってきてしまったホオジロザメ。ヨハネスさんはそういう方。こういうサイトで生意気なことを書いていると港の中で退屈しているサメさんがニッコリ笑いながら近づいてくる!
ヨハネスさんとは2360好きという共通点があります。しかし、好きだから6本並べちゃったヒトと、好きだから黄色く塗っちゃったヒトでは、根本的に何かが違っているような・・・ ま、細かい話はさておき、2006年3月11日、往復500マイル、久しぶりの空の旅。ヨハネスさんのシステムを聴かせて頂きました。
このスピーカーシステムは6ウェイのマルチアンプで駆動されています。これだけ大規模なシステムなのにバラバラに鳴っている感じを受けません。また2360のような大型ホーンが6本も並んでいると迫力に満ちた攻撃的な音をイメージしますが、実際の音は非常に柔軟で深いのです。このような自然な感じの音がスピーカーという機械から再生できるということ自体に驚いてしまいました。この音、好きです。
一番下の2360Aにはごさ丸氏製作のダブルドライバー用スロートに換装されています。組み合わせれているのは2本の2482。帯域は300Hz-1150Hz。その上に配置されている2360Aには2440。帯域は1150Hz-8000Hz。4520の上に配置されている2360Tには2441。帯域は8000Hz以上であり高域側はカットされていません。4インチダイアフラムのコンプレッションドライバーを大型ホーンと組み合せてツィーターとして使用する、こういう発想はなかなかできるものではありません。
2360Tというのはカタログ上で見たことがないタイプなのですが、おそらくTour用(巡業用)に強化したタイプだと思われます。2360は2350の後継機種とされていたため、生産当初の頃に巡業用のものが製造されていたのだと思います。
2360Aに比べるとベル部の補強リブが非常に太いのが特徴です。鋳物のスロート部のラベルには「2360T」と表示されており、一方ベル部のシールには「2360H」と表示されていました。下の写真のように左側下方の2360Aのスリット状開口部は湾曲しているのに対し、右側上方の2360Tのスリット状開口部は湾曲していません。これは大変珍しいものだと思います。なお、2360Tであってもスリット状開口部が湾曲しているものもあります。
角度をつけて4本並んでいるのは10000Hz以上を受け持つ2402H。無信号時のサーというノイズの質感が柔らかい。高域は4本の2402Hと2360T+2441が受け持つため、ユニット1つあたりが負担するエネルギー量が小さいのです。ホーンツィーターの音とは思えませんでした。
4520のウーハーは2220C(32Ω)。バックロードホーンのクセが感じられず、スロートに詰め物でもしてあるのかな?と思ったほどです。このバックロードホーンの調整にはかなり苦労されたそうです。
4520の後方の大きな箱は76cmダブルウーハー。45Hz以下を再生するEV社の30Wは部屋の側壁に対向するように配置されています。全部で4本の76cmウーハーが豪快に鳴るとコンクリートの壁がドドドドドッと振動します。とてつもないエネルギーを感じさせるウルトラ級の超低音なのですが、これが野放図になっていない。
30Wを収めている2400Lの密閉箱はなんと自作箱。2本で6000本の木ねじを使用したそうです。再生音を聴きながら振動が感じられる部分に1本づつ打ち込んでゆくという気の遠くなるような作業を行ったそうです。
ヨハネスさんのシステムの音は一言ではとても表現できません。ただ一つ言えることはオーディオっぽい音ではないということです。そういうオーディオ特有の「良い音」はずいぶん以前に卒業されているようです。ヨハネスさんはフルオーケストラから湧き上がる虹色のオーラを再現しようとしているのではないでしょうか? オーディオを超越したその先にある音、これは今まで考えたことがありませんでした。うーん、このシステムの音が頭から離れない。