黄色いホーンシステム、中高域はだんだんまとまってきたように思えるのですが、低域に違和感があり、これをどんな具合に調整していいのか迷います。クロス周波数、遮断特性、レベル設定、イコライジングの無限の組合せにあっちふらふら、こっちよろよろ。調整を続けると続けただけ?悪化。使い手のレベルが装置に全然追いついていないことを、ここに素直に認めます・・・
こんなときはベテランの方のシステムの音がどんな具合だったのかを思い出せばいいのですが、これが「凄いっ!」というような驚いてしまった記憶だけしか残っていないという悲しさ。聴かせて頂いたシステムのどれもが巨大で複雑怪奇なマルチアンプシステムであり、当時3ウェイだった黄色いホーンシステムには、そうした経験を生かそうにもできなかったからだと思います。それに、ダークサイドで開催された2007年10月のALTEC大会、2008年3月の4550導入を手伝おう会、この2つの魅力的かつ貴重なオフ会を野暮用で連続欠席。このため、2007年5月の尾張・春の陣でごさ丸さんのシステムとARISAさんのシステムを聴かせて頂いたのが最後。それからもう1年以上も経っています。
という訳で、次のオフ会を大人しく待てば良いのですがやっぱり待ちきれない。結局我慢しきれずヨハネスさんにお願いし、2008年6月6日、金曜日の夜、ダークサイドの扉を叩きました。久しぶりに拝見できたヨハネスさんのシステムには4550が組み込まれ、もはや漆黒の巨大要塞という雰囲気。巨大な30Wが4発並び、その両側にホーンタワー、さらにホーンタワーの外側に4520が設置されています。ダークサイドのホーンタワーは約2.5mの高さがあり、これを設置するのは大変だっただろうなぁと思いました。
いつも感心するのはホーンタワーを複数の2360から構成したこと。高域になるにつれ小さなホーンを使用するのが常識なのに。これは様々な小型や中型ホーンを試した上でのことだそうです。それに、そんな説明よりも6連装の2360の音が全てを物語ってくれます。
音を聴かせて頂いて、最初に感じたのは黄色いホーンシステムと比較して、低音の質感がとても軽やかなことです。しかし、質感が軽やかと言っても、黄色いホーンシステムよりも圧倒的に迫力がある。自然なのに底知れぬパワーがあり、音楽の土台をがっちりと構築しています。これに比べると、黄色いホーンシステムの音は、まるで栄養ドリンク剤の味のように不自然で不気味です。この違和感は、低域や最低域に過度の量感やパワー感を求めたことが原因だということに気付きました。
次に感じたのは、サイズの差がそのまま音のエネルギー感の差になっていること。黄色いホーンシステムの両ch分のエネルギー感が、ダークサイドシステムの片ch分という感じです。そして、やはり4550が凄い。しかし、4550の強烈なエネルギー感のせいで低音のキレが悪くなっているように思えたので、その旨をヨハネスさんに話しました。すると、ヨハネスさん、いくつかのアムクロンK1やK2の入力レベルつまみをちょこちょこと調整・・・
出てきた音にギョッとしました。わずか数秒の調整で望んでいた低音のキレがきちんと出たのです。ヨハネスさんは言葉ではなく「こういう音のことでしょう?」と音で示したのです。シロートが指摘するようなことは承知しており、そうした音など簡単に出せる技量を持っている。これには心底驚かされました。
「エネルギーバランスをとるということは、すべてのユニットが同じくらいの仕事量をこなす状態にしてやるということ。そうでないと、ある帯域のユニットだけが妙に頑張った音になってしまう。」ヨハネスさんはこんな風にブログに説明されていました。マルチアンプシステムの各帯域毎のホーン、ユニット、アンプの選択、受持ち帯域の広狭等は、周波数レスポンスグラフなどでは何も推し量ることができない、ということなのです。
まだ導入したばかりの4550の可能性を探るべくヨハネスさんの調整作業が続きます。4550の帯域をあれこれいじっている訳ではなく、その他の帯域もどんどん変更しているようです。何がどう変っているのか、何を探っているのか、明確には分からないデリケートな作業。実際に、こうしたマルチアンプの調整作業を見たのは初めてだったので参考になりました。そして、翌日の昼前には、巨大システムがいよいよ「目覚めた」というような音が出て、その喜びのスターウォーズ、ダースベイダーのテーマにペチャンコに踏み潰されてしましました。
それから、ALTECの大型マンタレイホーンのMR94+291-16Kを使用したシステムも聴かせて頂きました。ALTEC大会に参加できず聴きたい聴きたいと思っていたので、これはとてもうれしかったです。ALTEC社の伝統と格調の高さを感じることができました。そして、とても書ききれないほどの様々なアドバイスを頂きました。ヨハネスさん、本当にありがとうございました。