2024/08/02

Remodeling Altec System



オーディオの極意に至った過程を思い返してみると、JBL Professional 2360Aを入手したことがすべての始まりだったと言える。
2360Aは聴いたことがない鮮烈な音を持っていた。
それまでのオーディオ体験をすべて吹き飛ばすぶっ飛びの音だったのである。

この2360Aはイコライジングによる補正を前提とした業務用の大型定指向性ホーンであるため、必然的にイコライジングとも付き合うことになった。
この時点で今のオーディオスタイルが確立されてしまったのだと思う。
マルチアンプもそうだ。
2360Aは300Hzのクロスが可能だから、これはチャンネルディバイダーを使いたくなる。
オーディオスタイルと言えば、安価なアンプというか、シンプルなアンプを使用しているが、これはそうしたアンプでもぶっ飛びの音が出るから、強力なアンプにこだわっても仕方がない。

また、2360Aの音を聴いてしまうとホームオーディオの音は退屈以外なにものでもなく興味が持てなくなってしまった。
ホームオーディオ用の雑誌の評論や議論も白けた気分で眺めるようになり、イコライジングやデジタルチャンネルディバイダーの使いこなしの真面目な話なども皆無であるから興味を持てと言われてもどうしようもない。

それはともかく、"マスキングされている音がない音"を作り出すこと、というもののスタート時点ではマスキングなどという発想がなく、単に、フラットな特性を追いかけるというものだった。
しかし、物理的にフラットにすると聴いていてピンとこないというか楽しくない音になってしまうことに気付き、少しづつイコライジングの世界に足を踏み入れていったわけである。
そして、オートGEQによる部屋の音響補正やオートアラインによる位相管理、電源環境の整備などにより、イコライジングが生きる環境を構築する必要があることも徐々に理解していった。

イコライジングには、耳の良さというか聴き分ける能力と、問題となる音に対する対処方法を知っていること、そして、最終的に全帯域の音をまとめ上げる力が必要になる。
そういう修練が必要とされることがオーディオの趣味としての面白さだと思っている。
さらに言えば、常軌を逸した巨大なホーンを部屋に運び入れてしまう決断をしてしまうこともオーディオの楽しさだと思っている。
こういう修練や決断が伴わない他人のオーディオなど端から全く興味はない。

まあ、2360Aとの出会いがあって、悪戦苦闘して、そして"納得の音"を出すことができる技量を身につけることができたのは運が良かったのかもしれない。
今は登頂を果たした晴れやかな気持ちであり、そしてオーディオとのかかわりは澄み渡ったものになった。




 

2024/07/31

Remodeling Altec System



こうしたテストドライブは黄色いホーンシステムやDIYホーンシステムでも時々行っているが、今回は特にうまくいった。
そのイコライジングは、匙加減が難しいとはいえ、わずか5素子のPEQのみで作成した250Hzと3kHzに谷がある単純な三つ山特性である。
800Hzというのは、2オクターブ下が200Hz、2オクターブ上が3.2kHzと、上記2つの谷の中間周波数である。

最近は"モノよりコト"という時代だそうである。
機材の買い換えではなく、イコライジングで音をまとめてゆく、というのが現代的な、いや、これからのオーディオなのかもしれない。
こういうのはいくら金を払っても理屈をこねても本を読んでも習得できないし、実際、地道に経験を積み上げてゆかないとうまくいかない。
楽器の練習と同じだ。

音がこもっていると感じるときは、高音が足りないのではなく、低音や中低音が過多であり、高音を覆い隠してしまっている、つまり高音がマスキングされて聴きづらくなってしまっていると考えた方がコントロールしやすい。
低音と高音が強調されているいわゆるドンシャリは、程度にもよるが基本的に悪い状態ではない。
イコライジングの入門としてはドンシャリから始めるのがいいかもしれないとも思っている。
低音をカットするのではなく、最低域や中低域をややカットすると低音の勢いはそのままに"ドン"と鈍く詰まった感じがなくなりすっきりする。
この場合、本来の低音が最低域や中低域によってマスキングされていたのである。
また、シャリついた高音は、PEQを最低2素子使って解決する。
1つは狭帯域にしてピンポイントでピークを潰す。
もう一つは広帯域にして高域全体のエネルギー量を調整するのに使う。
ピークにマスキングされ、本来の高域のエネルギーが不足している場合があるのでそれに対応するためだ。

また、機材から発生するノイズや部屋の外から聞こえてくる環境音もマスキングの一種であると拡大解釈してとらえることができる。
さらには、録音状態が悪いというのも、帯域バランスの崩れが原因でマスキングが発生し、それ故に低評価になっているものも多いと思う。

"マスキングされている音がない音"を作り出すこと、これがオーディオの極意である。