2025/09/07

Behringer A800



で、夏休み大作戦、結局どうなのよってことだが、いやぁ、やってみるもんだね、これがまた素晴らしい音になった。
A500からA800になって音質が改善されたことは知っていたが、全体の音のクオリティが段違いに向上した。
明らかに見通しが良くなったというか、より鮮明になった。

オートGEQの作業後、低域のレベル調整を聴感でやり直し、PEQを8素子使って全体をちょいちょい補正して整えた。
薄かった低音が息を吹き返し、ビシッとしまっていて、それでいてヘビー級のパンチ力。
音響空間は澄み渡り、そして何より全ての音の実在感が凄い。
こうして微細な音も漏らさず再現し、これぞ7ウェイマルチアンプの本領発揮という感じになった。
オーケストラは時としてこのモニタースピーカーを巨大な野獣に変貌させ、狂喜乱舞である。

A800、なかなかいいアンプかもしれない。
そこそこ発熱するし、音に変なクセがある訳でもなく、アナログアンプと変わらない。
初めてのデジアンなので冷徹な奴かもしんないと少し身構えていたが、これなら仲良くやれそうだ。




このDIYホーンシステムは、黄色いホーンシステムや改造ALTECシステムとは毛色の異なるシステムなんだ。
ホーンは自ら設計し製作しているからね。
コンプレッションドライバー用の定指向性大型ホーンの設計と製作はオーディオ技術において最難関であり、良識あるマニアならパスする案件であろう。

その昔、JBL Professionalのスピーカーユニット群が出現し始めたころ、その中に2397ホーンがあった。
スロートは別売だったので、えっへっへこれなら作れるぜ、って思ったわけだ。
これがホーンの自作を考えた最初だった。
その後、2360Aを入手して定指向性大型ホーンの世界を知り、コイツはとんでもねぇと仰天、それから使いこなしの難しさを通じて奥深さを知り、魅力というか魔力にとりつかれた。
で、それで満足しておればよいものの、ホーンの自作の夢は捨てきれない。
作ること自体はさておき、苦労して作ったとしてもそれでいい音を得られるかどうかはかなり怪しい。
というかほとんど不可能であろうということは重々承知していたのだが、それでも手を出したわけだ。

DIYホーンシステムの2451H用の大型ホーンを製作しそれを最初に聴いた時、おっ、これは失敗ではないかもしれないと思った。
ホーンの周囲をゆっくり移動したり、高さを少しずつずらして聴いたりして音の変化を注意深く観察した。
ダメなホーンは、これをやればすぐ分かる。
この指向性の問題は、位相という時間要素と同じぐらい音を気持ち悪くする要素なんだ。
まあ、プロオーディオの歴史の中でも多くの優秀な技術者が力を注いできた重要な問題の一つだからね。
話を戻すと、そうした恐れていた変な感じはしないので、次いで測定してみると、典型的な定指向性ホーンの周波数特性、それもとても美しいカーブを確認できたので心底驚いた。
これは奇跡だと思った。

"2397ホーン自作のたくらみ"以来の情熱が溜まりにたまって昇華し、あとは知恵と力技で虚仮の一念岩をも通す、そういう長い長い物語が今回の音に結実した訳だ。
ホント、やってみるもんだね。



2025/09/03

Behringer A800



1オクターブあたり1dB減衰するということは、20Hzから20kHzの10オクターブで10dBも減衰するわけで、以前からこれは減衰量が多すぎると思い避けてきた。
普通の部屋の場合、どうだろう、その半分の5dBからせいぜい7dB程度ではなかろうか。
しかし気持ちに余裕が出てきたというか、10dB落ちの音も一度は聴いてみようではないかと、やってみた訳である。
ところが、DEQ2496のオートGEQのグラフ画面を見ていると、5dB程度の傾斜にしか見えない。
ちなみにDEQ2496は最近購入したものであり、V3.0である。
最初のキャリブレーションの傾斜度合はPEQで調整してゆく段階でどうでもよくなるのだが、このDEQ2496のROOM CORR.の素のバランスは悪くない。
フツーの音量だと低域が薄く感じるが、比較的大音量で聴いてみるとこれは実にモニターサウンドである。

そうそう、以前紹介したハーマンのターゲットカーブ、その後、このAESの論文を読み、どういう話から出てきたカーブなのかが分かった。
この論文でも破線が邪魔して不鮮明だったので、図22(d)の破線を消してみた。
特徴的なのは低音をクリアにするために150Hzから300Hzあたりがしっかりカットされている点である。
全体的なバランスとしては7dB落ちぐらいではないか。
65Hzあたりもちょいとブーストしてあるが、これなんか全体の音の太さが増すんだよね、ほほえまし。
このカーブから色々なヒントをもらったし、それまでの自分のカーブもそう悪くないことが分かった。
それから、PEQで10素子を使うような細かな調整もプロの世界では当たり前なのかもしれない。
まあ、プロの世界云々はさておき、研鑽を積み重ね各周波数と音の変化の関係をつかんでゆく楽しさはEQの世界の醍醐味だね。


この論文にはJBL ProfessionalのM2も出てくるので、この"The all listeners preference curve"が製品に採用されているのかと思いきや、例えば、同社の308P MK2の"Estimated In-Room Response"のグラフを見てみると、単純な5dB落ちという感じだ。
もっとも、300Hz以下は室内の反射とか残響とか、要するに直接音以外の要素が加わるので、低域全体のレスポンス、そしてこの150Hzから300Hzのあたりがどうなるのかは部屋による。
事件は現場で起きている訳だから製品レベルであんまり厳密に追っかけても無駄ということだ。
とは言え、308P MK2について"このスピーカーを聴くのはなんと楽しいことでしょう"とamirm氏は感想を述べており、やはり、周波数レスポンスと指向性の精密な制御ができているスピーカーというのは素晴らしいということだ。