2025/09/21

1975



当時のことを思い出すのは楽しいものだ。
そう言えば、大口径ボイスコイルのスピーカーユニットもあったなぁ。
ローディのHS500のウーファーは20cm口径なのにボイスコイル径は10cmもあった。
単品で販売されていたが、20cmとしてはちと高い、そしてちょっとダサいのでなんとなく敬遠気味だった。
それからテクニクスのSB1000、30cmウーファーでボイスコイル径は10cmだった。
これは大したことないか。
あと、ソニーのSS8150だ。
こいつも30cmウーファーなんだけどボイスコイル径はなんと16㎝もあったのでおじゃる。
まあ、ボイスコイル径がデカいのは男のロマンなんだけど、高域側の特性は当然よろしくなくなる。
HS500はホーンツィーターとの2ウェイ、SB1000とSS8150のミッドはドームの4cmぐらいと、どうなんだろうねぇという感じだ。
ローディは1975年にメタルコーンのHS400で仕切り直し、テクニクスはSB7000、ソニーはSS-G7に変った訳だけど、やっぱりというか何というか。

当時のオーディオを取り巻く状況も書いておこう。
1975年当時は音楽事情も活気があり、オーディオもその波に乗った。
不思議なことに音楽が身近に感じられたというか、変な言い方かもしれないが多くの人が音楽に支えられていたような、そんな感じがしてた。
それから、一億総中流意識というように所得も上昇し、生活に余裕ができて新しいことを始めたいという機運があった。
そしてそこそこの値段で贅沢な感じの物を買ってみたいという要求があって、そこにオーディオはぴったりはまり込んだわけだ。
こういう訳で当時のオーディオは絶好の社会的環境に恵まれ猛烈な勢いを得る。
それはまさに燎原の火のごとくである。
1975年から50年もたった訳だが、製品の記憶はそんなに昔のこととは思えない。
しかし、こうしたオーディオを取巻く状況というのは、ずいぶん変わったな。

ところで、工夫すると音が変わる、これは興味深いことである、というのがオーディオの原点だと思う。
1975年のオーディオは、こういう工夫する心からはだいぶ離れた感じになっていたな。
機材と機材の組み合わせ方、それこそがオーディオって感じになっていった。
そしてグレードアップという雑誌の掛け声の下で着せ替えオーディオが奨励されていたな。
その後遺症はネット時代になっても残っていて毎週のように機材を交換する評論家気取りの変なのがいたが、あれは何だったんだろう。
一方、スピーカーの自作派は、スピーカーユニットという部品の組み合わせから音を作るわけで、昔の秋葉原の薄暗がりの世界を生きているように思う。
だから、着せ替えオーディオ派と自作スピーカー派は、見ているオーディオの景色が違うんじゃないかと、以前から気にはなっていた。
こういうオーディオ世界観の分岐点がはっきりしたのが1975年だったということで、これを今回の結論とさせていただこう。



2025/09/19

1975



それからセパレートアンプも凄かったな。
ヤマハC1なんか、もはや自作アンプではどうしようもない領域に突入していた。
それからラックスM6000、驚愕のデカさで度肝を抜かれたな。

こんなふうに1975年を振り返ってみると結構な機種が揃っていたことが分かる。
技術的には完成の域にあり、性能も十分以上であった。
高度成長期の国内の大手電気メーカーが頑張っていたから品質も確かだ。
製品の背面に貼られたPASSEDのシールがその自信をあらわしていた。

今度は、その後の展開から1975年を考えてみよう。
1975年以降の数年間はその市場規模がどんどん拡大するが、オーディオ製品全体としては特徴的な変化が現れる。
マンネリ化、である。
ごく一部を除き1975年以前の製品の焼き直しとパクリの機種ばかりになってゆくのである。
新たな発想は出尽くしており、価格は上昇すれど中身は変わらず。
それを何とかしようと新機能や新技術が喧伝されていたが、オーディオ的な斬新さを感じさせるものは無かったな。
ちなみにごく一部の例としては1976年にデビューしたマイクロのDDX-1000であり、それ以外はちょっと思いつかない。

1975年がジュラ紀最盛期とするならば、滅びの白亜紀到来はCD出現で始まる。
CD時代に入り影響を受けたのはアンプかな。
トーンコントロールが無いアンプが出現した。
元はと言えばRIAAカーブに準拠していないレコードに対応するために、1kHzを中心にした低音と高音のトーンコントロールがアンプに備わっていた。
CD時代になるとその必要性は失われた。
しかし、本当のところはCDがもたらした劇的な音質の向上が原因じゃないかな。
それから音質の向上はスピーカーの小型化も促した。
反面、オーディオの萌え要素や操作する楽しさはかなり損なわれてしまったとも思う。

でまあ、その後はオーディオ市場は急速に縮小し、数ある趣味の中でも根暗の趣味に分類され、オーディオ製品が売れないどころか国内メーカーがどんどん倒産していった。
売るものが無くなると業界は食っていけないので、アクセサリー、ハイエンド、ビンテージの三大潮流が出現する。
しかしまあ、三大潮流は大袈裟だな、どこか滑稽で色物みたいな雰囲気もあるし。
どうなるのか分からないが、消え去った後にやっぱり小さな沼だったかということにならなければいいが。