NS10Mについてよく言われていることは、その優れた過渡特性と群遅延特性である。
優れた過渡特性は、やはりあの白いコーンのウーファーユニットがもたらすものだろうと思う。
おそらくはNS470やNS451の開発で得た経験がNS10Mで結実したのだろう。
群遅延は小容積の密閉箱であれば非常に小さくすることができる。
スピーカーのエンクロージャーの設計ソフトによってシミュレーションできるので、バスレフと密閉、容積、ダクト共振数などで群遅延特性がどのように変わるのか試してみると理解しやすい。
NS10Mは家庭内で音楽を楽しむという一般的な使用状況においては必ずしも優れたスピーカーとは言えないかもしれない。
しかし、音楽をクリアに楽しむという点ではヒントを与えてくれる。
使用しているスピーカーがなんとなくモヤつく場合には、まず、100Hz以下の低域側のレベルを下げてみよう。
-3dBではなく-6dBとか-9dBぐらい極端に。
そして、その減衰した分だけグッと音量を上げてみる。
たいてい、それでモヤつきは改善される。
モニターの音量は、細かな音まで聴き取らなければならないので大音量である。
しかも長時間の作業になるのでボイスコイルの温度上昇によるパワーコンプレッションの問題が生じる。
金属は温度が上がると電気抵抗が増えるので、ボイスコイルが熱くなると抵抗値が上がりウーファーの音量が低下してしまう。
NS10Mではそれに加え、ネットワークのコイルの過熱によるカットオフ周波数の上昇という問題点が指摘されている。
パワーコンプレッションによる低域側のレスポンスの低下は家庭内では起きないだろうが、多人数で行う試聴会の主催者になった際には気をつけたい。
瀬川冬樹氏の"JBL4350を鳴らした話"は、長時間の大音量再生により低域側のレスポンスの低下が生じ、相対的に中域がクリアに聴こえるようになったと、まあ、こんなところかもしれない。