2019/10/30

JBL 4315 Studio Monitor




ランシングヘリテッジにグレッグティンバース氏の4345についての記述があったので翻訳してみました。
ご存じのように、4345の開発責任者もグレッグ氏です。



私はこの30年前のシステムに対する関心の高さを信じることができません。(4345スレッドの多数の書き込みに対しての謝意)
4345は、主にその大きなサイズのために、全生産期間にわたりあまり商業的には成功しませんでした。
たいていの人はもっと小さなスピーカーを購入すると思いますし、低音の分解能が十分ではないという評判もありました。
この点については、エンクロージャーの容積が十分に大きくなかったからではないかと思っています。
長い間、私はこのスレッドで取り上げられているようなことについて考えていませんでしたが、何度かコメントを求められているので、ここに私の意見を書いてみましょう。

JBLの大型の4ウェイシリーズの伝統的なサウンドをお好みならば、このシステムは今でも素晴らしいパフォーマンスを発揮すると思います。
その基本設計において、良い点と悪い点があります。
良い点は、非常にダイナミックな再生を得意としており、それはどのようなタイプの競合製品とも混同されるようなものではない点です。
あまりパワーを必要としませんが、必要に応じて高出力アンプによるハイパワードライブを余裕でこなします。
問題点は、いくつかあります。
最初の問題点は、10インチユニットとHL92ホーンとの間のタイムアラインに大きなずれがあることです。
これは、両ユニット間において、軸上の周波数レスポンス、指向性パターン、そして、ドライバーブレンディングの均一性にあらわれます。
二つ目の問題点は、ウーファの高域側と10インチユニットの低域側にパッシブクロスオーバーを使用している点です。
500Hz以下で設定されたパッシブクロスオーバーは、ウーファーユニットとエンクロージャーの組み合わせによる動的インピーダンスと作用し合い、好ましくない結果をひきおこします。
その結果、100Hzぐらいに相当なゲインを与えてしまいます。
パッシブシステムからゲインが生じることは、一般的に良くないこととされています。
ハイパスフィルターの場合、動的インピーダンスの極めて大きなピーク帯域に渡りパッシブネットワークを動作させることになります。
この動的インピーダンスのピークは、ウーファーのエンクロージャー内に設けられた10インチユニットの基本共振に起因してひきおこされます。
これは、10インチユニットの端子間に生じる実電圧が理想値よりも小さいことを意味します。
さらに、当時のマーケティング担当者はバイアンプ駆動を可能とするスイッチを要求したため、ネットワーク回路がより複雑なものになってしまいました。
このスイッチには、誤った設定を行った場合でもアンプやスピーカーに損害を与えてはならないという要求があったのです。
このような小さなことが積み重なり、ウーファーに追加的な挿入損失と、ダンピングコントロールのロスをもたらしました。
上記のような問題点の指摘は非常に厳格なものであり、ご存知のとおり、4345が正常に動作しないわけではありません。

最後の4344MkIIを含む大型4ウェイシリーズの私の印象は、それらが楽々とダイナミックに鳴り、色付けが極めて小さく、生き生きと鳴るということです。
正確なステレオイメージングという点については今日の標準的なシステムに比べると少し曖昧です。
また、混変調歪みは非常に小さいのですが、4ウェイ未満のよくできたスピーカーシステムに比べるとデティールの表現で劣ります。
もっとも、このような問題を一挙に解消するようなシンプルな解決策はなく、最高の結果をもたらすような設計手法も存在しません。
スピーカーの設計は妥協の連続とも言え、4345はそういう意味において、大変よくできた妥協の産物と言えると思います。

私は、このスレッドの最初の方にある2122Hに関するコメントに気付きました。
このユニットは本当に良い音声変換器です。
これまでもそうだったし、これからもそうだと思います。
このユニットの再生音は、極めてナチュラルに聴こえます。
2123は、2122Hよりももう少し優れていると思います。
スムースさという点ではやや劣りますが、ボーカルの再現に関しては2122Hよりもよりリアルな描写を行うことができます。
どちらのユニットも数百Hzから1500Hzあたりの重要な帯域の再現能力は大変優れていると言えます。

皆さんはシステムを最大限に活用するために多くのことについて話し合い、様々なことを試してきたと思います。
私が自宅にメインシステムとしてこのスピーカーシステムを持っていたと仮定した場合、私が行うであろういくつかの対策についてお話ししましょう。
・バイアンプスイッチを取り外します。
選択したモードの状態で実配線してください。
スイッチはそれほど良くないです。
・バイアンプ駆動ができるなら、そうしてください。
2245Hと2122Hの音は驚くほど変化するはずです。
2245Hのパッシブネットワークはオマケであり、標準仕様ではないということです。
2245Hと2122Hのクロスオーバー周波数付近のレスポンスはフラットではないので、バンドパスフィルターを適切にするために、チャンネルディバイダーの出力電圧を調整する必要があります。
・ネットワークの部品を新しいものにすることは、なかなか難しいと思います。
すべてのコンデンサーはフィルムコンデンサーに交換すべきだと思いますし、可能であれば空芯コイルを使用したいと思います。
たしか、4345はタップ付きの鉄心を使っていたと思います。
空芯コイルに交換すると、インダクタンスが変化してしまうので、ネットワーク全体を再設計しなければならなくなります。
あなたがネットワークに十分に精通していない限り、コイルに関してはそのままにしておくことをお勧めいたします。
・もしあなたが思い通りに改造できるなら、バッテリーバイアスドネットワークに変更すべきです。
その違いは信じられないほどです。
・リングラジエータ(2405H)は、パッシブネットワークを嫌います。
最高域における最大の改善は、2405を専用の小出力アンプで駆動することです。
必要な駆動電圧は3V乃至4V rms程度です。
2405は2.83 vで110dBを示します。
ネットワークでは、かなり減衰されて使用されています。
いずれにせよ、このような周波数帯域では実際のパワーはとても小さいのです。
アンプの電圧出力を知るだけでよく、パワーアンプの最大出力は無関係だと思ってください。
2405は約12オームで、電流をあまり必要としません。
私なら前段に二次または三次のハイパスフィルターを備えた小出力のオペアンプを使用します。
パッシブネットワークからリングラジエータ(2405H)を切り離し、2405に電流を直接送り込みます。
このため、使用するアンプのオン/オフ時においてDCの突入電流が生じないかを確認してください。
それはダイアフラムの金属疲労をひきおこします。
また、使用するアンプは、極めてローノイズのものでなければなりません。
そうしなければヒスノイズは極めて耳につくような大きな音量で再生されることになります。
以前、私は古いマランツの1030プリメインアンプで2405を駆動していたことがあります。
パワーアンプを分離することができ、そのツィーターの音はいつも素晴らしかったです。
・L型可変抵抗もそれほど難しくはありません。
好みのバランスが取れたら、抵抗の各脚部を測定し、固定抵抗に交換するのはかなり簡単です。
・多くのの写真から、スピーカーシステムがブロックなどで持ち上げられて配置されていることに気付きました。
ミッドベースのぜい肉を最小限にするために、2245を床から持ち上げることは非常に良い対策です。
将来売却することを考慮するなら、上記のような改造は可能な限り復元可能に行った方がよいと思います。

最後に、L250と4345の比較について簡単に言及します。
率直に言えば、私はL250の方が好きです。
LE14ウーファの低音の音質が好きです。
これまでもそうだったし、これからもそうでしょう。
2245は、専用のサブウーファーとして使用するのなら、これまでで最も音質の良いウーファーの一つと言えると思います。
スピード感、音程、パンチ力が見事に調和しています。
したがって、そういう観点からは、18インチの方が14インチよりも優れています。
しかし、残念なことに、18インチユニットはパッシブネットワークによる悪影響を14インチよりも受けやすいのです。
私は、L250の中域と高域の方がスムーズな音質で、ずっと見通しの良い感触を持っていますが、楽々とダイナミックなサウンドで鳴る点では4345の圧勝です。
上記の変更をすべてL250システム(UHFの独立アンプ駆動を除く)に施しましたが、その改善は非常に大きなものです。
4345についてはそのような変更をしたことはありませんが、L250よりも4345の方がこれらの変更によるメリットが大きいと思います。
もし両システムがほぼ同じレベルに調整されていたら、全体的な勝者を明確に決めるのは非常に難しいと思います。
しかし、私はより大きな可能性を持っているとして4345に傾くかもしれないと思います。

私の仕事に関心を持ってくれてありがとうございます。
私は非常に長い間私を優遇してくれた本当に素晴らしい職業に恵まれていました。
音や音楽を楽しむことは非常に個人的なことであり、あなたを幸せにすることは、他人を喜ばせるかもしれないし、そうでないかもしれないことを忘れないでください。
他人のことはほっといて、あなたが幸せで誰も傷つけないのなら、思うとおりにやってみなさい。
スピーカーシステムは虚構世界における存在ですから、解釈の余地は十分にあるということです。




I can't belive all the interest in this 30 year old system. It was never very successful during its life time primarily due to its size. Most people would get something smaller. It also had a reputation for less than detailed bass, which I have always thought was due to the enclosure not being quite large enough. I haven't thought about these things in years but since I have received a few requests for comments - here goes.

 The system was and probably still is a stellar performer if you like the inherent sound of the traditional big JBL 4-ways. There is good news and bad news in the basic design. Good in that they are dynamic as hell and never get confused with intermodulation products of any type. They don't take much power to run and can swallow up a really big amp should you wish to do so. The weak areas of that type of design are several. First, there is a large time off-set between the 10" driver and the HL92 horn. This shows up in both the on-axis response, the directivity pattern and the homogeneity of the driver blending. The second problem is the use of a passive crossover between the top of the woofer and the bottom of the 10". Passive crossovers set to frequencies below about 500 Hz react badly with the motional impedance of the woofer/box combination and give substantial gain around 100 Hz. Gain out of a passive system is generally a bad thing. In the case of the High Pass, we have to work the passive network through a really large motional impedance peak resulting from the 10" fundamental resonance in the sub enclosure. This means that the actual voltage drive that occurs at the terminals of the 10" is less than ideal. There was the added complexity that the Marketing folks of that time required switchable bi-amp capabilities in which the incorrect setting of the switch was not allowed to hurt anything. These little things all add up to additional insertion loss for the woofer and loss of damping control. Now all of this sounds pertty bleak, but as you have no doubt noticed, no one told the 4345 that it can't work correctly so it does anyway.

 My sonic memory of the big 4 ways, the last of which was the 4344MkII, is that they are effortless, dynamic, pretty low in coloration and really "alive". They are a little vague by today's standards in terms of precise imaging and although they are very low in intermodulation effects, they are not as detailed as really good lesser way designs. There is no simple answer to any of this and no one design statement that is best. Everything is a series of compromises, and the 4345 has a very good set of complimentary compromises.

 I noticed a comment earlier in this string regarding the 2122H. It is a really good voice transducer. It always has been and always will be. Things just sound really natural through it. Another one that might be slightly better is the 2123. It is a little less smooth but perhaps a little more realistic on voice. Either are really good for that critical range from a few hundred Hz to about 1500 Hz.

 I imagine you guys have talked about and tried lots of things to get the most out of the system. I will mention a few things that I would do if I had a pair at home for my primary system.
•Get rid of the bi-amp switch. Hardwire it in which ever mode you want it. The switch is not that great.
•If you can work out bi-amping do so. The difference in the 2245H and 2122H will be amazing. The crossover will have to be non standard. Neither driver is flat around crossover so the voltage drives will need to be adjusted to get proper acoustic bandpasses.
•The network components should be updated and this isn't easy. All the capacitors should be polypropylene and you would want to use air core inductors where ever possible. I believe the 4345 used some tapped iron cores. Those are hard to replace with aircores because the surrounding network topology would have to change and all of the values have to be re-engineered. I would suggest leaving them alone unless you are really good at this stuff.
•If you can swing it, go to a biased network. The difference is unbelievable.
•The ring radiator hates passive networks. A major improvement in the upper range would be to drive the 2405 from its own little amp. You only need 3 or 4 v rms. The 2405 does 110 dB for 2.83v. It is padded way down in the system. There is little real power at those frequencies anyway. You only need to know the voltage output of the amp, power is irrelevant. The 2405 is about 12 ohms and won't draw much current. I would use some little chip amp with a 2ond or 3rd order low level highpass in front of it. Take off the passive network to the ring and just feed it straight. Make sure the amp doesn't make a DC thump on turn on or turn off. That will fatigue the diaphragm. The amp will also have to have really low noise characteristics as any hiss will be really loud directly into the ring. I used to use an old Marantz 1030 integrated amp to run my rings. I could separate out the power amp section and the tweeters always sounded really good.
•The L-pads aren't so hot either, particularly after all of these years. Once you have your preferred balance, it is fairly easy to measure each leg of the L-pad and replace it with fixed resistors.
•I notice from many of the pictures that the system is elevated on blocks. It is very good to get the 2245 up off of the floor to minimize midbass fatness.
For resale reasons, you should be very careful about doing as much of this as possible reversibly.

 Before closing I should comment briefly about the 250 - 4345 comparison. Simply put, I prefer a 250. I like the bass quality of the LE14 woofer. Alway have and always will. The 2245 when used as a dedicated sub is one of the best sounding woofers ever. It has an amazing blend of speed, pitch and punch. So does the 14" but the 18" is better. Unfortunately the 18" dislike for passive networks hurts it more than the 14" is hurt by a passive network. I think the mid and high range on the 250 is smoother and much more open however the 4345 wins by a bunch in terms of effortless dynamic sound. I have made all of the above changes to 250 systems (except for separate amp on UHF) and the improvement is huge. I have not done so on the 4345 but I suspect that that system will benefit from theses changes more than a 250 would. If both systems were tweaked out to about the same level, I suspect it would be very hard to come up with a clear overall winner, but I think I might lean towards the 4345 as having the greater potential.

 Thank you all for the interest in my work. I must admit I have been blessed with a really nice profession that has treated me well for a very long time. Remember that sound and music enjoyment are very personal things and that what makes you happy may or may not please others. Screw them. If you are happy and no one is geting hurt then go for it. No loudspeaker system even approaches real life so there is plenty of room for interpretation.












2019/10/27

JBL 4315 Studio Monitor



4350のプロトタイプとして有名な"Texas Bookshelf"(テキサスブックシェルフ)は、1971年のAESで展示されました。
2216が2発、2130、2392と2440、2405という4ウェイ。
サイズ等はわからないので、例の魚眼レンズで撮影された画像から描き起こしてみました。




Mr. Don McRitchieと、Mr. Steve Schellは、"The History and Legacy of JBL"の38ページ右欄に以下のようにこのスピーカーシステムについて説明しています。

Market Dominance of JBL Studio Monitors

If one looks carefully at the fisheye photograph at bottom left, one can spot a huge, unique loudspeaker system con-taining two 15" bass drivers mounted along a vertical axis, with a top section containing a 12" driver, horn/lens and slot radiator.
This was a seminal prototype that laid the founda-tion for JBL’s rise to market dominance in the studio moni-tor industry by the mid 70s.

The prototype was the brainchild of Walter Dick, the head of JBL’s Transducer Engineering Department.
This depart-ment title was a bit of a misnomer, since it had responsibil-ity for engineering all aspects of loudspeaker systems, both professional and consumer, including transducers, networks, enclosures, and overall system parameters.
In 1971, Walter decided that JBL needed a showcase to present at the up-coming Audio Engineering Society (AES) convention.
He set the parameters for a professional loudspeaker with an unparalleled combination of output and accuracy.

The system illustrated above utilized two 2216 bass drivers, which were the professional equivalents of the LE15B de-veloped for the L200.
The mid-bass unit was a 2130, while the mid- and high-frequency drivers were the 2440 and 2405, respectively.
The system was bi-amplified with sepa-rate amplifiers for the bass section and mid/high module and was affectionately nicknamed the “Texas Bookshelf.”

As intended, the system generated a high level of attention at the AES convention.
Walter Dick recognized that there was enough interest to develop the prototype into a production model.
While the prototype was not targeted at any specific market, he realized that a studio monitor developed from that concept made the most sense. As previously mentioned, rock music was at the center of the popular culture in the 1970s.
This genre placed ever increasing demands on playback levels for which the still widely-used Altec 604, and even the JBL 4320, were inadequate.

Google Translateで翻訳してください。




1971年のAESの大会に展示した時点では、このシステムは特定の使用目的を持っていませんでした。
しかし、このシステムはAESで注目を集めたため、これをベースにしてスタジオモニターである4350が開発されることになります。
スピーカーシステムの開発は、グレッグティンバーズ氏がインタビューで答えているように、技術者主導で行われているわけではないそうです。
"誰かのアイディア"をみんなで検討することからスピーカーシステムの開発が始まり、そのアイディアというのは、おそらく企業戦略やマーケティングや販売店で聞いた顧客の要望のようなものだと思います。

テキサスブックシェルフは、4320や604のような貧弱な低音の時代から新たな力強い低音の時代の到来を告げるためのデモ用であったため、低音を強調したシステム構成を持っています。
12インチや15インチのコーン型ユニットは、迫力と厚みのある音、すなわち"ウーファーの音"をそのキャラクターとして持っています。
この"ウーファーの音"は、8インチや10インチからは聴くことができません。
テキサスブックシェルフは新たな低音の時代をアピールする目的があったので、10インチではなく12インチのミッドベースが選ばれているように思います。

同じ4ウェイ構成ながら、すべての帯域に適切なユニットを分配した改造ALTECシステムに比べると、この4350のプロトタイプは低音を偏重した構成であることがよくわかります。
12インチのミッドベースは、"ウーファーの音"を感じされるので、このような構成の15インチシステムのミッドベースとしてはあまり適切ではありません。
そういう観点から同程度の低音再生能力を持つシステムで10インチのミッドベースを備えるモニタースピーカーを眺めてみると、4345モニターやWest Lake AudioのBBSM-15の意図がわかると思います。




West Lake Audio BBSM-15