2004/09/11

セブンのお話 11話 ファーストインプレッション(3)

 

1万kmほど走ったので走りの印象を750iLと対比しながら書いてみようと思います。下の画像は2013年1月ごろに富士山の水ヶ塚駐車場で撮影しました。




750iLのサスペンションは基本的に柔らかめです。リバウンド側のストロークを多めにとって姿勢変化を抑えているかのような印象です。
さらに車高やドライバーズシートの着座位置が低めなので車体と一体感のある乗り心地を味わえました。

これに対し760Liのサスペンションは硬めです。このようなセッティングならば750iLよりもスポーティな雰囲気になるところですが、車高や着座位置が高めであるためスポーティな印象は薄いのです。
このため760Liでは、ドライバーズシートに乗り込んだ直後には大型セダンだなぁという印象を持ちますが、街乗りなどでは期待しているような鷹揚な乗り心地は味わえないというチグハグな印象になってしまいます。

もちろん高速道路等で速度が上がってくるとこのチグハグな印象はなくなってきます。
750iLよりもサスペンションの設定速度域が高く、そうした場面でのスタビリティを重視して760Liが開発されたことが理解できます。
さらに760LiではARS(アクティブ・ロール・スタビライザー)を搭載しており、峠道等のロールもよく抑え込まれています。
これはスタビライザーを中央付近で分割し、その間を油圧スイベルモーターで接続した構造を備え、車体がロールしようとすると、この油圧スイベルモーターによってロールとは逆方向へスタビライザーを捻ってロールを抑える(CG誌2002年10月号テクニカルレポートより)というものだそうです。
実際にワインディングロードを駆け抜けてみると非常にスポーティです。
ロールによるレスポンスの遅れが小さく、アクセルペダルの踏み込み量に対して車体を前に押出す力がリニアに増大します。
750iLでも峠道は楽しめましたが、760Liは6Lエンジンの猛烈なトルクも相まってかなり楽しいです。

そのエンジンのフィーリングですが、これは750iLの夢のようなスムーズさに比べると760Liのエンジンはちょっと荒い感じがします。
CG誌でも同じような指摘がありました。
750iLのM73B54はV12というエンジン形式に対する期待を裏切りません。
一方、760LiのN73B60は戦闘的な雰囲気がそこはかとなく漂い、滑らかなフィーリングは二の次としているような印象です。




760LiのN73B60はALPINA B12 6.0とほぼ同等の性能です。
また、ロールスロイスファントムに搭載されているエンジンはN73B60のボアストロークを拡大し6749ccとしたN73B67です。
B12 6.0やファントムのエンジンフィーリングはどんなものなのか想像もつきませんが、V12と一口に言っても様々な個性があるのではなかろうかと思っています。




各車のエンジンのスペックを比較してみるとこんな感じです。

M73B54(750iL E38)
5379cc
SOHC2valves
85.0x79.0
10.0:1
325ps/5000
49.9kgm/3900rpm

ALPINA B12 6.0
5980cc
SOHC2valves
86.4x85.0
10.25:1
440ps/5400rpm
61.2kgm/4200rpm

N73B60(760Li E66)
DOHC4valves
5972cc
89.0x80.0
11.3:1
445ps/6000rpm
61.2kgm/3950rpm

N73B67(Rolls-Royce Phantom)
DOHC4valves
6749cc
92.0x84.6mm
11.0:1
460ps/5350rpm
73.4kgm/3500rpm


総じて750iLは女性的、760Liは男性的な性質を感じます。
どちらも個性的であり素晴らしい車だと思います。

(2013/9/25)




2004/09/10

セブンのお話 10話 ファーストインプレッション(2)



760Liの引き渡しを受けたとき、「最初はアクセルもブレーキもそっと操作してください。凄いですから。」と言われました。少し慣れてきたので60km/hぐらいからアクセルペダルを少し踏み込んでみました。猛烈というより強烈な加速。750iLとは比較になりません。助手席にいた妻と顔を見合わせてしまいました。760Liの0-100km/hは5.6秒なので、750iLの6.6秒よりも1秒速いだけですが、加速感はそれ以上の差を感じます。E66 760Liがデビューした2002年当時のスポーツカーと比較してみると…

BMW 760Li
V型12気筒DOHC4バルブ
最高出力  445ps/6000rpm
最大トルク 61.2kg-m/3950rpm
排気量   5972cc

フェラーリ 550 マラネロ
V型12気筒DOHC4バルブ
最高出力  485ps/7000rpm
最大トルク 57.0kgm/5000rpm
排気量   5473cc

ランボルギーニ ムルシエラゴ
V型12気筒DOHC4バルブ
最高出力  580ps/7500rpm
最大トルク 66.3kgm/5400rpm
排気量   6193cc

ポルシェ 911 ターボ
水冷水平対向6気筒DOHC4バルブツインターボ
最高出力  420ps/5700rpm
最大トルク 57.1kgm/2700~4600rpm
排気量   3600cc


Lamborghini Murcielago


さらに過去のスーパーカーと比べてみると…

フェラーリ F40
V型8気筒DOHC4バルブツインターボ
最高出力  478ps(352kW)/7000rpm
最大トルク 58.8kgm/4000rpm
排気量   2936cc

ポルシェ 959
水冷(ヘッドのみ)水平対向6気筒DOHC4バルブツインターボ
最高出力  450ps/6500rpm
最大トルク 51kgm/5500rpm
排気量   2847cc


Ferrari F40


もちろん上記のスポーツカーの車両重量は軽く、0-100km/hのような測定値では直接比較できるようなものではありません。しかし、セダンとしてのフラットなトルク特性(760Liは1500~6000rpmの範囲で51kg-m以上)を実現しつつ、スーパーカーのエンジンと比肩しうるピークパワーを発生するというのは立派です。

(2012/12/24)




 

2004/09/09

セブンのお話 09話 ファーストインプレッション(1)



2012年12月20日、E66 760Liが大阪からやってきました。Goo-netの中古車検索で見つけ電話で発注したので実物を見るのは納車のときが初めてです。もっともBMW認定中古車であるため、近所のBMWディーラーで1年間(20000km以内)の保証を受けられます。認定中古車は割高だと言われていますが、今回の760Liはかなり安かったように思います。バス通りでキャリアカーから降ろされた760Liの外観はなかなか迫力がありました。750iLよりもかなり大きく見えます。サイズ等を比べてみると以下のとおりです。

760Li 全長5170mm、全幅1900mm、全高1490mm、ホイールベース3130mm、車両重量2220kg
750iL 全長5125mm、全幅1860mm、全高1425mm、ホイールベース3070mm、車両重量2020kg

750iLよりも大きく見えるのは全高が高いせいだと思います。もっとも750iLの全高1425mmというサイズはこの手のセダンでは低い方であり、ポルシェパナメーラの1420mm、マセラティのクアトロポルテの1430mmと同等です。


Porsche Panamera


Maserati Quattroporte

760Liの緑色はダークグリーンメタリック。750iLの緑色はオックスフォードグリーン。760Liの方が暗い色であり青味がかっています。また、この車はオプションのクライメートコンフォートガラス(赤外線反射合わせガラス)を装備しておりガラス全面が薄暗い感じです。このため車体色を含めた全体の印象が落ち着いた雰囲気、を若干通り越しややあやしい雰囲気?になっています。

ドアは比較的軽く開きます。750iLではドアが重く母などは車体が傾いていると開けることができないこともありました。合わせガラスですしドア自体も異常にがっちりした造りでした。おそらく760Liのドアは750iLのドアを上回る重さになってしまったため、BMWは軽く開閉できる機構を組み込んだのでしょう。なお、この4枚の全てのドアは任意の位置で止まる無段階ドアストッパーを備え、また最後の6mmを電動で引き込むソフトクローズドアになっています。また、750iLではトランクリッドがソフトクローズタイプでしたが、760Liでは電動開閉式になりました。




車内に入りドライバーズシートに座ると、車内の雰囲気は750iLよりもうんと高級感があります。インテリアは隅々まで丁寧に造り込まれており、モダン調なのに重厚な雰囲気。光沢のあるウォールナットのウッドトリムにごく小さな象嵌が施されているのが気に入りました。この車はオプションのベンチレーションシート(全席)が装着されており、このため表皮はナツカレザー(色はナチュラルブラウン/U6NB)になっています。シートは張りがあり、すわり心地はやや固め。それからシートヒーターは座面だけではなく背もたれの部分も暖かくなります。前席ではこの座面と背もたれの温度配分をiDriveにより調整することさえできます。ステアリングヒーターも装着されています。

E65、E66がデビューした当時、iDriveをはじめとする操作系に対し、車雑誌の評論家諸氏は使いにくいと書き立てました。しかし、これは針小棒大ではないかと。実際に使用してみると使いやすく問題があるとは思えません。それに現在ではiDriveのような操作系は一般的になっています。

(2012/12/24)






 

2004/09/08

セブンのお話 08話 緑色かどうかは重要なのか?

 

次の車を何にしようかと考えるのは楽しいことです。750iLが素晴らしかったのですっかり中古外車のファンに、というか、車の雑誌を読まないせいか最近の国産車は名前さえ知らないですし、さらに新車価格は妙に高くなっていて手が届きません。という訳で国産の新車は考えませんでした。

7年~8年落ちで値頃感のあるBMWの7シリーズ(E65、E66)、ジャガーのXJ(X350)、メルセデスベンツのCLS(W219)などが候補です。CLSはジャガー風味でスタイルがいいです。750iL(E38)もジャガーを参考にデザインしたそうなのでこういうのが好みなのかもしれません。


Jaguar XJ


Mercedes Benz CLS

7シリーズでは750i(E65)を考えていました。搭載している4798ccのV8エンジン(N62B48B)はバルブトロニック(吸気バルブのリフト量を可変させてスロットルバタフライバルブの代わりをさせる)、吸排気可変バルブタイミング(ダブルVANOSと呼ばれている)、筒内への燃料の直接噴射、吸気マニフォールド長の連続可変システムなどを備えており、ベースになったN62B44は2002年、4L以上の部門でのインターナショナルエンジンオブザイヤーを受賞しています。750iと今まで乗っていた750iLを比較すると

750i  4798cc、367ps/6300rpm、50.0kg-m/3400rpm、車両重量2040kg、ホイールベース2990mm
750iL 5379cc、325ps/5000rpm、49.9kg-m/3900rpm、車両重量2020kg、ホイールベース3070mm

う~ん、新しいV8の方が排気量が小さいのにパワーがあります。一方、車両重量は同じぐらい。ちなみに750iの0-100km/hのメーカー発表値は5.9秒、750iLは6.6秒。トランスミッションは、750iが6速、750iLは5速であるため、おそらく2速までしか使わないこの測定項目ならクロスしている方が有利かと。もっとも、最高出力は750iの方が高回転域で発生しているため、たとえば5000rpmで比較すると似たような馬力値になるのではないかと。まあ、実際の使用状況においてはそんなに差はないのではないかと…  こんな具合にいろいろと考えてはみるもののV8には今ひとつ乗る気になりません。


BMW 750i

上記の750iのほかに760Li(E66)も考えていました。750iLの5400cc V12は大きなバルブを大きく開けて、という古い設計のエンジンでしたが、この760Liの6000cc V12は、DOHC4バルブ、バルブトロニック、ダブルVANOS、筒内への燃料の直接噴射を行う現代的エンジン。魅力的です。しかし、760Liは中古車の台数が非常に少ないのです。安価で程度の良いものは難しいだろうと諦めていました。

さらに760Liにはもうひとつ問題が。社用車が多いためか車体色は黒や銀がほとんどです。内装もブラックレザーばかりなり。妻や母は緑(ディープグリーンメタリック)か赤(バーベラレッド)がいいとのたまう。緑色ならあるかもしれないけど、赤い760Liって… さらに、内装色はベージュがいいとのこと。それからシートヒーターがないとダメなんだそうで…


BMW 760Li

あれこれ考えるのがめんどうになってきて750iに決めてしまおうかなどと思っていたところ、ヨハネスさんが新車同様のダブルシックスを入手されたことを聞きます。うん、やっぱりV12がいい、とネットで全国を対象に検索。結局、大阪のBMWディーラーからBMW認定中古車の760Li(E66後期型)を購入しました。初度登録2005年11月、走行43400km、右ハンドル、ディーラー車、車検2年付きというもの。決定打は車体色が緑色で内装色がナチュラルブラウンだったこと。やれやれです。ちなみに車両価格は280万円(整備費、保証込み)、支払総額は311万円でした。

(2012/12/20)








2004/09/07

セブンのお話 07話 君のこと忘れない



2012年12月19日、750iLとさよならの時がきました。2005年11月25日の納車から7年、オドメーターは94000kmとなりました。購入時は45000kmでしたから49000km走ったことになります。購入当初は3年程度もってくれればいいと思っていたので7年間も乗るとは思いませんでした。車検1年付きを3回車検に通し、その3回目の車検が切れるのが12月20日。その前日まで乗っていました。




7年間、エンジン、トランスミッション、オートレベライザーという主要部分にトラブルはありませんでした。エンジンは乗れば乗るほどあたりがついていったような気がします。1995年製なので17年も経っているのにいまだに全体がしっかりしています。
3回目の車検では走行に支障がない箇所(天井の布張りの剥がれ等)については手を入れず最低限の費用で済ませました。車検の際にバッテリーも交換したほうが良いとアドバイスされたのですが、750iLは大型のバッテリーを2個も搭載しており交換費用も馬鹿にならないのでそのままにしておきました。結局、バッテリーはもちました。
左側のストップランプが点灯したりしなかったりというクセがあり、車検の際に修理してもらったのですが、その後、すぐに再発しました。BMWは修理しても直らないというのは本当です。




最後の1年、ウォッシャー液が出なくなったりしましたがこれも修理せず。ポンプの作動音はするのでおそらくパイプかタンクに穴があいたのでしょう。ステアリングオイルの漏れも持病です。対処法はオイルを注ぎ足すだけ。そのほか助手席と右後席のドアロックが時々作動不良になりました。これもそのまま。オイル交換は車検ごと。こんな具合ですからメンテナンス費用はほとんどかかりませんでした。
なお、無理な運転はしていません。据え切り、フルロックは厳禁、暖機は十分に行っていました。急発進など駆動系に過大な負担がかかるようなこともしていません。




車を停めていると年配の方から話しかけられることが結構ありました。そのときに必ず話題になるのが燃費のこと。オンボードコンピューターによると49000kmの平均燃費は7.3km/L(カタログ値6.4km/L)でした。以前乗っていた日産セフィーロ(750iLと同じ95年製のV6 1995cc)の燃費が10km/L(カタログ値11.6km/L)。49000kmを走るのに必要な燃料費を750iLとセフィーロで比較してみると、750iLが104万410円(ハイオク155円/L)、セフィーロが71万500円(レギュラー145円/L)。差額は33万円、7年間だと毎月3900円ぐらい。
平均車速は37.3km/hでした。都心の渋滞を這いずり回ることが多いのでこんなものでしょうか。平均車速で49000kmを割ってみると1314時間乗っていたことが分かります。日数にすると55日間。




高速を流していると本当に気持ちがいいです。V型12気筒の緻密な感触とEDC(電子制御ダンパー)よる乗り心地に陶然としてしまいます。一方、峠道も実に楽しい。軽快にステップを踏むようにワインディングロードを駆け抜けます。カーグラフィック誌の1995年9月号の750iLのインプレッション記事には、「飛ばすと高まる一体感の不思議」としてこんなことが書いてあります。「たとえば交通量の少ない夜の首都高速を走るだけでも、750iLがただのプレスティッジサルーンとはわけが違うことがよくわかる。本来遠く離れた位置で路面を蹴たてているはずの後輪が、あたかも背中のすぐ後ろでグリップしているように感じられるのだ。しかも前述したようにエンジンとスロットルペダルの緊密な関係はいついかなる時も失われないから、まるでふたまわりも小さい車を操っているかの如き一体感とともに、自信を持ってコーナーに飛び込んでいける。しかも飛ばせば飛ばすほどこの一体感が高まっていくから不思議だ。」多少大袈裟ですが、750iLの特長をうまく表現できていると思います。この記事に付け加えるとするならば、それはふたまわりも小さい車では到底望めない重厚な乗り味を持っていることと、BMWのフラッグシップならではの精密なハンドリングを楽しめるということでしょう。

流していても飛ばしていても面白い、というわけで750iLは素晴らしい車でした。メンテナンスをほとんどしなかったのでマニアとはとても言えませんが、車道楽の楽しさがちょっぴり分かったような気がしました。

(2012/12/19)





2004/09/06

セブンのお話 06話 BMW V12エンジンの血統

 

乗っている750iLの形式はE38です。この12気筒エンジンについて調べてみました。E38のエンジンはM73と呼ばれています。1994年から製造されており、ボアストロークが85mmX79mm、気筒当たり448.25ccの5379cc。SOHC2バルブ、圧縮比10:1、240kW(326PS)5000rpm、490Nm(50mkg)3900rpm。このM73は先代E32の12気筒エンジンであるM70エンジン(4988cc、ボアストローク84mmX75mm)を拡大し圧縮比8.8:1を高めたもの。


M73

WikiによるとM70を搭載したE32の750i/iLは第二次大戦後のドイツ車で初のV型12気筒エンジン搭載車だそうです。そしてM70は1987年から1994年まで製造されています。1989年からは8シリーズの850iにも搭載されます。


M8

さらに1990年にはM70をベースにそのスポーツバージョンであるS70/1が開発され、M8プロトタイプに搭載されます。このS70/1の詳細なスペックは公表されていませんが、排気量は約6Lに拡大され、410kW(558PS)という高出力でした。4バルブだったのか、DOHCだったのかは不明です。このM8は1台のみが製作されただけでお蔵入りとなりますが、エンジンはディチューンされS70(5576cc、86mmX80mm、381ps、56.1mkg)として850csiに搭載されることになります。850csiは1992年秋のパリショーで発表されています。


マクラーレンF1

S70/1はS70/2に発展し、あのマクラーレンF1に搭載されることになります。このS70/2は6064cc、DOHC4バルブ、Double VANOS、86mmX87mm、627PS、66.3mkgという怪物エンジンであり、もはやM70と共通するパーツは一つもありません。マクラーレンF1をレース用に再設計したマクラーレンF1GTRは1995年のルマン24時間レースで1位、3位、4位となっています。


エンゾフェラーリ

なお、フェラーリのエンゾフェラーリ(F60)のF140エンジンはこのマクラーレンF1のS70/2をターゲットとして開発されたと言われています。


BMW V12 LMR

S70/2エンジンは、さらにBMW V12 LMRに搭載され1999年のルマン24時間レースでまたもや勝者となっています。このときの2位はトヨタGT-One TS020でした。


TS020

このようにS70/2はモータースポーツ部門で成功しますが、同じくM70をルーツとするM73はどうかというと1999年度のInternational Engine of the Year(4L以上の部門)を受賞しており、1998年にはロールスロイスのシルヴァーセラフに搭載されることになります。


シルヴァーセラフ

(2012/7/1)





2004/09/05

セブンのお話 05話 車検



車検が終わりました。整備内容は、FRディスクパット交換、Fディスクローター研磨、マイクロフィルター交換などでした。それからスピードメーターの下にある液晶表示のドット抜けがひどいので修理をお願いしました。

法定費用と液晶の修理費用(3万円)も含め全部で27万7千円。外車を乗り継いでいる友人に聞いてみるとこれでフツーなのだそうです。うーむ。こういうときはロールスロイスのシルバーセラフやパークウォード、それからマクラーレンF1の遠い親戚だと思えば諦めもつく?





この1年で約8千キロを走行。トラブルと言えば高速道路の走行中に跳ね石をもらってしまいフロントガラスの補修費用が1万4千円だけです。車検までオイル交換さえもしませんでした。

それ以外には、乗り始めたころに回転を落とし気味に走っていたところ、アイドリングするとボン、ボン、と咳き込むような排気音が聞かれるようになり、これはカブっているのでは?と思って、普通に走るようにしたらこの症状はすぐに出なくなりました。なんとなく低回転時のガスが濃いように思います。オーバーヒート対策?

そのオーバーヒートは夏の渋滞に巻き込まれたときに一度だけ経験しました。車載コンピューターにより自動的に2速か3速に固定状態となりましたが、翌日エンジンをかけてみると正常に戻っていました。

平均燃費は6.7km/Lです。回転を上げて走っても変わりません。当初3kmぐらいだよ、などと脅かされていたのでホッとしてます。しかし、ハイオク指定ですし、今年(2006年)はガソリンが異常に値上がりしたため、セフィーロ(レギュラーで10km弱)に比べるとかなり割高。

なにはともあれ、大きな故障がないまま最初の1年を乗り切ることができました。




2004/09/04

セブンのお話 04話 大当たりの車

 

お世話になっている先輩に見せたところ、これからこの車で場外馬券場に乗り付けて馬券を買おう、そういうのが似合うぞとおっしゃる。そしてリアシートにお座りになると「新車みたいじゃないの」「冗談で買うなら最高の車だね」「おい、足が組めるぞ」などとおっしゃる。そのとき購入された馬券はなんと500倍だったそうで「これは幸運を呼び込む車だね」とほめられました。

と、そこまでは良かったのですが、2005年のクリスマスイブに事故まで頂戴してしまいました。免許をとって26年間無事故だったのに。事故の原因は高齢者特有のうっかり運転。

安全確認さえもお忘れになられたジイサマ運転のトヨタヴィツ号が右側の脇道から元気よく飛び出してきて渋滞に並びながら徐行、というよりほぼ停止しているような状態の750iLの右前方にぶつかりました。右フロントフェンダーをへこませ、続いてバンパー右側を打ち抜くように駆け抜けるという荒業。お一人で勝手に勝負されていたようです。こちらの損害はフロントフェンダーやバンパーの交換等で64万円。




ジイサマがいけないのは明らかなのですが、ジイサマが放った保険屋がしぶとくて弱りました。結局、ジイサマの過失95%とジイサマの攻撃機ヴィツ号の損害は負担しないという奇妙な示談となりました。あとで気づいたのですが、5%単位で過失認定できるなら1%でもいいんじゃない、と交渉を粘るべきでした。




2004/09/03

セブンのお話 03話 ファーストインプレッション

 

納車整備ではエンジンオイルやオイルフィルターの交換の他、ラジエターのチェックバルブの交換、4本のラジエターホースの交換、ヘッドライトウォッシャーパイプの交換などを行ったそうです。無料でしたが10万円程度の整備内容だそうです。エンジンの熱が凄いのでエンジンルーム内のゴム製部品の劣化が早いのだとか。それからETCユニットの取り付けもお願いしました。

購入以前は知らなかったのですが、ネットで調べてみるとセブンシリーズの故障の話がでてきます。よく壊れるのですか?とお店の方に尋ねてみると、E32は酷かったですけどE38はそんなに故障しませんよとのことでした。この話、信じたいものです・・・ ともあれ2005年11月25日にめでたく納車。

早速、ピカピカに磨き上げられた750iLでドライブしてみました。フォーンという滑らかなエンジン音で加速してゆきます。シフトショックは上り坂での発進以外にはほとんど分かりません。高速道路では信じられないぐらい安定しています。これは気持ちがいい。ちなみに100km/hは1700回転。

さらに回転を上げてゆくと本性を現します。大排気量なのにトルクで押し出すタイプではなく高回転で回りたがる。一般道でも100km/hのドイツに合わせたバルブタイミングのせいなのかな。50~60km/hからベタ踏みしてみると昔のナナハン並みの加速が味わえます。

コーナリングはフワフワ煽られることもなく路面に張り付いています。DSC(Dynamic Stability Control)はオートバイのリアブレーキを引きずるような感じでコーナー内側へ車体を引き戻すように働きます。どういう仕組みになっているんだろ?

この車、走ると面白いのですがデザインはいまいち。同世代の3シリーズ等と見分けがつかず個性が感じられません。また大排気量を誇れる時代でもないでしょう。ま、こういう地味で時代遅れの方がのんびり付き合えるかもしれません。




2004/09/02

セブンのお話 02話 みんなでお店に行こう!

 

子供まで連れて家族でぞろぞろとその店に行ってみると、ありましたね750iL。ヘコミや傷もなくとても綺麗です。リアドアのゴム製レインモールがボロボロになっている以外は外観の状態が非常に良いので驚きました。それなら車内の本皮シートはあちこち破けているのだろうと思い覗いてみると、これがまた汚れもなく素晴らしい状態。家族も感心しています。

今回は見るだけにしておこうと思っていたのですが、整備記録もしっかりしておりフルノーマルです。車検も1年ちょっと残っています。これはいいかも、と思うようになりました。このお店の在庫はBMWだらけ。整備にも自信がありそうです。

試乗です。もちろん家族も乗り込みました。わおっ、電動シート!ではないかと極めて低レベルでの感動を味わいながら発進。

240kgのエンジンが収まっているのに回頭性は良好。車も小さく感じます。助手席のお店の方は、いつまでたってもお店に戻ろうとしないので延々と試乗することになりました。そしてこの前の型(E32)の7シリーズに乗り継いでいますと嬉しそうに色々な話をしてくれました。

というわけで値切りもせずあっさり契約成立。車検まで1年あるものの走行6万5千kmのセフィーロ号は査定ゼロでした。長い間よく頑張ってくれたのでさみしい気持ちですが、でもまあいいです。同じ年式の1320万円の車が結局はこういうお値段にしかならないのですから。

こうして一生ご縁はないだろうと思っていたスーパーリムジンと付き合うことになりました。家族会議から7日目、BMWの7シリーズに興味を持って3日目のことでした。



2004/09/01

セブンのお話 01話 緑色かどうかが重要なのだ

 

初めて購入した車は95年式FFセフィーロ号。2000エクシモという安価なタイプ。これを新車から実質8年(途中渡米していたため)乗りました。かなりみすぼらしくなってしまったので、そろそろ考えたら?と家族会議が開かれ、新しい車を探すことになりました。

自動車は嫌いではないのですが、好きになるには金がいる、そんなお金があるなら他のことがしたい、と思う方です。仕方なくネットで中古車を探してみると上出来のトヨタのプロナードをあっさり発見。3000ccの大型FFセダンで本皮シートとサンルーフ付き。セフィーロと同じ銀色です。

これで決まりだねと早速ご報告。すると妻は一言「面白くない」、同居の母は「聞いたことがない車はちょっと」とにべもない。そういうことなら外車しかないな、と再びネットで調べてみるとジャガーのXJやBMWのセブンシリーズが安価であることが分かってきました。

XJはちょっと荷が重そうなのでBMWに絞ると、95年式750iL(E38)、走行4万5千km、右ハンドル、ディーラー車、緑色で本皮シートはベージュというのが目にとまりました。3mのロングホイールベース、5400ccのV型12気筒というお化け。お値段は新車価格の8分の1。



掲載されていた画像

こんなのどうだろうと750iLの画像を妻に見せると、色が素敵だと非常に興味を示します。うーむ、緑色だと「面白い車」というわけなのですか・・・ 翌日の11月3日は休日ですので、ちょっと見てみようかということになりました。母のほうは「BMWなら知っている、私も見てみたい」と言います。それから「私はジャガーに乗せてもらったことがある。ジャガーは二人乗りだから子供と私が乗れないのでダメだ」そうです。






2004/07/16

幸せの黄色いホーン 116話 GUSTAV MAHLER SYMPHONY No. 6

 

マーラーの交響曲第6番、wikiによると
"マーラーがシュペヒトに宛てた手紙には、「僕の第6は、聴く者に謎を突きつけるだろう。この謎解きには、僕の第1から第5までを受け入れ、それを完全に消化した世代だけが挑戦できるのだ」と書いている。"のだそうです。
ということで、これはマーラー自身の謎掛けなのでしょうか?
要するに6番には何か意図があると。
そこでネットで検索をかけてみるとどうやら宗教のことを扱っているという意見が多いように思います。

宗教とクラシック音楽は切っても切れない間柄ですが、残念ながら宗教のことはよく分かりません。
分からないというより、宗教的な体験をする機会がなく無縁なのでした。
唯一、結婚式のときに、生涯あなたは妻を愛しますか等々、神父さんから質問されたことがそうした体験になるかと思います。
そのときは、神さまとそんな大層な約束をしても大丈夫なのでしょうか?と神父さんに聞き返したくなりました。
もっとも信仰心のない者が突然神さまに誓いを立てたとしても相手にされていないようにも思いましたが。
アメリカにいたとき、アメリカでは離婚が多いようなのですが、結婚式のときの神さまとの約束はどうなるのでしょうか?ということを、たまに教会に行くよという人に尋ねたことがあります。
答えは、神はそれもお許しになられます、ということでした。
なるほど。

というわけで6番については、本当のところは何も分からないとは思うのですが、せっかくのマーラーさんの謎掛けなので分からないなりに考えてみました。

グスタフ・マーラーさんは1860年7月7日生まれ、1911年5月18日にお亡くなりになります。
主にオーストリアのウィーンで活躍しました。
1860年生まれですから100歳ほど年下になり、なんとなく親近感が湧きます。
100年って、区切りがいいではないですか。

6番は1904年に書き上げたそうです。
このときマーラーは44歳です。
1904年のウィーンはどんな感じだったのでしょう。
第一次世界大戦が1914年に始まったので、その10年前ということです。
wikiによると、当時、オーストリア=ハンガリー帝国では、複雑な民族問題があり、9言語を話す16の主要な民族グループ、および5つの主な宗教が混在していたそうです。
そしてサラエボ事件(1914年6月28日)が起こってしまった。

5つの宗教が混在していたことから、6番の4楽章のハンマーの打撃回数が当初5回で計画されていたことを連想します。
この5つの宗教がどの宗教なのかはwikiに表記されていないので特定できません。
一般的に宗教と言えばキリスト教、イスラム教、仏教の3つだと思います。
5大宗教ならば、さらにヒンドゥー教とユダヤ教を加えることになるのでしょう。

マーラーさんの両親はユダヤ人でした。
しかし、マーラーさんは才覚のある人なので神さまに頼らなくても大丈夫な人だったのではないかと。
とは言え、交響曲第1番の巨人は、巨漢ゴリアテだったのだろうとは思っています。
古代ユダ王国の建国の父、羊飼いの若者であるダビデが主人公というわけです。
ジャン・パウルの小説「巨人」に由来するそうですが、そうとでも言わないとまずかったのでしょう。
当時、1番は不評だったそうですが、音楽的な斬新さが原因だったというより、聴衆がユダヤ教を連想したからではなかったのかと。
マーラー自身、巨人の標題は"誤解"を生む可能性があると認めています。
そして、音楽的成功を優先させるためだったのか、2番のタイトルをキリストの"復活"にしたのもそういう影響があるのだと思っています。

ちなみに1897年、37歳のときにユダヤ教からローマカトリックに改宗しています。
この改宗はウィーン宮廷歌劇場の芸術監督になるためだったそうです。
対立するグループの一方から他方へ移るわけですから、相当困難な状況に置かれたことでしょう。
こうした場合、両グループに対する怨恨は深いものになります。

マーラーさんが、自身の信仰の対象としてキリスト教とユダヤ教をどのようにとらえていたのかは誰にも分かりません。
しかし、作曲という創作の場においては、かなり客観的に捉えていたように思えます。
創作のやり方としては、従来の考え方をベースにした創作と、従来の考え方を採用せず、他の考え方をベースにする創作の2種類があります。
マーラーの場合、キリスト教ベースの作曲を、たとえばユダヤ教ベースにするのはどうだろうかと、そんな風に考えたのではないでしょうか。
大地の歌などは、キリスト教文化でなくても他の文化でも西洋音楽の伝統に則った音楽を構築できるとする実証実験だったように思えます。
このやり方が、どんどん進んで現代音楽が生まれてゆくことになったように思えます。

6番の話に戻しましょう。
6番というとベートーヴェンの田園が有名です。
マーラーは田園が好きだったのではないでしょうか。
巨人の第4楽章と田園の第4楽章、続けて聴くと面白いです。
マーラーはこの荒れ狂うパワフルな表現を最初の大曲である巨人でやってみたかったのではなかろうか。
そして田園は標題音楽の代表格。
デリケートな宗教のことを扱うので標題を付す訳にはいかず、"謎解き"というか標題を聴衆に解読するよう求めたのではないでしょうか。
という訳でマーラーの6番は"無標題による標題音楽"に挑戦したのではないかと。


聴いてみた6番は以下の通り。
Herbert von Karajan - Berlin Philharmonic 1978
Klaus Tennstedt - London Philharmonic Orchestra 1983
Leonard Bernstein - New York Philharmonic 1967
Leonard Bernstein - Vienna Philharmonic 1988
Pierre Boulez - Vienna Philharmonic 1994
Giuseppe Sinopoli - Philharmonia Orchestra 1986
Riccardo Chailly - Amsterdam Concertgebouw Orchestra 1989
Claudio Abbado - Berlin Philharmonic 2004
Lorin Maazel - Vienna Philharmonic 1983
Saimon Rattle - City of Birmingham Orchestra 1989
Esa-Pekka Salonen - Philharmonia Orchestra 2009
Rafael Kubelik - Bavarian Radio Symphony
Georg Solti - Chicago Symphony Orchestra
Eliahu Inbal - Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt 1986
Zubin Mehta - Israel Philharmonic Orchestra 1995
Sir Jhon Barbirolli - New Philharmonia Orchestra 1967


ええっと、2楽章と3楽章の演奏の順番についてはアンダンテ-スケルツォの順が良いと思います。
だって、1楽章のあとがスケルツォというのはうっとうしいです。
各楽章のタイトルというか印象は以下の通り。

第1楽章は「宗教が持つ不寛容と排撃性。そうした宗教と対照的な人々の慈愛や家族愛。」を描いていると。
出だしの不寛容な雰囲気はマーラーらしからぬ近接戦闘状態であり、なんというか悪役の提示のような感じを受けます。
第2楽章は「原始というか原初の宗教の姿。羊の群れを美しい泉へ誘導する牛飼い。」
これをカウベル等で表現しているように思います。
マーラーさんは、夏期に作曲小屋(複数あり)にこもって作曲するわけですが、この作曲小屋のほとんどがオーストリアの美しい湖の近くにあります。
朝靄の立ちこめる湖から朝日が昇るのを見て、何を思ったのでしょうか。
第3楽章は「宗教関係者のおろかな姿。」
20世紀ですからすでに神は死んでおり、主不在の状態での他者否定と幼稚な自己完結、あとは利権がらみの腐敗が宗教関係者の間ですすんでいたのではないでしょうか。
第4楽章は「マーラーの夢の王国において裁かれるキリスト教とユダヤ教。」
本来裁かれるはずもない宗教であるが、4楽章の最初の部分は幻想的な王国の出現を感じさせます。
第1楽章や第3楽章で描かれるような2つの宗教のあり方に鉄槌(ハンマー)を下したのではないかと。

う~む、ちょっと無理があるか。
でもなぁ、当時のウィーンにおける反ユダヤ主義は相当苛烈だったのではなかろうかとも思います。
もっと広げて考えるなら、2つのハンマーは宗教と民族紛争の2つを意味していたのかもしれません。
あるいは、そうした紛争を引き起こす人々の心のありようを批判したものかもしれません。

レナード バーンスタインはアルマの回想に基づいて3度ハンマーを打たせる演奏をしていますが、3つ目はイスラム教のつもりだったのかもしれません。
バーンスタインさんはユダヤ系アメリカ人であり、めずらしくユダヤ系であることを隠さなかった人です。
この手の改変、相当な思い入れというか深い考えがなければやらないでしょう。
作曲家だもんね。

とまあ、ごちゃごちゃと書いてみましたがとりとめもない。
だいたい、今年は冥王星の画像が見られる、なんてことを楽しみにしている人間が宗教を扱っているとされる音楽を語るなんて無理があるもの。
しかし、黄色いホーンシステムとマーラーは相性がいいんだ。
そして、あれこれ考えなくても、マーラーは素晴らしいのです。(2015/5/20)








2004/07/15

幸せの黄色いホーン 115話 ダークサイド留学

 

2013年3月23日、久しぶりにヨハネスさんのダークサイドに行ってきました。この2年ぐらいの間にヨハネスさんのシステムは大幅な変更があり、これは是非学ばせてもらわなければと思っておりました。2010年12月、デジタルチャンネルディバイダーのDBX4800がダークサイドに出現。DBX4800の導入は、マルチアンプの調整の容易性(メモリーによる設定の復元容易性)と、レコードプレーヤーのゴロ等の低音成分のカットが目的だったそうです。同時にアムクロンのK1、K2によるパワーアンプ群をLAB GURUPPEN(ラブグルッペン)に変更。さらに、自作PCによるPCオーディオ(配信ソフトの再生)も開始されます。また、SCULLY(スカーリー)のカッティングレースのレストアとアンペックス440の導入と、4系統の音の入口も充実。スピーカーシステム以外、以前から継続して使用している機器はCDプレーヤーのスチューダA730だけになっていました。

ヨハネスさんのチャンネルディバイダーは長い間Urei525でした。これはシステムの肝とも言うべき機種であり、今後変更されることはなかろうと思っていました。ヨハネスさんはデジタルに対し懐疑的だったため、DBX4800の導入かなり衝撃的な事件だったのです。大規模なマルチアンプシステムの場合、信用していない機器を導入することは難しい。マルチアンプシステムで音を練り上げる作業において、そうした機器が紛れ込んでいると、音に対する疑問がその機器に集中してしまい作業が進みません。当然音もまとまらない。DBX4800の導入に踏み切ったのは、JBL DSC280による30Wの制御がうまくいったからだそうです。この最低域の設定がアナログチャンネルディバイダーでは難しかったのだそうです。

閑話休題。ヨハネスさんの玄関でベルを鳴らすと奥様が迎えてくれました。初めてお会いしたのですが大変綺麗な方!なのですよ。たじろいてしまってろくな挨拶もできない始末。それに奥様に抱っこされているワンちゃんが賢い。こやつ、おとがでるだけ氏よりもかなり礼儀正しい。ダークサイドに通されると、これから掃除をしようと掃除機を出しているヨハネスさんがおりました。お昼はM支配人のお店へ。アンティークのランプ(アンプじゃないよ)が沢山あるしゃれたお店です。これらのランプは電球式で日常の生活で使えるものです。雰囲気のある2灯タイプのものがあり買おうかと思ったのですが、片方のガラスのカバー(火屋をカバーしている)を割ってしまったそうで買えませんでした。お店のカレーとソフトクリームは大変おいしかったです。M支配人お手製のチーズケーキも。最後にフライドポテトを頂き満腹です。





オーディオの話に戻しましょう。スピーカーシステムの前に立ってみると、ノイズが非常に小さくなっており、そのノイズも肌理の細かい柔らかなものでした。音を聴かせて頂くと、これはダークサイドシステムの迫力があって厚みのある音をベースに緻密で正確な音になっていました。低域から高域まで各スピーカーユニットがシームレスでつながっており、どこかの帯域が浮き上がっているようなことがありません。中低域の厚みというか、躍動感は大したもので、フロントロードホーンのJBL 4550特有の奥のほうから音がグワッと押出されてくるエモーショナルな感じが素晴らしい。これは黄色いホーンシステムが逆立ちしてもかなわない。うむむむむ。

ラブグルッペンのパワーアンプはスピーカーユニットに過電流を流さないための保護回路があり、サブウーファーの30Wは、シングルウーファーでも大入力で破壊されないそうです。このため、片方の30Wは配線がされておらず、パッシブラジエターとして動作させているそうです。今回、その世界最大とも言えるパッシブラジエターシステムを聴くことができたのですが、パッシブラジエター特有のクセが全く感じられませんでした。その特有の音は最低域よりももっと上の帯域で発生しているのでしょう。これが体験できたことは収穫です。

ボーカルを聴かせて頂くと、定位が実に安定しています。ビシッとシステムの真ん中に音像がくる。ヨハネスさんによると、6ウェイの各帯域毎に左右バランスを合わせ込むことが必要だとのことでした。そして、デジタルチャンネルディバイダーはこうした作業においても利便性が高く、また調整後の安定性に優れるそうです。アナログチャンネルディバイダーは使ったことがないので今ひとつ理解できませんでしたが、やはり6ウェイのマルチアンプシステムともなるとデジタルチャンネルディバイダーの方が扱いやすいようです。

ボリューム調整は2台のDBX4800とパワーアンプ群との間にSPLのVolume8を2台接続しています。DBX4800もVolume8もモノラル使いになっており、ボリューム調整は左右chを独立して調整することになりますが、このVolume8のボリュームには緻密な目盛りがついており、また、極めてスムーズに動くボリュームノブの大きさが適度に大きいこともあって、左右独立のボリューム調整でも全く問題がありませんでした。

今回はCDとPCによる配信ソフトを聴かせて頂きました。デジタルパッチベイのt.c.electronic dgitalkonnekt x32、2台のDBX4800、そしてPCの音源ボードは、マスタークロックジェネレーターであるミューテックのIDの96kHzのクロック信号により同期しています。このクロックジェネレーターによる同期はかなりの効果があるとのことです。PCによる配信ソフトはベルリンフィルの直営サイトからベルリンフィルのコンサートを視聴できるというものでした。年間会員(2万円程度)になると1年間無制限で視聴(ダウンロード不可)できるとのこと。膨大なアーカイブは宝の山だよ、とヨハネスさんはおっしゃっていました。確かにベルリンフィルの最新のコンサートが居ながらにして聴けるというのは魅力的です。しかも配信ソフトのサンプリング周波数は96kHz。録音も感心するほど素晴らしいものがあるとのことでした。このPCによる配信ソフトに大変興味を持ちました。

ダークサイドにおけるデジタル機器やPCオーディオの導入は大成功ではないかと思いました。音を聴いた感じでもデジタル機器で制御されているような印象は全く感じられません。オーディオは真面目に取り組むとどんどん素晴らしい音になってゆく、というのを実感できた今回のダークサイド留学、実り多きものになりました。ヨハネスさん、ありがとうございました。(2013/03/24)



2004/07/14

幸せの黄色いホーン 114話 スピーカーを走らせろ!



黄色いホーンシステムはキャスターが付いた移動式です。
使用していないときには邪魔にならない場所に片付けるためです。
下の説明図は左が片付けられた状態、右が使用時の配置を示しています。
106話でお話したアウトリビングだった場所に片付けます。 






黄色いホーンシステムは軽量化を考えながら設計したものの片CHの重量は200kgを超えます。
それでも片付けられた状態から使用可能な状態にするのに5分もかかりません。
ホーンタワーやウーファーの箱を押して移動し、スピーカーケーブルを16組のスピコンコネクタ(NL4FXとNL4MPR)により接続するだけ。
スピコンコネクタには番号を書き込んでおき、誤った接続を防止しています。
また、注意しないと見つけられないぐらいの小さな位置合わせ用テープ片を床に貼り付けました。





こんな具合にキャスター、スピコンコネクタ、位置合わせテープにより、スピーカーを簡単に片付けられるので居間が台無しになりません。
また、白ホーンシステムは製作中からキャスターを取付けていたため製作、移動、設置というすべての作業が楽でした。








2004/07/13

幸せの黄色いホーン 113話 コンサートホールの音


2010年の4月から読売日本交響楽団の名曲シリーズの年間会員になり、サントリーホールに月1回、通うようになりました。また、同ホールで行われているパイプオルガンのお昼の無料コンサートにも出かけるようになりました。コンサートホールに行ってみようと思ったのは、黄色いホーンシステムの音を深く考えてみたいと思ったからです。

大抵のオーディオシステムの場合、いい音だなぁと単純に思えればそれで済みます。ところが、常軌を逸している黄色いホーンシステムのような大規模なシステムの場合には、それだけでは済まなくなります。コンサートに行ったあとオーディオを聴くとその差に愕然とするというような話がありますが、巨大な黄色いホーンシステムの場合は、そういう失望感とは無縁です。そうなるとコンサートホールの音の完璧な再生というものを望み始めるのです。こうした願望は大規模システムを操るマニアに共通しているのではないかと思います。

コンサートホールの音と一口に言っても、それは座席によってずいぶん違います。バイオリンの近くで聴けばバイオリンの音が主張するのは当然ですし、ホルンの近くで聴けばオーケストラがブラスバンドのように聴こえます。コントラバスの近くで聴けば中低域だらけの音。こんな具合ですから、極端な話、2000席あるサントリホールの音は2000通りあることになります。オーディオ的な極端な話は嫌いなので、まとまった100席が同じ音であると仮定しますと、それでも20種類ものコンサートホールの音があることになります。さらに、指揮者のポジションで聴く音が加わると21通り。

それからもう一つあります。それは収録マイクの位置。オーケストラの上空、数メートルの位置に宙吊りされているマイク群が拾う音。それがレコードの音、CDの音。そしてこれがオーディオで言う原音の「ポジション」。誰もその位置に座って聴いたことがないのにこれがオーディオの「原音」という実に奇妙なお話。

コンサートホールの音を考える場合、直接音、初期反射、後期残響(残響音)の3種類の音を認識する必要があります。影響の大きな初期反射のほか、帯域別の後期残響時間の差なども大きな要素になります。そのようなことを考えると、あのオーケストラの上空のポジションというのは、かなり特殊な音なのではないでしょうか。つまり、直接音と初期反射の割合が大きく、その結果、後期残響の割合が少なくなっているということ。中低域の後期残響の割合が抑えられ音は明瞭になります。これはオーディオ向きのキレのある音です。

ところで、演奏者は後期残響の影響を考慮してホール毎に演奏スタイルを調整します。後期残響は音の響きというだけではなく演奏のあり方にも影響があるということです。また、演奏者は妙な後期残響を持つホールは演奏しにくいため敬遠します。コンサートホールの設計が帯域別の後期残響時間の長さを非常に重視して行なうのはこういう背景があるのです。


下のグラフはサントリーホールの帯域毎の残響時間を示したグラフです。Occupiedが客席に人がいる状態、Unoccupiedがいない状態です。なお、実際に聴いてみると満席に近い状態でも残響は優に5秒以上あります。





 

サントリーホールに通うようになってから黄色いホーンシステムの音の方向性が段々と固まってきたように思います。無限のエネルギーを秘めた重厚な音。明瞭さのために犠牲になった後期残響を含むバランス。その方向性は2010年の夏にヨハネスさんがいらっしゃったときに修正されたものの、結局、その後の再調整によりヨハネスさんがいらっしゃる前の状態に戻りました。もっとも、46cmウーファーのダクトの封鎖を片方のみとし、それに応じてイコライジングをやり直すなど、新たな設定を行ったため、元に戻ったのではなくやや前進したことは確かです。

コンサートホールの音を中心にしてオーディオを考えるようになるとネットを含めたオーディオ評論が気にならなくなります。機材の聴き比べのような話は実際の生の音とは距離のある架空の世界の話にすぎません。自信をもってオーディオを続けるために、やはり生の音を聴きに行くことが一番だと思っています。




2004/07/12

幸せの黄色いホーン 112話 ヨハネスさんと黄色いホーン(2)

 
ヨハネスさんの密閉化の実験は大成功。そこで黄色いホーンシステムの10インチの箱と18インチの箱を本格的に密閉化することにしました。ダクトを塞ぐ板はネットショップにアクリル板をカットしてもらいました。ホームセンターでの合板のカット代や水性ニス代などを考えるとアクリル板の方が安価ですし、仕上げの手間も省けるからです。



10mm厚と5mm厚のアクリル板の間に黄色い画用紙を挟み込みました。表札のような雰囲気。ネジの間隔は文房具のパンチの間隔です。パンチで画用紙にあけた小穴の位置にあわせてアクリル板に穴をあけました。画用紙を挟み込んだ状態で四隅をテープで仮止めしておき、箱にネジ止めした後にテープをはがしました。ダクトの内部には60mm圧のスポンジを詰め込み、これで密閉化完了。


密閉化による低域側のレスポンス低下はイコライジングにより補うことにしました。WinISDを使ってそれぞれの密閉箱での特性をシミュレート。そのグラフを見ながら、SH-D1000のEQCDというソフトでその密閉箱の特性を補正するカーブを検討しました。この補正カーブを設定して聴いてみると失われていた低音感が戻ってきました。理屈としては当たり前ですが、こうして低域がパワフルに鳴り出すと、にわかには信じがたい気持ちになりましたと、ここまでは良かったのです…

慣れてくると調子にのって低域側のレベルを上げ、イコライジングも欲張った設定に。さらに、システム全体のレベル設定も変更し、低音がたっぷり入っているCDを次々にかけて、バスレフに劣らない低音の量感にすっかり有頂天になってしまいました。このおばかな低音有頂天騒ぎが7月2日の深夜のこと。そして前回から約1ヶ月後の7月3日、再びヨハネスさんが来てくれました。「今日は設定なんかしないよ。聴かせてもらうだけだから。」とニコニコ。

当然、そのままで済む訳がございません。ヨハネスさんの前回の設定を呼び出し、それに低域の補正カーブを加えたところから再スタート。ヨハネスさんの指示に従ってレベル設定を変えてゆきます。やはり凄い。どんどん良くなっていきます。低域のレベルを絞っても低音の姿が明確になれば、それで十分な低音感を得られることが今回初めて分かりました。さらに、分かったことは使い手の頭の中身がとても重要だということ。はい、オーディオの良し悪しは機材の良し悪しではないのです…

それからリニアトラッキングアームのレコードプレーヤーも聴いて頂きました。「音量を上げるとジーというノイズが聴こえるのです。」と言うと、「モーターの電源部のアースをとった? 電源スイッチを切ってみてノイズが消えればそれが原因。」とのアドバイス。即座に解決。確かに電源部のアースをとり忘れていました。リニアトラッキングアームはミストラッキングすることなく動作したので一安心。もう少し針圧を上げたらどうかというのがヨハネスさんの感想。針圧を軽くすることばかり考えていたので、これは気付きませんでした。

今回も脱帽です。こちらは女性ボーカルでないとレベル調整ができないのに、クラシックの楽器の音のみで調整完了。その後、女性ボーカル等のCDを聴くとちゃんと調整ができていることがようやく分かる始末。そのほか、測定もしていないのに部屋やシステムの各帯域のクセを把握されているように思えます。設定の変更の指示内容からそれが分かるとドキッとしました。ヨハネスさんは立派な人間音響アナライザー、こちらは穴があったら入りたいさ~。それでも楽しいひと時でした。ヨハネスさん、ありがとうございました。また、来てくださいね!




2004/07/11

幸せの黄色いホーン 111話 ヨハネスさんと黄色いホーン



「おとがでるだけさん、宣戦布告文書、確かに受け取りました。
本土決戦のX-dayは、2010年6月5日としましょう。
よぉ~く首を洗っておいてくださいね。」

いよいよ黄色いホーンシステムをヨハネスさんに聴いて頂くことにしました。2色ホーンシステムが不調の時に「いえいえ黄色いホーンはこんなものではございません。あれは次元が違う。これは単なる実験システムですから。あはは…」みたいな逃げを打っておいたのが、ここにきてその逃げ場に追い込まれる事態に相成りました。返信に書いてある「本土決戦」という言葉はそういう意味なのです。う~む。

AVアンプのPS3001を導入する前、2332+2451Hを2332+2431Hに変更しました。この2431Hは3インチアルミダイアフラムを備えているドライバーです。美しい音。2430Hの後継機種であり、民生用は435ALですが、発売は435ALよりも後発です。今回はLR-48dB/octの遮断特性を採用し、2431Hの美しさを生かすようにホーンタワーの設定を慎重に行いました。さらに、ヨハネスさんに聴いて頂くのですから少し背伸びもしました。ダークサイドシステムの音を思い浮かべて、中低域を厚くしようと2392+2490Hをブースト、加えて小技を繰り出し低音は厚く重量感のある仕上がりになったような気になっていました。

ところで、ヨハネスさんというのは恐ろしく耳が良い方です。今までにダークサイドシステムで機材等の聴き比べでそれを感じました。機材の音の差異が微妙で判断しかねていると、ヨハネスさんが解説してくれます。そして、もう一度聴いてみると「なるほどなぁ。」とようやく理解。そんなヨハネスさんの耳に黄色いホーンシステムの音がどんな具合に聴こえるのか興味津々です。残念なことに今回は2時間弱程度の試聴時間しかなかったのですが、その内容は今までで一番濃かったのです。



黄色いホーンシステムを聴いたヨハネスさんは、「なかなか良い。」と言ってくれました。これはうれしかったです。「でも、低音が重い。今の設定は保存されてるんでしょ。新たに設定してもいいよね。」ご指摘の通りです。迫力はあるものの低音が何となく締りがない。不明瞭な感じ。でも、これは仕方がないものと諦めていました。

ヨハネスさんの最初の指示は「2392+2490Hを2dB下げてね。」うっ、いきなり見抜かれてる。それからが凄かった。矢継ぎ早に「46cmを0.5dB下げて。」「25cmを2dB上げて。」「61cmのクロスを45Hzに。」とどんどん指示が飛ぶ。言われたとおりにチャンデバの設定を変えてゆきます。一段落すると突然「タオル、4枚ある?」とおっしゃった。

何に使うのか分からないままタオルを用意すると、クルクル巻いたのを46cmの左右4つのダクトに詰めたのです。それから、再度レベル調整の指示。低音の質がどんどん良くなっていくのが分かります。うわぁ!と驚いていると、今度はタオル2枚。これを25cmのダクトに詰め、再度レベル調整の指示。重苦しい低音が豹変、今までの黄色いホーンシステムからは決して聴くことができなかった恐ろしく強烈で明瞭な低音が出るようになってしまいました。

「少し厳しすぎる音になったね。2360+2446Hを0.5dB下げて。」と指示されたのですが、黄色いホーンシステムの新しい音に舞い上がっていたので、誤って0.5dBブーストしてしまいました。30秒も聴かないうちに「う~ん、さらに1dB下げて。」とおっしゃる。このときメモ用紙に書きとっておいた設定データと見比べながら設定を行っていたため、誤ってブーストしてしまったことにすぐ気付きました。要するに、ヨハネスさんは、元の設定値から0.5dBカットすることを2度目の判定でも正確に行ったことになります。これには心底ゾッとしました。

低音の重さの原因を短時間で正確に判断し対処する。ヨハネスさんは耳が良いだけではなく、それを生かすことができる腕があるのです。お話を伺うと、その腕がすべて今までの経験というか苦労の連続に裏打ちされていることが分かりました。という訳で今回もとても楽しかったです。それに黄色いホーンシステムの音が1000万円分!ぐらいドーンとレベルアップしちゃいました。ヨハネスさん、遠いところまで来ていただき感謝しております。また、来てくださいね!

ちなみに問題の「宣戦布告文書」には駅の待合わせ時刻が書かれているだけです。大袈裟だなぁ…




2004/07/10

幸せの黄色いホーン 110話 PS3001



黄色いホーンのレイアウトが決まり調整を始めると音が変です。パワーアンプのSAL ES70の1台から異音が。さらに、他の1台の入力ボリュームが効かない。う~む。修理してもらおうと販売元に発送しようとすると最初に見積りをしますとのこと。現物を見ることなく故障の原因も分からないのに見積りできるの? その見積額はなんとアンプの価格の2倍弱。

ES70にはジーというノイズが出るという問題がありました。ES70は7台所有していますが、ノイズレベルとノイズの音質は何れも同じ。アースをとってみたり接続する機材を変えてみたりと原因を探ってみたのですが、このノイズを除去することはできませんでした。ちなみにベリンガーのEP1500をES70と同じ条件で使用してもこの手のノイズは一切出ません。




という訳でES70がなんとなくいやになり、代わりとなる新しいパワーアンプを探すことにしました。しかし、6台ものパワーアンプとなると、かなりお金がかかります。それに、これはというアンプが見つからない。そんなことをあれこれ半年も考えていると面倒になって、マランツのPS3001の在庫処分品を2台購入しました。1台約2万円。このPS3001は白ホーンシステムで使用しています。これで、黄色いホーンシステムは6ch分、2色ホーンシステムと白ホーンシステムは全chがAVアンプで駆動されることになりました。喜ぶべきか悲しむべきか・・・




今年(2010年)の春先にレコードプレーヤー2号機の試験運転が終了し、黄色いホーンシステムに導入しました。出窓の下が物入れになっており、その物入れの天板の上に設置したところ、ハウリングが酷い。24インチウーファーはかなり低い帯域まで出ているようで何らかの対策が必要です。物入れの天板を補強するか、それとも防振台のようなものを製作するか。これは今後の課題です。




フォノイコライザーはオーディオテクニカのAT-PEQ3。この出力をSRC2496で24ビット96kHzのデジタル信号に変換し、3台のDCX2496に供給するという構成です。白ホーンシステムの時はCDとレコードの音質差が分からなかったのですが、黄色いホーンシステムではレコードの音質が良くない。これも今後の課題。でも、新緑が映り込むLPは美しく、それがクルクル回るのを見るとそれだけでうれしくなります。




 

2004/07/09

幸せの黄色いホーン 109話 レコードとCD



アクリルプレーヤーはリニアトラッキングアームとWE308Lの2本アーム式。でも、ほとんどリニアトラッキングアームしか使っていないためWE308Lの出番がありません。2本アームが活躍するのは、リニアトラッキングアームの性能を確認するための比較試聴のときだけです。ちょっと残念。昔、2本アームのカッコよさにあこがれていたのですが、そのころはCDなんかありませんでした。その後CDが出現し、CDとレコードどっちがいいの?なんて議論が花盛りだったころにはオーディオとは無縁となり装置もレコードも失ってしまいました。

CDがすっかり定着したころステレオ装置の購入を思い立ちます。もうオーオタはごめんだ、マニアックな装置は要らない、明るい音楽生活のための堅気の装置が必要であ~る!と何故か気張って購入したのがSONYのTA-F222ESJとKENWOODのLS-11EX。当時長岡鉄男氏がほめていたからです。このプリメインアンプとデザインが共通するチューナーと5連装CDプレーヤーも同時に購入しました。CPが高くカッコいいななどと大満足。そして最初に購入したCDは、以前持っていたお気に入りのレコードのCD版。ところが、その期待のシステムから出てきたCDの音にがっかり。記憶に残っている音と比べるとまるでダメだったのです。

しかし、レコードに戻る訳にもいかず、そのままCDは増え続け、いつしか堅気の誓いも忘れ、スピーカーは徐々に巨大化してゆきます。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった、というか今年(2010年)は寅年ですけど、おマニア心がレコードプレーヤーを出現させてしまいます。いや、その出現は去年でした、とまあ、そんなことはどうでもいいというか無駄に長い前振りですが、ここではたと気付く訳です。「CDとレコードの直接対決」ができちゃうじゃないのと。こんなことに感心するのは能天気というより時代錯誤?

いざ決戦。レコードのCD版を用意するというか、CD版となっている中古レコードを100円でゲット。それを3組用意。そして、アナログの運命を託したリニアトラッキングアームをお掃除。公平を期するためにDCX2496の設定はレコードもCDも両者共通。ところが小さいけれども「ジィー」といういやなノイズが白ホーンシステムのMR94+291-16Kから出ていることを確認。リニアトラッキングアームのアースはとっているため、それが原因ではないです。DCX2496の入力に使用しているRCAピンプラグ/XLRコネクタの変換ケーブルが怪しい。そのXLRコネクタのネジをはずして分解。コネクタの1番ピンと3番ピンとコネクタケースのアースとが1本の針金で接続されているので、このコネクタケースのアースへの針金を切断。するとノイズは消えました。パチパチパチ。これは黄色いホーン資料室で通りすがりさんから頂いたアドバイスに従ったもの。ありがとうございました。

さらに、DCX2496のアナログ入力レベルを見直します。DCX2496は業務用ですからアナログ入力の基準レベルは+4dB。しかし、RCAピンプラグ/XLRコネクタの変換ケーブルによる-10dBのごまかし入力となっていますから、CDと同じ音量になるように入力レベルを上げてみます。しかし、これはダメ。レベルオーバーになってしまうようでノイズが出るというより高域が汚れてしまいます。やはりアナログ入力はかなり注意して慎重にレベル合わせをしないとうまくいきません。カートリッジのAT-DS3/G YLは出力電圧9mVという高出力であるため、ややレベル不足の感はあるもののデジタル入力とおなじ±0dBという無難な設定にしました。

ちょっと話は変わりますが、DCX2496のデジタル入力も実は大変デリケート。DVDを再生した後にCDを再生すると、極端に音質が劣化することがあります。もしかしたらDCX2496のサンプリングレートの自動切換え?が48kHzから44.1kHzに切り替わっていないのかも。こういう場合、CDプレーヤーの演奏状態(44.1kHzのデジタル信号をDCX2496に入力している状態)でDCX2496の電源スイッチをOFFにしてからONにすると、44.1kHzを再度認識してくれるのか、正常な状態の音に戻ります。

さらに、DCX2496の出力を民生用のアンプに供給する場合には-20dB程度の固定式アッテネータを使用しないと民生用アンプが入力オーバーとなり歪みます。このようにDCX2496はデジタルチャンネルディバイダーですが、アナログとデジタルの板ばさみのような機材であり、さらに、業務用なのに民生用機材と混在して使用されることが多いためなかなか使いこなすのは大変です。また、安価な機材であるという意識が使いこなしの不備に思い至らせないのかも。DCX2496に対する否定的な評価はこうしたことが原因ではないかと思っています。こういう機材を豊富な経験(キットではないアンプの自作などの)によって使いこなし、的確なアドバイスをするというカッコいいベテランが少ないのがちと残念。

さあレコードの準備が整いました。いよいよ対決! で、どうなったかというと、これがよく分からない… レコードもいいし、CDもいい。ブラインドで取替えるようなテストをされると(プチプチノイズは別として)判別できないような気がします。う~む。勝敗がついてくれると面白かったのですが… しかし、慎重にセッティングした甲斐があり、100円の中古レコードでもその音質は十分以上でした。レコードもCDも末永く楽しませて頂くことにしましょう。




2004/07/08

幸せの黄色いホーン 108話 リニアトラッキングアーム



アクリルプレーヤーが簡単に作れてしまったため、なんとなく作り足りません。そこでアームの自作を考えはじめました。以前からインターネットを通じて、海外のオーディオマニアがリニアトラッキングアームの自作を楽しんでいることを知っていました。こうしたリニアトラッキングアームの自作はDIY心をおおいにそそります。特に、エアベアリングを使用したリニアトラッキングアームは、そのスムーズな動きが魅力的。そういえば金魚さんの空気ポンプがひとつあまっていたな…と早速行動開始。しかし、安物ポンプでは空気の吐出量が少ないようでうまくいきません。う~む。

ここで強力な空気ポンプを購入すればエアベアリングタイプのアームを製作することができたとは思うのですが、やはり誰にでもできちゃうことが分かっているものを作るのはなんとなくつまらない。DIYは工夫するのが醍醐味だもの。という訳で電脳蜘蛛之巣調査を続行してみるとボールベアリングを使用したパッシブタイプのリニアトラッキングアームを発見。これは面白そうだなぁ、とボールベアリングについて調べてみたところ、リニアブッシュという摺動部材を見つけてしまいます。さらにパイプジョイントという部材も。このリニアブッシュとパイプジョイントから自作アームの構想がフワリンと浮かび上がりました。こうしてアーム作りに翻弄される日々が始まるのです。詳しくはこちらを。




この自作リニアトラッキングアームはなんとか実用になりました。WE308Lとの比較でも音がおかしいというようなことはありません。しかし、コンベンショナルなアームに比べると非常に微妙なセッティングが要求されるためあまりお勧めできるようなものでもないです。でも、これがDIYの楽しさ。そして、オーディオの世界を豊かにしてくれる楽しさなのです。

※2009年12月21日、20万アクセスを超えました。ありがとうございます。これからもどうぞよろしく!



2004/07/07

幸せの黄色いホーン 107話 アナログプレーヤー



黄色いホーンシステムの引越しの際に倉庫を整理していると、サエクのWE308Lの箱を見つけてしまいました。どきどきしながら開けてみると新品同様のピカピカ状態。25年ぶりの再会、ノスタルジーは人を酔わせます。WE308Lは、ビクターのTT71と積層合板の重量級自作キャビネットと組み合わせて使用していました。さらにTT71にはトランスを別筐体に収めるという改造を施していました。もっとも、重量やそうした改造でどれほど音が改善されているのかさっぱり分かりませんでしたが、何故か当時の思考回路はそういう傾向を好んでいたのです。

WE308Lを見ているうちにアナログプレーヤーを作りたくなりました。とりあえず、ヤフーオークションでTT71を落札しようとしたのですが落札できません。その理由は明らか。ヤフーに利用登録料金を支払っていないため5千円以上の落札ができず、一方、TT71の平均的な落札価格は5千円以上だからです。う~む。他に中古のフォノモーターはないかと探してみたものの、やはりどの機種も人気があって5千円以上になってしまいます。そんなときにパイオニアのPL-30Lのジャンク品が出品されているのを発見。アームなしですがモーターは回りますとのこと。これを2千円で落札することができました。

WE308LとTT71によるプレーヤーシステムを使用していたころは、このシステムに大変満足していました。このため、その後登場したプレーヤー等には興味がなく、従って、PL-30Lのことも全く知らず、当然思い入れなどもありません。でも、使用してみるとTT71よりも数段進歩したフォノモーターであることが分かりました。トルクがあるように思えますし、また、プラスマイナスの両方向サーボのようです。TT71では停止する際にソレノイド駆動によるパットがこすれる音がしましたがPL-30Lでは静かに停止します。

おっかなびっくり分解してみるとキャビネットから部品を取り外してフォノモーターとして利用できそうなのですが、モーターの底部がキャビネットに固定されているタイプであるためTT71のようにはキャビネットに取付けられません。ここで、昔と同じことをするのは止めよう、付き合い方を変えてみようと思いました。だいたい重量級のキャビネットは作るのが大変です。そんなお気楽思考回路が選んだのがアクリルという素材。重いのか軽いのか、真面目なのか不真面目なのか、なんだか訳の分からない雰囲気が素晴らしい。しかも、1cm厚、10cm四方の面積で120円と良心的なアクリル屋さんをヤフーオークションのショップで見つけ、とりあえず製作してみたのが今回のレコードプレーヤーです。製作過程はこちらを。




このアクリルプレーヤー、お気楽に作れてしまった割には、なんとなく高級感があるような気もしますし、周辺光の状態で表情が美しく変わり、気に入っています。また、木工ではなくアクリルという新たな素材でDIYの経験ができたのが収穫でした。






2004/07/06

幸せの黄色いホーン 106話 黄色いホーンシステムの引越し



今年(2009年)の6月、引越しをしました。黄色いホーンシステムを置く部屋は妙に細長いLDKであり、長辺側にスピーカーを配置するとスピーカーとの距離がとれず、また、短辺側に配置するとスピーカー間の間隔が狭くなり、何れもダメです。このLDKにはアウトリビングという奇妙な空間が併設されていました。このアウトリビングというのは、家の中にあるのに床が石張りという変なスペースであり、LDKとは普通のサッシで仕切られています。大型犬でも飼っていたのかしら?

このアウトリビングという使えないスペースを何とかしようと、工務店に頼んでLDKとの境の垂れ壁、袖壁、サッシの除去、石張りの床の上にフローリングの床を設置してもらいました。費用は20万円ちょっと。アウトリビングだったスペースはLDKと一体となり、広々した感じになったものの、スピーカーの設置位置についてはいいアイディアが浮かびません。

9月半ばの連休のこと。ヒマなのであれこれ考えていると、スピーカーシステムを斜めに配置したらどうか?と思い立ちました。深夜にもかかわらず大きなスピーカーをよたよたと移動。並べてみると、左右のスピーカーの間隔も十分にとれますし、スピーカーからの距離も十分にとれることが分かりました。左側のスピーカーを設置したスペースがアウトリビングだった場所になります。左右のスピーカーで天井の高さが全く異なるのが気になりますが、おそるおそる試聴してみたところ変な感じはしません。3ヵ月半悩んだ甲斐があり、うまくいったようです。それにしても無計画な引越しでありました。深く反省。




巨大だと思っていた52型の液晶テレビが小さくみえます。ケチらず65型にすればよかった…




右側スピーカー。暖炉は使用不能になりましたとさ。




左側スピーカーです。アウトリビングだったスペースに設置。





CADで描いてみましたが、なんとなくスピーカーの角度や位置が違うような気がします。